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第四章:帰還への旅
4-14迷宮の異変
しおりを挟む私たちはユエバの町に魔物が押し寄せているとの噂が有ったのでその情報を集めていた。
なので先ずは冒険者ギルドに行ってみる。
冒険者ギルドは今朝の騒ぎがまだ続いていたようだった。
「それで今朝ここへ逃げ込んできたって人は?」
カリナさんは、ザラスさんに聞いたその情報を持ち帰った人たちがどんな人か聞いてみる。
すると休んでいたと言う事らしいが詳しい話をする為にギルドマスターたちと今は会談中だそうだ。
「ん-、カーネルたちと話をしているのか…… よしっ!」
カリナさんはそう言ってずかずかと冒険者ギルドの上の階に勝手に上ってゆく。
その様子を見てトーイさんとザラスさんは顔を見合わせため息をついてカリナさんについてゆく。
「あれ? カリナさんたち何処へ行くの?」
「カリナの事です、直接ギルドマスターに話を聞きに行ったのでしょう。私たちも行きましょうか?」
「いいの、勝手に行っちゃって?」
ルラは階段を上るカリナさんたちを見てそうつぶやくとネッドさんが説明をしてくれる。
そしてギルドマスターの所へ行こうと言い出しルラと一緒に階段を上り始める。
「わわわっ、私も行きます!」
私は皆に置いて行かれないように慌てて付いて行くのだった。
* * *
「うそ、ネコルさん?」
カリナさんたちに付いて行って勝手に立派な部屋の扉を開けて中に入ってゆくとテーブルをはさんで数人の人が話し込んでいた。
そしてその話をしている中によく知った顔がいた。
「リルちゃん? リルちゃんじゃないか!! ルラちゃんも! 二人ともよく無事で!!」
ネコルさんは思わず立ち上がりこちらを見る。
「なに? リルの知り合い?」
「はい、キャラバンで一緒に移動していた武器屋のネコルさんです! ネコルさんよく無事で……」
どうやら見た感じ怪我とかは無いようだ。
それと同じくキャラバンで一緒だった人が数人いる。
「カリナ、いくらお前でも少しはわきまえてもらえんかな? 今は大事な話の最中だ」
「何凄んでるのよ? 良い事カーネル、もし魔物の大軍がここへ押し寄せて来るならいくらユエバの町の防壁だって危ないわよ? 本国からの増援で『鋼鉄の鎧騎士』を回してもらうにも、国境付近の砦から回してもらうにも時間が無いわよ?」
カリナさんに文句を言っていた初老の人物がどうやらギルドマスターらしい。
彼はカリナさんにそう言われ苦虫をかみつぶすかのような顔になる。
「それで、魔物の群れがここへ向かっていると言うのは本当ですか?」
「誰かに操られているのか?」
「あのグリフォンの群れもそうだったのか?」
ネッドさんやトーイさん、ザラスさんも状況を聞いている。
するとカーネルギルドマスターは苦虫をかみつぶした表情のまま言う。
「どうも話を聞く限りそうでは無いようだ…… もっと恐ろしい何かに追いやられると言うか、襲われてこちらに逃げて来ている様だ……」
「もっと恐ろしい何か?」
カリナさんはギルドマスターのその言葉をつぶやく。
しかし、魔物たちを追いやるほどのもっと恐ろしい何かって何?
どうもこのイージム大陸に来てからそんな化け物どもと頻繁に会うような……
「とにかく今はここの守りを町長に言って固めるしかないだろう。それと同時に本国に増援依頼をするしかないだろう。流石に『鋼鉄の鎧騎士』が来れば状況は改善するだろうしな」
カーネルギルドマスターはそれだけ言って立ち上がる。
そしてカリナさんの近くまで来て言う。
「もっと情報が欲しい。頼めるか?」
「仕方ないわね、あんたの頼みじゃ断れないわね。でも高いわよ?」
「友人価格で頼む。それと最悪は町の脱出ルートの確保も頼めるか?」
カーネルギルドマスターはカリナさんを見ずにそう聞く。
「……分かったわ」
カリナさんはそれだけ言うと私たちを引き連れて下の階に向かう。
私はネコルさんに挨拶して慌ててカリナさんいついてゆく。
「リル、ルラは私の部屋で待っていなさい。宿屋の場所は分かるでしょ? はいこれ鍵ね」
「カリナさん!」
「駄目よ、いくら何でも今回はあなたたちを守りながらどうこう出来る自信が無いわ。最悪はあなたたちもこの町から逃げ出すのよ? いいわね?」
そう言ってカリナさんたちは私にカリナさんの部屋の鍵をよこして来てギルドのカウンターに向かう。
そしてすぐに必要な道具などを受け取り出発の準備を始める。
「お姉ちゃん……」
「ルラ、どうしよう…… 魔物たちを追い払う程の何かって何だと思う? それにカリナさんがいくら手練れの冒険者だからって……」
同族の彼女の背を見ながら私はトランさんを思い出している。
エルフは永遠に近い生を持っている。
しかしそれは決して不死身と言う訳では無い。
怪我や事故、病気で命を落とす者だっている。
そして今回は魔物たちを追い払う程の何か……
「お姉ちゃん、あたしのスキルが有ればそいつも倒せるかな?」
「私のスキル、『消し去る』だって魔物を消し去れる……」
私とルラは顔を見合わせて頷く。
そして準備を整え出発をするカリナさんたちについてゆくのだった。
* * *
「まったく、これだからレミンさんの娘は! 良い事、死にに行くんじゃないんだから絶対に無理はだめよ? それと危なくなったら私たちにかまわず真っ先に逃げなさい。そして町にその事を伝える。これが付いてくる最低限の条件よ?」
「分かってます。でもカリナさんこそ無理しないでくださいね」
私とルラはカリナさんたちの反対するのも聞かないで「エルフの剣」についてゆく。
正直もうトランさんの時のように待っているのは嫌だ。
私とルラの秘密の力があればきっとどうにかなるはず。
だから私たちは無理矢理カリナさんたちにくっついて来た。
ユエバの町の門を開いてもらい私たちは大迷宮の方角に向かう。
話ではそちらから大量の魔物がこちらに向かってきているらしい。
一体何が起こっているのか。
私たちはそれを探る為に町の外へと踏み出すのだった。
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