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第二章:転移

2-7冒険者ギルド

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「ちょっとルラ待ちなさい! ちゃんと服着てから出るの!!」


 私たちはトランさんの勧めでお風呂をいただいている。
 お風呂と言ってもシャワーなんだけど、ちゃんとお湯が出るのが驚いた。

 エルフの村では泉で沐浴するくらいだったから、お湯を使ったシャワーなんて驚きだった。


「何で裸のまま部屋に戻っちゃダメなの?」

「あ、あのねぇ、女の子なんだから恥ずかしいでしょうに! それにトランさんにも言われたでしょ? 人間の街では男女別々で裸になっちゃダメなの!」

「え~、めんどくさい」

「とにかく裸はだめ!」


 ルラにしてみればいいままで混浴だったから気にもしないのだろうけど、私は意識し始めたらとてもじゃないけどもう村に戻って混浴は出来そうにもない。

 シャルさんとか普通に男の人に裸見られても平気なんだもんなぁ。
 いや、お母さんも他の人もそうだったから私も今まで感覚がずれてた。

 そんな事を思いながらお風呂から出てホカホカの状態で部屋に戻ると扉がノックされる。

「はいはい~」

 扉を開けるとトランさんだった。
 トランさんもお風呂入ったようでなんか好い匂いがする。

「ん、二人ともお風呂入ったね? どうだった、温かい雨って驚きだったでしょ?」

「はい、でも気持ちよかったです」

「シャワーって初めて~」

 トランさんはにっこりと笑いながら私とルラの頭を撫でる。


 ううぅ、なんか今はトランさんに頭を撫でられるのが恥ずかしい。
 もうトランさんに頭を撫でられるのは平気なんだけどね。


「さてと、落ち着いたら君たちにお願いしていたポーチからあの地竜を出して冒険者ギルドで素材として売りたいんだけど良いかな?」

「あ、そう言えばあの怪獣売るんでしたよね? 今持ってきます」

 私は慌ててポーチを持ってくるけどトランさんはそれを受け取らない。
 そしてルラも見て話しかけてくる。

「一緒にギルド行く?」

「ギルド? なんですかそれ?」

「なになに、お姉ちゃん、トランさん!」

 トランさんは笑いながら話してくれる。

「冒険者ギルドって言ってね、冒険者が登録するといろいろと助かる組合なんだ。仕事の紹介や冒険に必要な道具も売ってるし、非常食や薬も売っているんだよ。そして魔物の素材なんかも買い取ってくれるからすごく便利な場所なんだ」

 そんな場所があるんだ。
 そう言えば地竜は素材として売れるからって言ってたっけ。

「あたし行く! 面白そうだもん!」

「そうですね、じゃあ一緒に行きます」

 私たちはトランさんに返事して一緒に冒険者ギルドに行く事になったのだった。


 * * * * *


「ここが冒険者ギルドかぁ~」


 ルラは扉を見上げている。
 なんか西部劇に出て来そうな扉でさっきからいかつい格好の人たちが出入りしている。


「それじゃぁ行こうか?」

 他の冒険者の人たちも一緒に来ているけど、魔術師のロナンさんがエルフ語でそう言ってくれる。
 ロナンさんは出来るだけ私たちにエルフ語で話してくれるので助かるのだけど、私たちもコモン語をだいぶ覚えているので結構と何言ってるか分かってきている。

「はい、イキマショウ」

 無理矢理コモン語で言うとロナンさんは笑って発音がおかしい所を指摘してくれる。
 私は素直にそれと同じに発音すると「よくできました」と笑ってくれた。


 うん、確実にコモン語も通じるようになっているみたい。


 そんな事を思いながらみんなで中に入るとなんか「赤竜亭」の一階みたいな場所だった。

 広いホールの一番奥に大きなカウンターがあって、左側の壁には沢山の何かの紙が張り出されている。
 それを眺めていてその紙を剥がしてカウンターに行く人や、端っこのカウンターに何かを大量に持って来ている人とかもいる。
 それに、右側の端っこにテーブルがあってなんかご飯食べている人たちもいる。


「へぇ、これが冒険者ギルドかぁ~。賑やかな所だね、お姉ちゃん」

「うん、でもなんか怖そうな人ばかりだね?」

「ははは、リルにはみんなが怖そうに見えるかい? こう見えてもみんな結構良いやつばかりだよ?」


 うーん、まあトランさんがそう言うのならそうなのかな?


「お、トランじゃねーか? なんだい可愛い子を二人もつれて? もしかしてお前のこれか?」

「おいおい、この子たちはまだまだ子供だよ? 僕はロリコンじゃないって」


 うっ、前言撤回。
 なんか柄悪そうな人からトランさんは声をかけられる。


「ふぅ~ん、結構可愛いのにまだこれで子供なんだ?」

「そうだよ、僕が保護している。だからみんなも手を出しちゃだめだからね? 人間にしてみたら三歳児くらいなんだからね」


 うっ、確かにそうかもしれないけど、トランさんにそう言われるとなんか落ち込む。
 確かに体は見た目が十五歳くらいにはなっているけど、トランさんからしてみれば三歳児って……


「ふぅ~ん、まあトランの連れって事は分かった。嬢ちゃん、俺はロモスってんだ。よろしくな!」

「りるです。ヨロシクです」

「あたしるら、ヨロシクだ!」

 一応挨拶するとロモスって人はきょとんとして笑う。


「はははっ確かに三歳児に違いねぇ! さてと、そろそろ俺は行く、じゃーなトラン、嬢ちゃんたち!」


 なんかロモスって人は笑いながらあっちへ行ってしまった。
 何かおかしい事言ったかな?

「トランさん、私何か変な事言いましたか?」

「う~ん、コモン語で挨拶出来たのは偉いけど、発音がまだまだだから子供っぽく聞こえたみたいだね?」


 なっ!?

 だから大笑いしていったのかぁ!?


 思わず赤面してしまう私。
 ルラは良く分かっていないみたいだけど、私たちってものすごく子供って思われたって事かぁっ!?

「まあ、それでもちゃんとコモン語は伝わっているみたいだから大丈夫みたいだね」

 トランさんも笑いながら奥のカウンターに行く。
 そして何やら話をすると私たちを呼ぶ。


「ここだと狭いから裏庭に行くって。そこでリルのポーチからあの地竜を出してもらえるかな?」

「はい、分かりました」

 そう言ってみんなで裏庭に行く。
 そして広々としたそこでトランさんは私に言う。

「それじゃぁ、地竜を引っ張り出して見て」

 言われて私はポーチに手を突っ込み手探りで地竜を探す。
 そしてごつごつした肌に触れると頭の中に地竜のイメージが浮かぶ。
 私はそれを掴んで引っ張り出すとポーチからすごい勢いでそれは目の前の広場に吐き出される。


 どんっ!


「ほ、本当に地竜なんですね!?」


「うん、そう言ったじゃないか。だから買取の方をお願いするよ」

「ちょ、ちょっと待っててください! すぐにギルド長を呼んできます!!」

 そう言ってカウンターにいたお姉さんは慌てて建物の中に入って行った。
  
 それを見てトランさんもエシアさんもテルさんもホボスさんもロナンさんさえ笑っている。
 訳が分からなくて私はトランさんに聞いてみる。

「あの、一体どうしたんですか?」

「ああ、実は地竜の買取なんてこの四十年間全くなかったから誰も信じていなかったんだよ。こんな珍しい物を買い取りとなれば受付嬢じゃ判断できないもんね。いやはや、彼女の慌てぶりが見れるとは思わなかった」

 そう言ってみんなで笑っている。
 どうやらいつもは冷静沈着な受付嬢だったらしく、その反応に皆さん笑っている様だ。



 私とルラは思わずそんなトランさんを見ながら顔を見合わせるのだった。

  
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