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第二章:女子高
第十話:夏休み開始
しおりを挟む「あゆみちゃん、これって……」
「うーん、こんなもんじゃないかな?」
一学期の学期末テストの上位発表がされていた。
掲示板の前に来ていた歩と恵菜、そしてデルタはその結果を見ていた。
「凄いじゃない、あゆみちゃん! 学年十位だなんて!!」
「ま、まあそれ程でも…… それにまだ高校一年生のだから……」
恵菜は大いに驚いている。
現役大学生にとっては高校一年生の期末テストなどはそれ程問題にならなかった。
流石に高学年にもなると少しは真面目に取り組まなければならないだろうが、そこそこの復習をすれば不可能な事では無かった。
「あゆみさん、結構凄いです」
「そう言うみかども十五番に名前乗ってるじゃん」
「はぁ~、二人とも結構頭良かったんだ。私なんか下から数えた方が速いってのに~」
恵菜はそう言ってがっくりと肩を落とす。
だが赤点にはならなかったので追試や補習は免れたようだった。
そして歩にとってはやっと一安心できる夏休みに突入する。
「これで安心して夏休みだなぁ~、いやぁよかったよかった」
歩にしてみればこれで少しは気が楽になる。
女子高生になって初めて理解したが、女の花園と呼ばれるこの聖友愛学園は男性が想像するようなパラダイスでは無かった。
はっきり言おう、女子高生の実態は目の毒だ。
女だらけを良いことに、いくらお嬢様が多くてもやはり隙ができまくっている。
座った時に短いスカートなのに足を開いたり、かがんで制服の首元からブラジャーや胸元がチラ見えするのは当たり前。
中には暑いからと言ってスカートのすそを上げてパタパタする娘もいる。
当然、スカートの中身が見えてしまうのを防止するために、短パンを穿いたりスパッツを穿いたりと防御策を外部ではしている。
しかし、夏場の蒸し暑さはいくらエアコンが効いている教室でも、その設定温度は高めなので、下着とスカートと言う快適さを知ってしまった彼女たちは、学校へ来ると短パンやスパッツを脱いでしまう者も少なくない。
更に、体育着や下着なども意外と散乱していたり、あまつさえは生理用品ですら必要であれば貸し借りの為に目の前を飛び交うと言う始末!!
男の目が無いと言うのはそれだけ少女たちを無防備に、そして開放的にしてしまうものなのだ。
「だからと言って、流石にそりゃぁないよなぁ~。ちょっと幻滅~」
歩は女性になってから、男性のそう言った希望的妄想が夢であったと改めて理解するのだった。
しかし、そんな精神的圧力は夏休みに突入する事でひと段落する。
「そう言えば、あゆみちゃんは夏休みの予定ってある?」
「ん~、とりあえず面倒な課題を終わりにして後は家でだらだらしたいなぁ~。ここ最近色々あり過ぎて精神的に疲れたからね~」
そう恵菜に本心を告げると、恵菜は感心して言う。
「流石だね、あゆみちゃん。じゃ、じゃあさ、夏休みの課題一緒にしない? 私あゆみちゃんみたいに頭良く無いから課題やるのに手間どうから……」
「ん~、別にいいよ。うちに来る?」
「うんっ! 行くっ、行きます!!」
ぱぁっと明るい顔して恵菜はうんうんと首を縦に振る。
こうして恵菜は夏休みの課題を歩と一緒にする約束を取り付けるのだった。
* * * * *
「ふーん、恵菜ちゃんが夏休みの課題をやりに来るんだ~。ふ~ん」
「な、なんだよアイナ。なんか文句あるのか?」
「私が中学生の時とか高校の時は勉強見てくれないくせに!」
「だって、お前頭いいだろ?」
「ぶぅ~」
今は自分より年上なアイナは歩から恵菜が夏休みの課題を一緒にやりに来ると聞いて、ぶうたれる。
愛菜は正直何もしなくてもいつも学年トップを取っていた。
なので兄として妹に勉強を教えていたのは小学生まで。
それ以降は正直こちらの方が答えられなかったり、間違えたりと兄としての威厳が保てなかった。
だから歩は愛菜の勉強を見る事が無くなっていった。
「まあ、確かにお兄ちゃんに聞くまでもなく私は大丈夫だったけど、そう言う問題じゃないのよね」
「な、なんだよ?」
「高校になって恵菜ちゃん可愛くなったじゃない? いくら幼馴染でも二人っきりにしたら、お兄ちゃんが恵菜ちゃん襲うんじゃないかって」
唇を尖らせアイナはそう言う。
歩は慌てて否定する。
「す、する訳ないだろ! そ、それに俺は今は女の子なんだぞ? 襲うはずが無いだろうに!!」
「なによぉ~。女の子同士でもしちゃうことあるわよ? その時の流れとか雰囲気で。私なんかそれを期待して毎晩裸シャツで、時には下着も穿かないでお兄ちゃんのベッドにもぐりこんでいると言うのにぃ!」
一応アイナが歩の部屋に居候する事になって、別の敷布団は用意されている。
しかしアイナはちょくちょく歩のベッドにもぐりこんでその大きな胸を押し付けたり歩を抱きまくらにしたり、歩に悪戯をしてきていた。
アイナのその誘惑に実は歩もかなり我慢していたが、男の子としての直立するモノが無いので、そこまでいきそうになって何時もがっくりと落ち込んで理性を保っていた。
「あのなアイナ、頼むからもう勘弁してくれ……それやられると男としての自尊心が傷つくんだよ……」
まさしく蛇の生殺しと言う状況だった。
アイナは心底つまらなさそうにして、「はいはい、考えておくね~」とか適当な事言っている。
歩は大きなため息をついてそろそろやって来る恵菜を迎える準備をするのだった。
* * *
「おじゃましま~す」
「おう、入って入って」
歩の部屋で夏休みの課題をする為に恵菜がやって来た。
先日の騒ぎ以来、久しぶりにやってきた恵菜は歩の部屋をぐるりと見まわす。
「あ、あれ? アイナさんは??」
「ああ、勉強の邪魔になるからリビングに追い出した」
「えっ///////」
歩のその何の気なしの言葉に恵菜は赤くなる。
途端にドキドキと心拍数が上がり、頬が高揚してくる。
大好きなあゆみちゃんと二人っきり!
しかもあゆみちゃんの部屋で!!
恵菜の頭の中はそんな言葉でいっぱいになる。
そしてお目々ぐるぐるになる。
「さてと、こっちに座って」
ベッドに近い所に座布団を敷かれたものの、後ろの歩のベッドが目に入ってしまいそこから目が離せなくなってしまう。
「あ、あゆみちゃんのベッド……」
勉強するのになんでベッドに座れって?
もしかしてそう言う事??
どうしよう、今日の下着可愛くないし、汗臭くないかな!?
等と完全にお門違いの事を考えてしまう。
しかし歩はすとんとテーブルの相向かいに座る。
「ん? どうした恵菜、早く座れよ」
「あ、ひゃ、ひゃいぃっ!」
変な返事をしてベッドに腰かける恵菜。
すると歩の視線から何故か今日に限ってミニスカートを穿いているその中身が見えてしまう。
「お、おい恵菜。その、そこに座ると丸見えだぞ///////」
「え、あ、ごめんなさい今日可愛いくないパンツなんで、その、ご期待に沿えなくてごめんなさいっ!!」
真っ赤になってお目々ぐるぐるでアワアワとして恵菜は立ち上がって逃げ出してしまった。
歩の部屋の扉を開け、荷物を置いたまま走り出す。
「あ、ちょ、ちょっと恵菜ぁっ!」
「ごめんなさーいぃっ!! 下着はき替えて来るからちょっと待ってってぇっ!!!!」
そのまま階段を駆け下り、恵菜は自分の家に逃げ帰ってしまうのだった。
「何なんだよ、まったく……」
取り残された歩は首をかしげるも、恵菜の変な行動に理解が追い付かず、ただ誰もいなくなった階段を見下ろすのだった。
* * *
「あれ? 恵菜ちゃんは?」
「なんか急に立ち上がって帰っちゃった。荷物もそのままで」
「なんで?」
「さぁ? あ、でも珍しくミニスカートで下着見えちゃったんで注意したら急におかしくなった」
「うーん急に生理でも来たかなぁ?」
リビングでくつろいでいたアイナに歩はに恵菜の事を聞くも、歩も頭にクエスチョンマークを浮かべたまま冷蔵庫から飲み物を出してコップに注ぐ。
そしてそれを一気に飲んでからため息一つ。
「じゃあ恵菜ちゃんはもう来ないのかな?」
「分からん。しかしそうなると一人で課題を先にするのもなぁ……」
「じゃぁさ、買い物行くから付き合ってよ!」
「はぁ? なんで俺が……」
「あ”-っ! あゆみお姉ちゃんとアイナお姉ちゃんだけでお買い物に行くの!? ずるぅーいぃっ、あたしも行くっ!!」
アイナのその申し出に断ろうとしたら愛菜もちょうどリビングに入ってきてそう言う。
どうやら先程の会話が聞こえた様だ。
「ん~、そうね。せっかくだから久しぶりにみんなでお買い物行こうか!」
「え~」
「いいじゃない、あゆみお姉ちゃん! 行こう、行こうよ!!」
不満げな歩だったが、無理矢理三人で出かけることになってしまう。
ふと、恵菜の奴はこの後来るつもりなのか?
そんな事を考えながらすぐに来ないなら出かけて来る事をスマホで連絡入れておく。
しかしすぐに返事がなく、歩はまあいいか、と出かける準備を始めるのだった。
ちなみにこの時、恵菜は自宅のお風呂で入念に体を洗い、肌を磨いていたのでスマホの連絡を見ていなかった。
「あゆみちゃん、待ってってね! 奇麗になって勝負下着で今度こそあゆみちゃんのモノになるからね!!!!」
一人暴走する恵菜だったのだ。
* * *
「んで、何処行くんだよ?」
「ん~、ショッピングモール」
「何を買うのアイナお姉ちゃん?」
三人でバスに乗りショッピングモールへ向かう。
アイナがそこで何か買うらしいので。
たわいのない話をしながら三人はバスに揺られてゆく。
この後に何が起こるかも知らないままに。
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