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第二十話:最愛の人
しおりを挟む「マリアーナ‥‥‥ マリアーナっ!!」
緩んだ手の力のお陰で声が出せた。
私は精一杯の力を込めてマリアーナの名前を叫ぶ!!
「リ、リリ‥‥‥アーヌ‥‥‥さ‥‥‥ま‥‥‥ ぅうぁあぁああああああぁぁぁぁっ!!」
ばっ!
マリアーナが私の首から手を離した。
「ぅうぅううがぁぁああああぁぁあっ! 何故だ!? こいつも私に逆らうのか!? 主人公だぞ!? 私のシナリオ通りにしていれば幸せになれるのだぞ!?」
『どうやら理解していないみたいですわね? あなたの独りよがりのそのシナリオ、私は嫌いですのよ? それに今あなたに影響を及ぼしているそこの人物だって同じでしてよ?』
駄女神はそう言って私を指さすと私の体がぼうっと光って苦しかったのが無くなる。
これって回復魔法?
『それに私の作った世界はこの世界に住む住民にもちゃんと意思が有るのですわ。彼らには唯一与えた万能の力、【希望】は私、女神でさえどうこう出来るものではありませんわ!!』
「ぅううぅぅ‥‥‥ 私のシナリオは完璧だ! 製作委員会もスポンサーも何故それが分からないのだ!? 私こそが、私こそが最高のゲームクリエーターなんだ!!」
ぶわっ!
マリアーナから更に黒い霧が吹きだす。
「マリアーナっ!!」
『あなたが彼女の心を取り戻すのですわ! 彼女の【希望】を呼び覚ませばあの怨霊は消え去りますわ!!』
女神にそう言われ私は立ち上がる。
マリアーナ。
私のマブダチ、そして最愛の人!
「マリアーナっ!!」
噴き出す黒い霧の中私は手を伸ばす。
「リ、リリアーヌ‥‥‥様‥‥‥ リリアーヌ様っ!!」
「何故だっ!? こいつは最後にざまを喰らって死ぬ運命!! 主人公の貴様を虐げていたのだぞ!?」
「ち、違う‥‥‥リリアーヌ様は、リリアーヌ様は!」
「マリアーナ!!」
マリアーナも苦しみながらも私に手を伸ばす。
「リリアーヌさまっ!」
はしっ!
私とマリアーナの手が触れた。
「ぐわぁぁああああぁぁぁっ! そんな、主人公と悪役令嬢が心を通わすなどあってはならない! そんなシナリオ、ざまぁが無いシナリオなぞ認めない! 認めないぞぉっ!!」
「ふんっ! 私はリリアーヌ=ボンレス・シーナ・ザイナス! 悪役令嬢かもしれませんがマリアーナだけは渡せませんわ!!」
「リリアーヌ様っ!!」
ぐっとマリアーナを抱き寄せる。
途端にマリアーナから噴き出していた黒い霧がひと所にまとまって眼鏡姿の頬のこけた女性の姿になる。
それは前世の世界にいた疲れ切った感じの人物。
『もう良いですわ。こう言うシナリオも有るのですわ‥‥‥来世ではもう少し視野を広げる事ですわね』
駄女神はそう言ってパチンと指を鳴らすと天から光が降り注ぎその眼鏡姿の女性を包む。
その女性は憑き物が取れたかのように嬉しそうに眼鏡を外しながら「ありがとう」とだけ言って消えた。
『さて、これでエンディングまで楽しめますわね?』
そう言って駄女神は私に手をひらひらと振って消えて行った。
「まったく、迷惑な連中ですわ」
「リリアーヌ様!」
ぶちゅっ!!
マリアーナはいきなり私に口づけしてきた!?
驚きに目を白黒させてしまう私。
「リリアーヌ様ぁ~!!」
唇を放してマリアーヌは私に抱き着いて泣きじゃくるのだった。
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