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第九章
第218話9-11ティアナ
しおりを挟むフェンリル姉さんはエルハイミねーちゃんたちに捕まって青くなっている。
「ちょ、ちょっとエルハイミ! もう酷い事しないって言ったじゃないのっ!」
「ええ、ですから酷い事ではありませんわ」
「そうですわ、これならみんなが納得いく方法ですわ!」
「そうですわよ、ティアナも、いいえ、フェンリルも納得いきますわ!!」
脂汗をたらたら流しながらフェンリル姉さんはお尻を押さえエルハイミねーちゃんを見る。
「な、何をするつもりなのよ?」
「「「ティアナの復活ですわ!」」」
びびびっ!
三人同時に指を立てエルハイミねーちゃんたちは答えるのだった。
* * *
「つまり、魂の分割を行ってフェンリルとティアナを分けるっていうのかい?」
アガシタ様はずるずるとエルハイミねーちゃんに言って異界の料理であるラーメンとか言う食べ物を食べてる。
回復してもらった僕たちにもふるまわれたけど、かなり美味しい食べ物だった。
「そうですわ。先ほどアガシタ様が魂の分割をしたって言ってましたわよね? それは女神クラスの魂は大きく、余剰が有るので魂の分割をする事が出来るのですわ。そして何度も転生をしているティアナたちも魂が成熟して器が大きくなりそれを分割しても大丈夫なくらいにはなっているのですわ!」
「だからティアナとフェンリルの魂の領分を分けて二つにして、私が作り上げる女神クラスの肉体にティアナの魂を入れるのですわ!」
「そうすればティアナの復活と共に女神としてのティアナが誕生しますから、その都度死んでしまって転生する必要も無いのですわ!」
エルハイミねーちゃんたちはそう言ってびびびっと指を立てる。
「わ、私がフェンリルとティアナ姫に分かれるぅ?」
「「「これでもう二度と浮気も出来なくなるし、ずっと私と一緒に居られますわ!!」」」
引き付く笑いのフェンリル姉さんにエルハイミねーちゃんたちは詰め寄る。
「ふむ、エスハイミお母様の取り分はそのままですね?」
「エムハイミも私のなんでしょうね?」
「ええ、それはもちろん今まで通りですわ。そしてこの本体である私がティアナをいただきますわ!!」
思案顔だったコクさんは確認するかのように聞く。
シェルさんも同じく一番重要な事を聞く。
それに対してエルハイミねーちゃんはびっと指を立ててはっきりと答える。
「まあ、私たちは連結さえしてもらえればティアナと本体がした事は分かりますからね、これなら我慢できますわ」
「ええ、むしろ私はシェルともいそしまなければならないのでそちらも忙しいですしね」
そう言うと珍しくコクさんもシェルさんも顔を赤らめる。
そいて後ろでエマ―ジェリアさんもきゃーきゃーわめく。
しかしミーニャは冷静にエルハイミねーちゃんに聞く。
「そうするとフェンリルさんは残るって事ですか、お姉さま?」
ティアナ姫の魂を分けて取り出したら姉さんはどうなるのだろう?
みんなも同じ気持ちの様だ。
「そ、そうですわ、女神様。フェンリルさんはどうなるのですか?」
「うーん、ティアナ姫が復活したら俺はどっちに仕えればいいんだ?」
ぴこぴこぉ~?
その疑問にエルハイミねーちゃんはフェンリル姉さんを見て答える。
「フェンリルである魂の部分は今まで通りにフェンリルの肉体に残しますわ。ただ、ティアナだった頃の力は使えなくなってしまいますわ」
「私が私でいられるって事よね? ティアナ姫の記憶が有ってもティアナ姫としての力が使えないってだけよね?」
フェンリル姉さんがそう言うとエルハイミねーちゃんは頷く。
「ええ、あなたがフェンリルとして生きて来たものは何も変わりませんわ。ただ、ティアナだった部分を抜き出すだけ。今までと何も変わりませんわ」
「……それは私はあなたを愛さなくてもいいって事?」
フェンリル姉さんは言葉を選んでいたかのようだったけど、一番重要な事を聞く。
するとエルハイミねーちゃんは少し悲しそうな顔をしてから頷く。
「ええ、あなたはフェンリルとして残りの人生を全うしてくださいですわ。転生したティアナにそう言われるのは正直ショックですが、これから復活するティアナはあの頃のティアナそのもの。私が欲しがっていたティアナそのものなのですから……」
そう言いながら最後ににっこりと笑うエルハイミねーちゃん。
その顔を見てフェンリル姉さんは目をそらし小声で言う。
「ごめん…… そしてありがとう」
エルハイミねーちゃんは無言でうなずくのだった。
* * *
「それでは始めますわ!」
エルハイミねーちゃんはそう言って手をかざす。
するとエルハイミねーちゃんの目の前に光が集まって徐々に人の姿になって行く。
「ほぉ、凄いね。これって僕たち姉妹以上の肉体じゃないか! いいなぁ、これならいろいろできそうだな」
アガシタ様はエルハイミねーちゃんの目の前で出来あがって行く真っ赤な髪の毛の姉さんよりも大きな胸の女の人を見ながらうらやましそうにする。
「これがティアナ姫? 自分で自分を見るのってなんか変な気持ちね…… って、エルハイミ! なんか胸の大きさがあの頃の私より大きくない!?」
「ぎくっ! き、気のせいですわ、決して私の好みが入っているわけではありませんわ……」
エルハイミねーちゃんはフェンリル姉さんから視線を外す。
なんで女の人ってみんな胸の大きい方が良いのだろうか?
窒息しそうな危険な物なのに。
「これがティアナ姫ですの……なんかうらやましいですわ!」
「はぁ、ティアナさん復活かぁ。まあ、あたしは今はソウマ君さえいればいいんだけどね」
「これが言い伝えられていたティアナ姫か!? うーん、美少年なら身も心も捧げたのになぁ」
『凄い、流石女神様。あの魔力少しもらえないかしら?』
『女神様も美味しそうですよねぇ~。じゅるり』
「ほぉ、流石は育乳の女神様。はっ! そうであった!! 女神様、我が娘の胸もどうか豊満にしてやってください!! 儂も早く孫の顔みたいです!!」
ぴっこぴっこぉ~♪
みんなの見守る中その女性は宙に浮いたまま静かに眠っている様だった。
「出来ましたわ! 完璧なティアナ!! 当社比十パーセントマシもまさしく私好みですわ!!」
「うー、ああいった手前我慢はしますがやはりうらやましいですわね」
「流石に目の前にティアナが復活となるとですわね……」
エルハイミねーちゃんは歓喜するけど残りのエスハイミねーちゃんとエムハイミねーちゃんはなんかぶつぶつ言っている。
「駄目ですよ、お母様は私の取り分なんですから。二人目を頑張っていただかないと」
「そうよ、エムハイミは私のモノよ! コクに先越されちゃったけど、私だってエムハイミの子供欲しいんだから!!」
「シェルさんに子供できたら異母姉妹ですね? 私とうとうお姉ちゃんですね!?」
そんなエスハイミねーちゃんとエムハイミねーちゃんにコクさんとシェルさんが引っ付く。
なんかタルメシアナちゃんはふんっと鼻息荒く偉そうにする。
うーん、姉って何時も威張ってるもんね。
「さぁ、いよいよティアナの復活ですわ! フェンリルこちらにですわ!!」
エルハイミねーちゃんはそう言ってフェンリル姉さんを呼び寄せるのだった。
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