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第九章
第216話9-9それはたった一つの希望
しおりを挟む目の前で鬼神が爆発して飛散する。
そして強い光を放つ。
「くっ! そんなっ!!」
しかしその光は姉さんを捕まえていたエルハイミねーちゃんにも届き、その動きを一瞬止める。
「ぐぅうううぅぅぅ……この……ひかりぃ……」
「ショーゴっ!!」
宙で捕まっていた姉さんも思わず鬼神の名を叫ぶ。
僕は同調をして「操魔剣」を使いエルハイミねーちゃんの左側こめかみの上にある最後の角に向かって駆けだす。
「ガレント流剣技五の型、雷光!!」
腰にナイフを溜め、一気に飛び込みながら抜刀の要領でその刃をエルハイミねーちゃんの最後の角に向けて斬り込む。
鬼神がくれたこのチャンス、逃すわけにはいかない!
ガっ!!
「くぅぉおおおおおおおぉぉぉぉっ!!!!」
振り抜いたその刃はエルハイミねーちゃんの角に届いた。
そして僕は魂をそのナイフに込めてその角を切り落とそうとする。
「ソウマ君!」
「ソウマ君、ですわっ!!」
「ソウマっ!」
「ソウマ!!」
「お兄ちゃん!」
「ソウマ殿!」
『ソウマ君!』
『ソウマさん!』
ぴこっ!!
みんなが僕の名を呼ぶ。
そして姉さんも。
「ソウマぁっ!!」
「フェンリル姉さんっ!!」
姉さんの名を叫びながら僕は力を込める。
びきっ!
びきびきっ!!
「てぃあなぁああぁぁぁぁぁ」
エルハイミねーちゃんが姉さんを見ながら叫ぶ。
そして左の手も姉さんを掴もうと虚空をふらつかせる。
「エルハイミねーちゃん、正気に戻ってくれぇえええぇぇぇっ!!」
角にひびが入るも僕の持つナイフにも同じくひびが入る。
いや、こちらの方がひびが入るのが早い?
「くっ、このままじゃ!!」
―― 慌てるな、お前の力はそんなものじゃない。お前の思いは伊達じゃないんだろう? 前を見ろ。お前の希望はそんなもので終わりじゃない!! ――
ふっと誰かの手が僕の手に添えられる。
そして僕に手に力が宿る。
「そうだ、諦められない! みんながここまでしてくれたんだ!! 僕は、僕はっ!!」
―― 受け取れ、そして主を頼む ――
それは僕の手のひらに熱く灯る。
使命を果たせと真っ赤に燃える!!
「エルハイミねーちゃん! 【爆炎拳】っ!!」
その技は鬼神が使っていた技。
何故僕にも使えたか分からないけどその魔力がインパクトとなってナイフを伝わり、そしてひびの入ったエルハイミねーちゃんの角に届く。
びきっ、びきびきびきっ!
ぱきゃぁーんッ!!!!
「くわぁあああああああぁぁぁぁぁっ!!」
とうとうエルハイミねーちゃんの最後の角が割れて切り落とされる。
するとエルハイミねーちゃんはフェンリル姉さんを放し頭を抱えて悶絶する。
どっ。
床に落とされた姉さんに僕は慌てて駆け寄る。
「姉さんっ!!」
「ソウマっ! ありがとう!!」
ムギュっ!
「ぶっ!」
駆け寄る僕を姉さんは抱きしめるのだけど、相変わらず大きな胸に顔が埋まる。
もがいているのにがっしりと抱きしめられ身動きが取れない。
「てぃあなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ばたっ!
しかし後ろでエルハイミねーちゃんは最後にそれだけ言って倒れてしまった様だ。
と、同時にフェンリル姉さんの僕を抱きしめる腕の力も緩む。
「エ、エルハイミ? エルハイミぃっ!!」
そして姉さんの叫び声が聞こえたのだった。
* * *
エルハイミねーちゃんは左右のこめかみの上の角を折られ元の姿に戻った。
ただ、こめかみの上のトゲの様な癖っ毛はもの凄く小さくなっているけどちゃんと健在している。
「元の姿に戻ったようだけど、エルハイミねーちゃん大丈夫なのかな?」
姉さんはエルハイミねーちゃんを介抱している。
なんだかんだ言ってエルハイミねーちゃんの事も心配するんだな、姉さん。
「何とか間に合いましたわね」
「ほんと、今は意識が戻っていませんがじきに目が覚めるでしょうですわ」
エスハイミねーちゃんとエムハイミねーちゃんもシェルさんとコクさんに支えられながらやって来た。
「女神様どうなったのですの?」
「お姉さまの事だから大丈夫だとは思うけど……」
エマ―ジェリアさんもミーニャもやって来る。
「ソウマお兄ちゃんは大丈夫なんですか? 私も結構と魂を持って行かれちゃったけど」
タルメシアナちゃんがちょこちょことやって来てぎゅっと僕の手を握る。
何故かエマージェリアさんとミーニャが騒ぐ。
「どっちにしろ、これで女神様がまたお怒りになりゃぁ、お手上げだがな」
「然り、しかし今は落ち着かれたご様子」
リュードさんやフォトマス大司祭様もやって来る。
『あー、もうやだ。あたしら小物がこんなおっかない所にいるなんて!』
『とは言え、少しでもミーニャ様のお役に立ちたいものですが。あ、ご褒美は足舐めさせてもらえれば……』
ぴこぴこぉ~
アイミの後ろに隠れながらリリスさんはやって来て、ソーシャさんはミーニャの周りをうろつく。
みんなエルハイミねーちゃんの周りに集まって来た。
「う、うぅぅん……」
そしてみんなが見守る中エルハイミねーちゃんは気が付き始めるのだった。
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