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第九章

第215話9-8可能性の輝き

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 「少しでも足止めするわよエルハイミをっ!!!!」


 シェルさんはそう言ってもう一度精霊王を呼び出しエルハイミねーちゃんを束縛しようとする。
 しかしそれはあっさりと引き裂かれる。


 「お母様!」


 ずぼぼぼぼぼぼぉっ!


 コクさんの吐き出す真っ黒な炎もエルハイミねーちゃんを包んでもすぐにかき消される。


 「止まってぇっ!! 【赤光土石流拳】!!」


 セキさんが打ち込む土石流の様な怒涛の拳が当たっているのにびくともしない。




 「エルハイミ! 私はこっちよ!!」


 姉さんがそう叫び相手の左横側に走るとエルハイミねーちゃんはそちらに顔を向ける。


 「チャンス! お姉さまごめん!!」

 ミーニャ空間転移して横を向いたエルハイミねーちゃんの右のこめかみの上にある角にそのナイフを振り下ろす。


 「くうぅっ! 魂が吸われるぅっ!!」


 がきんっ!

 
 大きな音を立ててそのナイフはエルハイミねーちゃんのその角を一本切り落とす。


 ぱきゃっ!

 パキーンっ!!


 しかし切り落とすと同時にミーニャの持っていたナイフも粉々に割れてしまった。


 「次行きますわっ!!」

 それでもつかさずエマ―ジェリアさんが果敢に飛び込み次の角にナイフを挿し込む。


 がっ!


 「女神様、正気に戻ってくださいですわぁっ!!」


 がくんっ!


 どうやら魂を吸われエマ―ジェリアさんの体から力が抜ける。
 しかし挿し込んだナイフだけはしっかりと押し込んでとうとう二本目の角を切り落とす。


 ぱきゃっ!!


 パキーンっ!


 そしてまたまたナイフも粉々になってしまう。
 しかしエルハイミねーちゃんは気にした様子も無くフェンリル姉さんを視線で追う。


 「よしっ、これで二本! あと四本ね!! って、きゃぁっ!!」

 走りながらそう言っていたフェンリル姉さんにエルハイミねーちゃんが向けた手から真っ黒な霧が飛び出し姉さんを包む。


 「ちっくしょうっ! 『操魔剣』! 三十六式が一つ、チャリオットっ!!」


 霧に包まれそうになった瞬間、リュードさんがそこへ飛び込み体当たりして姉さんをその霧から押し出す。
 代わりにリュードさんはその霧に掴まれ大きく持ち上げられたかと思うと横に投げられた!


 ぶんっ!

 どかっ!!


 「ぐはっ!!」


 床にたたきつけられたリュードさんは吐血しながら転がる。


 「リュードっ!」


 弾き飛ばされた姉さんはそれでも走るのをやめずエルハイミねーちゃんの周りを動き回る。
 それにつられてエルハイミねーちゃんはまたそちらを見る。



 「いまですっ!」


 ひょいっ!


 いつの間にかエルハイミねーちゃんに近づいていたタルメシアナちゃんは右側の残り一本の角に下から飛び上がるかのように斬りこむ。

 誰もそれに気づかないくらいすっと移動していたのでエルハイミねーちゃんも全く反応しないままそのナイフは右側の最後の角に吸い込まれていく。


 がきんっ!


 「硬いです! でもっ!!」


 ぐんっ!


 タルメシアナちゃんはそれでも力を、魂を込めてエルハイミねーちゃんのその角を切り落とす!!


 ぱきゃっ!

 パキンっ!


 「うわっきゃっ!」


 タルメシアナちゃんはエルハイミねーちゃんの角を切り落とすと同時に刃の折れたナイフを引き大きく飛びさがる。


 ぐらっ……


 右側の全部の角を切り落とされたエルハイミねーちゃんは右側全部が揺らつく。

 しかしあげた左手からはまだまだあの霧を触手の様に伸ばしフェンリル姉さんを捕まえようとする。



 「てぃあなぁああぁぁぁぁぁ」



 「残り三本! ショーゴ!!」

 「おうっ!」


 姉さんはとうとうぐるっと一周まわってこちらに来る。
 そして鬼神の名を呼び今度は一気にエルハイミねーちゃんに向かっていく。


 「ガレント流剣技五の型、雷光!!」


 どんっ!


 上半身を無理やりにでもぐにっと一回転しながらもエルハイミねーちゃんはフェンリル姉さんを捕まえようと左腕を振り回す。

 しかし姉さんはガレント流剣技五の型でその場から姿を消し雷のような速さで抜刀をする。


 「主よ目を覚ませぇっ!!」


 そして鬼神もいつの間にやらエルハイミねーちゃんの背後にまわっていて左側の下からナイフで左側のこめかみの一番下側の角にナイフを斬り込む。


 がきん、がきんっ!!


 姉さんもエルハイミねーちゃんの上に現れて左側一番上の角にナイフを斬り込む!
 上下から一気に切り込みを入れられたエルハイミねーちゃんの角は一気に切り落とされた!



 ぱきゃんっ、ぱっきゃーんっ!!
 



 がしっ!


 「うわあっ!」
  
 
 しかし、次の瞬間右手で宙を飛び去ろうとしたフェンリル姉さんの脚をエルハイミねーちゃんは掴む。 


 「つぅかぁまえぇぇぇたぁあああぁぁぁぁ」


 心底歓喜するかのようにエルハイミねーちゃんは亡者の様な声でそう言う。



 「主よ、やめろっ!!」

 しかしその掴んだ腕に鬼神はいつの間にか修復済みのセブンソードを次々に叩き込む。


 がん、ががん、がっ!
 がつんっ、がっ、ががっがっ!

 がきーんっ!


 しかしそれらはエルハイミねーちゃんの腕に傷一つ付ける事無く全て折れてしまう。


 「主ぃっ!!」

 「じゃぁあああぁぁまぁぁあああぁぁぁっ!」


 そう言ってエルハイミねーちゃんは左手を鬼神に向ける。



 「ソウマ! その可能性を示せ、ソウマぁっ!!」



 鬼神がそう叫んだその瞬間、エルハイミねーちゃんの左手から魔力の光が放たれる。
 それは鬼神の下半身を一瞬で蒸発させ、そして鬼神はその場でばっと光って爆発するかのように輝き飛散する。


 「そんなっ!」



 僕は最後の一本を切り落とす為に力を溜めていたけどその輝きを見て思わず叫んでしまうのだった。
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