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第九章

第213話9-6神殺しの剣

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 「はぁっ! ドラゴン百裂掌!!」


 どががががががががぁっ!


 セキさんの放つドラゴン百裂掌が【煉獄相竜牙】の炎をまとい凄まじい勢いでエルハイミねーちゃんを襲う。
 しかし見えない壁に全て邪魔され全く届いていない。


 「くっ、流石は本体ですわ! 意識していないのに防御が働いてますわ!! みんな一点集中してくださいですわ、エスハイミ、私たちでエルハイミの精神フィールドをこじ開けますわよ!!」

 「分かりましたわ!」


 言いながらエスハイミねーちゃんとエムハイミねーちゃんは両の手を差し出し見えないはずの壁に手の指を挿し込み左右に開く。
 それは波紋のように真ん中から少しずつ開いて行きその先のエルハイミねーちゃんがはっきりと見える。


 「「ぬぐぐぐぐぅ、今ですわ!!」」


 「【攻撃力増加魔法】!」

 「空間断!」

 「【赤光土石流拳】!」

 「精霊王たちよ!」

 「暗黒業火!」

 「どっせいぇいぃぃぃぃっ!」

 「寿限無寿限無五合の擦り切れぇ~」
 
 
 エスハイミねーちゃんとエムハイミねーちゃんに言われエマ―ジェリアさんが強化魔法をみんなにかけ、ミーニャが空間を断絶する技を、セキさんがあの土石流のような拳を、シェルさんが精霊魔法を使い、そしてコクさんは真っ黒な炎を吐き出す。

 リュードさんも魔力を剣に載せて飛ばし、フォトマス大司祭様も何かの呪文を唱え始める。


 『うわっ、あんなの喰らったらひとたまりも無いわよ!』

 『ソウマさん、下がって』

 「あーっ! ソーシャさんソウマお兄ちゃんは私に任せてください!」


 正直腰が抜けて動けない僕をリリスさんやソーシャさん、そしてタルメシアナちゃんが引っ張て下げてくれる。


 「駄目だわ! 二重精神フィールドになっているわ!!」


 しかし姉さんはその様子を見て叫ぶ。



 カッ!


 どがぁああああぁぁぁぁあんッ!!


 エスハイミねーちゃんとエムハイミねーちゃんが広げたその奥にみんなの攻撃が飛んで行くけどエルハイミねーちゃんの目の前でやっぱり見えない壁で防がれてしまいその場で大爆発を起こす。


 ぴこっ!

 「うみゃぁーっ!」

 『のひゃぁーっ!』

 『ソウマさん、危ない!』


 「ぶっ!」


 アイミがすぐに盾になってくれる。
 爆発でタルメシアナちゃんやリリスさんが変な悲鳴を上げ、ソーシャさんは僕を抱きかかえその爆風を遮ってくれるけど、胸で顔が埋まるから苦しい。


 「あっ、ソウマ! それお姉ちゃんの役目なにの!! もう、ソウマのいけずぅっ!」

 ばっ!
 むぎゅ~ぅっ!

 「むぐっ」

 「フェンリル、遊んでいる場合じゃないぞ。来るぞ!!」


 ソーシャさんから僕を奪い返しながら姉さんはソーシャさんより大きい胸に僕の顔を引き寄せる。
 しかし鬼神に警告されすぐに僕から離れなぎなたソードを構える。


 「主の目的はフェンリル、お前とソウマだ。ソウマを殺してお前を奪うつもりだろうからお前はまだ前に出るな」

 「でも、みんなが!!」


 言われて見ると、なんといつの間にかでみんなが床にはいつくばっていた。


 「ま、まさかこれほどとは…… くっ、お、お姉さま」

 「だ、駄目ですわ、あれだけの魔力を込めた防壁が紙を破るかのようにですわ……」

 「くぅうううぅぅ、やられたぁ、か、体が…… う、動けない! エ、エルハイミ母さんに一撃も入れられないぃ……」

 「エ、エルハイミぃ…… くぅううぅぅぅ、しまった、魂の隷属が!!」

 「お、お母様、くぅ、わ、私にも魂の隷属が……」


 「おいおい、全く効いてないのかよ? フォトマス大司祭、早く呪文完成させろよ!!」


 「ブリキにタヌキにせんたっき、やって来い来い大結界ぃっ!!」


 どんっ!


 「こ、これはですわ!」

 「神聖魔法、大結界ですわ!! 神格が強ければ強いほどそれに対して結界が強固になり、外部からの攻撃が一切通じない代わりに自身も攻撃が出来なくなる究極の結界! フォトマス大司祭、グッジョブですわ! これで時間が稼げますわ!!」


 エスハイミねーちゃんもエムハイミねーちゃんもそう言いながらエルハイミねーちゃんを押さえていたようだけど一気にみんなを回収して回復させる。

 しかしいくら回復してもこれではエルハイミねーちゃんを止められない。


 「シェルとコクは魂の隷属を一旦私、エスハイミとエムハイミに従属させますわ。これで動けるはずですが、私とエムハイミもエルハイミからの干渉で魂汚染が始まっていますわ。このままでは私たちもパターンレッドになってしまいエルハイミの使徒となってしまいますわ」

 「となれば、危険ですがアレを使うしかありませんわ。神殺しの剣を!」


 そう言いながらエスハイミねーちゃんとエムハイミねーちゃんは二人同時に両の手を合わせる。


 「時間が必要ですわ、みんなエルハイミの攻撃を六十秒、いえ、五十秒で良いから耐えてくださいですわ!!」

 「エムハイミ、行きますわよ!!」


 そう言ってエスハイミねーちゃんとエムハイミねーちゃんは合わせた手で向き合いながら輪を作り体を光らせる。
 するとその輪が輝き始める。


 「何をするかは分からないけど、こうなったら全力でエスハイミとエムハイミを守るわよ! もう、エルハイミったらこれが終わったらただじゃおかないからね!」

 「ふう、流石お母様と言いたい所ですが、エスハイミお母様たちが何かをするのですね? ならば全力で守ります!」


 シェルさんもコクさんもどうやら動けるようになったみたいだけど、あのエルハイミねーちゃんの攻撃を五十秒も耐えられるのか?


 「やるっきゃないわね、ミーニャはエルハイミ母さんの攻撃を何とか空間転移させて可能な限り逸らして! エマは防壁を張りまくって! シェル、コク、ここはあたしたち三人が前に出る。ショーゴは神殺しの剣でエルハイミ母さんの角を狙って! フェンリル!!」


 セキさんはみんなに指示を出しながら最後にちらっと姉さんを見て言う。


 「あんたはソウマを守りなさい」

 「セキ……」


 セキさんにそう言われ姉さんは驚くも頷く。


 「も、もう大結界が持ちませんだな!!」

 「おいおい、フォトマス大司祭もうちっと頑張ってくれよ!」

 「残り四十秒です、ソウマお兄ちゃん!!」


 ぱきーんっ!
 

 
 「てぃぃぃあぁぁぁなぁぁぁぁああああああああぁぁぁっ!」



 大結界を破ってエルハイミねーちゃんが前に出てくる。
 そして地獄の亡者の様に姉さんを呼ぶ。



 「さあ、来てもらいますわよ、アガシタ様ぁ!」

 「その力今こそ使わせていただきますわぁ!!」




 光り輝いていたエスハイミねーちゃんとエムハイミねーちゃんがそろってそう言うと手で作っていた輪がまばゆく輝くのだった。
 
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