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第八章

第207話8-31戦いの行く末

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 「アイミっ!【特殊技巧装着】!!」


 僕はアイミの中に入ってその言葉を叫ぶ。

 ぴこっ!

 どうやらアイミは僕のそれを受けてくれて背中を閉める。
 途端に僕の周りに緑色のキラキラした粒子がまとわりつき始める。

 それはその色と濃さをどんどんと増して行き僕の体の周りに装甲を成型する。
 そしてその瞬間、僕にはアイミの声が聞こえてくる。


 『ソウマ、私の力を貸すの! ソウマはショーゴに勝って! ティアナを連れ戻して!!』

 「アイミ、ありがとう。僕、やるよ。ソウマ、行きまーすっ!!」


 ばくんっ!

 
 頭上の部分が開いて僕は赤の騎士としてその鎧を身にまといアイミから飛び出す。

 そして驚く。
 体中に力があふれている。
 鬼神に傷つけられた肩や腕だって痛みが消えている。

 そして頭の中にイメージが湧く。
 腰の後ろにある握り手を引き出し振ると、シャコーン! と言う音がして長槍に伸びる。
 その槍を振り回してから切っ先を鬼神に向ける。


 ちゃきっ!

 
 「僕は姉さんを取り戻さなければならないんだ! 行きます!!」

 「【特殊技巧装着】をしたとはな! ならばこちらも本気で行くぞ、ソウマ!!」


 言いながら床に落ちていたなぎなたソードを拾い上げ鬼神は僕に飛び掛かって来る。

 しかし今度はその動きが見える!

 僕は槍を構え鬼神目掛けそれを突き出す。
 鬼神は勿論それをなぎなたソードで弾くけど僕はその槍をすぐに分断させる。
 槍は九つに別れ、間に鎖が有るのでまるで蛇の様に自由に動き鬼神のなぎなたソードに絡み付く。


 「こんな機構が有ったとはな! 初めて見たぞ!!」


 鬼神は言いながら簡単になぎなたソードから手を離しプロテクターに仕込まれているショートソードを二本同時に引き抜きそのまま僕に切りつける。
 しかし僕だってなぎなたソードに絡み付いた槍を引き戻し回転させながら鬼神に叩き込む。

 鬼神はそれもショートソードで弾きもう一歩踏み込んでくる。

 ショートレンジでは長い槍は不利だ。
 そう思った途端、僕の頭に槍を二つに分けるイメージが浮かぶ。


 「我が体は剣で出来ている!」

 きんっ!


 僕はそう言いながら槍を引き戻し二つに割ると、そこから槍が両手持ちの剣に変わった!


 「ただの一度も引かずただの一度も敗走をしない。我が体は剣で出来ている!!」

 
 まるで呪文のように唱えながら僕は魔力を高める。
 そして鬼神の両手持ちのショートソードの攻撃を同じく二つに分かれた両手持ちの剣で弾き返す。


 「流石【特殊技巧装着】だな、しかしソウマよ、経験が浅い!」


 両手を左右に振りながら鬼神は僕の両手持ちの剣も左右に開かせる。
 そして自分の持つショートソードを手放し素早く両肩に仕込まれている別のショートソードを引き抜く!


 「これで胴体がガラ空きだ!!」

 「まだまだぁっ! 【最大旋風魔光破】マキシムトルネードぉ!!」


 しかし僕は胸の装甲を開かず胸の中にある四つの魔結晶石核からなる魔力の魔光波を発射させる。


 「何っ!?」


 鬼神はそれでもとっさにショートソードを顔の前でクロスさせ胸の装甲を破壊しながら吐き出す竜巻の様な魔力の渦を受ける。


 どがぁああああぁぁぁぁぁぁんッ!!

  
 流石に装甲ごと吹き飛ばしたし、ちゃんと四つの魔結晶石核を展開していないから威力がガタ落ちだけど【最大疾風魔光破】を受けた事により鬼神の上半身は光に包まれながら大きく押されて後ろにずり下がる。


 「ぐぉおおおおぉぉぉぉぉぅ!」


 それでも吹き飛ばされる事に耐えているのは凄い。
 しかしそれも限界が来た様でクロスさせている鬼神のショートソードがひび割れ弾け飛ぶ。


 ばきーんっ!


 「ぐおぉおおおおおおおおぉぉぉぉっ!!」


 どぉおおおおぉぉぉんっ!


 ショートソードが弾け吹き飛ばされ、鬼神自身も向こうの壁まで飛ばされる。
 そして大きな音を立てながらその壁にのめり込み粉塵をまき散らす。


 「はぁはぁはぁ、流石に魔力を沢山持って行かれちゃった。姉さんよくこんな大技撃って平気だな……」

 「ソウマ君! まだですわ!!」

 あれだけの事をしたのだからもう鬼神も立ち上がれないだろうと思ってたら、もうもうと立ち込める粉塵の中で壁際に手をつき体中のプロテクターの装甲にひび割れをした鬼神がそこから出て来た。


 「体が有るから…… 出来るのだ…… ソウマぁっ!!」


 そう叫びながら鬼神はまた何処からか二本のショートソードを引っ張り出し僕に飛び込んでくる。
 セブンソードは伊達じゃないって事か!

 僕は両手の剣を構えガレント流剣技最大最強の技を放つ。


 「ガレント流剣技九の型、ダブル九頭閃光!!」

 
 カッ!


 本来なら僕にはできない最終奥義。
 ガレント流剣技九の型、九頭閃光は両の剣から十八の光が放たれ鬼神に向かう。


 「くぅぉおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!」


 きんきんきんっ、きんッ!!


 だけどなんと鬼神はその十八の光り全てをセブンソードである残りの二本で全て弾き飛ばした!?


 パキーンっ!


 最後の光を弾いた瞬間、鬼神の持ってた残りの二本のショートソードもはじけて無くなった。


 「ソウマお兄ちゃん、チャンスです!!」

 タルメシアナちゃんの言う通り、今の鬼神はもう武器を持っていない。
 僕は手に持つ剣を振り上げ鬼神に渾身の一撃を叩き込む。


 「これが若さか…… ソウマ、まだまだ甘いぞ!!」


 そう言って僕の一撃を避けて左手の手のひらを僕のお腹に当てる。
 それは何の打撃も無く支えるかのように、すっと入って来た。


 「手加減はする、【爆炎拳】!!」

 「なっ!?」


 カッ!
  
 どがぁんっ!!
 

 その瞬間、鬼神の手のひらが赤く光ったと思ったら爆発でもするかのように大きな衝撃が僕を襲う。
 僕はその衝撃で大きくその場から吹き飛ばされ壁の方へ飛んで行く。


 どがぁんッ!!


 何かに背中がぶつかりそれを壊すようにさらに吹き飛ばされる。
 吹き飛ばされながら僕の意識が薄れていく。



 そして最後に遠くでエマ―ジェリアさんとタルメシアナちゃんの悲鳴が聞こえたのだった。 
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