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第八章

第195話8-19シェル

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 「のっひょぉおおぉわゎぁぁぁぁぁぁぁあああああぁっ!!」


 タルメシアナちゃんが変な叫び声をあげている。
 僕たちは揺れ動き落下している「鋼の翼」にしがみついているけど、これじゃぁ本当に不時着できるかどうかわからない。


 「ちっ、このままじゃ! 仕方ない、アイミ手伝って!!」


 ミーニャはそう叫び両の手を前に差し出す。
 そしてアイミに叫ぶ。


 「空間の空気を少しでも圧縮してこの船の下に出現させる! アイミは何とか天界に向かえるように舵を取って!」

 ぴこぴこっ!


 すぐにアイミは返事して緑色の光をまき散らし「鋼の翼」の外へ飛び出す。
 そしてすぐに船体が揺れ始める。


 ごんっ!
 ごごんッ!!


 何度か船底が圧縮した空気にぶつけられ落下速度が鈍る。
 そしてその都度船が有らぬ方向へと動くのをアイミが修正をかける。


 ぐぐっ、ぐッ!!

 
 「くううぅ、流石に重いわね! でもこれでだいぶ落下速度が落ちた!」


 「『鋼の翼』、魔力伝達炉再開まであとどれくらいですか!?」

 『イエス、マスター。再稼働まであと十四秒』

 
 揺れ動く中ミーニャは何度もこの「鋼の翼」の下に圧縮した空気を転移させ落下速度を落としているけどそれでも再稼働までにあと十四秒もある。
 アイミも頑張って船を天界に向けてくれているけどその都度揺れ動くこの「鋼の翼」を修正するのは一苦労だ。


 「おいっ! 天界が間近に見えて来たぞ!!」

 リュードさんのその言葉に窓の外を見ると大きな島のような、それでいてその下半分は石か何か硬いもので半球に作られたモノが見えた。


 「天空の城は本当に有ったのですわね!」


 「エマ―ジェリアさん、危ない!」

 窓の外を見てそう感動するエマ―ジェリアさんだけど、船の揺れがさらに激しくなって足元がおぼつか無くなり、壁に向かって体が浮く。


 このままじゃ壁に激突する。


 僕はそう思った瞬間身体が勝手に動いて壁とエマ―ジェリアさんの間に入っていた。


 ぐぐぐっ
 ふらっ! 


 「くっ!」


 どんっ!!


 壁に僕は背中からぶつかりその僕に宙に浮いたエマージェリアさんが飛んでくる。
 思わずそれを抱きしめ押さえるけど、僕はもう一度壁にエマ―ジェリアさんの重量と一緒に叩き付けられる。


 「ソ、ソウマ君! ごめんなさいです……わぁ?」


 ぷにっ!


 なんか顔に少し柔らかいものが当たっている。
 それにすごくいい匂いがする。
 僕はそれに気づき目を見開くと顔の前に何エマ―ジェリアさんの胸が押し付けられていた。
 姉さんのそれと違いかなり小さな胸だけどそれでもわずかに弾力が有る。


 「そ、そそそそ、ソウマ君! だ、駄目ですわ! 私たちにはまだ早いですわぁっ!」


 ぱちーん!!


 「ぐはっ!」

 壁とエマ―ジェリアさんにはさまれていた僕はエマ―ジェリアさんの平手打ちで今度はミーニャの方に飛んで行く。
 そして魔法で圧縮空気を転移させているミーニャのお尻に顔から突っ込んでいく!


 どんっ!
 ふみんっ!


 「キャぁッ!? そ、ソウマ君!?」

 「むぐぐぐぐぐぅ、ぷはぁっ! ご、御免ミーニャ!」

 完全にミーニャのお尻に顔が挟まれもがきながらそこから抜け出す。
 しかしそれが悪かった。
 僕のせいでミーニャは圧縮空気を空間転移をするのが止まってしまい、船が減速される事無くとうとう天界の壁にぶつかる。


 『不時着します。衝撃吸収袋の展開をします』


 「鋼の翼」はそう言ってそこかかしこで風船のような空気袋を膨らませる。

 
 ばふんっ! 


 「くぅっ! ぶつかるぞ!!」

 最後にリュードさんの警告を聞きながら僕たちの乗る「鋼の翼」は大きな音を立てて天界へと不時着をした。


 どッかーん!!


 「「うわぁーっ!!!!」」

 「「キャーっ!!」」

 「はにゃぁああああぁぁぁぁっ!!」

 『うわぁっ!』

 『あらあらあら!?』

 「ふんっ!」


 みんなの悲鳴が上がる中大きな衝撃が来て膨らんだ空気袋に叩き付けられみんなはそれに埋もれた。

 
 『無事不時着に成功。機関再始動まで後五秒。損害状況の報告をします。左舷船底不時着により三十パーセント損傷。同左舷飛翔翼破損。飛翔石にダメージが見受けられます。飛行効率の三十パーセントが損減しました』


 次々と状況を伝えて来る「鋼の翼」だったけど落ち着いた頃に膨らんでいた空気袋がだんだん縮まり、周りが見える湯になって来た。


 って……


 「んはぁ、駄目ですわぁソウマ君、そんな所に顔を突っ込んでは……//////」

 「ぅううん、もう、ソウマ君大胆~、そこはあたしの大事なところよぉ~♡」

 『はぁはぁ、若い男ぉ、ソウマ君美味しそう。もう我慢できないよぉ~』

 「ううぅ、お兄ちゃんズボンの真ん中になんかあります。顔ぶつけちゃった」

 『あらあらあら、私は女の子の方が良いのですが、私の胸を枕にするなんて、ソウマさんもやっぱり男の子ですね?』


 空気袋がしぼんでなくなると僕の回りにはエマ―ジェリアさんやミーニャ、リリスさんにタルメシアナちゃん、そしてこの感触はソーシャさんの胸かな?
 頭の後ろで姉さん程ではないけどぽよんぽよんと柔らかいものが当たる。
 みんな僕に絡まっていてもみくちゃになっている。


 「ふんっ! リュード殿そろそろ退いてもらえますかの?」

 「ぐはぁっ! いくら男好きとは言え、俺の好みじゃねぇっ!!」


 向こうでリュードさんとフォトマス大司祭様も同じように絡まっている。
 僕は何とか絡まった手足を退けてエマ―ジェリアさんやミーニャ、リリスさんにタルメシアナちゃん、そしてソーシャさんから離れる。

 「皆さん大丈夫ですか?」


 「そ、ソウマ君って何て大胆ですの!? こ、婚前にそんなに私が欲しいのですの//////!?」

 「もう、ソウマ君たらあたしは何時でも良いのよ? って、リリスはあっちってなさい!」

 『そんな、ミーニャ様! 少しで良いですからおすそ分けしてくださいよぉ~』

 「お兄ちゃん、やっぱり抱っこしてもらう方がいいです、ズボンの真ん中なんか入っていて邪魔です」

 『あら、ソウマさんもう良いの? たまには可愛い男の子ならいいかなと思ってましたのに』


 どうやら大丈夫みたいだ。
 少し体が痛むけど、どうにか天界にはたどり着けたようだった。

 しかしそんな事を思っていたもつかの間、竜の咆哮が聞こえてくる。


 『なんという事だ! 天界に侵入者を許してしまった!! かくなるうえはその『鋼の翼』事消滅させてやる!!』


 るぅぎゃぁああああああぁぁぁぁぁぁっ!!


 怒り狂った竜の咆哮が聞こえてくる。


 『ソウマ、エマっ!! くそう、ここからじゃ炎が吐けない!! みんな逃げてぇっ!!』


 どうやらサンダードラゴンが天界に着いた僕たちを攻撃しようとしている様だ。
 その後をセキさんも追っている様だけど、炎を吐くとその放出軸に僕たちも入ってしまい攻撃が出来ない様だ。

 しかしこのままではサンダードラゴンの雷がやって来る!!


 『死ねい、この不届き者どもめっ!!』


 カッ!!


 サンダードラゴンの吐き出した雷が僕たちを襲う。
 と、思ったら聞き慣れた声がして来た。


 「なんなのよ! せっかく良い所だったのに!!」

 「どうなったのですの、シェル? 凄い音と衝撃でしたわ??」


 窓越しに見える天界のそこには「鋼鉄の翼」が突っ込んだせいで半壊した建物が有り、そこから裸のエルフと金髪碧眼の女性の姿がチラ見できる。

 と、そこへもあの雷が降り注がれる!


 ガラガラどかーん!!


 「まったく、騒がしいですわよサンダードラゴン! それにいきなり雷を吐き出したら危ないですわよ?」


 バチバチバチ!!


 その吐き出された雷は僕たちに届く前に見えない壁に阻まれ飛散した。
 そう、その雷を防いだのは間違いなくエルハイミねーちゃんだったのだ。

 「ありゃ? これって『鋼の翼』? まだ祭事には数年あるのになんで?」




 そしてもう一つの声は間違いなくシェルさんだったのだった。
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