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第八章

第192話8-16示す先に

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 『機関正常、魔力伝達炉圧力上昇』

 『外壁のパージを始めます』

 『魔結晶石核運転率七十パーセント。起動開始、飛翔石へ魔力注入開始します』

 『船長席の人物をマスター仮認定します。音声照合、魂色認識。完了しました。マスター、コマンドをどうぞ』


 船内の水晶が光り始め周りの色々な物も動き出すと何処からともなく女性の声でいろいろと喋り出した。


 「なにこれ? もしかして『鋼の翼』が喋ってるの?」

 「はぁー、流石にドワーフの作ったもんだな。すっげー!」

 「凄い、音声入力で操作可能だなんて。流石お姉さま! しかもこの魔力伝達量! いけるわ!!」

 「女神様は伊達ではありませんわ!」

 『はぁ、これで天界に行けるとはねぇ~』

 『かわいい子いるでしょうか?』

 ぴっこぴこぉ~!


 セキさんもリュードさんも素直に驚いている中ミーニャがなんか興奮している。
 エマ―ジェリアさんもぐっとこぶしを握り、リリスさんやソーシャさんも封印解除で対魔防壁が無くなったので「鋼の翼」に乗れた。
 アイミは何処からからか聞こえてくる女性の声になんかうらやましそうにしている。


 「さあ、タルメシアナ様お願い致します、むんっ!」


 大司祭様は両腕の力こぶを背中からタルメシアナちゃんに見せつけタルメシアナちゃんにそう言う。
 タルメシアナちゃんは頷いてから正面に向かって手をばっとかざし宣言する。


 「『鋼の翼』発進!!」

 『イエス、マスター』


 ごごごごごごぉぉぉぉ
 

 船体自体が揺れていよいよ「鋼の翼」が動き出す。
 既に神殿の天井は大きく開かれ真っ青な空が見えている。
 そこへこの「鋼の翼」はゆっくりと空へと飛び発った。


 「おお、すっげー! こんな大きなモンが宙に浮いているぞ!」

 「はぁ、エルハイミ母さんってば相変わらずとんでもない物作っていたのね」
 
 ドドスの街が既に足元に小さく見えている。
 「鋼の翼」悠然と空を飛び始めた。

 
 「さてと、それでは暖炉の裏に有った呪文を詠唱しますね。えーと確かこの水晶に手をついて……」

 タルメシアナちゃんはそう言いながら水晶に手をつく。
 そして目を閉じ思い出すかのように呪文を口にする。


 「光よ蘇れ、我にその真なる道を示せ!」


 タルメシアナちゃんがそう唱えると水晶が反応して輝き始める。

 『認証完了。真なるマスターと認定。これより天界への道しるべを展開します』

 またあの声がしたかと思うと水晶から一筋の真っ直ぐな光が飛び出る。
 その光はある方向に延びたかと思ったらポージングを決めているフォトマス大司祭様の後頭部脳天付近に当たる。


 ぴかー!

 ぎらんっっ!

 くんっ!  


 その光はフォトマス大司祭の後頭部脳天近くのここだけ髪の毛が無くテカテカに光っている頭皮に当たり歪曲してしまった。
 

 『エラー発生。エラー発生。方向指示光に障害物による変動が発生。照射を停止して再立ち上げをします。マスター再度コマンド入力をしてください』


 「はえ!? も、もう一回やり直しですか!?」

 『はい、やり直しです。障害物の移動をしてください』


 思わずタルメシアナちゃんはそう聞いてしまうがすぐにあの声にフォトマスさんをどかすよう指示が出る。
 エマ―ジェリアさんとミーニャが無言でフォトマスさんを別の場所に引っ張って行って向こうでポージングの続きをさせている。

 「さあタルメシアナ、もう一回やり直しよ!」

 「とりあえず大司祭様には遠くへ行ってもらいましたわ」

 ミーニャとエマ―ジェリアさんにそう言われタルメシアナちゃんはもう一度あの呪文を唱えるのだった。 
 

 * * *


 「光が一定の方向を指しているわね?」

 「この光の先に天界が有るってのか?」

 セキさんとリュードさんは光の伸びる先を見ている。
 既にタルメシアナちゃんがその光に向かって「鋼の翼」を飛ばすよう指示をしているので「鋼の翼」はそちらに向かって飛び始めていた。

 この先に天界がるはず。

 世界の空の何処かを漂っているという女神様の住まう場所。
 そこに連れ去られた姉さんがいるはず。

 僕は光の先を見つめる。
 そして今一度、姉さんを必ず連れ戻すんだと心に刻むのだった。


 * * * * *


 「ご飯できましたわ~」

 「今日は何、エマ?」

 「お、飯か!」

 「エマ、とりわけのお皿ちょうだい」

 「あ、ミーニャ僕がやるよ」

 「ご飯、ご飯~♪」

 『魔力もらえるから何とかなっているけど、出来ればソウマ君を少しだけ……』

 『私もミーニャ様をいただきたいのですが、エマ―ジェリアさんを襲おうとしたら危うく浄化させられそうになりましたからね。仕方ないです魔力で我慢しておきます』

 ぴこぴこ


 みんなエマージェリアさんが作ったご飯を食べる準備をしている。
 この「鋼の翼」は内部に色々な部屋が有って厨房や食堂なんかも有るから調理が出来ると言ってエマ―ジェリアさんがいろいろと作ってくれる。
 
 くれるのはいいんだけど……


 「今日で何日目だ?」

 「えーと、一週間は過ぎてますね……」

 「確かに光は天界を示しているけど……」

 「お姉さまらしいと言えばらしいわね……」

 「め、女神様ですもの、やはり常識には捕らわれ無いのですわ!」


 そう言いながらみんなため息を吐く。

 確かに天界への道は記された。
 問題はそれが高速移動しているっぽいと言う事だ。
 少なくとも一時間に一度はその光が別の方向に向かう。
 それに気付いたらすぐにタルメシアナちゃんが「鋼の翼」の進む方向を変えるのだけど、まるでイタチの追いかけっこだ。

   
 「ご飯~ご飯~♪」

 でもタルメシアナちゃんはご飯の時だけは上機嫌で椅子に座ってナプキンを首に巻き付いている。
 
 「大丈夫ですよ、ちゃんと光の方向に向かって自動で飛ばせてますから!」

 にこにこしながらそう言うタルメシアナちゃんにみんな一斉にため息をつくのだった。


 あとどれくらいかかるのだろうと。
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