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第八章
第189話8-13大司祭
しおりを挟む「意外と美味しかったですね、アレ」
僕は歩きながらそう皆に言う。
食事も終わりお腹も膨れたのでウスターさんの手紙を持って女神教の神殿に来ている。
街のど真ん中にあるそこは他の教会よりもずっと立派なモノだった。
いや、立派と言うか隣にあるお城より大きんじゃないの?
「ここがドドスの女神教ですの? 凄く大きいですわね」
最後まで頑なにあのドドス名物料理であるロックキャタピラーを食べる事を拒否していたエマ―ジェリアさんだったけど、最後にセキさんやミーニャ、タルメシアナちゃんまで加わって羽交い絞めにされ無理矢理食べさせられた。
でも意外と食べれば美味しいという事に気付き、キャーキャー言いながらも自分のお皿の分は食べ終わっていたなぁ。
エマ―ジェリアさん曰く、「食べ物とは動植物問わずその命の代価で私たちが生きているのですわ。ですから残さずいただかなければいけないのですわ」とか言って全部食べたんだよなぁ。
意外と気に入ってたりして。
「前には近寄りもしなかったが、改めて来てみるとでかい神殿だな」
「ふーん、こんなのが出来てたんだ。ドドスの街も変わったねぇ~」
リュードさんもセキさんも神殿を見上げている。
ふと気になって僕はエマ―ジェリアさんに聞いてみた。
「そう言えばユーベルトでは『鋼の翼』の話ってなかったのですか?」
「噂には聞いていましたが、祭事自体が特殊で、女神様の啓示を受けた者しか招かれないと聞いていますわ。実際には何処へ集まるかもはっきりしていませんでしたしね。まさかここドドスだったとはですわ」
女神教の総本山となっているユーベルトではあったけど、天界へ行く方法は知らなかったらしい。
まあ、ユーベルトの場合はシェルさんたちが直接やって来ていたからその必要もなったのかもしれないけどね。
「さてと、それじゃあエマ、行って見ようか?」
「そうですわね。ソウマ君手紙の準備お願いしますわ」
セキさんがそう言って神殿に入って行く。
エマ―ジェリアさんにウスターさんの手紙の準備を言われ僕は懐からその手紙を引っ張り出すのだった。
* * *
「ようこそドドスの女神教へ。私はここで大司祭をさせていただいておりますフォトマスと申します」
応接間で待っていると頭に白髪が混じった温和そうな人がやって来た。
「フォトマス大司祭様、お忙しい中ですのに急な訪問にご対応いただきありがとうございますですわ」
フォトマス大司祭様にエマ―ジェリアさんが真っ先に立ち上がり挨拶をする。
「あなたが聖女様ですか。なるほど、女神様に似ておられるというのは本当ですな。まるで女神様のお子様のよう……だ‥‥‥」
フォトマス大司祭様はエマ―ジェリアさんの挨拶にそう答えながら後ろにいたタルメシアナちゃんに気付く。
タルメシアナちゃんはきょとんとしていたけどぺこりと頭を下げて元気に挨拶する。
「こんにちわ、私タルメシアナって言います!」
「め、女神様似のお嬢さんがこちらにも? これは一体‥‥‥」
「ああ、お母さんが女神やってますので。よくお母さんとお母様に似てるって言われるんですよ」
にこにこと元気にそう言うタルメシアナちゃん。
エマ―ジェリアさんと一緒に居ると年の離れた姉妹にも見える。
しかしフォトマス大司祭様は驚いた様子だった。
「め、女神様のお子様? 聖女様、これは一体?」
「タルメシアナちゃんは大迷宮に住まわれている黒龍様と女神様のお子さんなのですわ。今回訳あって私たちの旅に同行してもらっているのですわ」
エマ―ジェリアさんはそう言うと大司祭様は慌ててその場にしゃがんでタルメシアナちゃんに頭を下げる。
「なんという事だ! 女神様のお子がこの場に!! 天界に赴きもそのお姿は直にはお目にかかれなかった、だがそのお子様に今こうしてお会いできるとは!! 何と言う僥倖!」
「はえ?」
いきなりの事にタルメシアナちゃんも驚き変な声を上げる。
「ありがたや~ありがたや~」
もうなりふり構わず大司祭様はタルメシアナちゃんを拝み倒すのだった。
* * *
「失礼しました。あまりにも嬉しくて我を忘れてしまいました」
どうにか落ち着きを取り戻し、タルメシアナちゃんを豪華な数段高い椅子に座らせて大司祭様はやっと落ち着きを取り戻した。
「あのぉ~、こんな椅子に座らなくても普通の椅子に座らせてもらえばいいんですけどぉ……」
「何をおっしゃいます! あなた様はいと尊きお方、我々のような者と同じにされるのはよろしくありません! どうかお健やかに」
人の背丈ある高い椅子に座らせられてタルメシアナちゃんは脚をプラプラさせて「ううぅ~」とか唸っている。
僕たちはそんな様子を見て苦笑しながら挨拶を終えて準備していたウスターさんの手紙を引っ張り出す。
「あの、これがウスターさんからの手紙なんですが」
「ああ、ソウマ君だったね。どれ、失礼するよ」
そう言いながら大司祭様は僕が差し出した手紙を受け取り封を切ってその中身を読み始める。
そしてしばし。
「なんと、祭事まで待たなくとも天界に行けるのですか?」
驚きに手紙から顔を上げる。
「その為にタルメシアナちゃんが同行していますわ。女神様に会いに行くために」
エマ―ジェリアさんにそう言われ大司祭様はもう一度タルメシアナちゃんを仰ぎ見る。
「なんという事だ‥‥‥ タルメシアナ様、どうかこの私めも一緒に天界にお連れください。一度だけ、一度だけでも良いのです、女神様のご尊顔を拝見させてください!!」
そう言ってその場にまた土下座する。
「うううぅ、お願いですからそう言うのやめてください。お兄ちゃん、この人連れて行っても良いから、こう言うのもうやめさせてぇ」
顔を真っ赤にして涙目のタルメシアナちゃん。
だいぶ恥ずかしい様だ。
「でも何で天界へ行きたがるのよ? お姉さまに会ってどうするの?」
「そ、それは…… 低俗な願いでありますが、その、実は娘が‥‥‥」
ミーニャは首を傾げフォトマス大司祭様に聞く。
すると言いにくそうにはしていたけど、大司祭様はタルメシアナちゃんにすがるように言う。
「どうか私の娘の胸を豊かにしてやってほしいのです! うちの娘はそれはそれは女性としてそう言った魅力が乏しく、今までそれが原因で親である私が決めた婚約の破棄、その後思いを寄せる男性からも断られ続け、人前に出るのも最近はためらい、自宅でこもった生活をし始めこのままでは貰い手も無くいかず後家になってしまいます! 大賢者のトーマスも今年とうとう孫が生まれ、『なんだフォトマス、まだ孫の顔が見れんのか? 孫は良いぞ、これはとてもいいものだ』等ときざったらしく言いよるのです! もう悔しくて悔しくて!」
はーはーはー。
そこまで一気に大司祭様は言うとぐっとこぶしを握りさらに続ける。
「トーマスめ、私が大司祭になったからと言ってあ奴は大賢者になり、我らのこの飽くなき戦いに勝利するためにとうとう孫と言う手段を取りおってぇ!! しかも奴め孫にべったりで可愛がって、我らの戦いの中で戦いを忘れるとは! くぅううううぅっ! 儂も早く孫の顔みたいぃっ!!!!」
あー、なんか色々あるみたいだね。
僕を含めみんな大司祭様のそれに圧倒される。
うん、家族って大切だものね。
僕はまだまだ続く大司祭様のその演説気味て来たお話をしばし呆然と聞く羽目になるのだった。
応援ありがとうございます!
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