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第七章

第169話7-24正統性

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 僕たちはレッドゲイルに在るというオリジナルの「鋼鉄の鎧騎士」を動かし、そしてラーミラスちゃんが姿を現す事により魔王軍が女神様によって消滅した事も宣言してイザンカ王国の内乱を一気に収めようとしていた。

 
 「じゃ、まずはそのオリジナルに合わせて。どの子か知りたいし状態も確認したいわね」

 「ミーニャ、出来るの?」

 「大丈夫、魔王の力がなくなっても今の魔力量ならメンテナンスくらいは出来そうだから。本当は『十得君』が有ればもっと便利なんだけどね」


 言いながらラーミラスちゃんを見る。
 ラーミラスちゃんは頷いてからアポロス将軍に言う。

 「アポロス様、私をレッドゲイルの女神神殿に連れていってください」

 「ラーミラス様…… 分かりました。行きましょう!」

 そう言って僕たちはアポロス将軍に連れられてレッドゲイルの中に入っていくのだった。


 * * * * *


 レッドゲイルはブルーゲイル同様古い城塞都市だった。
 格式の有る街並みは古風ながら整然としていて、所々魔道具による整備も行き渡っていた。

 「凄いですね、跳ね橋も魔道で動いているなんて!」

 「本当にそうですわね、街路灯も魔晶石を使っていて、いちいち魔法の明かりを付けて回らなくても時間で明かりが灯るなんてですわ」

 僕たちは物珍しさに街を見回しながら神殿へと向かっている。
 しかし、この街にはいくつかの神殿があり、今だに古い時代の女神様を祀っている場所もあるそうだ。


 「相変わらずだな、ここは少しも変わっちゃいねぇ」

 「ん? リュードここにも来た事が有んの?」

 リュードさんは周りを見ながらそうつぶやくとすぐにセキさんが気付く。
 頭の後ろを書きながらリュードさんは嫌そうに言う。

 「昔な。あの頃は俺もまだ若かったからな、いい思い出ばかりじゃないのさ」

 「ふぅ~ん、あんたらしくないわね?」

 「もしかしてこれ関係?」

 リュードさんの言葉にセキさんやミーニャも小指を立てながら興味をもって話している。
 そんな様子を見てリュードさんは苦笑を浮かべ「よせやい」とか言っている。


 リュードさんいろんな所に行っていたんだなぁ。
 冒険者ってのもそう言う意味では面白いかもね?


 そんな事を思っているとひときわ大きな神殿に着いた。
 そこは紛れもなく女神教の神殿。
  
 ラーミラスちゃんはそこへ着くと神殿の中に入ってゆく。


 * * *


 いきなり現れた僕たちに神殿の神官たちは驚いていたようだけど、アポロス将軍が急の用事が有ると言うと、挨拶もそこそこに中に案内をしてくれた。
 
 中は入ってすぐに礼拝堂になっていて大きな女神像が一番奥の壁に埋まっている。
 それはまるで「鋼鉄の鎧騎士」ほどある大きなモノだった。


 「お父様の話ではこの女神様の像の中にオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』が隠されているとの事です。この首飾りの宝珠をあの手の中にあるくぼみにはめてください」


 そう言ってあの首飾りの宝珠を取り出す。


 「リリス、行ってきなさい」

 『うへぇっ!? あたしですかぁ?』

 「なに? なんか文句あるの?」

 『い、いえっ! 行ってきます!!』


 ミーニャはラーミラスちゃんから宝珠を受け取りそれをリリスさんに渡す。
 リリスさんは渋々背中から翼を出し、女神様の像が手を合わせるそこまで飛んで行く。

 そしてごそごそとお尻を振りながらそのくぼみを探している様だけど、どうやらそこを見つけて宝珠をはめ込んだ様だ。


 「祈りましょう、オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』が無事復活する事を‥‥‥」

 ラーミラスちゃんはそう言って両の手を合わせてお祈りを上げる。
 すると女神像の真ん中に線が入り、ゴゴゴゴゴぉっという音がして左右に分かれ始める。


 「女神様の像がですわっ!」

 「わっ、中から銀色の『鋼鉄の鎧騎士』が!!」


 エマ―ジェリアさんも僕もその光景に思わず見入る。
 現れた鋼鉄の鎧騎士は長い間ここへ封印されていたはずなのに汚れ一つない銀色の輝きを放っていた。


 「この子は‥‥‥ 最終型ね。と言う事は、ツイン連結型魔晶石核搭載の子だわ。でも……」


 ミーニャはその鋼鉄の鎧騎士に近づく。
 そして見上げながら首をかしげる。


 「これってどう言う事?」


 「あ、あの、どうしたというのですか?」

 ラーミラスちゃんの問いに答えずミーニャは上を見上げる。
 すると上から光り輝きながらゆっくりとあの宝珠が落ちて来る。
 それをミーニャは受け取りまだ輝きが有る宝珠と「鋼鉄の鎧騎士」を見ながら戸惑った表情をする。

 と、【浮遊魔法】を使ってすぅ~っと「鋼鉄の鎧騎士」の胸元まで上がっていく。
 そして手をつくと鋼鉄の鎧騎士の胸元が開き始めた。


 ぐぐっ……

 ばくんっ!


 ミーニャはそれを見て更に変な顔をして中を覗き込む、そして慌てて下まで降りて来た。


 「大変よ! この子オリジナルじゃない! いや、外装は間違いなくあたしたちが作ったミスリル合金の外装でオリジナルモノなんだけど、中身がオリジナルじゃないみたい!!」



 「「「「「「ええぇっ(ですわ)!!!?」」」」」」



 思わずみんなの声が上がるのだった。 
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