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第七章

第156話7-11ノヘルの港町

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 イージム大陸。

 東にある大陸で世界にある四大大陸の中で一番小さい大陸。
 昔から魔獣や妖魔が多くいる場所で人類の初めての国が出来た場所とも言われている。
 もっと昔には暗黒の女神様がこの地で倒れたとも言われているらしい。

 先生の授業を受けていたのでその事を思い出す僕。

 
 「あ、そう言えばミーニャ、宿題のノート返してよ! 今度先生の所へ行く時に持って行かないと怒られちゃうよ」

 「いや、ソウマ君もう一年近くも先生の所なんて行ってないし、そもそも今更行く必要あるの?」

 甲板で見えてきた対岸の港町を見ながら腰に手を当て悠然と眺めていたミーニャは僕のその言葉に頬に一筋の汗を流している。


 「‥‥‥ミーニャ、貸したノートどうしたの?」


 「うっ、ええぇとぉ~、多分家にあると思うけどぉ~」

 ミーニャの家にはあるのだろう、多分。
 でもこの様子、まだ写していないな!!

 「ミーニャ、また僕のノート写すの忘れたろ? 駄目じゃないか、ちゃんとやらなきゃ!」

 「いや、だってその晩に魔王の印が出て来ちゃっていろいろ思い出しちゃったからそれどころじゃなくなって‥‥‥」

 僕は大きくため息をつく。
 そしてミーニャをびしっと指さし言う。


 「とにかく、村に戻ったらちゃんとノート写して返してね! そのままノートの名前書き替えて出してもだめだよ? 僕の字とミーニャの字は違うからすぐにばれるからね!!」


 「うっ、ソ、ソウマくぅ~ん!!」

 涙目になるけどこれだけは譲れない。
 まったく、一個年上の癖にそう言う所は変わらないんだから!


 「おいソウマ、そろそろ着くぞ。エマ―ジェリアも呼んで来い」

 「あ、はい。呼んできますね」

 僕はそう言って船室で倒れているエマ―ジェリアさんを呼びに行く。


 コンコン


 「エマ―ジェリアさん、そろそろ対岸に着くそうですよ? どうですか調子は??」

 「ぅうう、や、やっと着くのですわね‥‥‥ うっぷ!」

 ああっ! 
 まだ駄目か!?

 僕は慌てて桶をエマ―ジェリアさんに渡す。
 そしてそれを受け取ったエマ―ジェリアさんはキラキラしたものを吐き出している。

 エマ―ジェリアさんにはそれを見るなと言われているけど、調子の悪い人を放っておくわけにもいかない。
 背中をさすり、水を渡して口の中をゆすがせる。


 「あ、ありがとうですわ、ソウマ君。少し楽になりましたわ‥‥‥」

 まさかエマ―ジェリアさんがこうも船に弱いとは思わなかった。
 意外だよね?


 「なに? まだエマージェリアは寝込んでいるの? まったく、あたしのソウマ君に面倒かけるなんて!」

 「‥‥‥そ、それには申し訳ないと思ってますわ。しかしまさかこんなにも揺れるとは。うっぷっ!」
 
 いきなりかけられたその声はミーニャだった。
 ミーニャは扉の所からのぞき込みそう言っているけど、まだまだエマージェリアさんの調子は悪い様だ。
 もうじき冬になる季節だったからこの辺の海も荒れ始めているらしい。
 なので揺れが激しいわけだ。

 「どちらにせよ船降りちゃえば落ち着くでしょう? ソウマ君もこいつの面倒ばかり見てないであたしもかまってよぉ~」

 「ミーニャ、先生からも言われてるだろう? ケガしている人や弱っている人には優しくしろって」

 「じゃあ、あたしが弱ったらソウマ君がつきっきりで看病してくれる?」

 ミーニャはずいっと寄って来て僕の腕を取る。
 まあ、調子が悪いなら仕方ないよね?
 
 「そりゃぁ、ミーニャが調子悪くなったら看病してあげるよ。でもその前に姉さんを取り戻し村に帰るんだよ?」

 「え~?」

 「うっぷ、ソ、ソウマ君は私の実家に行かなければならないのですわぁっ!!」

 僕がミーニャに答えているとエマ―ジェリアさんが無理をしている。
 そんなエマージェリアさんを見てミーニャは嫌そうな顔をするもため息をついてから言う。

 「何言ってるか分かんないけど、船降りてからにしなさいな、これ以上吐かれたらこっちが気持ち悪くなるわよ」

 「ぐぬぬぬぬぅですわぁっ! うっぷっ!」

 悔しがるエマ―ジェリアさんの背を擦って介抱してやる僕だった。


 * * * * *


 「お、来た来た。エマ、ソウマぁ~」

 港に着いて船を降りると既にこちらに渡って来ていたセキさんやアイミ、リリスさんにソーシャさんがいた。


 「ん? どうしたのエマ?」

 「ぅううぅ、やっと揺れない地面ですわ‥‥‥」

 「いやぁ、エマ―ジェリアさんこの半日ずっと船酔いで倒れてたんですよ」


 セキさんに事情を説明するとぱちくりと瞳を瞬きしてエマさんに聞く。


 「エマ、【状態回復魔法】使わなかったの? あれ乗り物酔いにも効くよ?」

 「え”? そ、そうなのですの!?」


 どうやら知らなかったみたい、エマ―ジェリアさん。

 
 「ふん、そんな事も知らなかったの? 常識じゃ無いの?」

 『いや、ミーニャ様、普通は知りませんって、そんな事』

 『流石ミーニャ様! 物知りでいらっしゃいます。ついでですから同性同士の戯れ事も私と一緒に試してみませんか? はぁはぁ』


 って、ミーニャってばそんなこと知っていたの?
 だったらエマーージェリアさんに教えてあげればよかったのに!!

 僕がミーニャをそう思って見ているとミーニャはにまぁ~っと笑って言う。


 「敵に塩を送ることはしないわよ。ソウマ君を独り占めにしようなんて甘いわ。まあ、あれだけ苦しんだから今回は許してあげるけどね」

 「くっ! やはりあなたとは一度はっきりとさせた方が良いですわね!!」

 「おっ、やる気!?」


 「おいこらオマエラ、いい加減にしろ! 早いところ宿取って準備しなきゃならないんだからな!!」


 あわやまたミーニャとエマ―ジェリアさんが喧嘩になりそうなのをリュードさんが止める。



 僕はほっとしながらもやっぱり思い出す。
 宿題ノートちゃんとミーニャの家に有るんだろうかと? 
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