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第七章

第155話7-10海を越えて

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 東の港町は人々でにぎわっていた。
 僕たちはたまたまこの町の近くでビックフットに襲われていた商隊を助け、お礼として路銀確保をしていた。


 「とりあえず船でイージム大陸に渡るくらいの船賃は手に入ったな。馬車と馬も結構良い値で売れたし、イージムに行っても馬車と馬は手に入れられそうだな。後は入用のモノだが‥‥‥」

 リュードさんは僕たちを見てため息をつく。
 結構なお礼をもらったので必要と思うモノを買って来たのだけど。


 「お前らそれで旅を続ける気かよ?」


 「ん~、そう言われても」

 「この辺は絶対に必要ですわ!」

 「ああ、後あれも欲しいわね」

 「うーん、残りのお金考えるとせめてあれとあれだけは欲しいなぁ」

 ぴこぴこ?

 『ふう~、この町の男たちはまあまあだったわね♪』

 『ええ、女の子も美味しかったですね~。ああ、これでミーニャ様もいただければ‥‥‥』


 必要と思われる物を買って初めて姉さんとシェルさんのあのポーチの重要性が実感できる。
 荷物って必要と思うもの買うと結構増えるんだね?


 「たくっ! いいか基本旅ってのは必要最低限のモノにするんだよ! 野宿の時とかに必要な物だけで後は現地調達が基本だ! 女どものお前らは【浄化魔法】使えるんだから着替えも最低限にしろよ!! あと調理道具も最低限にしろ! 料理屋開く訳じゃねえんだから! 調味料も岩塩とか乾燥して軽い香辛料にとどめろ!」


 既に僕たちは背中に大きなリックをしょっている。
 まるで行商人の様なほど大きいやつを。

 リュードさんは腰に着いたカバンを見せてパンパンと叩く。
 そう言えば大体あの中で道具はまとめてたよね?
 旅の時はあのカバンの上に毛布を丸めたのを持って、野宿の時はマントをうまく併用していたっけ?


 「そうは言われましても、女の子にはいろいろとありますのよ?」

 「だとしてもお前ら【浄化魔法】使えるんだからたとえ生理の時でも問題無いだろうに? なんだよその小瓶の山は!?」

 それでもエマ―ジェリアさんがそう言うとリュードさんは文句を言ってエマ―ジェリアさんが抱えている小瓶を指さす。

 「そんなガラスの割れやすいもん沢山どうするつもりだよ?」

 「こ、これは【浄化魔法】だけでは香りが無いのでそれを補う香油とかお肌に必要な薬草とか‥‥‥」


 「最低限にしろ。残りは売ってこい!!」


 確かにエマ―ジェリアさんは小瓶をあれやこれやと持っていた。
 そしてそれがその用途ごとに必要だと言って譲らない。


 「まったく、荷物が多いのなら異空間にでもしまっておけばいいじゃない?」

 ミーニャはそう言いながら自分の持っていた荷物を手元に開いた異空間にポイポイと放り込んでいく。


 いや、そんな事出来るのミーニャくらいだって。


 「とにかく、アイミと空飛べるやつは全員先に空飛んで向こうの港に行ってろ。そうすりゃ船代も最低限で済む。この先だって無駄遣いは出来なんだからな!」

 リュードさんの言う事はもっともだった。
 まだまだ目的地までには距離もあるし時間もかかる。
 勿論その分旅費もかかるのだから無駄遣いは出来ない。


 「え~、あたしら空飛んで行くの? この姿で空飛ぶのって結構疲れるんだけど~」

 「だったら竜の姿になれよ、何なら俺たちを乗せていってくれれば船代も浮く!」


 セキさんがそう文句言っているとリュードさんはセキさんに背に乗せろと要求するも嫌そうな顔して背中に羽を生やして飛び上がっていった。


 「んじゃ、仕方ないから先行ってるね!」

 「ちっ、ああわかった、行け行け!」

 「セ、セキぃ! もう、勝手に一人で行くなんてですわ!」

 『んじゃ、ミーニャ様あたしらも先行ってますね~』

 『とは言え、半日もしないで着きますもんね。お待ちしてますよミーニャ様』

 言いながらリリスさんとソーシャさんも背中に羽を生やして飛び発って行った。

 ぴこっ!
 しゅたっ!

 そしてアイミも片手を上げてから飛び発って行ってしまった。


 それを見届けた僕たちは定期船にお金を払って乗り込む。

 「うう、せっかく買った小瓶を割らないようにしなければですわ」

 「エマ―ジェリアさん、手伝いますよ?」

 僕がそう言って手を差し出すとミーニャが邪魔する。


 「ソウマ君、こいつが自分で買ったんだからこいつが持たなきゃだめよ? それがいやだったら最低限にするのね!」

 「な、何ですってぇ!」


 船に乗り込みながらもミーニャもエマ―ジェリアさんも口喧嘩が絶えない。
 でもなんだかんだ言って最近はこの二人気に入った物とかはちゃんと評価し合っていてそれについて議論とかもしているから実は仲が良いんんじゃないかと思う。


 「ったく、ソウマ急げ船が出るぞ!」

 「はい、今行きます!!」



 僕たちは向こうにうっすらと見えるイージム大陸に渡る為に船に乗り込むのだった。
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