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第七章

第152話7-7ソウマの同調

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 「はぁっ! 赤光爪!!」


 ずばっ!


 「こん畜生! 八つ切り!!」


 ざくっ! 
 ざくざくっ!!


 ビックフットたちにセキさんとリュードさんが突っ込む。
 僕とエマ―ジェリアさんは商隊の人たちの手当てを急ぐ。

 「大丈夫ですか?」
 
 「あ、ああ、お陰で何とか。しかし凄いな君たちは」

 「ふん、あんなのにてこずってる方がおかしいのよ」

 ミーニャは面白くもなさそうにそう言う。
 だけどいきなりあんなのに襲われたら僕らの村だって騒然としちゃうよね?


 「しまった! ソウマ、ミーニャ取り逃がしたのがそっち行った!!」


 僕がそんな事を思っているとセキさんから警告の声が発せられる。
 見ればセキさんに片腕を切り落とされたビックフットがこちらに走って来ていた。


 「まずい! エマ―ジェリアさん僕がひきつけるから皆さんの手当てを!」

 「分かりましたわ、【防御魔法】プロテクション! これでソウマ君の防御力は上がりましたわ!!」

 エマ―ジェリアさんは走り出す僕に【防御魔法】をかけてくれた。
 これで攻撃に専念できる!


 「ちょ、ソウマ君! そんなのあたしが簡単に始末してあげるのに!! 接近戦やられると空間をずらせないじゃ無いの!!」

 ミーニャがなんか言っているけど、僕は既にショートソードを抜いて技を放つ。


 「ガレント流剣技二の型、二重の刃!!」


 襲い来るビックフットが腕を振り上げる。
 その腕に向かって僕はガレント流剣技二の型、二重の刃を打ち込む。

 一か所に高速に打撃を打ち込みあたかも刃が同時に二つ当たるかのようなこの技は決まれば倍ではなく二乗の力が発揮できる。

 しかしビックフットの厚く覆われた毛皮は僕の二重の刃を通さなかった。


 「くっ! わうっ、しまったぁ!!」


 攻撃を防ぎきったビックフットは一瞬の隙を見て僕の足を掴んだ。
 ビックフットに持ち上げられる僕はその咢が開くのを見る。


 「ソウマ君!!」

 ぴこっ!!


 がぶっ!
 ガキーンっ!!


 ミーニャが悲鳴を上げるもアイミが僕とビックフットの間に割って入り、何とか噛みつかれるのを阻止してくれる。
 しかしビックフットは掴んだ僕をそのまま地面にたたきつける。


 ばんっ!


 「くっ!」

 もしエマ―ジェリアさんに【防御魔法】をかけてもらっていなかったら今ので全身骨折になっていただろう。
 それでもその衝撃波凄まじくあばらあたりにひびでも入ったようだった。


 「ソ、ソウマ君! 駄目ですわ、あれではいくら【防御魔法】がかかっていても!!」

 「離れてくれないと空間がずらせない! アイミっ!!」


 エマ―ジェリアさんとミーニャが叫んでいる様だけど僕は体勢を整えるので精いっぱいだった。
 そこへもう一度ビックフットが僕を地面にたたきつける為に持ち上げた。

 このままでは!


 ぴこぴこ!


 アイミがビックフットの腕に取り付き僕を引きはがそうとするもアイミの巨体でさえ軽々と持ち上げてしまうビックフット。
 そう僕が思った瞬間だった。


 どくんっ!


 心臓が高鳴る。
 そうだ、エルハイミねーちゃんにもらった新しい心臓!

 僕はすぐに自分の中にあるはずの魂を探す。
 奥深く、そしてその魂と肉体をつなげる。
 その瞬間魂から湧き出る魔力とそれに誘導されて心臓から湧き出る魔力が魂と体を結びつける。


 かっ!


 見開いた瞳に映る世界は全てがぼんやりと輝いている。
 マナが、魔力が見える!
 そう、僕は瞳の色を金色に変えて「同調」を行っていた。

 地面に叩き付けられるその動きの中ビックフットの腕を見る。
 この体勢でもマナの弱い場所が分かる。
 そしてそこをこのショートソードで切り裂けば‥‥‥


 ずばっ!


 「ぎぎゃぁああぁぁぁぁっ!」


 僕を掴むビックフットの指を切り裂きその拘束から抜け出る。
 地面に受け身を取りながら体制を整えてすぐさまビックフットに斬りかかる!



 「ガレント流剣技五の型、雷光!!」



 どんっ!


 地面をめり込ませ一瞬でビックフットの後ろにまで行く。

 
 ざざぁっ!

 
 着地と同時に振り返り剣の血糊を振り払う。
 するとビックフットはその場で上下に分かれて倒れた。


 「ふぅううぅぅぅ‥‥‥」

 「ソウマ君!」

 「ソウマ君ですわ!!」

 何とか雷光でビックフットを倒せた。
 しかし「同調」ってすごいな、体から力があふれ出て来る。
 もともと僕の技量だとガレント流五の型、雷光は扱えない。
 無理をすれば身体が悲鳴を上げて全身の血管が破裂するんだもの。

 でも今は違う。


 「ソウマ君、ケガはどうですの? すぐに【回復魔法】を、いえ、【治癒魔法】をかけますわ!!」

 「ソウマ君、雷光が使えるほどになったんだ‥‥‥ でも無理しちゃだめじゃない。こう言ったのはあたしに任せてよ。ソウマ君はあたしが守るんだから」

 僕は瞳の色を元に戻しながらエマ―ジェリアさんの【治癒魔法】を受け、あばらの骨折と全身の打撲を治してもらう。
 ミーニャはそう言ってくれるけど、僕だってやれることはやりたい。


 「おーいソウマ、大丈夫だったぁ?」

 「ソウマ、ケガしたのか? 俺が誠心誠意看護してやるぞ!?」


 どうやらむこうの方でビックフットたちと戦っていたセキさんやリュードさんも終わってこちらに向かってきたようだ。


 僕はそんな二人に軽く手を上げるのだった。
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