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第六章

第130話6-1もてなし

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 アガシタ様と麒麟が天井をぶち破り階上に消えて行ったので僕たちも慌てて上の階に行く。
 そこには禍々しい大きな扉が有っていかにも「魔王の間」という雰囲気だった。


 「って、ミーニャここのスペル間違っている‥‥‥」


 「魔王の間」と書いたつもりだろうけど、スペルが間違っているので「みゃおーんの間」になっている。
 勉強嫌いだから文字なんて適当でいいとか言っていたけど、これ他の人に見られたら恥ずかしいだろうに。


 「アイミ! この扉をぶち破って!!」


 姉さんがそこに気付かずにアイミに頼んで扉をぶち破る。
 うん、後で姉さんにいじられなくて済むね、ミーニャ。


 どがぁーん!!


 アイミのパンチで扉はあっさりと弾き飛ばされた。
 そして中が見えるけどそこには元の姿に戻ってぐったりとしたアガシタ様が横たわっていた。


 「アガシタ様!」

 「なっ!? アガシタ様っ!?」


 ピンクのと青い髪の色のメイドさんたちは慌てる。
 勿論それを見た僕たちだって驚きを隠せない。


 『来たわねソウマ君。でもいきなり床を突き破って来るなんてちょと無粋よ?』

 聞こえてきた声はリリスさん!?


 「まったくね、麒麟あなたも何てことしてくれるのよ?」

 『も、申し訳ございません魔王様‥‥‥ぐはっ!』

 そして部屋の奥には大きな椅子に座ったミーニャが足元に麒麟を踏みつけていた。


 ああっ!
 ミーニャ何てことしてんだよ!?

 まるで村のいじめっ子たちを退治した後に追い打ちをかけるかのように踏み潰すのと同じことやって!!


 「ミーニャ! 大人しく村に戻りなさい! 長老に言って折檻部屋よ!!」

 「うっ! 折檻部屋なんて嫌ですよフェンリルさん! って、そうじゃない!! あたしは魔王! 世界征服をしてソウマ君をお嫁さんにしてラブラブな人生をここで過すんですから! もう村には戻る必要ありません!」

 びしっと指さす姉さんに一瞬ひるんだミーニャはそれでも姉さんに言い返す。


 「アガシタ様!」
 
 「大丈夫ですか!?」

 僕たちがミーニャと対峙しているとメイドさんたちがアガシタ様に駆け寄る。

 「ううぅ、まさか全てを封じられるとは思わなかった。いくら僕でも世界の壁で力を封じられたらこの空間で力が振るえない‥‥‥」

 倒れたアガシタ様をピンク髪のメイドさんが引き起こすけど、ぐったりとしていて喋るのがやっとのようだった。


 「魔王ミーニャ、アガシタに何をしたの?」

 「シェルさんか‥‥‥ なんてことはありません。世界の壁でアガシタ様を包み込みその力がこちらの空間に及ばないようにしたんですよ。しかし、この役立たずの麒麟が! せっかくソウマ君をもてなすお料理が!!」


 ぶぎゅる!


 『がはっ!』

 ミーニャは踏みつける力を強くする。
 すると麒麟は床にめり込む。


 ぼごっ!


 「おい、シェルあれが魔王かよ? ただのガキじゃねーかよ?」

 「見た目と力は違うわよ。魔王ミーニャは魔王の力に完全覚醒している。前魔王イオマの得意とする空間魔法や世界の秘密、『世界の壁』までも操っている。これじゃあの人と同じじゃない!」

 「そんな‥‥‥ シェル様、あの人とは女神様ですわよね?」

 「参ったな、これじゃぁあたしでも敵わないな‥‥‥」

 
 リュードさんの言う事はごもっとも、いくら大人っぽい格好したってミーニャはまだ十三歳。
 あ、でも、もうすぐ十四歳になるのか?

 シェルさんやエマ―ジェリアさん、そしてセキさんは油断なくミーニャを見る。
 そんな中、僕はミーニャに対して声を張り上げる。


 「ミーニャ! 来たよ、もう皆さんにご迷惑かけるようなことしちゃだめだよ! 一緒に村に帰ろうよ!!」


 「ソウマ君‥‥‥来てくれたんだね。あたし嬉しいよ。あのソウマ君がだいぶ凛々しくなっているんだもん。何時もあたしの後ろで泣いてたソウマ君が男の子らしくなって‥‥‥(ぽっ)」

 「ミーニャ! ふざけてないで村に帰るわよ!!」

 「フェンリルさん、まあ落ち着いてくださいよ。せっかくのソウマ君との再会なんですから」

 そう言ってミーニャはパチンと指を鳴らす。

 するとリリスさんと同じ格好のお姉さんたちが出て来てすぐに風穴の空いた床付近に散らばっていたものを片付け始める。


 「麒麟、あんたはお仕置きよ!」

 『ぐっ! ま、魔王様、我は、我は魔王様の為にっ!』

 「うるさい、消えろ!」


 ばしゅっ!


 ミーニャがそう言った瞬間足元にいたキリンが消えた。


 「なっ!? あの麒麟が一瞬で消えた!?」

 「姉さま、こいつ‥‥‥」

 「そうだ‥‥‥ 『世界の壁』を操るその力、女神にも匹敵するんだ。くそう、この僕がここまで押される何て!」


 麒麟が消えたのをアガシタ様たちも見て驚いている。


 「さて、せっかくのソウマ君との再開。お料理とかも台無しにされたけどすぐにまた準備するわ。フェンリルさん、シェルさん、ああ、だいぶ大きくなっちゃったけどセキちゃんもお姉さま似のそこの子も。初顔ね? そこのおじさんもアガシタ様も招待してあげる。もてなしをしてあげるわ!」


 パチン。


 ミーニャがまた指を鳴らすと風穴の空いた床は元通りになり、そして片付けられたテーブルがまた現れその上には豪華な料理が現れる。

 ミーニャはゆっくりとホストの席に移っていく。


 「さあ、まずは歓迎してあげるわ、みんな座ってね」



 嬉しそうにそう言うミーニャだったのだ。
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