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第五章

第121話5-22城を守る者

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 僕たちは壁で国自体を取り囲んでいたと言う元ルド王国に入った。


 キシャラさんの先導で門からではなく隠された入り口から入る。
 そこはダークエルフたちがよく使う抜け道だそうだ。


 「ここを抜けると町の北側に出る。特に何も無い瓦礫が多い場所だが十分注意してくれ」

 キシャラさんはそう言いながら壁を抜ける。
 するとそこは確かに元建物か何かが有ったらしい荒廃した瓦礫の山が有った。


 「だいぶ古い建物だったみたいね?」

 「でも身を隠しながら移動できそうな壁とかも有るからいいよね?」


 姉さんはちらりと周りの様子を見る。
 まだ壁が残ったり崩れかけた建物もあるから身を隠して移動は出来そうだった。


 「あれが魔王城か。ずいぶんとご立派な建物ね?」

 シェルさんは街の中心部にあるひときわ大きな建物を見る。
 それはキシャラさんが言っていた通り真っ黒な外壁で上空には時折アークデーモンらしきものが飛んでいる。


 「まさしく魔王城ですわね」

 「あまりいい趣味じゃねーな。で、この後はどうするんだシェル?」


 エマ―ジェリアさんは魔王城を見てぎゅっとセキさんの袖をつかむ。
 それをセキさんはなだめるかの様に頭を撫でている。

 リュードさんも魔王城を見ているけど姉さんに向かってそう言い、シェルさんに聞く。


 「真正面から行っても魔王軍がいるから面倒ね。とにかく城の近くまでは精霊魔法を使って姿と音を消していくわ。みんなこちらに来て」

 言いながらシェルさんは精霊魔法を唱え始める。
 途端に僕たちの姿が半透明になる。


 「いい事、術をかけている者同士は姿がうっすらと見え、話が出来るけど他の者には見えないし聞こえないわ。ただこの魔法は他の者にぶつかったりすると効果が消えてしまうから気を付けてね。とにかく魔王城の近くまで行って城に忍び込みましょう。そして魔王を取り押さえるのよ!」


 シェルさんはそう言いながら猫がするりと歩くように動き出した。
 僕たちもそんなシェルさんについて動き始めるのだった。


 * * *


 町には確かに魔王軍の配下の者しかいなかった。

 僕たちはシェルさんの精霊魔法のお陰で姿と音を消し魔王軍の配下がいる町をするりと抜ける。


 「どうやら魔王城に入るにはあそこの正門しか入り口が無いようね?」

 「幸いなことに門は開いているわね? シェルこのまま行きましょう!」

 シェルさんと姉さんがそう言って正門に差し掛かった時だった。



 『どうやらネズミが入り込もうとしている様だな?』



 ばさばさばさっ!

 どんっ!


 声は門の上からして来て姿の見えないはずの僕たちの前に降りて来た。 

 その姿は背に鳥の羽根を生やした悪魔。
 しかしその羽は炎をまとっていた。


 『雑兵の目は誤魔化せてもこの俺の目はごまかせんぞ? 何者だ! 姿を現せ!!』


 ぶんっ!

 どすっ!


 そいつが振った槍が僕たちの前に突き刺さる。


 「シェル!」

 「キシャラも下がって! まさかこんなに簡単に私の精霊魔法に気付く奴がいるとはね!」


 言いながらシェルさんは魔法を解く。


 『ほう? エルフに人間か? よくぞここまで来たものだが、残念ながら勝手は許さん。貴様ら一体何者だ?』


 燃える羽の悪魔はそう言いながら槍を引き抜く。
 するとそこへ慌ててアークデーモンがやって来て燃える羽の悪魔に紙切れを渡す。


 『何? こいつらが指名手配の少年たちだと? 確かに少年もいる、凶悪そうな赤髪の女に胸のでかいエルフもいるが赤竜と巨大なマシンドールがいないぞ? それにダークエルフに人間の男もいるようだが?』


 アークデーモンの差し出す紙切れを見ながらうなるその羽の悪魔だったがアークデーモンはその紙に描かれている人相書きを僕たちに見せながら人相書きを指さしその都度ぼくらを指さす。


 『む? そうか? 少年はまあ似ているが、赤髪の女は凶暴さが実物の方が上だし、胸のでかいエルフならダークエルフも同じように見えるが?』


 「誰が狂暴よ!!」


 姉さんはそういながらなぎなたソードを引き抜く。


 「もうめんどくさい! シェル強行突破するわよ!!」


 言いながら姉さんはなぎなたソードを振り切り込んでいく。


 「はぁっ! ガレント流剣技五の型、雷光!!」

 『ぬっ!』


 がきーんっ!


 「なにっ!? 私の抜刀術、雷光を受け止める!?」

 『いきなり斬って来たか? 面白い、相手をしてやろう!!』


 ばっ!


 姉さんの雷光を受け止めた燃える羽の悪魔は嬉しそうに槍を振る。
 姉さんはすぐに距離を取って身構える。


 「かあっ! 主よ手がはえーよっ!!」

 「仕方ありませんわ、セキ!!」

 「しょうがないわね、雑魚は任せて!」

 「はぁ、こうなったら仕方ない。実力行使ね!!」

 「おい、シェル大丈夫なのか!?」


 リュードさんも慌てて剣を抜く。
 エマ―ジェリアさんもセキさんに指示しながら援護魔法を唱え始める。
 シェルさんも姉さんの後ろについて精霊魔法の準備をする。
 そんなシェルさんに心配そうに聞くキシャラさん。

 でもこうなったら強行突破しかない!


 『さあ来るがいい! 俺はこの魔王城を守る朱雀! 相手をしてやろう!!』

 「行くわよ! ガレント流剣技六の型、逆さ滝!!」



 名乗りを上げる朱雀に姉さんは必殺の技を放つのだった。
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