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第五章
第120話5-21魔王城
しおりを挟む「シェルよ、大問題だ」
キシャラさんは戻ってくるなり開口一番そう言う。
「どうしたってのよ、キシャラ?」
シェルさんは飲みかけのお酒を置いてキシャラさんに聞き返す。
するとキシャラさんは首を振って言い始める。
「魔族の連中が町中にいない。そして代わりに魔王軍の連中が町のあちこちにいた。魔族の連中は何処かと探したんだが‥‥‥」
「まさか、悪魔に融合してしまったんですか?」
思わず聞いてしまう僕。
しかしキシャラさんは首を振って言う。
「いや、一所に集められてまるで石像かのように身動き一つしないで固まっていた‥‥‥ こっそり忍び寄って話しかけてみるが全く反応が無かった‥‥‥」
キシャラさんはそう言ってじっとシェルさんを見る。
シェルさんはしばし考えていたもののいくつかキシャラさんに聞く。
「固まっていたと言うけど、石化だったの? それとも息をしていて捕らえられていると言う事?」
「石化では無かった。ただ息はしていない。触ってみようとしたものの見えない何かに覆われて直接触る事は出来なかった」
それを聞きシェルさんはますます厳しい顔をする。
「空間事固定されたかもしれないわね。時を止められたと言った方が分かりやすいかしら?」
「そんなことが出来るの?」
シェルさんのその答えに姉さんは思わずそう言う。
しかしシェルさんは 難しい顔をしたまま話始める。
「時を止めると言うのは少し大げさだけど、空間に魔族を固定すると言う事は全ての活動を止める、それは生命活動も何もかもよ。あの人はそれが出来るけど、この世界でもう一人出来る人物、それが『世界の壁』が操れる『魔王』その人よ」
シェルさんは言いながら親指の爪を噛む。
「想像以上だわね。エルフの村に侵入して来た時点で気付くべきだった。魔王ミーニャは完璧に『世界の壁』をも操れるほどに強力になっている‥‥‥」
「あの、シェルさんその『世界の壁』って何なんですか?」
難しい話になって来てどうも理解が追い付かない。
ミーニャが魔王の力に目覚め凄いのは何となくわかるけど、その「世界の壁」って何だろう?
僕がその事を聞くと他のみんなも興味を持ってシェルさんの言葉を待つ。
シェルさんはみんなの顔を見てから軽くため息をついて話始める。
「これは古い女神たちでさえ知らなかった真実よ。この世界はあの人の言う所の『あのお方』と言う存在によって作られた世界。そしてそう言った世界は実はたくさんあって全ての世界は風船の様な壁で包まれているらしいの。だからこの世界でその壁を操れると言う事は女神にも匹敵する力を持っているって事よ。そしてその壁が壊れればこの世界自体が無くなってしまうの」
「え? じゃあ、ミーニャはその壁を操って色々な事をしてるって事ですか?」
「そうね、その壁を操れればこの世界で何処へでも転移が出来、この世界に異空間や異界を作る事も出来るわ、もっともその異界ってのは風船の上に出来たコブみたいな場所で厳密にはこの世界と壁同士でつながっている場所ね。但、代価を払えば別の世界から悪魔のような連中も召喚できる、それはこの世界の壁と異世界の壁をつなげると言う大技ね」
「あー、シェル。もう少しわかりやすく教えてくれないか? 何がなんだかちんぷんかんぷんだ」
シェルさんの説明に今まで静かにしていたリュードさんは我慢できず頭を掻きむしりながら聞く。
「要は魔王は女神に匹敵する力を持っているって事よ」
シェルさんは仕方なさそうにそう言うとリュードさんは大いに驚く。
「なっ! そんな奴に勝てるのかよ!?」
「魔王と言ってもその母体は十三歳の女の子よ? まだまだ精神的にも不安定、魔力成長だってまだ余力が有るような状態の子だもの、魂と体の結びつきだって完璧じゃない。だからそこに魂の枷がかけられれば私たちの勝ちよ」
それでもシェルさんは慌てるリュードさんに自信をもってそう言う。
リュードさんは姉さんを見てから言う。
「主よ、シェルの事だから奥の手の一つや二つは隠していると思うが、本気で魔王を何とかするつもりか?」
「勿論よ! ミーニャのやらかしたことは流石に度が過ぎるわ。もうこれは折檻部屋確定よ!」
リュードさんの質問に姉さんはぐっとこぶしを握って答える。
ああ、ミーニャは流石に折檻部屋の回避は無理だろうなぁ。
僕だってそこまで付き合うのは嫌だもんね、ミーニャ捕まったら大人しく折檻されて反省するんだね。
「それで、シェルどうするつもりだ?」
「おっと、話がそれた。それでキシャラ、魔王城はどうだった?」
事の成り行きを聞いていたキシャラさんだったけど流石にしびれを切らせてシェルさんに聞く。
でもシェルさんはすぐに魔王城についてキシャラさんに聞き返す。
「町の中央に真っ黒な外壁の城が有ったな。魔王軍の連中も出入りしていたからそこが魔王城だろう」
「大迷宮の魔王城はコクが趣味に合わないと言って破壊したけど、こっちにもたいそうな物を建てたようね?」
「シェル、魔王城の場所は分かった、そして住民も今は動けないのなら一気にミーニャを取り押さえに行きましょう!」
姉さんは言いながら立ち上がる。
もうミーニャのいる魔王城へはすぐなんだ。
魔族の人たちも早く解放してあげなきゃいけない。
僕も姉さんと並んで立ち上がるのだった。
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