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第五章
第112話5-13町の様子
しおりを挟む遺跡から出た僕たちはセキさんがその入り口自体を破壊して完全に埋めてしまった。
「とにかくモルンの町に行きましょう。私もかなり消耗しちゃったから早い所休みたいわ」
シェルさんにしては珍しく弱音を吐く。
何時も何処かしら余裕が有った感じだったのに今は本当に疲れたようだった。
僕たちは頷きモルンの町に向かう。
* * *
「珍しいわね、町の入り口に魔王軍らしき連中が見当たらない?」
シェルさんはそうつぶやき町の方を見る。
「いや、いるぞ。しかしなんか変だな? 人間の姿が見えないぞ?」
馭者の席に座っていたリュードさんが首をかしげる。
そして町に近づくと確かに門の影になるところに魔王軍らしき悪魔がいた。
僕たちはいつも通りに何気なしに門を通ろうとすると魔王軍がその行く手を阻む。
二体いる悪魔は手を横にして馬車を止める。
『ぐろろろろぉぉおおおぉ?』
「あんたら魔王軍だろ? 悪いが俺はあんたらの言葉は分からねえ」
リュードさんが馬車を止めた悪魔に話しかけられるも何をっているのか分からない。
するとその悪魔は一枚の紙を見せてくる。
そこにはお尋ね者として書かれた僕たちの似ていない似顔絵が有った。
「ん~、知らねえし俺たちじゃないぜ? そもそもそんな竜やでかい機械人形なんていないしな」
リュードさんはそう言ってとぼける。
もう一体いた悪魔が僕たちの荷台を見て回るけど戻ってきて頷くと町に入ることが許されたようだ。
僕たちの馬車はその後何事もなく町の中に入っていく。
* * *
「こりゃ一体どう言う事だ!?」
町の中は人っ子一人いなかった。
いや、人間はいないのだけどやたらと魔王軍の悪魔たちが多い。
中には人型とわかる程の上級デーモンもいる。
「おかしいわね、住人が一人も見当たらない‥‥‥」
「シェル様、なんかあの悪魔たちおかしいですわ。悪魔のくせして人間と同じ食事をしていますわ‥‥‥」
周りの様子を見て小声でそう言うシェルさんにエマ―ジェリアさんが向こうの屋台のような所を指さし小声で話す。
「ありゃ? 本当だ串焼き肉食べてる。あ~、でもちょっと美味しそうね?」
「セキ、今は我慢して。どうも様子がおかしすぎる」
セキさんは串焼き肉につられそうになるのを姉さんが止める。
でも確かにおかしい。
昔村に湧いて出たデーモンってまず人間と同じ食べ物何て食べないもんね。
あのリリスさんだって生き血は飲むけど僕たちの食べ物は口にしなかった。
「とにかくまずは宿屋に行きましょう。そこで情報を集めないとね」
シェルさんはそう言いながらぐったりしている。
「大丈夫なんですか、シェルさん?」
「ありがとうね、ソウマ。とは言え流石にさっきので消耗しているから早い所休みたいわ‥‥‥」
相当疲れているのだろう。
「シェル様、こうなったら私が誠心誠意シェル様の回復をお手伝いしますわ!」
なぜか少し顔を赤くして息が荒いエマ―ジェリアさん。
そして何故かよだれを拭く仕草をしている。
「主にシェルよ、あそこに宿屋が有るな。そこで良いか?」
「ええ、いいわ。とにかく今は休みたいしね」
リュードさんは見えてきた宿屋に馬車を向かわせるのだった。
*
「なんだこりゃ?」
馬車を止め、宿が取れるかどうか店に入ると一階の食堂にはなんと悪魔たちであふれかえっていた。
一体どう言う事かと思いながらカウンターを見るとそこの奥にも悪魔がいた。
怪訝に思いながら人型のそのカウンターの悪魔の所まで行って見る。
『ほう、珍しいな人間のお客かい? 旅の者かな?』
「え?、人の言葉をしゃべった?」
僕が驚くとシェルさんたちは苦虫をかみつぶしたような表情になる。
しかしカウンターの人型悪魔は笑いながら言う。
『ははは、俺も元人間だ、言葉をしゃべるのは当たり前だろう?』
「元人間??」
思わず聞き返してしまう僕。
するとその悪魔は気さくに話し始めた。
『ああ、ここモルンの町はな魔王軍がやってきて占拠されたんだが町の住民は殺される代わりに悪魔と融合すれば助かると言う事で嫌々全員がそれを受け入れたんだがな、いざ融合して見れば今までと何ら変わる事無く多少の外観や肌の色が変わるくらいで特に問題も無かったんだよ。勿論町の外への出入りは自由だし生活も今までとほとんど変わっていないからね。むしろ病気やケガがほとんどなくなってすこぶる調子が良いほどだよ』
一気に事情を説明してくれて笑っている。
「エリモアじゃそんな話聞いてないぞ!?」
『ん? そうか?? まあたいしたことじゃ無いし魔王軍が占拠してからあまり交易の往来もしなくなっちまったからなぁ。首都にまでこの話は行ってないのか?』
リュードさんも初めて聞いたようで驚いている。
そりゃぁ町全部が悪魔と融合した住民だなんて誰だって初耳だよ!
『んで、あんたら泊まりかい? それとも食事かい? ああ、食い物は人間のモノだから大丈夫だよ』
そう言ってまた笑っている。
「とりあえず部屋をお願い」
「じゃあ三部屋で良いかい? うちは一部屋二人までなんだよ」
そう言って鍵を渡して来る。
シェルさんはそれを受け取りお金を払う。
『ん? ガレント金貨かい? あんたらウェージム大陸から来たのか?』
「行商よ。いろいろな所へ行ってるわ」
『ふぅん、まあいいか。ああ、そうだ、こいつら見かけてないかい?』
そう言ってここでもあの手配書を引っ張り出す。
一瞬ドキッとしたけど、どうやらこの人も僕たちには気づいていないみたい。
「さあね、知らないわ」
しれっとシェルさんはそう言って「疲れたから休むわ」と言って二階に上がっていくのだった。
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