上 下
111 / 221
第五章

第110話5-8遺跡

しおりを挟む

 今日も野宿の時にセキさんに稽古をつけてもらっている。


 『まだまだ! もっと自分の内からの力を掴んで!』 


 竜の姿のセキさんは姉さんでも敵わないのじゃないかって程強い。
 死んだ父さんはそんな竜を一刀両断に出来たって聞いてたけど本当にそんなことが出来るのか信じられなくなってきた。


 「セキ相手にソウマもよくやるわね。その辺の竜が束になってかかっても全く歯が立たない相手なのにね」

 「一応は古の女神殺しの竜ですもの、神殿を守るのもその位の力が無ければですわ」

 見物しているシェルさんたちは野営の作業の合間に僕たちの稽古を見に来ている。

 
 「ううぅ、ソウマが強くなってくれるのはうれしいけど、毎回竜になる時のセキの裸をソウマに見せるなんて、なんてうらやまけしからんの! 私の裸もソウマに見てもらいたい!!」

 「女の裸はどうでもいいわな、それよりソウマ稽古終わったら一緒に水浴び行かないか? 俺が隅々まで洗ってやるぞ、ぐふふふふっ」


 
 なんか外野が騒がしい。

 僕は何度も技を繰り出す前に魔力の出所を探るけどそれがなかなか見つからない。
 剣や足に魔力を流し込む時にその出所を探す。
 そしてそれを見つけようとするのだけど、その前に技の分の魔力が溜まってしまい魔力が流れ出すのが止まる。
 そうするとその出先が見つからなくなってしまう訳だ。

 「くっ! ガレント流剣技二の型、二重の刃!!」


 がっ、ががんっ!!

 
 魔力消費をしながら技を繰り出す。
 でもセキさんの鱗一つに傷をつける事は出来ない。


 「あっ‥‥‥」


 ぼてっ。


 技を繰り出し終わって魔力切れが起こる。
 僕はその場に倒れて気を失うのだった。


 * * * * *


 「まだまだねぇ~。いったんコツを掴めばすぐにでも出来るのにね?」

 「セキ、それは魂に力が有る者のセリフよ。ソウマだって頑張っているんだから」

 気が付くとセキさんと姉さんが話している。
 僕は薄っすらと目を開くと、どうやら姉さんの膝枕の上の様だ。


 「あ、ソウマ気付いた? お疲れ様」


 「姉さん‥‥‥ 魂に力がある者って何?」


 僕がそう聞くと姉さんはぎょっとした表情をする。
 そしてセキさんと顔を見合わせる。


 「聞いてたのソウマ? まあフェンリルやシェル、あたしたちはもともと魂の器が大きかったり、太古の女神由来の魂でつながっているから『同調』がしやすいってのは事実なんだけどね」

 僕はセキさんのその言葉に起き上がりながら聞く。

 「では僕にはその魂が無いから『同調』は出来ないのですか?」


 「そんなことは無い! ソウマだって輪廻転生を何度もしてその魂が成長しているわ! だからきっとできる!!」


 僕の質問に答えたのは姉さんだった。
 そして僕に抱き着く。

 「ぶっ! ちょっと、姉さん!?」

 「ソウマだって十分に『同調』出来る魂のはずよ。私が見たってソウマの魂はきれいで大きいもの‥‥‥」

 「まあ確かにその資質は十分にあると思うよ? 前にも言ったけどソウマは強く成れる。たとえ古の女神様の魂に連なっていなくても」

 姉さんやセキさんにそう言われ僕は安堵の息を吐く。
 そうか、まだまだ僕にだってやれるんだ‥‥‥


 ぐうぅうぅぅぅ~


 「ソウマ君のご飯ちゃんと取ってありますわよ?」

 お腹が鳴ったのを待っていたかのようにエマ―ジェリアさんがお鍋を持ってきた。
 それは既に温め直されていた様で暖かそうな湯気が立ち昇っていた。

 「ま、まだまだ魔王城には距離があるから、ソウマももっと鍛えれれるわよ?」

 シェルさんは晩酌よろしくちびりちびりとお酒を飲みながらそう言う。

 僕は無言でうなずいてからエマ―ジェリアさんに晩御飯をもらうのだった。


 * * * * *


 「ちっ、何だこりゃ?」
 
 「もうすぐモルンの町だってのに‥‥‥」

 「この気配、放っておくわけにはいかないわね?」

 「なんでこんな所に遺跡があるのですの?」

 「禍々しいわね。シェル、これって昔は無かったわよね?」


 馬車で移動していた僕たちはみんなその異様な気配に気づいた。
 見れば街道から少し離れた丘にあからさまに遺跡の入り口の様な物が口を開けている。

 シェルさんの話だともうすぐモルンの町に着くはずだけど、こんなに禍々しい雰囲気の物をそのまま放置しておくわけにはいかない。

 「昔はこんな所は無かった。それにこの雰囲気、もの凄く前魔王イオマが作った異空間に似ているわ‥‥‥ 一体どう言う事?」

 「はぁ、シェル。放っておけないならちゃっちゃと片付けようよ!」

 「そうですわね、この様な不浄な空気を漂わせている物を放置しておくわけにはいきませんわね!」

 姉さんの問いにシェルさんは顎に指をあてながら少し考えて答える。
 セキさんもエマ―ジェリアさんも既にこの遺跡をどうにかするつもりのようだ。


 「そうね、これが一体何なのか確認はしなければならないわね。みんな、ちょっと寄り道になるけどこの遺跡を探索しておくわよ!」



 シェルさんのその決断にみんなは頷くのだった。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

妹に陥れられ処刑決定したのでブチギレることにします

リオール
恋愛
実の妹を殺そうとした罪で、私は処刑されることとなった。 違うと言っても、事実無根だとどれだけ訴えても。 真実を調べることもなく、私の処刑は決定となったのだ。 ──あ、そう?じゃあもう我慢しなくていいですね。 大人しくしてたら随分なめられた事態になってしまったようで。 いいでしょう、それではご期待通りに悪女となってみせますよ! 淑女の時間は終わりました。 これからは──ブチギレタイムと致します!! ====== 筆者定番の勢いだけで書いた小説。 主人公は大人しく、悲劇のヒロイン…ではありません。 処刑されたら時間が戻ってやり直し…なんて手間もかけません。とっととやっちゃいます。 矛盾点とか指摘したら負けです(?) 何でもオッケーな心の広い方向けです。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

私はただ一度の暴言が許せない

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。 花婿が花嫁のベールを上げるまでは。 ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。 「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。 そして花嫁の父に向かって怒鳴った。 「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは! この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。 そこから始まる物語。 作者独自の世界観です。 短編予定。 のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。 話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。 楽しんでいただけると嬉しいです。 ※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。 ※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です! ※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。 ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。 今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、 ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。 よろしくお願いします。 ※9/27 番外編を公開させていただきました。 ※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。 ※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。 ※10/25 完結しました。 ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。 たくさんの方から感想をいただきました。 ありがとうございます。 様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。 ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、 今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。 申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。 もちろん、私は全て読ませていただきます。

処理中です...