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第五章
第110話5-8遺跡
しおりを挟む今日も野宿の時にセキさんに稽古をつけてもらっている。
『まだまだ! もっと自分の内からの力を掴んで!』
竜の姿のセキさんは姉さんでも敵わないのじゃないかって程強い。
死んだ父さんはそんな竜を一刀両断に出来たって聞いてたけど本当にそんなことが出来るのか信じられなくなってきた。
「セキ相手にソウマもよくやるわね。その辺の竜が束になってかかっても全く歯が立たない相手なのにね」
「一応は古の女神殺しの竜ですもの、神殿を守るのもその位の力が無ければですわ」
見物しているシェルさんたちは野営の作業の合間に僕たちの稽古を見に来ている。
「ううぅ、ソウマが強くなってくれるのはうれしいけど、毎回竜になる時のセキの裸をソウマに見せるなんて、なんてうらやまけしからんの! 私の裸もソウマに見てもらいたい!!」
「女の裸はどうでもいいわな、それよりソウマ稽古終わったら一緒に水浴び行かないか? 俺が隅々まで洗ってやるぞ、ぐふふふふっ」
なんか外野が騒がしい。
僕は何度も技を繰り出す前に魔力の出所を探るけどそれがなかなか見つからない。
剣や足に魔力を流し込む時にその出所を探す。
そしてそれを見つけようとするのだけど、その前に技の分の魔力が溜まってしまい魔力が流れ出すのが止まる。
そうするとその出先が見つからなくなってしまう訳だ。
「くっ! ガレント流剣技二の型、二重の刃!!」
がっ、ががんっ!!
魔力消費をしながら技を繰り出す。
でもセキさんの鱗一つに傷をつける事は出来ない。
「あっ‥‥‥」
ぼてっ。
技を繰り出し終わって魔力切れが起こる。
僕はその場に倒れて気を失うのだった。
* * * * *
「まだまだねぇ~。いったんコツを掴めばすぐにでも出来るのにね?」
「セキ、それは魂に力が有る者のセリフよ。ソウマだって頑張っているんだから」
気が付くとセキさんと姉さんが話している。
僕は薄っすらと目を開くと、どうやら姉さんの膝枕の上の様だ。
「あ、ソウマ気付いた? お疲れ様」
「姉さん‥‥‥ 魂に力がある者って何?」
僕がそう聞くと姉さんはぎょっとした表情をする。
そしてセキさんと顔を見合わせる。
「聞いてたのソウマ? まあフェンリルやシェル、あたしたちはもともと魂の器が大きかったり、太古の女神由来の魂でつながっているから『同調』がしやすいってのは事実なんだけどね」
僕はセキさんのその言葉に起き上がりながら聞く。
「では僕にはその魂が無いから『同調』は出来ないのですか?」
「そんなことは無い! ソウマだって輪廻転生を何度もしてその魂が成長しているわ! だからきっとできる!!」
僕の質問に答えたのは姉さんだった。
そして僕に抱き着く。
「ぶっ! ちょっと、姉さん!?」
「ソウマだって十分に『同調』出来る魂のはずよ。私が見たってソウマの魂はきれいで大きいもの‥‥‥」
「まあ確かにその資質は十分にあると思うよ? 前にも言ったけどソウマは強く成れる。たとえ古の女神様の魂に連なっていなくても」
姉さんやセキさんにそう言われ僕は安堵の息を吐く。
そうか、まだまだ僕にだってやれるんだ‥‥‥
ぐうぅうぅぅぅ~
「ソウマ君のご飯ちゃんと取ってありますわよ?」
お腹が鳴ったのを待っていたかのようにエマ―ジェリアさんがお鍋を持ってきた。
それは既に温め直されていた様で暖かそうな湯気が立ち昇っていた。
「ま、まだまだ魔王城には距離があるから、ソウマももっと鍛えれれるわよ?」
シェルさんは晩酌よろしくちびりちびりとお酒を飲みながらそう言う。
僕は無言でうなずいてからエマ―ジェリアさんに晩御飯をもらうのだった。
* * * * *
「ちっ、何だこりゃ?」
「もうすぐモルンの町だってのに‥‥‥」
「この気配、放っておくわけにはいかないわね?」
「なんでこんな所に遺跡があるのですの?」
「禍々しいわね。シェル、これって昔は無かったわよね?」
馬車で移動していた僕たちはみんなその異様な気配に気づいた。
見れば街道から少し離れた丘にあからさまに遺跡の入り口の様な物が口を開けている。
シェルさんの話だともうすぐモルンの町に着くはずだけど、こんなに禍々しい雰囲気の物をそのまま放置しておくわけにはいかない。
「昔はこんな所は無かった。それにこの雰囲気、もの凄く前魔王イオマが作った異空間に似ているわ‥‥‥ 一体どう言う事?」
「はぁ、シェル。放っておけないならちゃっちゃと片付けようよ!」
「そうですわね、この様な不浄な空気を漂わせている物を放置しておくわけにはいきませんわね!」
姉さんの問いにシェルさんは顎に指をあてながら少し考えて答える。
セキさんもエマ―ジェリアさんも既にこの遺跡をどうにかするつもりのようだ。
「そうね、これが一体何なのか確認はしなければならないわね。みんな、ちょっと寄り道になるけどこの遺跡を探索しておくわよ!」
シェルさんのその決断にみんなは頷くのだった。
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