102 / 221
第五章
第101話5-2首都エリモア
しおりを挟む首都エリモアは古くからある街でその昔ホリゾン建国時には城塞都市だったそうだ。
「一番古い城壁は中央のあの辺だな。今はだいぶ街も大きくなっちまってあそこまでだいぶ距離が出来ちまった」
リュードさんに引き連れられて街への門もすんなり入れてその古い街並みを見ながら説明を受けていた。
ここにも魔王軍はいる。
でも特に僕たちが街に入るのに咎められる事は無かった。
中央に一番最初に出来たお城と城壁がある。
ここからだと結構な距離がありそうでお城の上の方が少しかすんで見える。
「またここって街が大きくなっていない?」
「冬に生き残るには街の方が良いからな。自然と人が集まって来る」
姉さんはお城を見ながらつぶやくとリュードさんはそう説明をしてくれる。
そして僕たちをお城の方へと連れて行く。
「どこに行くのですの?」
「俺の実家さ。ホリゾン家は城の近くに居を構えている。俺の一族はそこに住んでいてこの国を支える者と俺の様にティアナ姫を探す者とに分かれているんだ」
エマ―ジェリアさんは街をきょろきょろ見ながらリュードさんに聞く。
リュードさんは答えながらお城の近くの屋敷を指さす。
「見えて来た、あそこが俺の実家だ」
「うわっ、大きな屋敷ですね!?」
そこはこの街中だと言うのに広い庭がついていて周りが塀で囲まれた場所だった。
リュードさんは門まで行くと大声で人を呼ぶ。
「俺だ! リュードだ!! 役目を果たし帰って来た!」
開けっ放しの門から使用人だろうか?
数名の人がやって来てリュードさんを見て驚く。
「お帰りなさいませ坊ちゃま」
「おう、じいか。元気そうだな? それより親父殿と叔父殿はいるか?」
じいと呼ばれた老人はリュードさんの引き連れていた馬をすぐに若い使用人に連れて行かせる。
馬車から降りた僕たちも客人と言う事で屋敷に案内してくれた。
* * *
「今旦那様をお呼びします。少々こちらでお待ちください」
そう言ってじいと呼ばれた老人は一礼して部屋を出て行った。
応接間の様な此処で僕たちはお茶を出され待つことになった。
「まさかここがゾナーの一族の屋敷だったとはね。シーナ商会のエリモア支店のすぐ近くじゃない?」
「シーナ商会? なんでシェルがそんなもん知ってるんだ?」
お茶を飲みながらため息をついているシェルさんに首をかしげながらリュードさんは聞いている。
シェルさんはジト目でリュードさんを見ながら言う。
「五年前ベイベイの何処であたしに負けたか忘れたの?」
「うるせぇ、あんときゃちょっと女だからって気を抜いたんだよ! って、ベイベイ? 確かあの時は‥‥‥」
リュードさんはそこまで言ってぎょっとしながらシェルさんを見る。
「シーナ商会本店!? って事はシェル、お前シーナ商会の用心棒だったのか!?」
「何を言っているのですの!? シェル様はシーナ商会のオーナですわ!!」
思わず突っ込みを入れるエマ―ジェリアさん。
何故か偉そうに腕組みして「ふんすっ!」と鼻息も荒い。
リュードさんはそんなエマージェリアさんとシェルさんを見比べ頭の後ろを掻きながら言う。
「まさかシーナ商会ってのがシェルの店だったとはな‥‥‥ 主要都市には確実にある謎の大企業。どう言ったルートかは知らないがその品揃え、販路確保、僻地の村にまで品物を届ける機動力。どれひとつとっても普通の商会が太刀打ちできねえ化け物企業。お前がそのオーナーだったのか!?」
「まあ、オーナーと言うか、私たちの家と言うか。あの子たちの面倒を見ていたらいつの間にやらね。それに長い歴史のあるシーナ商会は色々と役に立ってくれているからね」
言いながらお茶をすするシェルさん。
「だとしてもだなぁ‥‥‥」
コンコン。
リュードさんが何か言おうとしたら部屋の扉がノックされた。
そして初老の男性が先ほどのじいと呼ばれた老人と一緒に入って来た。
「リュード、役目を果たしたと言っているそうだが、本当か?」
「けっ、せっかく戻って来たのに開口一番それかよ? ああ、とうとう見つけたぜティアナ姫を!」
リュードさんはそう言いながらソファーに座る僕たちにその初老の人物を紹介する。
「俺の父親で現ホリゾン家当主のギグナス=ホリゾンだ」
「お初にお目にかかる。私が当主のギグナスです」
そう言ってギグナスさんは胸に手を当てお辞儀をして挨拶をしてくる。
「『女神の伴侶シェル』よ。こっちは『爆竜のセキ』、そっちの女の子は『聖女エマ―ジェリア』そしてそこの赤髪がフェンリルとその弟ソウマね」
シェルさんが立ち上がり同じように胸に手を置きお辞儀をしてから僕たちを紹介する。
「『女神の伴侶シェル』殿ですか‥‥‥ 『爆竜のセキ』殿に聖女様まで。神話級の人物ばかりですな? して、リュードこちらの赤髪のお嬢さんが‥‥‥」
「ああ、とうとう見つけたぜ、ティアナ姫の転生者だ!」
リュードさんは姉さんをギグナスさんの前に引っ張り出す。
ギグナスさんは姉さんをじっと見ながら話しかける。
「失礼、あなたはティナ姫の転生者だと言われますが幾つか質問をよろしいでしょうかな?」
「私はフェンリルです。確かにティナ姫の転生者ですがフェンリルです!」
姉さんはそこだけは譲れないと言う風にきっぱりと言い放つ。
ギグナスさんは苦笑をしてから、それでも幾つか質問を始める。
「ではフェンリル殿、我が始祖ゾナーと勝負で使ったものは何でしょう?」
「ゾナーと勝負って、ああ、ティーカップの事?」
それを聞いたギグナスさんは目を大きく見開く。
そして続けざまに聞く。
「では勝負後我が始祖ゾナーに何をさせたか覚えておられますかな?」
「勝負後って‥‥‥ ああ、約束通り靴を舐めさせたって事?」
姉さんの回答にまたまたギグナスさんは目を見開く。
って、姉さんその昔この人たちのご先祖様に何させてんだよ!?
「まさしくティアナ姫ですな‥‥‥ 我ら一族に伝わる始祖の恥ずかしき記憶をこうも的確に言い当てるとは。この話は今では門外不出の秘話になっております」
「まあ、あの時は私も大人気無かったけど約束は約束だったからね‥‥‥」
「あー、母さん、じゃなくてフェンリル」
「だいぶ的確に思い出しているわね」
セキさんもシェルさんもやれやれと言う感じでため息をついている。
そんな中、ギグナスさんは姉さんの前に跪き頭を下げる。
「ティナ姫、よくぞお戻りになられました。我らホリゾン一族心より帰還をお慶び申し上げます!!」
「え? ええぇっ!?」
姉さんは驚きの声を上げるのだった。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
妹に陥れられ処刑決定したのでブチギレることにします
リオール
恋愛
実の妹を殺そうとした罪で、私は処刑されることとなった。
違うと言っても、事実無根だとどれだけ訴えても。
真実を調べることもなく、私の処刑は決定となったのだ。
──あ、そう?じゃあもう我慢しなくていいですね。
大人しくしてたら随分なめられた事態になってしまったようで。
いいでしょう、それではご期待通りに悪女となってみせますよ!
淑女の時間は終わりました。
これからは──ブチギレタイムと致します!!
======
筆者定番の勢いだけで書いた小説。
主人公は大人しく、悲劇のヒロイン…ではありません。
処刑されたら時間が戻ってやり直し…なんて手間もかけません。とっととやっちゃいます。
矛盾点とか指摘したら負けです(?)
何でもオッケーな心の広い方向けです。
転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです
青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる
それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう
そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく
公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる
この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった
足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で……
エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた
修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た
ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている
エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない
ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく……
4/20ようやく誤字チェックが完了しました
もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m
いったん終了します
思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑)
平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと
気が向いたら書きますね
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる