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第四章

第90話4-21ソウマもしかして大人の階段を上る?

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 なんだかんだ言ってサボの港町で騒然とする中僕たちは宿を見つけた。

 
 「お客さん、運がいいね。なんでも魔王軍より凶暴な連中が町の外に現れたらしいよ。魔王軍もそいつらに殲滅させられたって話だから今は町を出ない方が良いよ」

 宿屋のおじさんはそう言って外の様子を見る。
 なんかこの町って魔王軍をやたらと信頼していると言うか、好意的と言うか。

 「ふーん、そんなにおっかないのがいるんじゃ商売あがったりじゃない?」

 「困ったもんだよね。ああ、部屋は二つで良かったんだね?」

 「はい、そうです!!」

 シェルさんは宿屋のおじさんにそう言いながら鍵を二つ受け取ると姉さんが勢いよく答える。
 そしてシェルさんから宿屋のおじさんに渡された鍵のうち一つを受け取るとものすごく嬉しそうに目を輝かせる。

 何なのだろうね?


 「フェンリルさん何かおかしいですわね? どうしたのでしょうかしら?」

 「ぬっふっふっふっふっ~それは内緒ね。まあ後はフェンリル次第だけど。相談にも乗ったし、約束もこれで果たしたしね~」

 「シェル、また何か良からぬ事を企んでいるの? あんまり母さんをいじめないでよね?」


 後ろで何かエマージェリアさんたちが話している。
 でもそんな事お構いなしに姉さんは僕の手を取り二階に引っ張りながら言う。


 「それじゃあシェルさんおやすみなさい! 晩御飯はこっちで何とかしますから!!」

 「はいはい~、じゃあ頑張ってねぇ~♪」


 え~?
 宿屋の食堂で美味しいもの食べられるんじゃ無いの?
 それにもう寝るつもり?
 ああ、もしかして姉さん魔王軍やっつけるので疲れちゃったのかな?
 じゃあ仕方ない。

 僕もシェルさんたちに挨拶して仕方なしに姉さんと二階に行く。


 * * *

 
 部屋に行ったらベッドが一つしか無かった。


 「あれ? この部屋ベッド一つしかないよ?」

 「そ、それはほら、大きいベッドだから問題無いでしょ?」

 僕はため息をつきながら部屋に入る。
 また姉さんと一緒か。
 姉さん一緒に寝ると必ず抱き着いてくるんだよなぁ。


 「はぁ、僕もシェルさんたちと一緒の方が良かったかな?」

 「なっ! 何言ってるのソウマ!! そ、それにあっちの部屋もベッドの数が少ないから誰かと一緒に寝る羽目になっちゃうじゃない!? 駄目よソウマは私と一緒なんだから!!」


 そう言う事?
 まあベッドが少ないんじゃ僕と姉さんが一緒じゃ無きゃまずいもんね。

 僕は仕方なしに部屋に入って備え付けのテーブルの上に装備を外し始めて置く。
 姉さんも装備を外し始めポーチの中から着替えやら何やら出し始める。

 ちなみにアイミはまたまたポーチに入れられている。
 流石にアイミを連れて建物には入れないもんね。
 ポーチにしまわれる時にアイミがしゅんと耳を垂れたのがちょっとかわいそうだけど仕方ない。

 食事は自分たちでどうにかするからって姉さんはポーチから食べ物を出すけど部屋で調理するわけにはいかない。
 なので携帯食を出すはずなのだけど‥‥‥


 「はい、ソウマ! ご飯も出したから一緒に食べちゃいましょう!」


 「姉さんこれは‥‥‥」

 ポーチから出された食事はお皿に盛りつけられた湯気の立つ物ばかりだった。
 しかもずいぶんと栄養の高そうなものばかり。

 すっぽんとか蛇とか大粒の貝とかがニンニクの香りのする美味しそうな料理になっている。
 ちなみに姉さんの好きな熊肉らしい物もある。


 「なにこれ? 凄いご馳走じゃないか!」


 「た、たまには良いでしょ? ソウマも長旅で久しぶりにベッドでちゃんと眠れるんだから、精の付く食べ物で栄養を補給しなきゃ‥‥‥ そ、その、この後の為にも//////」

 姉さんはそう言いながらポーチから飲み物も出す。
 珍しくお酒の様だった。

 姉さんもたまにはお酒飲んでいたみたいだからこう言った豪華な料理の時には飲みたくなるのかな?


 「でもなんかみんなに申し訳ないね。こんなに豪華な食事なのに。それにしても何時作ったんだよ姉さん?」

 「あ、旅の途中で時間のある時にちょっとずつ作ったの。ポーチに入れておけば出来立てのままだし、冷める事も無いから‥‥‥//////」

 姉さんは何となくもじもじとしながら僕を見る。
 なんかまた変になって来た、姉さん?

 僕は首をかしげながらも早速その料理に手を伸ばすのだった。


 * * *

 
 「ご馳走さまでした~。ふう、美味しかった!」

 「そ、そう? それは良かった。じゃ、じゃあソウマ先にお風呂に行ってきて‥‥‥」

 姉さんはそう言いながら食器を片付け始める。
 でも風呂ったって下に行ってお湯をもらってこなきゃだよね?


 「じゃあ僕お湯もらってくるね」

 「ソウマ! 大丈夫!! この部屋はお風呂が付いているから!!」

 僕は部屋を出て宿屋のおじさんにお湯をもらいに行こうとしたら姉さんに止められた。
 そして姉さんは部屋の向こうにある扉を指さす。


 「シェ、シェルさんが久しぶりだからってお風呂とトイレ付きの良い部屋にしてくれたの! だからもう部屋を出なくていいんだよ? ソウマもお風呂で奇麗にしてきてね?」


 「え? そんないい部屋だったんだ。なのにベッドは一つって変なの。まあいいや、じゃあ先にお風呂入って来るね!」

 僕は着替えを持ってお風呂に向かう。
 早い所お風呂を済まさないと姉さんがまた乱入してきて隈なく洗われちゃうかもしれない。   
 
 ちらりと姉さんを見ると何やらいそいそと片づけをしたりポーチから何かを取り出したりとしている。

 うん、これなら大丈夫そうだね。


 僕はお風呂で長旅の汚れを洗い流すのだった。


 * * *


 「あれ?」

 お風呂から出てきたら部屋の雰囲気がガラッと変わっていた。
 
 これって御香かな?
 良い匂いもするし、魔法がかかった燭台とかも変わっている。
 部屋全体も模様替えしたかのように薄暗いけど適度な明かりがあってベッドの周りにもテーブルが増えていてその上には飲み物や小瓶が置かれている。


 「ソウマ、お姉ちゃんもシャワー浴びて来るからベッドで待っててね‥‥‥」


 顔を赤くした姉さんが僕に話しかけてくる。
 
 「ああ、ちょっと長湯しちゃったもんね。大丈夫だよ、姉さんもゆっくりとお風呂入って来てね」

 僕はそう言いながらテーブルの上の水を取って飲む。
 って、これってちょっとお酒が混じってる?

 かなり薄くはなっているけどほんのり甘い味とアルコールっぽい感じがする。
 姉さんに聞こうと思ったらもうお風呂に行っちゃったようだ。

 うーん、お酒って僕は弱いんだよな。
 普通の水は無いのだろうか?
 きょろきょろと見わたしても無い。

 仕方なしに自分で【水生成魔法】を唱えて手のコップに水を満たす。
 こう言った簡単な魔法、明かりの魔法や点火の魔法、水の生成魔法は村でもみんな先生に習って誰でも使える。
 ただ、常温の水なので少しぬるい。


 「あら? どうしたのソウマ??」

 僕が自分で作った水を飲み干した頃姉さんがお風呂から出てきた。
 ずいぶんと早いなと振り返り姉さんを見て思わず変な顔をしてしまう僕。


 「姉さん、何その恰好?」


 「うん//// に、似合うかな?」

 姉さんは赤を基調としたスケスケの肌着っぽい物を着ていた。
 胸当てなんかしていないから大きな胸がほぼ丸見え。
 まったくなんて格好してるんだろうね?


 「姉さん、そんな薄着じゃ風邪ひくよ?」

 「だ、大丈夫よ。それよりソウマそろそろ一緒に寝よう//////」


 顔を赤くしたままの姉さんはもじもじとそう言う。
 まだ時間的にちょっと早いけど久しぶりのふかふかのベッドだもんね。
 姉さんと一緒ってのが少しあれだけど、地面に寝そべるのとは違ってよく眠れそう。

 僕はベッドに上がるとすぐに姉さんもベッドに上がって来た。


 いや、僕の上に上がって来た?



 「姉さん、重いって」

 「ソ、ソウマ! 優しくするからね! お姉ちゃんに全部任せていいんだからね! は、初めてでもティアナ姫の記憶でやり方も何も良く分かってるから大丈夫だからね!!」


 はぁ?
 何を言っているんだろう姉さんは?

 はぁはぁとなんか息が荒い。
 まさか本当に風邪ひいちゃったの!?


 「ソウマぁっ!!」


 「えっ? ちょっと! 姉さん何僕の服脱がせるの!? 寒いんだったら自分の服出して着なよ!!」

 ばっ! と姉さんに上に着ていたものを脱がされる。

 だからあんなスケスケの薄い服じゃ駄目だって言ったのに!
 それに僕の服じゃ姉さんのその大きな胸は入らないってば!!



 「ソウマぁっ!!」




 姉さんはそう言って僕に抱き着いてくるのだった。
 
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