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第三章

第66話3-25フェンリル大乱闘

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 「ぶっとばすぅっ!!」


 既にダグスさんたちをぶっ飛ばしてから姉さんは宣言をする。
 勿論そのすぐ後ろでシェルさんたちも容赦ないお仕置きを始める。


 「ひぇええぇぇぇぇぇっ! お許しおぉっ!!」


 「後二回三途の川を見たら許してあげる。あ、逃げても地の果てまで追いかけていくからね!」

 「はい、セキこの人治しましたわ。またやっちゃってくださいですわ」

 「逃げようとか甘いわね。風の精霊よ!!」

 『ほらほらぁ~私の鞭の味はいかがぁ? サキュバスが何時も良い思いさせてあげると思ったら大間違いよ!!』


 うん、ダグスさんたち阿鼻叫喚。
 目の前で起こっているこの凄惨な光景に流石のハーピーたちもドン引きしている。


 「ソウマを足蹴にした奴は何処よ!? 十倍返しにおまけ付けて地獄を見せてあげるわ!! アイミ、そいつも捕まえて!!」

 「わたしじゃありましぇーんっ!!」


 涙目のダグスさん。

 でも姉さんは容赦なく一人一人ぶっ飛ばしていく。


 「ソウマ、オトコタチコロスノカ?」

 「ええとぉ、流石に殺す所までは行かないと思うけど、これでエデルやサスボの村の人も大人しく帰ってくれると思いますよ?」

 オサさんが心配そうに見ているなか、とりあえずこっちの話も落ち着きそうだ。
 僕はしばし目の前で起こっている凄惨な光景から目を背け見なかった事にしているのだった。


 * * * * *


 「それじゃぁあんたら自力で村に帰る事ね。まじめに働きなさい」


 エマ―ジェリアさんに元通り体を治してもらって全員が正座してシェルさんの前に並んでいた男の人たちはガクガクブルブルしながら首がもげるのではないかと言う程上下に頭を振っていた。


 「ソウマ、カンシャスル。オトコタチイナクナル、コドモモウフエナイ、ココオチツク」

 オサさんはそう言いながらしっしっと羽を振って男の人たちをこの洞窟から追い出す。

 でもこの下って断崖絶壁なのにどうやって帰るのだろう?
 そう思っていると脇の穴から順次ダグスさんたちはどこかへ消えて行った。


 「あの穴は何なのだろう? ダグスさんたち無事帰れるのかな?」

 「アノアナニンゲンカエルアナ。ガケノシタマデイケル」

 オサさんはそう言って翼を振ってから閉じる。
 他にいた若そうなハーピーの女の子たちはダグスさんたちがいなくなるのを残念そうに見送っていたけど見えなくなると今度は僕に寄って来る。


 「ぴぃいい~ぃ」

 「ぴいぴい」

 「ぴぴ?」


 何言ってるかは分からないけどオサさんが一喝するとすぐに向こうの影にまで逃げて行った。


 「さてと、言葉の分かるのがいて助かるわ。アイミから状況は聞いたけど私たちは『ハーピーの雫』が欲しいの。協力してもらえる?」

 「オマエタチナニモノ? ソウマノナンダ?」

 オサさんは首をかしげシェルさんを見る。
 シェルさんはふっと笑って言い放つ。


 「ソウマの保護者よ!」

 「シェルさんそれ私です!!」

 「ソウマはそうね、可愛い弟分かな?」

 「確かに、ソウマ君は手のかかる弟みたいなものですわね」

 『あ~、ソウマ君は魔王様の意中の人で、あたしにとっては味見したい対象なんだけどね~。ソウマ君、魔王様の後でちょっとだけ味見させてね!』


 一斉に答えるみんな。


 ぴこぴこ!


 なんかアイミまで言ってるし。
 しかしオサさんはまだ首をかしげる。

 「ソウマオマエタチノツガイチガウカ? ナラソウマダケココノコル。ソウマノコドモダケヒツヨウ」


 「なぁっ! ダメぇっ!! そ、そんなのお姉ちゃん許しませんからね!! ソウマっ!!」

 「いや、僕何も言ってないよ姉さん?」


 オサさんが言った瞬間姉さんは髪の毛を逆立てて僕に抱き着く。
 そしてエマ―ジェリアさんは赤くなって僕を睨めつけるしセキさんも困り顔でシェルさんを見る。 

 「ソウマ君、やっぱりここで大人の階段上るつもりだったのですの!? 不潔ですわ!!」

 「う~ん、ソウマを此処に残すのはだめよね、シェルどうするの?」

 シェルさんは顎に指を当ててちょっと考えてからオサさんに言う。


 「言い方が悪かったわね。私たちにとってソウマはあなたたちの言うツガイよ。だからソウマをここに置いて行く事は出来ないわ」

 「シェ、シェルさん!? まさかシェルさんまでソウマに興味を持ったんですか!? 駄目です、いくらシェルさんでもソウマはあげられません! ソウマは私のですっ!!」

 シェルさんの答えにフェンリル姉さんはまたまた僕に強く抱き着く。


 「ソウマオマエタチノツガイカ? ナラシカタナイ、アキラメル」

 オサさんは翼を一回はためかせてから残念そうに僕を見る。
 そんなオサさんにシェルさんはずいっと前に出て話を始める。


 「それで、あなたたちに是非とも協力してもらいたいのだけど?」

 「ナニヲキョウリョクスル? エサスクナイ、コレカラエササガシイソガシイ」

 少し憤然としながら答えるオサさんにシェルさんはにまぁ~っと笑ってからポーチから沢山の果物とかを引っ張り出す。


 「餌ならこれを分け与えてあげるわ! だから悪いようにはしないからあなたたちの生娘を数人私たちに貸してね。大丈夫、天井のシミでも数えていればすぐ終わるから!」


 びっと指を立ててそう言うシェルさんにオサさんは果物とかを見て大いに喜ぶ。

 「オオゥ! コンナニタクサンエサアル! コレデシバラクココダイジョウブ! ワカッタ、ムスメタチカシダス!!」

 「良し、交渉成立! リリスお願いね!!」

 『良いわよぉ~! あたしは男も女も両方いける口だからね!!』

   

 満面の笑みのリリスさんが肩を回しながら来るのだった。 
 
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