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第三章

第62話3-21深夜の攻防

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 その晩は村長のライカさんの家に泊めてもらう事となった。


 「たいしたもてなしは出来ませんが、どうぞゆっくりして行ってください」

 「ありがとう、そうさせてもらうけど、その子たち大丈夫なの?」


 シェルさんはラザさんを指さす。

 ラザさんは何故かよだれを垂らしながら僕を見ているけどまさか僕がおいしそうに見えるってことは無いよね?


 「勿論客人に迷惑はかけませんよ。我が家にいれば問題無いでしょう」

 『この人も大丈夫なんでしょうね?』

 リリスさんは何故かラザさんを指さす。
 するとラザさんは途端に目線を泳がせ下手な口笛を吹く。


 「ひゅぅ~、ふぃゆぅ~」


 ライカさんはそんなラザさんにため息をついてから言う。


 「ふう、ラザよお前にはこの件が片付いたらサスボの村から婿をもらうからね。余計な事をするでないよ」

 「えぇっ!? サスボの連中は嫌よ! 私はソウマ君見たいのが好みなのに、ねえソウマ君は私の事どう思う?」


 いきなり振られて僕はラザさんを見る。
 
 質素な格好はうちの村と同じだけど、姉さんより少し年上かな?
 元気そうな感じのお姉さんだけどフェンリル姉さん程胸は大きくはない。
 その代わりもの凄く家庭的な感じがする少しおっとり系の美人さん。
 
 
 「えっと、その奇麗な方だと思いますよ?」

 「まぁっ! お上手!!」


 僕が答えると今まで睨んでいたラザさんは素直に喜んでくれた。


 「ソウマ君、そう言う所が素で怖いですわ。まさしくお姉さんキラーですわ!!」

 「ソウマぁ~っ!」

 『ふぅうぅん、ソウマ君意外と上手いわね?』


 でもエマ―ジェリアさんは僕をジト目で見て姉さんは涙目になる。
 リリスさんも親指立てながら僕を見てにやりとする。

 
 そしてラザさんは僕にぐっと近づいて来て言う。


 「ねぇねぇ、ソウマ君が良ければ今晩お姉さんと一緒に寝ない? 後悔させないわよ?」

 「ちょっ! ラザさん!! ソウマは私と一緒に寝ます!」


 ラザさんの話にフェンリル姉さんはすぐに抗議して僕を引っ張る。


 「だいぶ切羽詰まっているのね?」

 「お恥ずかしい。若い連中は好みの男を見るとすぐこれなのです。ラザいい加減におしっ!」

 そう言ってライカさんはラザさんの耳を引っ張る。

 「いたたたたたっ! 分かったってば、母さん!!」


 とりあえずその場はそれで落ち着くのだった。


 * * * * *

 
 「えぇ~とぉ、これは一体どう言う事?」


 もてなしの食事をして雑談後に空いている部屋で休ませてもらう事になったけど、寝具が少ないからと言って姉さんはさっそく僕に抱き着いて寝ようとする。
 
 魔法のポーチに家財一式入っているんだから布団位いくらでも出せそうなモノなのに。


 それでもこの部屋で姉さんは僕に抱き着いて来てそのすぐ横にはリリスさんが座っている。
 そして頭の近くにエマ―ジェリアさんが陣取り足元にはセキさんが、そしてすぐ隣にシェルさんが横になる。


 「大丈夫よ、ソウマの事はお姉ちゃんがちゃんと守ってあげるからね!」

 『あたしは寝る必要ないから見張ってあげるわ』

 「ソ、ソウマ君が何処かに行かない様に私もここで寝てあげますわ!」

 「となるとあたしはこっちよね? まあ何処で寝ても良いんだけどね」


 姉さんもリリスさんもエマ―ジェリアさんもセキさんもここは家の中だからハーピーには襲われないと思うけど?


 「まぁ、どちらにせよソウマにとって今晩は一番危ないかしら?」

 隣に横になりながらシェルさんはくすくすと笑いながらそう言う。
 近くにいるお陰でふわっとシェルさんの良い匂いがする。

 思わずドキリとするけど、なんかみんなが今日はやたらと近くで眠るので何となく僕もドキドキしてしまう。
 すると姉さんが僕に向かって聞いてくる。

 「ソウマ、もしかしてお姉ちゃんにドキドキしてる? くぅうぅぅぅ、他に人がいなければもっとソウマと仲良くするのに!」

 「もう充分に仲良しでしょうに、姉さんはくっつきすぎ!」

 「ソウマぁ~、もう、ソウマのいけずぅっ!!」

 姉さんを無視して僕は目をつぶるのだった。


 * * * * *


 『来たわね?』

 「だ、駄目ですわよ! ソウマ君は大人の階段上っちゃだめですわぁ!」

 「もう、眠んんだからいい加減にしてよぉ~、じゃなきゃドラゴンブレス吐くわよ!?」

 「ぁらぁ、こんな手で来るのね? でも残念、まだまだね?」

  
 なんか騒がしい?
 まだ眠い目をこすって顔を上げようとするとやわらかいものが顔を覆う。

 
 ふにょんっ!


 んんっ、これって姉さんの胸?
 相変わらずやわらかくて大きいのだけどこれ以上押し付けられると窒息するんだよね。


 「ぅん~ん、姉さんこれ以上胸押し付けないでよぉ、息できなくなるぅ~」


 冬場は暖かいから良いのだけど息が出来なくなるのは困る。
 僕はまだねむい頭を振りながら目を開こうとすると姉さんがぐっと僕の顔を胸に押し付ける。


 「ぶっ! ねぇさん~! 苦しいぃ~」

 「いいからソウマは目をつぶったままでいなさい! あんなのソウマには見せられないわ!!」


 一体何が起こっているってんだよ?
 まさかハーピーが部屋の中まで乱入でもしたの?

 殺気とか無いから全然気づかなかったけどシェルさんたちが対処してくれているの?

 だんだんと僕も目が覚めて来るけど顔を動かそうとすると姉さんが更に強く抱きしめる。


 ちょっ! 
 こんな時に何やってるんだよ姉さん!!
 
 僕もハーピーの強襲に対処しなきゃいけないってのに!!


 「むぶぅぶぐぅぅぅぅぅぅっ!」

 「いいからソウマは目を閉じなさい! 見ちゃだめよ!!」


 だから何を見ちゃダメなんだよ!?
 そうは思っているけど更に姉さんが強く抱きしめるからせっかく目覚めても息が‥‥‥


 大変だって言うのに僕は姉さんのせいで意識が遠のいしまうのだった。



 * * * * *


 「はっ!?」


 目が覚めた。
 でもなんかいつもと違う。


 僕は慌てて起き上がり見るとすぐ近くになぎなたソードを床に突き立てて姉さんが片膝ついてうなだれていた。
 
 そして気付く。

 
 「あ、あれっ? 部屋は!?」


 ハーピーの相当な攻撃だったのだろう、村長さんの家が壊滅状態だった。
 床が残っているけど壁もほとんど壊れて無くなっている。

 慌てて周りを見ると姉さん同様にシェルさんもリリスさんもエマ―ジェリアさんも、そしてセキさんも同じくうなだれていた。


 「み、皆さんどうしたんですか? 大丈夫ですか!?」


 起き上がりみんなに声を掛けるとかなり疲れた感じで僕の方を見る。
 そしてぐっと親指を立てて「大丈夫、ソウマは守ったわ」とかシェルさんが言う。


 一体何がっ!?


 「ま、まさかあれ程とは‥‥‥ でも、何とかソウマは守ったわ‥‥‥」


 ばたっ!


 そこまで言って姉さんはその場に倒れ寝息を立てて眠り始めてしまった!?
 

 「姉さん!?」


 僕が驚き姉さんの肩に手をつくと他のみんなも同じように倒れて寝息を立て始めた!?

 そして僕は更に気付く。
 家の周りや隣の部屋だった場所に村の女性たちと村長さんのライカさんや娘さんのラザさんも倒れている。

 そして姉さんたち同様寝息を立てていた。


 「お、恐るべしハーピー。姉さんたちでさえここまで疲労させるなんて!!」




 とりあえず僕は近くにあった毛布を姉さんたちにかけるのだった。
  
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