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第三章

第49話3-8そう言う趣味

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 「それじゃあその水龍ってのは生きているのね?」


 シェルさんの問いにピンクのツインテールの悪魔の女の子は頷く。
 
 『知り合いならあいつに言ってよねこれ以上あたしたちに付きまとうなって!』


 どうやらその水龍ってのも大丈夫みたいだけどそうするとブーズさんたちが言った水龍ってどうなったんだろう?


 「どう言う事よ、あんたらリザードマンはその後水龍に会っていないの?」

 セキさんのその問いにブーズさんは首を縦に振る。

 「はい、この悪魔たちをどこかへ追い払ってもらいたいとお願いして引き受けてもらった後に倒されたと聞きその後は会っておりませぬ」
 

 だったらどこ行ったのだろう?


 『あいつはあたしにべったりなのよ! とにかくあんたたち付いて来てくれる?』

 そう言ってそのピンクのツインテール悪魔は踵を返してずかずか戻っていく。
 僕たちは顔を見合わせたけどとりあえずこの子に付いて行く事にした。


 * * *


 『はぁ、魔王様ったらなんであんな物欲しがるのかしら? 確かにあのアイテムは超レアアイテムで初めての時に使うには便利なアイテムだって聞いたけど。ん? そう言えば魔王様ってまだなんだっけ? と言う事は好きなお相手がいらっしゃるの!? なるほど、そう言う事かぁ~!! 言ってくださればこのリリスが手取り足取り色々とお教えできたのにぃ~』


 なんか愚痴から始まり世間話になり、今回の任務についてまでべらべらと勝手に喋りまくるピンクのツインテール悪魔。


 悪い人じゃ無いのかな?
 それにミーニャと同じくらいの歳っぽいし、部下とか言っているけどミーニャとも仲良いのかな?


 「で、あんたら世界中に飛ばされてそのレアアイテム探させられているって訳?」

 『そうなのよ~、でもそんなもの簡単に手に入る訳無いじゃん! だったら魔王様に私らサキュバスが手ほどきさせていただいて意中の男をがっつりと捕まえる方法をお教えした方が早いってのに』

 シェルさんの質問にもポンポンと答えてくれる。
 そしてなぜかシェルさんは僕を見てため息をつく。


 「まあその意中の男ってのがあまりにも純情でそっちの方面に疎いから難しいのじゃない? それにまだ十二歳よ?」


 『十二歳にもなれば出せるわよ! でなきゃあたしらが搾り取ってあげるわ!!』

 「人間ってそうなの? そんな若くて搾り取れるもんなんだ?」


 なんかシェルさんとあのピンクツインテール悪魔の会話にセキさんも混ざり始めた。


 「そ、そうなんだ。やっぱりもう出せるんだ‥‥‥」


 あ、なんか姉さんもそっちに混ざり始めた?


 『そもそもねぇ~』


 なんか難しい話なのかな?
 シェルさんもセキさんも姉さんまでもが向こうであのピンクツインテール悪魔の話を興味深く聞いている様だ。

 僕はふよふよ浮くアイミの背中でぐったりしているエマ―ジェリアさんに聞く。


 「あれって何の話なんでしょうね?」

 「ソ、ソウマ君は聞いてはだめですわぁ~。って、突っ込む元気もまだありませんわぁ~」


 未だぐったりしたままだった。
 そんな事を言っていたら目的地の沼に着いた。


 『リリス様』

 赤い悪魔に呼ばれたピンクのツインテール悪魔は姉さんたちに話し込んでいたのをやめてそちらに行く。


 『おっと、着いたか。こっちよ! さああの変態にガツンと言ってやってね!!』

 そう言っておもむろにブーツを抜いて沼に片足を突っ込む。
 そうしてしばし待つ。


 「はぁぁぁぁぁ、そ、そうなっていたのかぁ~。また一つソウマについて詳しく分かったわ! もうこれで初めてもばっちりね!!」

 「でも剥かないといけないだなんてまるで脱皮ね?」

 「そこはほら、『一皮むけて』って言葉もある通りなのよ。剥けた方が引っかかりとかよくなって絶対に良いんだって!」


 なんか少し赤くなった姉さんとうんうん頷いているセキさん、それにシェルさんもニヤニヤしながら戻って来ていた。 


 そして姉さんは僕を見てぐっと拳を握り高々に宣言する!


 「ソウマ、お姉ちゃんに任せてね! これで更にいろいろと詳しくなったからソウマを立派な大人の男にしてあげられるわ!!」


 「ううぅ~フェンリルさん頭に響くからお静かにお願いしますわぁ~。そして駄目だこの人ですわぁ~。更にソウマ君は知らなくていいのですわぁ~ぁぁ‥‥‥」

 姉さんの言葉にいつもの切れがないエマ―ジェリアさんが突っこみを入れている。


 なんなんだろうね?


 そんな事を思っていたら沼の水がいきなり盛り上がりざばーっという水柱が立ってそこから大きな竜が首をもたげた!?


 『ぬほぉおおぉぉぉぉっ!! リリスちゃんの生足だぁッ!!!! お願いです、それで踏んでぇっ!!』


 「「「「はぁッ!?」」」」


 いきなり現れたその水龍に僕や姉さん、シェルさんにセキさんも思わず声を上げる。


 『ほらぁ、すぐこうなのよ! こいつ硬いから殴っても致命傷にならないし、ぶっ倒してもむしろそれを喜んでまとわりついてくるのよ!!』


 ピンクのツインテール悪魔がそう言うとセキさんがずかずかその水龍の近くまで行っていきなりぶん殴った。


 バキッ!!


 『ぐはぁっ! 何する女!! 今の本気で痛いじゃないか!? 防御して無かったら危うく死んじゃいそうな打撃じゃないか!?』


 「あんた、相変わらずね? クロエに踏まれても懲りないし、コクのスカートの中覗こうとかしてたし」

 シェルさんがそう言ってずいっと出るとその水龍は首をシェルさんに向けてしばしじっと見ている。

 見ている。

 見ている。

 見て‥‥‥


 『ななななななっ! こ、黒龍様と一緒にいたエルフではないかぁーっ!?』


 どうやらシェルさんの事を思い出して大いに驚いている様だった。

 「思い出した? あんた相変わらずのようだけど何やってんのよ?」 

 水龍は脂汗をだらだらと流しながらシェルさんから視線を外しもごもごと言い始める。


 『こ、これはぁ~、そ、そう、悪魔どもが警戒するのを避けるためにだなぁ~』


 『いや、あたしの生足に反応する時点で危ない奴以外の何者でもないわよ? 無茶苦茶警戒対象よ?』

 つかさずピンクのツインテール悪魔に突っこみを喰らう。
 水龍はググっと唸って更に脂汗をだらだらと流し始める。

    
 「おいこら若造、このあたしがわざわざ出向いてやっているってのにそんな事ばかりしていたのか?」


 セキさんが僕も分かるほど殺気をまき散らしている。
 どうやら水龍もそれに気づいたようだ。


 「さっきから何なんだ女? こんなおっかない殺気放つとはいったい何モンだ!?」

 「あたしは赤竜のセキ! おいこら若造! その性根を叩き直してやろうか!?」

 『ひっ!? せ、赤竜!? まさか、太古の赤竜様ぁ!? そんな、黒龍様にも劣らぬカタストロフィぃー!?」


 「誰が災害よ!?」


 バキッ!!


 セキさんに殴り飛ばされて水龍は悲鳴を上げながら泣きを入れる。


 『すいません! ごめんなさい!! もうしませんから許してぇっ!!』

 「踏まれるのが好きなんでしょ! だったら思い切り踏んでやるわ、この竜族の面汚しぃ!!」


 どがががががっ!!


 『どひぃぃいいいいぃぃっ! もう許してぇ! ほんと、死んじゃうからぁッ!!』


 ぶぎゅるっ!


 最後に頭をセキさんに踏まれてぐりぐりとされる。


 「ふんっ! 深く反省するが良いわ!」

 ぷいっ!


 セキさんはそれでも怒りが収まらないかのようにずかずかとこっちへ来る。
 そして僕を見るとぐっとこぶしを握って力説する。

 「いい事ソウマ、あんなのにだけはなっちゃだめよ! 分かった!?」

 「は、はいっ!? 分かりました‥‥‥」

 一体どんなのになっちゃダメと?
 よく分からないけどセキさんの勢いで思わず返事してしまった。



 『え、えぇとぉ~もう一回聞くけどあんたらって本当に一体全体何者なのよ?』


 目を天にしながらピンクのツインテール悪魔はもう一度僕たちに聞いてくるのだった。  

 
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