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第三章

第46話3-5強き者

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 僕たちはリザードマンの王国でその集落であるベンゲルに来ていた。


 「力ある者よ、今族長を呼びます。しばしお待ちを」

 集落と言うか村と言うか、一応高床になっている壁とかが木の葉っぱを編んだもので出来ている家々の中央に広場が有って僕たちはそこへ案内されていた。


 「相変わらずね、ここは」

 「シェルさんは来た事あるんですか?」


 特に面白くもなさそうに周りを見ているシェルさん。

 僕や姉さん、エマージェリアさんなんかはめったに見れないリザードマンを見てちょっと興奮している所へこの集落の子供だろうか、ちっちゃいリザードマンもウロチョロとしているので思わずほっこりしている。

 「昔ね。まあその時もいろいろとあったけどリザードマンたちの生活はエルフと同じくほとんど変わらないわね」

 そう言ってシェルさんは大きな胸を抱えるかのように腕組みをする。


 「お待たせしました。力ある者よ。我らが族長です」

 「力あるお方よ、リザードマンの族長ゴフにございます」

 そう言ってひと際体の大きなリザードマンがセキさんに跪く。


 「そう言うのはいいから。それよりこいつによく教育しなさい。相手も選ばずいきなり威嚇みたいな事したら竜族は容赦せずに炎を吐くわよ?」


 どうやら僕たちにはわからなかったけど竜族のセキさんにはリザードマンたちが威嚇していたのが分かったらしい。


 「すみませぬ、最近我らも悪魔に警戒をしていたもので。ブーズ、竜様の言う通りいきなり威嚇をするものではないぞ?」

 そう言ってあの案内してくれたリザードマンに向き直る。

 「ははっ! 申し訳ありません。私も気が立っていたのでつい‥‥‥」

 「まあいいわ。今後気を付ける事ね。知性の無い竜が相手だったら今頃消し炭よ」

 そう言ってシェルさんにセキさんは話しかける。

 「シェル、悪魔って事は」

 「ええ、多分こんな所にまで探しに来ているみたいねあの子の配下は」


 「「う”っ」」


 二人の会話に僕と姉さんは思わずうなってしまう。
 そして思い切り申し訳なく思ってしまう。


 「まあ私たちが来たからにはそっちも何とかしてあげるわ。でしょセキ?」

 「乗り掛かった舟だしね。ゴフとか言ったわね、その話詳しく聞かせなさい」


 セキさんがそう言うと族長さんはもう一度深々と頭を下げてから話し始めた。


 * * *


 事の始まりはひと月前くらいから古代遺跡のある沼周辺に悪魔が出始めたらしい。
 最初、はぐれ悪魔かと思っていたけど数は少ないものの肉体を持つ上位悪魔だったようだ。

 リザードマンはその沼を狩猟場として魚を取っていたらしいけど悪魔が邪魔なので沼に住み着いている水龍にお願いして悪魔を追い払ってもらおうとしたらしい。
 しかし何とその水龍が逆にその悪魔に倒されてしまったとの事。
 
 以来その悪魔たちがその神殿に住み着いて周辺に出没して遭遇するたびに酷い目に合っていたとか。

 そして最近では集落の近くにまで現れるようになったのでこうして警戒を強めていたとの事。


 族長さんの話を聞き僕たちはシェルさんを見る。
 するとシェルさんは大きくため息をついて族長に聞く。


 「その古代神殿の沼にいる水龍ってあの水龍よね? あいつがやられたって事よね?」

 「おお、そちらのエルフは水龍様と知り合いか?」

 族長さんが大いに驚いている。
 確かにシェルさんはここに来た事が有るって言っていた。
 だからその水龍にも面識が有るのかな?


 「水龍かぁ、あたしの苦手な奴ね。まあ若ければワンパンで沈められるけどエルダードラゴンクラスだと厄介ね」
 
 「セキ、その水龍と事を起こすわけではありませんわよ?」

 セキさんは嬉しそうに肩を回していたけどはたと気付いてあははははとか言いながら頭の後ろを掻いている。


 「セキはすぐに喧嘩したがるからね。あまりやり過ぎるならばあの人に言うわよ?」

 「ちょっ! シェルそれ反則!! 母さんに出てこられたらただでは済まないじゃない!!」


 珍しくセキさんが大慌てだ。
 セキさんでも敵わない人っているんだなぁ。

 そんな事を思っていたら姉さんがシェルさんに聞く。

 「それで、シェルさんその悪魔ってのを退治しに行くんでしょう?」

 「そうね、フェンリルたちにも大いに期待しているわよ? それとアイミは空も飛べるからね行く時は出しておいた方が良いわよ?」

 
 えっ?
 アイミって空飛べるの!?


 思わず僕と姉さんは姉さんの腰についているポーチを見てしまう。


 あんなに大きくて重い機械人形が空飛べるってすごい!!


 思わずワクワクして姉さんを見ると仕方ないなぁみたいな顔でポーチからアイミを引っ張り出す。



 ぴこっ!


 久しぶりに出してもらえたアイミは嬉しそうにみんなに挨拶する。
 僕たちもアイミに片手をあげながら挨拶をする。


 「それでは竜様、悪魔を退治していただけるのですね?」

 「ええ、あたしたちに任せておきなさーい!」

 大きな胸にどんと拳を当てセキさんがふんぞり返る。
 


 こうして僕たちは古代神殿に住まう悪魔たちを退治する事になるのだった。
 
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