上 下
43 / 221
第三章

第42話3-1レアアイテムを求めて

しおりを挟む

 エリリアさんは驚いたように眼鏡をはずし目を大きく見開いた。


 「全く、君たちは女神様に愛されているのかな? 今まさに神託が下りた。南だよ、君たちが向かうべき先はリザードマンの集落ベンゲルを超え山岳地にあるその場所へ行けと神託が下りた。 ふむ、山岳地‥‥‥ あそこは確かハーピーが沢山いる場所だったはずだが‥‥‥」


 「ハーピー!!」


 エリリアさんが神託を受けそして口走ったその言葉に姉さんが反応した。


 「エ、エリリアさん、そこってハーピーたちが沢山いるって言うんですね!?」

 「ふむ、確かあの場所はこの世界でも一番多くハーピーたちが生息する場所のはずだよ。しかしそんな所へ何をしに行けと言うんだろうね? どうも『魔王』との接点が見えないのだけど‥‥‥」

 小首をかしげるエリリアさんにシェルさんはくすくすと笑い姉さんも赤くなりながらぐっとこぶしを握りエリリアさんに言う。


 「そこにはきっと超レアアイテムが有るはずですよ! シーナ商会ですら手に入らないという超レア物が!!」


 なんで姉さんは鼻息荒くものすごいやる気を出しているのだろう?


 訳が分からなくなって隣にいたエマ―ジェリアさんに聞いてみる。

 「そんな所にそんなレアアイテム何て有るんでしょうかね?」

 「ソ、ソウマ君は知らなくていい事ですわぁっ!! 破廉恥ですわぁっ!!」


 ぺちん!


 何故かエマージェリアさんに頬を叩かれる。
 僕なんかしちゃったの?


 「どうも話が見えないな、シェル一体どう言う事だい?」

 「ん~、教えてもいいけど刺激が強い話になるかもよ? エリリア大丈夫なの?」

 「聞いてみなければわからないだろう? 教えてくれ。そうすれば助言できるかもしれないしね」

 そう言ってシェルさんと話し始めるけど何故かエマージェリアさんが僕を引き連れてエリリアさんの部屋から出て行くのだった。


 * * * * *


 「あ、やっと来た。おーい姉さん~」

 シェルさんたちが話が終わるまで学園の食堂でお茶をしていたエマ―ジェリアさんと僕だったけどエマ―ジェリアさんはずっとそわそわして僕と話をするのもなんとなく上の空だった。


 「全く、人間と言うものは欲望に忠実と言うか‥‥‥」

 「でも意外だったわね、エリリアってそう言う話は苦手だと思っていたけど?」

 「別に知識では知っている事だし君たちの性癖にとやかく言うつもりはないよ。それに僕には興味の無い話だしね」


 僕たちのテーブルにシェルさん、エリリアさん、姉さんにセキさんが座ってお茶を注文する。
 エリリアさんは眼鏡をはずしてから大きくため息をついて僕たちを見渡してから話し始める。


 「確かに今までの話を総合するとこれは良い手だと思うよ。『ハーピーの雫』を君たちが手に入れシーナ商会経由で世界的に宣伝をして北の魔王城に乗り込む。そうすれば世界各国に現れている魔王軍の連中も各市場でウロチョロすることは無いだろうし今の『魔王』がそれを欲しているのならば決め手になる。しかもこちらにはソウマ君がいるしね」


 「僕ですか?」


 エリリアさんの話に思わず自分を指さす。


 「だからと言ってミーニャにソウマは渡さないわよ! それにレアアイテムを使うのは私とソウマなんだからね!!」

 姉さんが話に割り込んでそう言うと途端にエマ―ジェリアさんが真っ赤になってキャーキャー騒いでなぜか僕の頬をぺちんと叩く。


 全然痛くないけどやっぱり嫌われているんだと思うとへこむよね?


 「どちらにせよ行ってみるしか無いわね? 世界中の市場に現れている魔王軍の連中を無視して魔王城に乗り込んだらそいつらが暴れて世界中が一気に大混乱になりかねないからね」

 シェルさんは運ばれたお茶を飲みながらそう言う。


 「侵攻している魔王軍は放っといていいの?」

 セキさんはお茶菓子に手を伸ばしながら聞いてくる。

 「ユカの話を聞く範囲では魔王軍の侵攻はだいぶゆるくなっているらしい。どうやら『ハーピーの雫』を探す事を優先している節があるからね。それに戦争で万が一そのレアアイテムが破壊でもされれば『魔王』としても損失が大きいのだろう」

 エリリアさんはそう言いながらお茶を飲む。


 そんなにその「ハーピーの雫」ってのをミーニャは欲しがっているんだ。


 「でも『ハーピーの雫』ってのが超レアアイテムだってのはよく理解できたわ。エリリアよく知っていたわね?」

 「まあこう言った知識も暇つぶしに読んでいるしね。良い余興にはなる」

 そう言ってエリリアさんもお茶菓子に手を伸ばす。


 「まさかハーピーの乙女からでないと採取できないアイテム何てね~、そりゃぁ市場になんか出回るはず無いわ」

 セキさんはそう言いながら更にお菓子を口に運びエマ―ジェリアさんを見てにやりとする。


 「エマ、エマ、一体どう言うものか知りたくない?」

 「わ、私は知らなくても良いですわ! 私には必要の無いものなのですわ!!」

 するとセキさんはさらにニヤ~っとしてエマ―ジェリアさんの耳元で何かごにょごにょ言い出す。
 するとエマ―ジェリアさんは途端に真っ赤になって頭から爆発するような湯気を出し「のッひょぉおぉぉおぉおおおおおおぉっ!!!!」とか叫んでいる。


 「た、確かに採取方法は難しいし大変よね‥‥‥ それに女の子同士でだなんて‥‥‥」

 姉さんも真っ赤になってもじもじとしている。


 何それ?
 そんなに大変なの??


 「どちらにせよまずは行ってみないとだめね。それにこの話を先にシーナ商会で全世界に知らせてシーナ商会が全力で超レアアイテム『ハーピーの雫』を入手する為に動いている事を宣伝しなくてはね!」


 シェルさんがそう言い僕たちはもう一度水上都市スィーフを経由してリザードマンの集落を過ぎその山岳地帯に行く事となったのだった。
 
 

しおりを挟む

処理中です...