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第一章
第12話1-12ミハイン王国
しおりを挟むミハイン王国はこのウェージム大陸の最西端にある国。
海に面した西海岸は夕暮れがとてもきれいな良い所だってシェルさんは言う。
そして世界で初めて真珠の養殖が成功した街だって言う事らしいけど、養殖って言うのは牛や豚、鶏なんかを飼って育てるのと同じらしい。
真珠は海の中で貝を使って育てるっていう真っ白な丸い宝石みたいなものらしいけど僕は見た事がない。
僕が見た事無いって言ったらシェルさんが自分の耳についている真珠を取って見せてくれる。
「これが真珠よ。奇麗でしょう?」
「へぇ、これが真珠かぁ、確かに奇麗ですね!」
「う~ん、ねえソウマお姉ちゃんにも似合うかな?」
僕がシェルさんに耳飾りの真珠を見せてもらっていると姉さんが抱き着いてきて覗き込む。
「似合うんじゃないかな? でも姉さん耳飾りとか邪魔だからって嫌がってたじゃない?」
「ソウマが似合うっていうなら別よ! 私も欲しいなぁ」
「あら、だったらこれから行くところでお友達価格で買えばいいじゃ無いの? 安くなるわよ?」
そう言いながら町に入る僕たち。
僕たちはシェルさんの後をついて歩く。
古いこの街は道も何もよく整備されていてノルウェンの町よりずっと奇麗だった。
格式の高そうなしっかりとした家が立ち並びあちらこちらで真珠や海産物を売っている。
「うわー、凄いね姉さん!」
「ほんとだ。ソ、ソウマちゃんとして田舎者だってなめられない様にしなきゃだわよ!」
そう言って姉さんは僕の手を握る。
姉さん意外とこう言うの気にする方だからなぁ。
僕と姉さんは仲良く手をつないで大通りを歩く。
そしてシェルさんが行きついた所は‥‥‥
『シーナ商会本店』
まるでお城の様な大きな建物!
しかも全部石造り?
それなのに出入り口は冒険者ギルドよりにぎわっている。
シェルさんはそんな中をどんどんと入って行ってしまう。
「うわーうわー」とか上を向いて口を開けている姉さんを引っ張って僕たちも慌ててシェルさんを追いかける。
店に入るとまるで別世界のような場所。
昔本で読んだお城の舞踏会の様なきらびやかな場所でそこらかしこに奇麗な品物が置いてある。
外で驚き、中に入ってまた驚くけどそんな中シェルさんは一番奥のカウンターに行く。
するとお店の人がざっと並んで頭を下げている。
「シェル様、ようこそおいで下さいました。どうぞこちらへ」
「ああ、連れがいるの。彼女たちも一緒で構わないわね?」
お店の人は更に頭を下げ「勿論でございます。さあお連れの方もこちらへ」と言って僕たちを奥の部屋に呼び込む。
思わずきょろきょろしながら僕たちは案内された部屋に入っていくのだった。
* * *
「うわっ! 凄い!!」
小さな部屋で変だと思ったらなんと魔法陣が有って一瞬で僕たちをこの建物の最上階に転移してくれた。
そして驚いたのはその最上階の部屋が広々としたところで壁一面がガラスになっていて西側の海が一望できるようになっていた。
僕って初めて海を見るのだけど先生に教えられた通りどこまで行っても水溜まりなんだ!
その広大さに感動さえする僕。
僕たちジルの村は山間部だから高い物は見慣れているけどこう言ったまっ平で広いものは見た事がない。
「す、すごいわね‥‥‥ これが『海』ってやつなのね‥‥‥」
姉さんも思わず僕の隣まで来てガラスの壁に手をついてその様子を見る。
「あら、海は見た事無かったかしら? 私はあそこ苦手なのよね、精霊力が偏り過ぎて」
そう言いながらシェルさんは豪華なソファーに腰を下ろす。
するとすぐにお店の人たちかな?
確かメイドさんていうんだよね?
同じ服を着た女の人たちがお茶や果物やらを持ってシェルさんの前に差し出す。
シェルさんは僕たちを手招きしてソファーに座るように勧める。
姉さんと顔を見合わせおずおずとシェルさんの対面に腰を下ろす。
ふわっ!
もふっ!
「えっ!? 何この椅子!? ふかふか!!」
「うわ~やわらかいのに気持ちいい座り心地!」
姉さんも僕も座って驚く。
するとすぐにお店の人が僕たちの前にもお茶を出す。
「あ、ど、どうもぉ~」
「ありがとうございます」
緊張してしまう姉さんと僕。
そんな様子をシェルさんは楽しそうに見ている。
「遠慮せずにくつろいで。ここは私たちの家みたいなものだから」
はいっ!?
もしかするとシェルさんってすごいお金持ち!?
思わず目を開いて僕と姉さんはシェルさんを見てしまう。
奇麗な透明に近い金色の髪にエルフ独特の深い緑の瞳、真っ白な肌は透き通っているかのようで美人なうえ女性としてのスタイルは姉さん以上。
深くソファーに腰掛け足を組んで大きな胸を抱えるように腕を組んでいるこの人は実はお金持ち?
「あ、あのシェルさんって一体何者なんですか?」
今更ながらに姉さんはシェルさんに聞いてしまった。
「う~ん、端的に言えばあなたたちの味方よ? そしてあなたたちの為なら私は協力を惜しまない。何せあなたたちとは切っても切れない縁があるからね」
そう言ってくすくすと笑う。
その笑顔に僕は思わず見とれてしまう。
ものすごく懐かしいような、憧れていたようなあの感覚が蘇って来る。
「でもわかりません。あたしたちはミーニャを、『魔王』になったあの子を連れ戻さなければならないんですよ? それなのにシェルさんは全てを知っているような‥‥‥」
「そのミーニャと言う子を連れ戻す為に私はあなたたちの味方になるのよ。知っての通り『魔王』は強力よ? そしてあの村での『魔王』の管理は私の仕事でもあったのよ。そう、私の愛する人からお願いされてね。『魂の封印』が出来るのは今の所私だけだからね‥‥‥ それに、フェンリル、ソウマあなたたちとは‥‥‥」
ばんっ!
いきなり扉が開いてシェルさんの話が途切れた。
「シェル様ぁっ!! やっとお戻りになられたのですわね!! 私お待ちしておりましたわぁっ!!」
いきなり現れた彼女に完全に僕たちの会話は途切れさせられたのだった。
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