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第一章

第8話1-8ついでだから鍛えちゃおう!

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 シェルさん曰く、「魔王」の呼び出す「鋼鉄の鎧騎士」はオリジナルの物でこの世界で初めて作り出された十二体だそうだ。
 ちなみにそのうちの一体は僕たちジルの村にあるあれがそうらしい。

 でも他の十体と特別な一体は破格の強さを誇るらしくてその昔の戦争で封印を解かれちゃった奴なんか大暴れしていたらしい。

 そして万が一ミーニャがそのオリジナル「鋼鉄の鎧騎士」を呼び出して使役した場合を考えて学園都市ボヘーミャにしまってあるフェンリル姉さんにしか使えないあるモノを取りに行かなきゃなんだけど‥‥‥


 「うーん、フェンリルは良いとして、ソウマはまだまだね?」

 「お恥ずかしい、これでもいろいろと教え込んでるんですけどね‥‥‥」

 ノルウェンの街郊外の平原で僕はシェルさんが呼び出した大地の上級精霊の作り出す岩の巨人や地面からにょきにょき突き出す大地の槍をかわしながら悲鳴を上げている。


 「うわっ! ここで【地槍】が出て来るんの!? あぶなっ! うわっ! まだこいつ元気だ!!」


 岩の巨人はスピード自体は大した事無いのだけど、パワーが半端じゃない。
 そして今の僕のレベルじゃとてもじゃないけど切り刻めない。
 岩巨人の拳を避けて体制を整えようとすると地面から【地槍】が伸びて来るし、これじゃあ村にいた時の稽古より厳しい。


 「ほらほらソウマ、もっと周りに気を配って動きを感知する! それと踏み込む瞬間にだけ魔力を込めて『操魔剣』と同じで身体強化は一瞬、そして残った魔力を剣に集中して!」


 姉さんから指示が出るけどそれが難しいんだよなぁ。

 僕は自分の魔力を脚に集中して一瞬だけ身体強化して飛び上がる。
 これを使うと軽く五メートルくらい飛び上がれるから岩巨人の上を取れる。
 そして剣に魔力を込めそっちにも強化魔法をかけながら‥‥‥


 がきぃいいぃんっ!


 何とか頭に一撃を入れたけどまだこれでも軽いのか!?
 僕の一撃は簡単に弾き飛ばされ岩巨人の拳を喰らう。


 ちょっ! 
 まだ空中なのに!!


 一気に防御に身体強化をするけど流石に岩巨人の一撃。
 僕はあっさりと吹き飛ばされてしまう。


 「あ~、ここまでね。ソウマ大丈夫かしら?」
 
 「あぁ、あのくらいなら大丈夫ですよ。むしろ駄目だったら今晩は手当で組んずほつれづ‥‥‥ ぬふっふふふふっ!」

 僕は拳を喰らって見事に岩にたたきつけられる。
 身体強化の防御で何とか耐えられるけど、これって村にあった「鋼鉄の鎧騎士」並のパンチだ。
 本気で防御しなかったら危なかった。


 岩にめり込みながら僕は姉さんを見ると腰からなぎなたソードを引き抜き一瞬で飛び上がり岩巨人と交差してその向こうに降り立つ。

 ちゃきっっとなぎなたソードを振ると岩巨人が真っ二つに‥‥‥


 流石はフェンリル姉さん!


 僕は岩から抜け出て体の埃を払う。


 「まあ、普通なら十分に使えるけど相手が『魔王』だからね~。ソウマ君のレベルじゃまだまだ危ないわ。フェンリルとまでは行かなくてももう少し鍛えないとなぁ」

 シェルさんはそう言ってまたまた精霊魔法で岩の巨人を作り上げて更に他の精霊も呼び寄せる。
 そしてフェンリル姉さんに向かってその岩巨人を動かす。


 「オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』を魔王が使うとこのくらいのスピードになるのよ」


 そう言って岩巨人を操るけどなにこれぇっ!?

 まるで「操魔剣」でも使ったかのように残像を残してフェンリル姉さんの前まで一気に詰め寄る。
 でもフェンリル姉さんは慌てず剣を振る。


 「ガレント流剣技五の型、雷光!!」


 姉さんはそう言って一瞬でその場から姿を消すといつの間にかその岩巨人の後ろにいてなぎなたソードを振る。

 
 ひゅんっ!


 ぐらっ!
 どがっしゃぁぁああぁぁぁんっ!


 それと同時に岩の巨人は一文字に切られてガラガラと崩れる。


 パチパチパチ。

 シェルさんが拍手している。
 そしてフェンリル姉さんの近くまで来てにっこりと笑う。

 「流石ね、これでボヘーミャであの子を受け取れれば大丈夫そうね?」

 「シェルさん、今のは結構きつかったですよ? それにオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』ってあんなにすごいんですか? 村に有ったのとは全然違いますよ?」

 「ああ、ジルの村に有るのはその昔連合軍に貸していた奴だからね、初期能力しか持っていないわ。でも他のはその後に改修されて今の様にパワーアップしているの。でもフェンリルがいれば押さえられそうだしね」


 そう言って今度は僕を見る。


 「でもソウマはこのままじゃ危ないわよ? もっと鍛えておかないとその場で巻き添え喰らって危なくなるかもよ?」

 「うーん、やっぱりガレント流五の型くらいまでは覚えさせないとだめかしら?」


 え、ええとぉ~。
 何やら姉さんとシェルさんが僕を見る目が怪しく光っているような‥‥‥


 「男の子は頑張らないとだめよ~ソウマ君」

 「そうね、じゃ無いとお姉ちゃんとその時を迎えても満足させてもらえないかもしれないもんね。かわいいソウマも良いけどやっぱり立派な男にしてあげるのは姉の務めだもんね‥‥‥」

 にじりにじり‥‥‥


 「ちょ、ちょっとぉ、二人ともぉっ!! うわぁぁあああぁぁぁっッ!!!!」




 僕の抗議なんて聞く暇もなくノルウェンの街郊外に僕の悲鳴が響くのだった。  


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