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第十九章
19-13呼び出したもの
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19-13呼び出したもの
そこにはあたしたちの想像以上のモノが沢山あった。
「まさかこんな術式を編み出すなんて! これ、もしも魔結晶石核を知っていたら理論上異世界への行き来が出来ちゃいそうですよ、お姉さま!」
「確かにそうですわ。ここの魔術師はこれほどまでに優秀だったとはですわ‥‥‥」
シナモナ一族を師と仰ぎ異世界召喚を極めんとする者たちがここでその技を磨いていたのだろう。
イルスと言う人物も代々こう言った研究を続けてきたと言う事はそれ相応なのだろう。
「お陰で研究施設と言いながら所々で厄介なのがいるけどね」
シェルはそう言いながら精神の精霊を壁の方に向かって飛ばす。
ばしゅっ!
『ぎぃぇえええぇぇぇっ!』
「エルハイミっ!」
またまた下級の悪魔だ。
あたしはそれに向かって手を振りかざすと融けるかのように下級悪魔がぼろぼろと崩れていく。
「まだまだここにあふれ出た下級悪魔がいる様ね?」
ライム様はそう言って本棚の本を見ながらそれを自分で発生させた異空間の割れ目に放り込んでいく。
それだけちょっとしたところにもやばそうな研究の資料とかが多い。
「お母様、そろそろ最後の階のようですね」
コクに言われ下へ続く階段を見つける。
しかしそこからは異様な雰囲気が漂っていた。
「エルハイミ~、なんか嫌な感じだよぉ~」
マリアがあたしの髪の毛の中に隠れる。
他のみんなもその異様な雰囲気に注意をしながらあたしとライム様を先頭に階段を下りて行くのだった。
* * *
「こ、これはですわっ!!」
階段を降り切ってすぐ正面に扉があったけどそこは既に開かれていて中からおびただしい妖気が漂っている。
そして扉をくぐり中に入るとひときわ大きな空間だった。
部屋全体に何とも言い難い嫌な妖気のようなモノが漂っている。
そして床一面に大きな魔法陣が書いてあった。
「これは‥‥‥」
イオマはさっそくその術式を読み取る。
あたしもそれを読むけどなんて事なの!?
『我異界の神をここへ召喚するを望むもの也』
術式の一番重要な部分にこの文字が書かれていた。
それはこの世界に対する宣戦布告にも等しい。
『ははは、この感じ、とうとう女神がここをかぎつけたかぁ~?』
その声は部屋の一番奥から聞こえた。
途端にショーゴさん、クロさんクロエさん、そしてセキが前に出る。
「あらまぁ、これで生きているんだ」
緊張するショーゴさんたちの肩に手をつきライム様は前に進む。
そして歩み着く先は一番奥の壁。
いや、壁だった物だった。
「ひっ!? い、生きてるんですかこれって!?」
「うわぁ、なにこれ気持ち悪い」
「あわわわわわぁ」
イオマやシェル、そしてマリアは目を背けた。
そこには壁に貼り付けられたかのようになって内臓をあらわにし、心臓をどくどくと動かせている一人の男性の様な者がいた。
『ようこそ我が研究所へ。で、見た所女神と‥‥‥ なんだ? 人間じゃ無いのがだいぶ混じってるな?』
「うーん、私は女神では無く分身だけど‥‥‥ ああ、そうかエルハイミはもう女神の格があるもんね、納得。さてあなたは誰?」
一番前に出ていたライム様は平然とその人物に聞く。
するとその人物は何が面白いのか笑い出す。
『ふはっ、ふははははははははっ! なんだ女神じゃないのか!? それは少々残念だったな。しかし女神の分身だと? それに後ろの金髪は何モンだ? 女神じゃ無いのか?』
こいつ。
あたしが普通じゃ無いのに気付いているか。
あたしはライム様の横に立つ。
「私はエルハイミ、女神様ではありませんわ」
『ほう? それほどの力を持ちながら女神でないと? ではエルハイミとやら、貴様は異界の神か何かか?』
へぇ、異界に付いて少しは詳しい様だ。
あたしは頷き話す。
「異界の神でもありませんわ。私はこの世界や他の世界そのモノを作り上げた『あのお方』のこの世界での端末ですわ」
『なんだと!? やはりそうか!! そうだったんだ、やはり創世主がいたんだ! ははははははははっ! 見つけたぞ! この世界の真理!! そうだ、俺は間違ってなどいなかったんだ!! 一族が求めた真理が今俺の前にいる!! やったぞ! やったんだぁ!!』
その男は歓喜に喜びの笑い声をあげ気が狂ったかのように笑い続ける。
しかしその男にライム様は聞く。
「もうその辺で良いかしら? で、もう一度聞くわ、あなたは誰?」
『はははっ‥‥‥ 俺か? 俺はイルス。代々この世界の真理を探究する者だ』
やはりこいつが姿を消したイルスだったのか。
しかしこれは一体どう言う事だろう?
「そう、あなたが異世界召喚の研究者の末裔ね?」
『異世界召喚? ふん、そんなモノ興味などない。俺が知りたかったのはこの世界の真理! そしてこの世界以外にも沢山ある異界を作り出した者の真理だ!! しかし、その答えが今俺の前にいる。教えてくれ、お前は何故この世界を作った? いや、他の世界もそうだ。何故世界を作る?』
こいつ、根本的な事を聞いて来たな‥‥‥
あたしにとってはどうでも良い事だけど、「あのお方」が沢山の世界を作る理由は‥‥‥
「暇つぶしですわ」
『はっ?』
「ですから、『あのお方』が世界を作る理由は『暇つぶし』ですわ!」
あたしがそう断言するとイルスはポカーンと口を開けて動かなくなってしまった。
しばしそうしていたがだんだんとわなわなと震えてきて唾を飛ばしながら叫ぶかのように聞いてくる。
『馬鹿な! そんな馬鹿気た理由でこんなにも沢山の世界を作ったと言うのか!? 女神をはるかに超える力を持ち、万物の理全てを知る知識高き存在が【暇つぶし】で世界を創造するだとぉっ!?』
いや、気持ちはわからんでもないけど事実なのだから仕方ない。
実際あのお方は気分次第でポコポコ世界を作ったり消したり、そして「あのお方」たちはそんな世界を見て楽しんでいると言うのだからどうしようもない。
『う、嘘だ‥‥‥ そんな事は嘘だぁッ!!』
「エルハイミ、それって本当なの?」
「少なからずとも私の知る限りそうですわね。『あのお方』の端末となった私は意図的に知識の流入を遮断していますわ。ことこの世界に限る真理は必要とすれば得ることが出来る様ですわ。しかしそれをするにはこの世界の人間を基礎とした私には理解しきるのに数千年の時間がかかるので正直その真理を知りたいとも思いませんわ。でも先ほども言いましたが『暇つぶし』であるのは間違いありませんわ」
はっきりきっぱりと指を立てながら力説するあたし。
それを見てライム様は大きくため息をつく。
「知恵の女神オクマスト様が聞いたらどれだけうらやましがることかしら? しかし、そうなるとうちの女神様があんな性格なのも納得できるわね?」
「いや、アガシタ様は特別なのでは無いのですの?」
あのポンコツ女神、この世界の主神になっていると言うのに面倒がって全て人任せ。
そのうえあたしに色々やらせようとか人使いも荒い。
『そ、そんな‥‥‥ それじゃあ俺たちのやって来た事は一体‥‥‥』
相当ショックだったのかイルスは愕然としている。
ああ、壁だからその様子は顔でしか分からないけどね。
「それでイルス、あなたなんで壁なんかになってるのよ?」
気を取り直してライム様はイルスに一番突っ込みたい事を聞く。
やっぱり気になるよね?
『俺は‥‥‥ ヨハネスの野郎が裏切った。異世界の神が呼び出せれば全てを知ることが出来る。『異世界は本当に在ったんだ!』なんて子供のようなキラキラした目で空飛ぶ天空の城を見るかのように言うから俺もそれを信じて‥‥‥ しかし奴は呼び出した悪魔の王と契約して融合し、他に邪魔なモノを呼び出されては面倒だと俺を壁に融合して小悪魔どもを呼び寄せる糧にしやがったんだ!』
悔しそうにそう言うイルス。
まあ、あのヨハネス神父のやりそうなことだ。
「でも今まで生き残るなんて! この人が町からいなくなってからもう何年もたっているはずですよ!?」
『俺は死なないさ、異界から魔力を吸い上げているんだからな。おかげで小悪魔どもがうじゃうじゃと鬱陶しい』
イルスはそう言って笑う。
『だがもうどうでもいい。エルハイミとやら俺を消滅してくれ。もう人の姿にも戻れない、そして小悪魔を呼び寄せる糧に成り下がりそこの魔法陣から魔力を吸って生き延びるのはもう嫌になった』
心底嫌になったのだろう、いろいろと。
既に生きる希望も何もない状態のようだ。
しかし‥‥‥
「勝手に殺してくれと言って、はいと答える私ではありませんわ!」
あたしはそう言ってイルスを見る。
確かに構成自体がもう壁と一緒、そしてそれに呪いの様な魔素が組み込まれ普通じゃどうしようもない。
でもそれをいったん閉鎖空間に取り込んで分解して再構築した所に魂を戻せば!
あたしは手を振りそれを実行する。
それは驚くほど簡単にできてしまいイルスを光に包みその光が消えた頃には目の前に人の姿のイルスが現れる。
「‥‥‥はっ!? お、俺は!?」
「これで元の人間に戻りましたわ。ただあなたに繋がっていた物は全て遮断させていただきそして異界への通路も閉じましたわ」
にっこりと言うあたしにイルスはその場にしゃがんだ。
そしてとんでもない事を言い始める。
「すげえぇっ! あんたは命の恩人だ! い、いや、俺の女神だ!! こんな事が出来るなんて!」
はいっ?
土下座するかのように頭を床に押し付けている。
「エルハイミ、いや、エルハイミ様! どうか俺にもっと世界の真理を教えてください!!」
「え、あ、いや、そのですわ‥‥‥」
しかしそんなイルスにいきなりトリプルキックがかまされる。
ばばばきっ!
「ぐはっ!」
「駄目です! この変態っ!」
「そうよっ! エルハイミはあたしのなんだからね!!」
「このバカエルフ! お母様は私のです!!」
哀れイルスはイオマやシェル、コクの飛び蹴りを喰らって壁にたたきつけられる。
「とにかくその粗末なものを隠してください!」
「レイムと同じくらいね、そんなモノぶら下げてあたしのエルハイミに近づかないで!」
「ふん、その様なモノお母様は見向きもしません、失せなさい!」
え、えーとぉ。
真っ裸で壁にへばりついているイルスを見るあたし。
勿論視界の先には勝手にモザイクが発生している。
まあ、見たくもないし興味も無いからいいのだけど‥‥‥
「やっぱり人間てすごいんだけど、見てて面白いわよねぇ~」
ライム様はけらけらと笑うのだった。
そこにはあたしたちの想像以上のモノが沢山あった。
「まさかこんな術式を編み出すなんて! これ、もしも魔結晶石核を知っていたら理論上異世界への行き来が出来ちゃいそうですよ、お姉さま!」
「確かにそうですわ。ここの魔術師はこれほどまでに優秀だったとはですわ‥‥‥」
シナモナ一族を師と仰ぎ異世界召喚を極めんとする者たちがここでその技を磨いていたのだろう。
イルスと言う人物も代々こう言った研究を続けてきたと言う事はそれ相応なのだろう。
「お陰で研究施設と言いながら所々で厄介なのがいるけどね」
シェルはそう言いながら精神の精霊を壁の方に向かって飛ばす。
ばしゅっ!
『ぎぃぇえええぇぇぇっ!』
「エルハイミっ!」
またまた下級の悪魔だ。
あたしはそれに向かって手を振りかざすと融けるかのように下級悪魔がぼろぼろと崩れていく。
「まだまだここにあふれ出た下級悪魔がいる様ね?」
ライム様はそう言って本棚の本を見ながらそれを自分で発生させた異空間の割れ目に放り込んでいく。
それだけちょっとしたところにもやばそうな研究の資料とかが多い。
「お母様、そろそろ最後の階のようですね」
コクに言われ下へ続く階段を見つける。
しかしそこからは異様な雰囲気が漂っていた。
「エルハイミ~、なんか嫌な感じだよぉ~」
マリアがあたしの髪の毛の中に隠れる。
他のみんなもその異様な雰囲気に注意をしながらあたしとライム様を先頭に階段を下りて行くのだった。
* * *
「こ、これはですわっ!!」
階段を降り切ってすぐ正面に扉があったけどそこは既に開かれていて中からおびただしい妖気が漂っている。
そして扉をくぐり中に入るとひときわ大きな空間だった。
部屋全体に何とも言い難い嫌な妖気のようなモノが漂っている。
そして床一面に大きな魔法陣が書いてあった。
「これは‥‥‥」
イオマはさっそくその術式を読み取る。
あたしもそれを読むけどなんて事なの!?
『我異界の神をここへ召喚するを望むもの也』
術式の一番重要な部分にこの文字が書かれていた。
それはこの世界に対する宣戦布告にも等しい。
『ははは、この感じ、とうとう女神がここをかぎつけたかぁ~?』
その声は部屋の一番奥から聞こえた。
途端にショーゴさん、クロさんクロエさん、そしてセキが前に出る。
「あらまぁ、これで生きているんだ」
緊張するショーゴさんたちの肩に手をつきライム様は前に進む。
そして歩み着く先は一番奥の壁。
いや、壁だった物だった。
「ひっ!? い、生きてるんですかこれって!?」
「うわぁ、なにこれ気持ち悪い」
「あわわわわわぁ」
イオマやシェル、そしてマリアは目を背けた。
そこには壁に貼り付けられたかのようになって内臓をあらわにし、心臓をどくどくと動かせている一人の男性の様な者がいた。
『ようこそ我が研究所へ。で、見た所女神と‥‥‥ なんだ? 人間じゃ無いのがだいぶ混じってるな?』
「うーん、私は女神では無く分身だけど‥‥‥ ああ、そうかエルハイミはもう女神の格があるもんね、納得。さてあなたは誰?」
一番前に出ていたライム様は平然とその人物に聞く。
するとその人物は何が面白いのか笑い出す。
『ふはっ、ふははははははははっ! なんだ女神じゃないのか!? それは少々残念だったな。しかし女神の分身だと? それに後ろの金髪は何モンだ? 女神じゃ無いのか?』
こいつ。
あたしが普通じゃ無いのに気付いているか。
あたしはライム様の横に立つ。
「私はエルハイミ、女神様ではありませんわ」
『ほう? それほどの力を持ちながら女神でないと? ではエルハイミとやら、貴様は異界の神か何かか?』
へぇ、異界に付いて少しは詳しい様だ。
あたしは頷き話す。
「異界の神でもありませんわ。私はこの世界や他の世界そのモノを作り上げた『あのお方』のこの世界での端末ですわ」
『なんだと!? やはりそうか!! そうだったんだ、やはり創世主がいたんだ! ははははははははっ! 見つけたぞ! この世界の真理!! そうだ、俺は間違ってなどいなかったんだ!! 一族が求めた真理が今俺の前にいる!! やったぞ! やったんだぁ!!』
その男は歓喜に喜びの笑い声をあげ気が狂ったかのように笑い続ける。
しかしその男にライム様は聞く。
「もうその辺で良いかしら? で、もう一度聞くわ、あなたは誰?」
『はははっ‥‥‥ 俺か? 俺はイルス。代々この世界の真理を探究する者だ』
やはりこいつが姿を消したイルスだったのか。
しかしこれは一体どう言う事だろう?
「そう、あなたが異世界召喚の研究者の末裔ね?」
『異世界召喚? ふん、そんなモノ興味などない。俺が知りたかったのはこの世界の真理! そしてこの世界以外にも沢山ある異界を作り出した者の真理だ!! しかし、その答えが今俺の前にいる。教えてくれ、お前は何故この世界を作った? いや、他の世界もそうだ。何故世界を作る?』
こいつ、根本的な事を聞いて来たな‥‥‥
あたしにとってはどうでも良い事だけど、「あのお方」が沢山の世界を作る理由は‥‥‥
「暇つぶしですわ」
『はっ?』
「ですから、『あのお方』が世界を作る理由は『暇つぶし』ですわ!」
あたしがそう断言するとイルスはポカーンと口を開けて動かなくなってしまった。
しばしそうしていたがだんだんとわなわなと震えてきて唾を飛ばしながら叫ぶかのように聞いてくる。
『馬鹿な! そんな馬鹿気た理由でこんなにも沢山の世界を作ったと言うのか!? 女神をはるかに超える力を持ち、万物の理全てを知る知識高き存在が【暇つぶし】で世界を創造するだとぉっ!?』
いや、気持ちはわからんでもないけど事実なのだから仕方ない。
実際あのお方は気分次第でポコポコ世界を作ったり消したり、そして「あのお方」たちはそんな世界を見て楽しんでいると言うのだからどうしようもない。
『う、嘘だ‥‥‥ そんな事は嘘だぁッ!!』
「エルハイミ、それって本当なの?」
「少なからずとも私の知る限りそうですわね。『あのお方』の端末となった私は意図的に知識の流入を遮断していますわ。ことこの世界に限る真理は必要とすれば得ることが出来る様ですわ。しかしそれをするにはこの世界の人間を基礎とした私には理解しきるのに数千年の時間がかかるので正直その真理を知りたいとも思いませんわ。でも先ほども言いましたが『暇つぶし』であるのは間違いありませんわ」
はっきりきっぱりと指を立てながら力説するあたし。
それを見てライム様は大きくため息をつく。
「知恵の女神オクマスト様が聞いたらどれだけうらやましがることかしら? しかし、そうなるとうちの女神様があんな性格なのも納得できるわね?」
「いや、アガシタ様は特別なのでは無いのですの?」
あのポンコツ女神、この世界の主神になっていると言うのに面倒がって全て人任せ。
そのうえあたしに色々やらせようとか人使いも荒い。
『そ、そんな‥‥‥ それじゃあ俺たちのやって来た事は一体‥‥‥』
相当ショックだったのかイルスは愕然としている。
ああ、壁だからその様子は顔でしか分からないけどね。
「それでイルス、あなたなんで壁なんかになってるのよ?」
気を取り直してライム様はイルスに一番突っ込みたい事を聞く。
やっぱり気になるよね?
『俺は‥‥‥ ヨハネスの野郎が裏切った。異世界の神が呼び出せれば全てを知ることが出来る。『異世界は本当に在ったんだ!』なんて子供のようなキラキラした目で空飛ぶ天空の城を見るかのように言うから俺もそれを信じて‥‥‥ しかし奴は呼び出した悪魔の王と契約して融合し、他に邪魔なモノを呼び出されては面倒だと俺を壁に融合して小悪魔どもを呼び寄せる糧にしやがったんだ!』
悔しそうにそう言うイルス。
まあ、あのヨハネス神父のやりそうなことだ。
「でも今まで生き残るなんて! この人が町からいなくなってからもう何年もたっているはずですよ!?」
『俺は死なないさ、異界から魔力を吸い上げているんだからな。おかげで小悪魔どもがうじゃうじゃと鬱陶しい』
イルスはそう言って笑う。
『だがもうどうでもいい。エルハイミとやら俺を消滅してくれ。もう人の姿にも戻れない、そして小悪魔を呼び寄せる糧に成り下がりそこの魔法陣から魔力を吸って生き延びるのはもう嫌になった』
心底嫌になったのだろう、いろいろと。
既に生きる希望も何もない状態のようだ。
しかし‥‥‥
「勝手に殺してくれと言って、はいと答える私ではありませんわ!」
あたしはそう言ってイルスを見る。
確かに構成自体がもう壁と一緒、そしてそれに呪いの様な魔素が組み込まれ普通じゃどうしようもない。
でもそれをいったん閉鎖空間に取り込んで分解して再構築した所に魂を戻せば!
あたしは手を振りそれを実行する。
それは驚くほど簡単にできてしまいイルスを光に包みその光が消えた頃には目の前に人の姿のイルスが現れる。
「‥‥‥はっ!? お、俺は!?」
「これで元の人間に戻りましたわ。ただあなたに繋がっていた物は全て遮断させていただきそして異界への通路も閉じましたわ」
にっこりと言うあたしにイルスはその場にしゃがんだ。
そしてとんでもない事を言い始める。
「すげえぇっ! あんたは命の恩人だ! い、いや、俺の女神だ!! こんな事が出来るなんて!」
はいっ?
土下座するかのように頭を床に押し付けている。
「エルハイミ、いや、エルハイミ様! どうか俺にもっと世界の真理を教えてください!!」
「え、あ、いや、そのですわ‥‥‥」
しかしそんなイルスにいきなりトリプルキックがかまされる。
ばばばきっ!
「ぐはっ!」
「駄目です! この変態っ!」
「そうよっ! エルハイミはあたしのなんだからね!!」
「このバカエルフ! お母様は私のです!!」
哀れイルスはイオマやシェル、コクの飛び蹴りを喰らって壁にたたきつけられる。
「とにかくその粗末なものを隠してください!」
「レイムと同じくらいね、そんなモノぶら下げてあたしのエルハイミに近づかないで!」
「ふん、その様なモノお母様は見向きもしません、失せなさい!」
え、えーとぉ。
真っ裸で壁にへばりついているイルスを見るあたし。
勿論視界の先には勝手にモザイクが発生している。
まあ、見たくもないし興味も無いからいいのだけど‥‥‥
「やっぱり人間てすごいんだけど、見てて面白いわよねぇ~」
ライム様はけらけらと笑うのだった。
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