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第十七章
17-14見えたモノ
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17-14見えたモノ
ロマーニさんが差し出した赤ん坊をあたしたちは見る。
純血のエルフなのにその子の髪の毛は真っ赤だった。
もしこの子がティアナだったら‥‥‥
「それで、エルハイミこの子を裸にするの?」
シェルがいきなりとんでもない事を言い出す。
「シェ、シェル! あなたやっぱり!! だめ、この子にはまだ早すぎるわ!!」
焦るロマーニさん。
そしてマローネちゃんを抱きかかえる。
「あ~、違う違う、『魔王』の印の文様が有るか無いか確認しなくて良いかって聞いたのよ?」
おいこらシェル、そう言う事は先に言えってば!
有らぬ誤解を受けるじゃないの。
「『魔王』の文様は無いわよ。そんなの私に聞きなさいよ。私はてっきりシェルの事だから‥‥‥」
「ないない、あたしはエルハイミがいればいいんだから!」
いや、それはそれで問題なんだけど‥‥‥
「ごめんなさいですわ、ロマーニさん、マローネちゃんを見せてくださいですわ」
あたしは努めて冷静にそう言ってロマーニさんに警戒されないようにする。
もしこれでこの子がティアナだったらこの人たちを説得しなきゃなんだよなぁ。
少しげっそりしてあたしはマローネちゃんを見せてもらう。
顔立ちは流石にエルフなのでこんなに小さいのにものすごく可愛らしいし将来確実に美人になるだろう。
今はすやすや眠っているマローネちゃんをテーブルの上に置きあたしは同調を始める。
あたしの魂と体の結びつきが更に強くなり瞳の色が金色に変わる。
最近はあのお方の力とつながらなくても瞳が金色になるほど強く同調が出来る。
そして私はこの子の魂の「色」を見る。
その色は確かに赤、ティアナと同じ炎の女神シェーラ様とのつながりが強いようだ。
そしてその魂を確かめると‥‥‥
「ふう、この子は『魔王』ではありませんわ」
あたしがそう言うと一斉に安堵の息があちらこちらで洩れる。
そしてあたしはため息をつく。
「お母様、違ったのですね?」
「え~、お母さんじゃないの、エルハイミ母さん?」
コクやセキが言うようにティアナでは無かった。
ただ‥‥‥
「ファイナス市長、メリッサと言う女性を知っていますかしら?」
「メリッサ!? エ、エルハイミさん、何故その名を?」
「この子はメリッサさんと言う女性の転生の様ですわ」
あたしがそう言うとファイナス市長は自分の首からつるされているペンダントを握った。
「そう、ですか‥‥‥ メリッサが‥‥‥ 千三百年待った甲斐が有った‥‥‥」
そうしてファイナス市長はその場で涙して座り込んでしまったのだった。
* * * * *
「もう千三百年になるのですね。メリッサがこの世を発ってから‥‥‥」
ファイナス市長はそう言って語り始めた。
メリッサさんとは約千三百年前にファイナス市長が外界を勉強する為に旅をしていた時に知り合った冒険者仲間だった。
当時彼女は魔法戦士として腕の立つ冒険者でファイナス市長とも馬が合い、何かと一緒にいる時間が増えた。
そしてなんとこの二人は恋に落ちた。
ファイナス市長がシェルやあたしに対して、そしてメル様たちの理解者で精霊都市ユグリアの市長を務める理由がすべてここにあった。
しかし残酷な時の流れは無情に二人の時間を引き離していく。
ファイナス市長はメリッサさんに「時の指輪」を託そうとするも断られてしまった。
彼女は天寿を全うしてまたきっと生まれ変わりファイナス市長に会いに来ると言って。
「今思えば馬鹿な話ですね。ティアナさんのように女神様に転生を約束してもらったわけでもないのに」
ファイナス市長はそう言って苦笑する。
しかしその瞳は優しくマローネちゃんを見ている。
「ファイナス長老、そうするとこの子は私たちの子ではなくなってしまうのですか?」
心配で仕方ないコストンさんはそう言ってファイナス市長に聞く。
「いいえ、紛れもないあなたたちの子供です。いくら転生したとはいえこの子はマローネ。もしメリッサの記憶がよみがえってもそれは知らない別の誰かの記憶。この子のものではありません」
「!!」
あたしはファイナス市長のその言葉に思わず息が詰まる。
だってその事はあたし自身が一番よく知っている。
須藤正志と言う異界の男性の魂があたし。
しかし今のあたしはその人の記憶があるだけのエルハイミと言う女性。
知ってしまった。
理解してしまった。
いくら転生して前世の記憶があっても自分は須藤正志では無いのだ。
あたしはエルハイミ。
それ以上でもそれ以下でもない。
だからファイナス市長のその言葉にあたしはつらい現実を味わされる。
ティアナも転生してその体の人物になってしまうのではないか‥‥‥
もし記憶が戻ってもあたしを愛してくれないのではないか‥‥‥
「それではファイナス長老、この子は‥‥‥」
「ええ、ロマーニあなたの娘です。もしマローネが前世の記憶を呼び戻してもそれはマローネが決める事。この子は間違いなくあなたたちの子供です」
そう言うとこの二人のエルフの夫婦は涙して喜ぶ。
「‥‥‥それでも、私は私です。見てくれがお母様と同じになっても私はコク。それは変わりません」
「まぁね、ドラゴンニュートの姿で生まれたけどあたしだって赤竜よ。姿かたちが変わってもそれは変わらない」
何故かコクもセキもあたしの側に来てそんな事を言う。
「大丈夫よ、エルハイミ母さん。あたしのお母さんはちゃんとティアナとして戻ってくる。たとえそれが他の人の体であってもそれはティアナお母さんよ!」
セキにそう言い切られあたしは余計な事を考えるのをやめた。
そうだ。
ティアナは探してくれと言っていた。
だからきっと生まれ変わってもティアナのはずだ!
あたしはマローネちゃんを見ながらそう思うのだった。
ロマーニさんが差し出した赤ん坊をあたしたちは見る。
純血のエルフなのにその子の髪の毛は真っ赤だった。
もしこの子がティアナだったら‥‥‥
「それで、エルハイミこの子を裸にするの?」
シェルがいきなりとんでもない事を言い出す。
「シェ、シェル! あなたやっぱり!! だめ、この子にはまだ早すぎるわ!!」
焦るロマーニさん。
そしてマローネちゃんを抱きかかえる。
「あ~、違う違う、『魔王』の印の文様が有るか無いか確認しなくて良いかって聞いたのよ?」
おいこらシェル、そう言う事は先に言えってば!
有らぬ誤解を受けるじゃないの。
「『魔王』の文様は無いわよ。そんなの私に聞きなさいよ。私はてっきりシェルの事だから‥‥‥」
「ないない、あたしはエルハイミがいればいいんだから!」
いや、それはそれで問題なんだけど‥‥‥
「ごめんなさいですわ、ロマーニさん、マローネちゃんを見せてくださいですわ」
あたしは努めて冷静にそう言ってロマーニさんに警戒されないようにする。
もしこれでこの子がティアナだったらこの人たちを説得しなきゃなんだよなぁ。
少しげっそりしてあたしはマローネちゃんを見せてもらう。
顔立ちは流石にエルフなのでこんなに小さいのにものすごく可愛らしいし将来確実に美人になるだろう。
今はすやすや眠っているマローネちゃんをテーブルの上に置きあたしは同調を始める。
あたしの魂と体の結びつきが更に強くなり瞳の色が金色に変わる。
最近はあのお方の力とつながらなくても瞳が金色になるほど強く同調が出来る。
そして私はこの子の魂の「色」を見る。
その色は確かに赤、ティアナと同じ炎の女神シェーラ様とのつながりが強いようだ。
そしてその魂を確かめると‥‥‥
「ふう、この子は『魔王』ではありませんわ」
あたしがそう言うと一斉に安堵の息があちらこちらで洩れる。
そしてあたしはため息をつく。
「お母様、違ったのですね?」
「え~、お母さんじゃないの、エルハイミ母さん?」
コクやセキが言うようにティアナでは無かった。
ただ‥‥‥
「ファイナス市長、メリッサと言う女性を知っていますかしら?」
「メリッサ!? エ、エルハイミさん、何故その名を?」
「この子はメリッサさんと言う女性の転生の様ですわ」
あたしがそう言うとファイナス市長は自分の首からつるされているペンダントを握った。
「そう、ですか‥‥‥ メリッサが‥‥‥ 千三百年待った甲斐が有った‥‥‥」
そうしてファイナス市長はその場で涙して座り込んでしまったのだった。
* * * * *
「もう千三百年になるのですね。メリッサがこの世を発ってから‥‥‥」
ファイナス市長はそう言って語り始めた。
メリッサさんとは約千三百年前にファイナス市長が外界を勉強する為に旅をしていた時に知り合った冒険者仲間だった。
当時彼女は魔法戦士として腕の立つ冒険者でファイナス市長とも馬が合い、何かと一緒にいる時間が増えた。
そしてなんとこの二人は恋に落ちた。
ファイナス市長がシェルやあたしに対して、そしてメル様たちの理解者で精霊都市ユグリアの市長を務める理由がすべてここにあった。
しかし残酷な時の流れは無情に二人の時間を引き離していく。
ファイナス市長はメリッサさんに「時の指輪」を託そうとするも断られてしまった。
彼女は天寿を全うしてまたきっと生まれ変わりファイナス市長に会いに来ると言って。
「今思えば馬鹿な話ですね。ティアナさんのように女神様に転生を約束してもらったわけでもないのに」
ファイナス市長はそう言って苦笑する。
しかしその瞳は優しくマローネちゃんを見ている。
「ファイナス長老、そうするとこの子は私たちの子ではなくなってしまうのですか?」
心配で仕方ないコストンさんはそう言ってファイナス市長に聞く。
「いいえ、紛れもないあなたたちの子供です。いくら転生したとはいえこの子はマローネ。もしメリッサの記憶がよみがえってもそれは知らない別の誰かの記憶。この子のものではありません」
「!!」
あたしはファイナス市長のその言葉に思わず息が詰まる。
だってその事はあたし自身が一番よく知っている。
須藤正志と言う異界の男性の魂があたし。
しかし今のあたしはその人の記憶があるだけのエルハイミと言う女性。
知ってしまった。
理解してしまった。
いくら転生して前世の記憶があっても自分は須藤正志では無いのだ。
あたしはエルハイミ。
それ以上でもそれ以下でもない。
だからファイナス市長のその言葉にあたしはつらい現実を味わされる。
ティアナも転生してその体の人物になってしまうのではないか‥‥‥
もし記憶が戻ってもあたしを愛してくれないのではないか‥‥‥
「それではファイナス長老、この子は‥‥‥」
「ええ、ロマーニあなたの娘です。もしマローネが前世の記憶を呼び戻してもそれはマローネが決める事。この子は間違いなくあなたたちの子供です」
そう言うとこの二人のエルフの夫婦は涙して喜ぶ。
「‥‥‥それでも、私は私です。見てくれがお母様と同じになっても私はコク。それは変わりません」
「まぁね、ドラゴンニュートの姿で生まれたけどあたしだって赤竜よ。姿かたちが変わってもそれは変わらない」
何故かコクもセキもあたしの側に来てそんな事を言う。
「大丈夫よ、エルハイミ母さん。あたしのお母さんはちゃんとティアナとして戻ってくる。たとえそれが他の人の体であってもそれはティアナお母さんよ!」
セキにそう言い切られあたしは余計な事を考えるのをやめた。
そうだ。
ティアナは探してくれと言っていた。
だからきっと生まれ変わってもティアナのはずだ!
あたしはマローネちゃんを見ながらそう思うのだった。
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