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第十六章
16-26それは狂気の巨人
しおりを挟む16-26それは狂気の巨人
その爆発は火山の如く。
天空を紅蓮に染め全てを焼く尽くすが為に業火をまき散らす。
「やったか!?」
ご先祖様は乗り出してその様子を見る。
全魔力を使った一撃、肩で息をしている。
「狂気の巨人」のその巨体が揺らぐ。
そして二歩三歩と後ずさる。
「ご先祖様!」
「まだだっ! 畜生ッ!あと少しなのに!!」
見れば燃え盛る業火はその炎を消し焦げたにおいが充満するそこにはもうもうとした煙があったがそれが晴れ始め見たくないものが見える。
「あれだけの大魔法なのに傷一つ無い?」
シェルは信じられないものを見るかのようにつぶやく。
「主よ!!」
「ちぃっ! 流石に気づいたか!? 避けろぉっ!!」
ショーゴさんが叫びあたしを掻っ攫うかのように抱き上げその場を離れる。
シェルもそれに続き急いで離れる。
あたしはショーゴさんに抱きかかえながら空が暗くなるのを見る。
そしてその拳があたしたちのいた場所を押しつぶす。
どごぉぉおおおおぉぉぉぉんっ!!
「くそうっ! あの野郎こっちを脅威と見たか!? 下がるぞエルハイミ! 他の連中にも下がらせろぉっ!」
ご先祖様はありったけの声を張り上げ叫ぶ。
しかしあたしはただその上空をいまだ戦い続けるティアナの初号機を見ていた。
『エルハイミに手を出すなぁッ!!』
『ティアナ! 上に逃げてぇっ!!』
「狂気の巨人」があたしたちを襲ったその腕を初号機のティアナが攻撃する。
しかしいくら傷を負わせても「狂気の巨人」にしてみれば蚊とんぼに刺された程度。
その腕を地面から引き抜き初号機を薙ぎ払おうとする。
『くぅううううぅぅっ!』
マリアに警告され一気に上に上昇した初号機のいた場所に「狂気の巨人」の腕が振るわれる。
いくら初号機でもあんなの喰らったらひとたまりもない!!
「こうなったらアイミを使って同調フルバーストで異界に『狂気の巨人』を飛ばしますわ!!」
「無理だ! 奴は女神の分身、精霊王たちの力だけでは異界になんて飛ばせねえぇぞ!!」
ご先祖様が叫ぶ。
「くっ!」
確かにあれだけの巨体。
逆スパイラルで異空間を開きそこに飲み込むには大きすぎる。
それに女神の分身クラスともなれば確かに精霊王の力でも通じないかもしれない。
あたしがそう考えているとご先祖様が叫ぶ。
「ちぃっ! あいつら!! おいエルハイミやめさせろ! かなう相手じゃない!!」
見れば足元でデミグラス王たちが戦斧を振るって切り付けている。
「駄目ですわデミグラス王! オルスターさん!!」
あたしも叫ぶが次の瞬間ティアナを払っていた腕がデミグラス王たちの上へと迫った!!
「オルスター!!」
フィルモさんたちが叫ぶ中オルスターさんとデミグラス王は巨人の手につかまれる。
そして天高く持ち上げられその口に放り込まれる。
「デミグラス王! オルスターさん!!」
それは一瞬だった。
あたしの叫びもむなしく「狂気の巨人」はその巨体に似合わず器用にドワーフ王たちを飲み込んだ。
「そんな、オルスターがやられるだなんて‥‥‥」
「ジニオ、ひ、引くんだなぁ!!」
直接攻撃をしていたみんなは流石にその場から離れ攻撃魔法に切り替える。
「全然効かない! 精霊魔法も受けつかない!! どうなっているんだ!?」
ソルガさんも精霊魔法で攻撃しているけどその効果がまったく見えない。
「駄目ですね、ソルガ、ファル、ルル下がりなさい。体勢を立て直します。ユカ!」
ファイナス市長もみんなに指示を出す。
「下がりなさい! 今は一旦体勢を立て直す時! 皆下がりなさいっ!!」
師匠も馬に乗りながらそう叫びみんなを一旦あたしたちの方へと誘導する。
あたしは「狂気の巨人」を見上げる。
「一体どうしたら良いのですの‥‥‥」
「とにかく魔法陣から出られちまったらいくら『女神の杖』が有っても意味がねぇ! 今は退け! 対策を練らなきゃならん!」
あたしたちはセレやミアムたちの乗る馬車に合流して撤退を始めた。
今のままではどうしようもない。
『お母様、こちらも限界です! 引きます!!』
上空で奮戦していたコクから念話が届く。
確かにこのまま「狂気の巨人」と戦っても決定打が無い。
『コク、退いてくださいですわ! とにかく体制を整えますわ!!』
あたしがそう念話を飛ばした時だった。
『ぶぅろぉおおおおおおおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおおぉぉぉぉっ!』
「狂気の巨人」が叫んだ!?
そしてその歩みを確固としたものにして歩き出した?
「しまった! 奴め人間の多い町に向かう気だぞ!! 人を喰らう気だ!!」
ご先祖様のその言葉にあたしは背筋を凍らす。
そして先ほどの光景がよみがえる。
ドワーフ王デミグラスやオルスターさんが「狂気の巨人」に喰われる様。
「ちっくしょうぉううぅっ! やっぱり最初に犠牲になるのは俺たちホリゾンの人間じゃないか!! エルハイミ! 何とかしやがれ!!」
ゴエムはそう叫びながら馬を近づけてくる。
分かってはいる。
しかし手立てが無いのだ。
「狂気の巨人」はゆっくり、そして確実に人々のいる町へ向かっている。
早く何とかしなければ‥‥‥
「ティアナ様ぁっ!」
「いやぁっ! ティアナ様がっ!」
セレとミアムの悲鳴にあたしは我に帰り天空を見上げる。
するとそこに丁度初号機が「狂気の巨人」掴まれた姿が!!!!
「ティアナぁッ!!!!!」
あたしの叫びが響いたのだった。
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