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第十六章
16-12帝都エリモア
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16-12帝都エリモア
あたしたちは帝都エリモアに向う為に拠点に戻っていた。
「そうですか、まさか『女神の杖』が偽物だったとは」
バルドさんはそう言って窓の外の様子をうかがっている。
流石に教会を襲撃したので今朝はあわただしく衛兵たちが町を巡回している。
あたしは椅子に座ったままシコちゃんを腰につける時に使っていたホルダーを眺めていた。
「エルハイミ、しっかりしてよ! せっかくシコちゃんが身を挺してあんたをかばったのに! 何が何でも『女神の杖』を取り戻さなきゃシコちゃんに顔向けできなくなるわ!」
シェルはそう言ってあたしからそのホルダーを取り上げる。
「シェル?」
「エルハイミらしくない! シコちゃんだってそんなの望んでいない!」
そう言ってシェルは机にそのホルダーを置いて変装用の衣服を身に着ける。
あたしはそんなシェルをぼ~っと眺めていた。
「エルハイミ、行きましょう。ビスマスのあの言葉、既にイパネマにより『女神の杖』は帝都エリモアに運び込まれたのでしょう。このままでは本当に『狂気の巨人』が復活してしまう」
ティアナはそう言ってあたしに外套を渡して来る。
既にここヘミュンの町は肌寒くなっていた。
町には外套を羽織る人も多くなっているようで窓の外には時折そう言った姿が見取れた。
あたしは力なくよろよろと立ち上がっるのだった。
* * *
「流石に厳しいですね。ダリルたちには馬車を準備させていますがヘミュンの町から出るには検問が厳しすぎる」
バルドさんは戻ってきてそう言う。
「お母様、急ぐのであればまた竜の姿になりますが?」
「それはやめた方がいいでしょう。帝都には城壁に魔獣避けの結界が張ってあります。黒龍様たち程の存在、すぐにでも気づかれましょう。それに今の帝都は‥‥‥」
バルドさんはそこまで言って首を振る。
「確認できただけで十二体の巨人が待機しています。更に巨人の卵もあるようです。そして魔怪人や融合魔怪人、キメラ部隊などの戦力が集まっています。いくらティアナ様たちとは言え正面からは‥‥‥」
流石にホリゾン帝国が帝都エリモア。
ジュメルを引き入れた皇帝ゾルビオンのせいで事実上ホリゾン帝国はジュメルの傀儡になっている。
しかし住民全部がジュメルに加担している訳では無い。
だから住民たちをを巻き込むような奇襲をかける訳にも行かない。
「精霊魔法で姿を隠して入り込めないの?」
「魔獣除けと同時に外部からの侵入にも対処しています。魔法で入り込もうとしても反応してばれてしまいますでしょう。なので伝書鳩を飛ばしていますがエリモアには街中に流れる川から侵入しましょう」
バルドさんにそう言われあたしたちはまずはこのヘミュンの町を出る方法を考える。
「バルド様、準備は出来ていますがいかがいたしましょう?」
馬車を準備していてくれたダリルさんは毛皮を沢山荷台に乗せていた。
本来はこの毛皮に紛れて馬車で帝都に行くつもりだったのだけどこれだけ検問が厳しいとそうもいかない。
「今までであればこの時期に帝都では毛皮の需要が増えるので簡単に検問も突破できたのですが」
申し訳なさそうに言うバルドさん。
「でもこの街を出るのなら魔法は使っても大丈夫なのでしょう? 馬車と一緒に門まで行って開いたらこっそりとあたしたちだけ先に出ましょう」
シェルは既に準備を整えぱっと見この界隈にいる人と同じような姿になっている。
ティアナも準備出来たようで外套に身を包んでいた。
「バルド、私たちはシェルの魔法で姿を消します。ダリルたちには通常通り毛皮の運搬をさせてください。門が開けばその隙に」
「わかりました。ではダリル、ロム。頼んだぞ」
「はい、バルド様」
そう言って馬車はこのヘミュンの街から帝都エリモアに向けて出発したのだった。
* * * * *
「なんだ、簡単に出れたじゃない。緊張して損した」
シェルのおかげであたしたちはすんなり門を出れた。
しかし流石にダリルさんたちの馬車は事細やかに調べられなかなか門から出れなかったけど最終的には問題無く外に出れた。
今はあたしたちは馬車に乗っている。
あたしは何気なく自分の腰を触る。
そしてシコちゃんがいない事に気付く。
あのホルダーはヘミュンの拠点に置いて来た。
もう二度と使う事が無いだろうから。
「エルハイミ?」
ティアナがあたしを見て驚いている。
そして優しく抱き寄せてくれた。
気付けば今頃涙がこぼれている。
シコちゃんがいなくなったことが今更ながらに応えてきたようだ。
「エルハイミ、私はそれでもシコちゃんに感謝しています。シコちゃんの犠牲が無ければエルハイミを失っていたかもしれない」
「ティアナ‥‥‥」
あたしは涙を拭きながらティアナに寄りかかる。
「エルハイミ!」
シェルがあたしを呼ぶ。
何よ、せっかくティアナに慰めてもらっているのに!!
最近のシェルはあたしがティアナといちゃいちゃすると直ぐ文句言ってくるようになってきたのよね!
あたしがそう膨れているとシェルは真剣な顔で話してきた。
「今エルフのネットワークで連絡が入ったわ。 帝都エリモアにいるエルフからの情報だと皇帝ゾルビオンが国民に対して重大な話をするそうよ!」
「なんですってですわ!?」
「シェル、詳しくは分からないのですか?」
「うーん、一旦ファイナス長老がまとめないと細かくは分からないわよ。誰だか知らないけどエリモアにいるエルフはそれほど沢山の情報を流してくれていないもの」
ホリゾン帝国に動きがあった。
あたしとティアナは顔を見合わせるのだった。
あたしたちは帝都エリモアに向う為に拠点に戻っていた。
「そうですか、まさか『女神の杖』が偽物だったとは」
バルドさんはそう言って窓の外の様子をうかがっている。
流石に教会を襲撃したので今朝はあわただしく衛兵たちが町を巡回している。
あたしは椅子に座ったままシコちゃんを腰につける時に使っていたホルダーを眺めていた。
「エルハイミ、しっかりしてよ! せっかくシコちゃんが身を挺してあんたをかばったのに! 何が何でも『女神の杖』を取り戻さなきゃシコちゃんに顔向けできなくなるわ!」
シェルはそう言ってあたしからそのホルダーを取り上げる。
「シェル?」
「エルハイミらしくない! シコちゃんだってそんなの望んでいない!」
そう言ってシェルは机にそのホルダーを置いて変装用の衣服を身に着ける。
あたしはそんなシェルをぼ~っと眺めていた。
「エルハイミ、行きましょう。ビスマスのあの言葉、既にイパネマにより『女神の杖』は帝都エリモアに運び込まれたのでしょう。このままでは本当に『狂気の巨人』が復活してしまう」
ティアナはそう言ってあたしに外套を渡して来る。
既にここヘミュンの町は肌寒くなっていた。
町には外套を羽織る人も多くなっているようで窓の外には時折そう言った姿が見取れた。
あたしは力なくよろよろと立ち上がっるのだった。
* * *
「流石に厳しいですね。ダリルたちには馬車を準備させていますがヘミュンの町から出るには検問が厳しすぎる」
バルドさんは戻ってきてそう言う。
「お母様、急ぐのであればまた竜の姿になりますが?」
「それはやめた方がいいでしょう。帝都には城壁に魔獣避けの結界が張ってあります。黒龍様たち程の存在、すぐにでも気づかれましょう。それに今の帝都は‥‥‥」
バルドさんはそこまで言って首を振る。
「確認できただけで十二体の巨人が待機しています。更に巨人の卵もあるようです。そして魔怪人や融合魔怪人、キメラ部隊などの戦力が集まっています。いくらティアナ様たちとは言え正面からは‥‥‥」
流石にホリゾン帝国が帝都エリモア。
ジュメルを引き入れた皇帝ゾルビオンのせいで事実上ホリゾン帝国はジュメルの傀儡になっている。
しかし住民全部がジュメルに加担している訳では無い。
だから住民たちをを巻き込むような奇襲をかける訳にも行かない。
「精霊魔法で姿を隠して入り込めないの?」
「魔獣除けと同時に外部からの侵入にも対処しています。魔法で入り込もうとしても反応してばれてしまいますでしょう。なので伝書鳩を飛ばしていますがエリモアには街中に流れる川から侵入しましょう」
バルドさんにそう言われあたしたちはまずはこのヘミュンの町を出る方法を考える。
「バルド様、準備は出来ていますがいかがいたしましょう?」
馬車を準備していてくれたダリルさんは毛皮を沢山荷台に乗せていた。
本来はこの毛皮に紛れて馬車で帝都に行くつもりだったのだけどこれだけ検問が厳しいとそうもいかない。
「今までであればこの時期に帝都では毛皮の需要が増えるので簡単に検問も突破できたのですが」
申し訳なさそうに言うバルドさん。
「でもこの街を出るのなら魔法は使っても大丈夫なのでしょう? 馬車と一緒に門まで行って開いたらこっそりとあたしたちだけ先に出ましょう」
シェルは既に準備を整えぱっと見この界隈にいる人と同じような姿になっている。
ティアナも準備出来たようで外套に身を包んでいた。
「バルド、私たちはシェルの魔法で姿を消します。ダリルたちには通常通り毛皮の運搬をさせてください。門が開けばその隙に」
「わかりました。ではダリル、ロム。頼んだぞ」
「はい、バルド様」
そう言って馬車はこのヘミュンの街から帝都エリモアに向けて出発したのだった。
* * * * *
「なんだ、簡単に出れたじゃない。緊張して損した」
シェルのおかげであたしたちはすんなり門を出れた。
しかし流石にダリルさんたちの馬車は事細やかに調べられなかなか門から出れなかったけど最終的には問題無く外に出れた。
今はあたしたちは馬車に乗っている。
あたしは何気なく自分の腰を触る。
そしてシコちゃんがいない事に気付く。
あのホルダーはヘミュンの拠点に置いて来た。
もう二度と使う事が無いだろうから。
「エルハイミ?」
ティアナがあたしを見て驚いている。
そして優しく抱き寄せてくれた。
気付けば今頃涙がこぼれている。
シコちゃんがいなくなったことが今更ながらに応えてきたようだ。
「エルハイミ、私はそれでもシコちゃんに感謝しています。シコちゃんの犠牲が無ければエルハイミを失っていたかもしれない」
「ティアナ‥‥‥」
あたしは涙を拭きながらティアナに寄りかかる。
「エルハイミ!」
シェルがあたしを呼ぶ。
何よ、せっかくティアナに慰めてもらっているのに!!
最近のシェルはあたしがティアナといちゃいちゃすると直ぐ文句言ってくるようになってきたのよね!
あたしがそう膨れているとシェルは真剣な顔で話してきた。
「今エルフのネットワークで連絡が入ったわ。 帝都エリモアにいるエルフからの情報だと皇帝ゾルビオンが国民に対して重大な話をするそうよ!」
「なんですってですわ!?」
「シェル、詳しくは分からないのですか?」
「うーん、一旦ファイナス長老がまとめないと細かくは分からないわよ。誰だか知らないけどエリモアにいるエルフはそれほど沢山の情報を流してくれていないもの」
ホリゾン帝国に動きがあった。
あたしとティアナは顔を見合わせるのだった。
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