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第十六章

16-7情報

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 16-7情報

 
 次の日コクたちとは合流できていたが今の拠点は流石に大人数は待機しきれずコクたちは町の外れにある小屋に待機してもらっている。




 「どうですのシェル?」


 「うーん、これといった情報は無いわね。どこもかしこも慌ただしくなってはいる様だけど」

 「どう言う事ですか、シェル?」

 シェルはエルフのネットワークでファイナス市長がまとめる情報以外にも知り合いに片っ端から情報を聞き出している。

 しかし目的の「女神の杖」に関しての情報は乏しい。
 ただ、気になることは有るようだ。

 「うん、なんか世界中でガレントに兵を送り戦に備えるような風潮が蔓延しているらしいわよ?」

 「ガレントにですか? それは各国が? 師匠の呼びかけていた英雄たちでは無く?」

 疑問が次から次へと湧いてくる。
 しかしこのエルフのネットワークだって万能じゃない。
 風のメッセンジャーより精度は落ちる。

 「詳しくは分からないけどその英雄自体が発起人になっているらしいわ。ボヘーミャの学園長がいろいろな所へ声をかけているのは間違いないけど世界中に散らばる英雄たちが民衆の支持を受けながら各国に働きかけているみたい」


 それを聞いてあたしとティアナは顔を見合わせる。
 そして今更ながら師匠の影響力を実感する。


 「師匠はホリゾン帝国との一戦をも考えているのですわね?」

 「この動き、そうとしか思えません。となると『女神の杖』は‥‥‥」


 そう、確実にホリゾン帝国に渡ると見ている。


 確かに連合の会議では各国のホリゾン帝国に対する退り込みで事なかれ的な決断をされてしまった。

 しかし抜本的な問題解決をするにはジュメルに乗っ取られてしまったホリゾン帝国を解放し、秘密結社ジュメル自体に打撃を与えなければ意味が無い。

 そのうえで「女神の杖」をたとえ一本でもいいから奪い返せればあたしたちで異界に飛ばし「狂気の巨人」の復活を永久に阻止できるのだが。


 「でもさ、いくらホリゾンに英雄たちが集まっても肝心の『女神の杖』の行方が分からないのじゃ意味無いじゃない?」

 シェルが風の精霊たちを解放してやってこちらに来る。

 「確かにシェルの言う通りです。『女神の杖』はいったい何処に有るのやら」

 ティアナはため息をつく。

 既にひと月以上が経つ。
 もし通常のルートで来ているのならば既に帝都エリモアについていてもおかしくない。
 そう考えると居てもたってもいられなくなってくる。


 「ティアナ、私たちも先に帝都に潜伏した方がいいのではないですの? ここでの情報を集めるのも限界では無いのですの?」

 ティアナは黙って思案する。

 先に行くかここにとどまり今だガレント内に有るかもしれない「女神の杖」の情報を待つか。


 と、あたしたちが悩んでいるとバルドさんが戻って来た。

 「ティアナ様、エルハイミ様。たった今入りました情報ですとジュメルの十二使徒らしき人物がどうやらヘミュンの町近くで目撃されたらしいです。以前の剣聖ビスマスらしいとの話です!」

 「何っ!? ビスマス!? それは本当ですか、バルド!?」

 「元剣聖ビスマスはノージム大陸でも知っている者も多いでしょう。十二使徒であることは知られていませんがまず間違いないかと」

 どう言う事だ?
 あたしたちを追い越して帝都に近いヘミュンの町にいるって!?

 「どう言ったルートでヘミュンの町に着いたかは分かりませんがティアナ急いで私たちも行きましょうですわ!」

 「ええ、バルドすぐにでもヘミュンの町に向かいます」
 
 「しかしティアナ様、早馬を準備してもヘミュンの町には最低三日はかかります。今から向かっても‥‥‥」

 今からここを出てもそれだけ時間がっかてしまうのか?
 一体どうしたら‥‥‥


 「空でも飛べれば違うんでしょうけどねぇ」


 シェルがポツリと吐いたその言葉にあたしはコクを思い出した!

 「ティアナ、今からコクと念話しますわ! とにかくまずはヘミュンに行かなければですわ! コクたちにお願いして竜の姿になってもらい私たちを運んでもらいましょうですわ!!」

 今考えられる最短移動の方法と言えばそれくらいしか思いつかない。

 「わかりました、エルハイミお願いします」

 ティアナはすぐにあたしに答えあたしはコクたちと念話を始める。


 『コク、聞こえますかですわ。ヘミュンの町に十二使徒のビスマスが現れたそうですわ。今から早馬で向かっては間に合いませんわ。お願いですわ、コクたちの力を貸してくださいですわ!!』

 『お母様、分かりました。私たちが竜の姿になりお母様たちをヘミュンの町へとお連れします。急ぎこちらへ』


 念話が終わる頃には既にティアナは他のみんなに話を終え出発の準備を整える。
 

 「ビスマス! 次こそは!!」



 瞳に怒りの炎の闘志を燃やしティアナとあたしたちはこの拠点を出て行くのであった。   

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