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第十五章
15-13赤竜の縄張り
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15-13赤竜の縄張り
あたしたちの討伐隊は山岳部に入りだいぶ来ていた。
もうじき赤竜の縄張りと呼ばれる所へ着く。
一応は道があるけどどう言う訳か赤竜の縄張りと呼ばれる所にはあまり草木が少ない。
反対側になる方はまだちらほらと林があったり雑草なんかも生い茂っている。
「ティアナ将軍、もう少しでザキの村に着きます」
先行していたアラージュさんが馬を戻してきて報告する。
「いよいよですね。とにかくまずはザキの村に行きましょう」
ザキの村はこの山岳部で一番赤竜の縄張りに近い所だ。
その昔赤竜の縄張りに住んでいた人々が事有るごとに赤竜に食い殺され恐怖におののいていて毎年村の若い娘を生贄に捧げる事で赤竜の怒りを納めていた。
しかし流石に毎年人口が減っていくためにとうとう生贄になる若い娘がいなくなり、老人たちを代わりに差し出すと興味をなくした赤竜が縄張りを決めそこから出て行けばこの者たちを襲わないと言ってくれたそうだ。
むう、若い娘だけにしか興味無いなんてけしからん竜だ。
以来ザキの村はこの縄張りとの境界線での道を管理し、決して赤竜の縄張りに入らない様に人々に伝えたのだった。
そしてこの道を更に西に行くと最西端の国、ミハイン王国に着く。
「何度来てもこの辺は何も無いわね」
アラージュさんと一緒に先行していたカーミラさんも戻って来た。
連合軍はミハイン王国でジュメルと戦っていた。
だからこの道も何度目かになる。
「なにも無くて結構です。いっそ国ごと滅んでしまえばいいのに‥‥‥」
「セレ‥‥‥」
一緒に馬車に乗っていたセレがポツリとそんな事を言いミアムがセレに寄り添う。
そう言えばミハイン王国はセレの母国だっけ。
ティアナから話だけは聞いたけど同情はするもののあたしには何もできない。
それにセレはもうあの国を捨てた。
「見えてきたな」
ショーゴさんはそう言って村の入り口を指さす。
それほど大きくない村だけど街道の宿場村としてそこそこ人の往来は有るらしい。
村には数軒の宿屋があり、あたしたちはその中で一番大きな宿屋へと行く。
「ではここで一旦宿を取り明日赤竜の火山へ向かう準備をします、アラージュ、カーミラ準備を」
ティアナはそう宣言してみんなに指示を出していく。
あたしたち馬車組も宿の馬屋や馬車置き場に馬車を止め、宿に入って行く。
「主人、又厄介になる。それと村長はいるのか?」
アラージュさんが手慣れた感じでこの宿の主人に前金でお金を渡しながら話す。
「連合軍の方ですか。今回はそれほど人数がいませんな? 村長でしたらいつも通りにおりますよ。お部屋に入っていただき落ち着いた頃に呼んでまいりましょう」
そう言って主人は部屋の鍵をあたしたちに渡して来る。
とりあえず二階に上がって荷物を置き、あたしたちは一階の食堂に集まる。
「では村長を呼んでまいりますのでしばしお待ちを」
そう言って主人は出て行った。
* * *
「なんですと? それは本気ですか!?」
村長のベナレルさんは年の頃五十を過ぎたくらいかな?
白いものがかなり髪の毛に混じっていて鼻の下にだけちょび髭がある。
「ええ、本気です。我々には赤竜に対抗する力があります。ですのでこの辺に詳しい道案内が必要なのです」
ティアナのその説明にベナレル村長はここに居る面々を見渡し不安そうに聞いてくる。
「あ、あの、今回は連合軍の方がかなり少ないようですが、この後本陣か何かがいらっしゃるので?」
「いえ、赤竜討伐隊はここに居る者だけです。人数は少ないですが皆一騎当千の実力者たちばかりです」
ティアナにそう言われベナレル村長はため息をついてから言う。
「ティアナ将軍にはいろいろと世話になっていますし、その実力は存じております。しかし今回の赤竜は『女神殺しの竜』ですよ? いくらあの大きなマシンドールがいるからと言っても本当に大丈夫なのですか?」
まあ、確かにこの人数だと心配にもなるか。
今回の討伐隊は少数精鋭なのであたしを含めてたったの十二人しかいない。
あ、この中にはマリアとシコちゃんは含まないわよ?
それとアイミは中に入れないので外で体育座りして待っている。
「それだけの準備はしてきました。我々はなんとしても赤竜を打ち倒さなければならないのです」
「わかりました、では村で一番の狩人のゾリッダを呼びましょう。彼は赤竜の目を盗んで縄張りで狩りをしても今まで命を落とさずやってきましたからな」
ベナレルさんはそう言い宿屋の主人にそのゾリッダと言う人を呼びに行かせた。
* * *
「本気か? あの赤竜だぞ?」
連れられてきた狩人のゾリッダさんは年の頃三十路くらいでなんとなくジルの様な雰囲気がある。
彼は連れられてきて村長からあたしたちを紹介され今回の件について説明されたところだ。
「本気です。我々にはそれだけの力が有ります」
「たった十人くらいでか? それに女子供ばかりじゃないか?」
うーん、確かに言われればそうだけど、ここに居るメンツってセレやミアムを抜かせばほとんどが大男が束になってかかって来ても全然問題無いのよね?
「先ほどから聞いていれば好き勝手なことを。赤竜は私の元主の仇です。さっさと奴のもとへ連れて行きなさい!」
コクがずいっとゾリッダさんの前に出る。
「あのな、嬢ちゃん。赤竜ってのはでっかいバケモンで嬢ちゃんなんか出て行ったらすぐにでも餌にされちまうぞ? 親か何かを食い殺されたんだろうが、赤竜の縄張りに入った奴の方が悪い。あいつは縄張りの外にいれば決して手を出してこないからな」
長身のゾリッダさんはわざわざコクの目線までかがんでから言い聞かせるように話す。
そして頭を撫でてやろうとするがコクはその手を払う。
「無礼者! 我に気安く触れるで無いっ!!」
そう言いながらコクはいきなりドラゴンの咆哮をあげる。
「ごぉぁああああぁぁぁぁぁっ!!」
びりびりびりっ!
その咆哮はゾリッダさんが思わず尻もちをついてしまう程の物だった。
「なっ!? 今のはドラゴンの威嚇の咆哮じゃねーかっ!! 嬢ちゃん、あんた一体何モンだっ!?」
「我は黒龍! 赤竜と共に女神を焼き殺し者!! 我が元主ディメルモ様の仇、赤竜の下へ大人しく案内せよ、人間!!」
「こ、黒龍? あの東の大迷宮の主? 太古の竜か!? な、なんでそんなのがここに? それにこんなちっこい女の子に!!!?」
怒気を孕んだコクの言葉にゾリッダさんだけでなくベナレル村長や宿屋の主も腰を抜かしている。
まあ、驚くのは無理も無い。
普通だったら誰もコクがあの黒龍とは思わないもんね。
「コク、やめなさいですわ。彼らに非が有る訳では有りませんわ」
「‥‥‥はい、お母様」
そう言ってコクはそのままあたしにくっついてきて黙ってしまった。
コクもしばらく前から苛立っていたのは何となく知っていた。
でも他の人に八つ当たりは良く無いよ?
「これで分かっていただけたと思います。我々は赤竜を討伐します。赤竜の住処、火山への道案内をお願いします」
ティアナにそう言われゾリッダさんは頷く。
「赤竜は飛竜と聞きます。いったん飛び上がれば地上の我々には手が出せなくなる。できれば住処で仕留められればいいのですが」
ティアナはベナレル村長に向かってそう言う。
ベナレル村長も頷きそして額の汗を拭く。
「ティアナ将軍のお力、我々も期待してますぞ。赤竜がいなくなればあの広大な土地も使える。我々にとってこの上ない事ですしな。我々も出来る限りの協力を致します」
ベナレル村長はそう言ってティアナに手を差し出す。
ティアナはその手を握り返しこう言う。
「必ずや赤竜を討伐して見せましょう」
いよいよ赤竜との戦いが始まるのであった。
あたしたちの討伐隊は山岳部に入りだいぶ来ていた。
もうじき赤竜の縄張りと呼ばれる所へ着く。
一応は道があるけどどう言う訳か赤竜の縄張りと呼ばれる所にはあまり草木が少ない。
反対側になる方はまだちらほらと林があったり雑草なんかも生い茂っている。
「ティアナ将軍、もう少しでザキの村に着きます」
先行していたアラージュさんが馬を戻してきて報告する。
「いよいよですね。とにかくまずはザキの村に行きましょう」
ザキの村はこの山岳部で一番赤竜の縄張りに近い所だ。
その昔赤竜の縄張りに住んでいた人々が事有るごとに赤竜に食い殺され恐怖におののいていて毎年村の若い娘を生贄に捧げる事で赤竜の怒りを納めていた。
しかし流石に毎年人口が減っていくためにとうとう生贄になる若い娘がいなくなり、老人たちを代わりに差し出すと興味をなくした赤竜が縄張りを決めそこから出て行けばこの者たちを襲わないと言ってくれたそうだ。
むう、若い娘だけにしか興味無いなんてけしからん竜だ。
以来ザキの村はこの縄張りとの境界線での道を管理し、決して赤竜の縄張りに入らない様に人々に伝えたのだった。
そしてこの道を更に西に行くと最西端の国、ミハイン王国に着く。
「何度来てもこの辺は何も無いわね」
アラージュさんと一緒に先行していたカーミラさんも戻って来た。
連合軍はミハイン王国でジュメルと戦っていた。
だからこの道も何度目かになる。
「なにも無くて結構です。いっそ国ごと滅んでしまえばいいのに‥‥‥」
「セレ‥‥‥」
一緒に馬車に乗っていたセレがポツリとそんな事を言いミアムがセレに寄り添う。
そう言えばミハイン王国はセレの母国だっけ。
ティアナから話だけは聞いたけど同情はするもののあたしには何もできない。
それにセレはもうあの国を捨てた。
「見えてきたな」
ショーゴさんはそう言って村の入り口を指さす。
それほど大きくない村だけど街道の宿場村としてそこそこ人の往来は有るらしい。
村には数軒の宿屋があり、あたしたちはその中で一番大きな宿屋へと行く。
「ではここで一旦宿を取り明日赤竜の火山へ向かう準備をします、アラージュ、カーミラ準備を」
ティアナはそう宣言してみんなに指示を出していく。
あたしたち馬車組も宿の馬屋や馬車置き場に馬車を止め、宿に入って行く。
「主人、又厄介になる。それと村長はいるのか?」
アラージュさんが手慣れた感じでこの宿の主人に前金でお金を渡しながら話す。
「連合軍の方ですか。今回はそれほど人数がいませんな? 村長でしたらいつも通りにおりますよ。お部屋に入っていただき落ち着いた頃に呼んでまいりましょう」
そう言って主人は部屋の鍵をあたしたちに渡して来る。
とりあえず二階に上がって荷物を置き、あたしたちは一階の食堂に集まる。
「では村長を呼んでまいりますのでしばしお待ちを」
そう言って主人は出て行った。
* * *
「なんですと? それは本気ですか!?」
村長のベナレルさんは年の頃五十を過ぎたくらいかな?
白いものがかなり髪の毛に混じっていて鼻の下にだけちょび髭がある。
「ええ、本気です。我々には赤竜に対抗する力があります。ですのでこの辺に詳しい道案内が必要なのです」
ティアナのその説明にベナレル村長はここに居る面々を見渡し不安そうに聞いてくる。
「あ、あの、今回は連合軍の方がかなり少ないようですが、この後本陣か何かがいらっしゃるので?」
「いえ、赤竜討伐隊はここに居る者だけです。人数は少ないですが皆一騎当千の実力者たちばかりです」
ティアナにそう言われベナレル村長はため息をついてから言う。
「ティアナ将軍にはいろいろと世話になっていますし、その実力は存じております。しかし今回の赤竜は『女神殺しの竜』ですよ? いくらあの大きなマシンドールがいるからと言っても本当に大丈夫なのですか?」
まあ、確かにこの人数だと心配にもなるか。
今回の討伐隊は少数精鋭なのであたしを含めてたったの十二人しかいない。
あ、この中にはマリアとシコちゃんは含まないわよ?
それとアイミは中に入れないので外で体育座りして待っている。
「それだけの準備はしてきました。我々はなんとしても赤竜を打ち倒さなければならないのです」
「わかりました、では村で一番の狩人のゾリッダを呼びましょう。彼は赤竜の目を盗んで縄張りで狩りをしても今まで命を落とさずやってきましたからな」
ベナレルさんはそう言い宿屋の主人にそのゾリッダと言う人を呼びに行かせた。
* * *
「本気か? あの赤竜だぞ?」
連れられてきた狩人のゾリッダさんは年の頃三十路くらいでなんとなくジルの様な雰囲気がある。
彼は連れられてきて村長からあたしたちを紹介され今回の件について説明されたところだ。
「本気です。我々にはそれだけの力が有ります」
「たった十人くらいでか? それに女子供ばかりじゃないか?」
うーん、確かに言われればそうだけど、ここに居るメンツってセレやミアムを抜かせばほとんどが大男が束になってかかって来ても全然問題無いのよね?
「先ほどから聞いていれば好き勝手なことを。赤竜は私の元主の仇です。さっさと奴のもとへ連れて行きなさい!」
コクがずいっとゾリッダさんの前に出る。
「あのな、嬢ちゃん。赤竜ってのはでっかいバケモンで嬢ちゃんなんか出て行ったらすぐにでも餌にされちまうぞ? 親か何かを食い殺されたんだろうが、赤竜の縄張りに入った奴の方が悪い。あいつは縄張りの外にいれば決して手を出してこないからな」
長身のゾリッダさんはわざわざコクの目線までかがんでから言い聞かせるように話す。
そして頭を撫でてやろうとするがコクはその手を払う。
「無礼者! 我に気安く触れるで無いっ!!」
そう言いながらコクはいきなりドラゴンの咆哮をあげる。
「ごぉぁああああぁぁぁぁぁっ!!」
びりびりびりっ!
その咆哮はゾリッダさんが思わず尻もちをついてしまう程の物だった。
「なっ!? 今のはドラゴンの威嚇の咆哮じゃねーかっ!! 嬢ちゃん、あんた一体何モンだっ!?」
「我は黒龍! 赤竜と共に女神を焼き殺し者!! 我が元主ディメルモ様の仇、赤竜の下へ大人しく案内せよ、人間!!」
「こ、黒龍? あの東の大迷宮の主? 太古の竜か!? な、なんでそんなのがここに? それにこんなちっこい女の子に!!!?」
怒気を孕んだコクの言葉にゾリッダさんだけでなくベナレル村長や宿屋の主も腰を抜かしている。
まあ、驚くのは無理も無い。
普通だったら誰もコクがあの黒龍とは思わないもんね。
「コク、やめなさいですわ。彼らに非が有る訳では有りませんわ」
「‥‥‥はい、お母様」
そう言ってコクはそのままあたしにくっついてきて黙ってしまった。
コクもしばらく前から苛立っていたのは何となく知っていた。
でも他の人に八つ当たりは良く無いよ?
「これで分かっていただけたと思います。我々は赤竜を討伐します。赤竜の住処、火山への道案内をお願いします」
ティアナにそう言われゾリッダさんは頷く。
「赤竜は飛竜と聞きます。いったん飛び上がれば地上の我々には手が出せなくなる。できれば住処で仕留められればいいのですが」
ティアナはベナレル村長に向かってそう言う。
ベナレル村長も頷きそして額の汗を拭く。
「ティアナ将軍のお力、我々も期待してますぞ。赤竜がいなくなればあの広大な土地も使える。我々にとってこの上ない事ですしな。我々も出来る限りの協力を致します」
ベナレル村長はそう言ってティアナに手を差し出す。
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