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第十四章

14-16ティナの町での一日

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 14-16ティナの町での一日


 「うーんっ、良く寝ましたわぁ~」


 あたしはベッドの上で大きく伸びをする。

 プルンっ!

 腕を上に伸ばしたせいであたしの胸が揺れる。


 「うん? もう朝なの? おはよう、エルハイミ」

 そう言ってティアナも起き出す。

 さらりとシーツがはだける。
 そして朝の光りの中に美しいティアナの裸体を照らし出す。

 「おはようございますですわ、ティアナ。ちゅっ!」

 「んっ、もう、エルハイミったら昨日は激しかったんだから‥‥‥ たまにはあたしにもその呪い貸してね。今度はあたしがエルハイミを可愛がってあげるから」

 そう言いながらティアナはベッドから起き上がり衣服を着始める。

 あたしはもう少しこの甘い時間を過ごしたかったけど今日はティナの町に買い出しやら何やらとめいいっぱい楽しみたい。

 下着工房ではシェルが昨日の夜から何やら奮闘して新作を作っているとか言ってたし、ちょっと楽しみでもある。

 「今日はアラージュたちも一緒に町を回りたいって言ってたし、エルハイミとだけゆっくりできないけどごめんね」

 「かまいませんわよ。私はティアナと一緒なら」

 あたしはそう言いながら自分も衣服を着始めるのだった。


 * * * 


 「お母様おはようございます。赤お母様もおはようございます‥‥‥」

 朝食の為食堂に行くとコクたちが先に来ていて食事をしていた。
 コクはあたしたちに朝の挨拶をするもののティアナに対しては口をとがらせながら挨拶をしている。

 「お母様と赤お母様の事は理解しているつもりですがやはりお母様と一緒に眠れないのは寂しいです」

 「コク、ごめんなさいね。でもコクもそろそろ一人で眠れないといけませんわよ?」

 あたしがそう言うとコクはあたしに抱き着きこう言う。

 「コクはお母様とずっと一緒がいいです!」

 「コクちゃんその意気ですよ!」
 
 「そうですコクちゃん、私たちも応援します! そしてティアナ様は私たちのもとへ‥‥‥ ぐへへへへっ」

 『全くこの子達ったら』

 可愛らしいコクがあたしに抱き着きおねだりする横で欲望丸出しのセレとミアムがシコちゃんにあきれられながらコクを焚き付ける。

 まったくこいつらときたら‥‥‥


 「ああ、今朝のセレもミアムも可愛らしい! もうそのままお持ち帰りしたい!!」

 「朝から盛ってるんじゃないわよ、アラージュ。ほらそっちのドレッシング取って」

 アラージュさんやカーミラさんもいる。
 相変わらず平常運転だ。

 「おはよう。ところでエルハイミさん、ここって魔晶石が豊富に採れるのだっけ?」

 「おはようございますですわ、イパネマさん。魔晶石の採掘はお隣の国ノルウェンですわよ? ティナの町では採掘は有りませんわ」

 イパネマさんはお茶を飲みながら「あらそうだったの」とか言っている。
 みんな今朝は各々自由に過ごしている。


 「ティアナ、食事を運んでもらいましたわ。さあ早い所食事を済ませて町に行きましょうですわ!」

 あたしはそう言いながらティアナと朝食をとっていくのだった。


 * * * * *


 「ティアナねーちゃん、エルハイミねーちゃん! こっちだよ!!」


 ジルが元気に手を振っている。
     
 ティナの町ももうじき収穫祭が行われるよ様だ。
 あたしたちが始めた収穫祭は今では町の一大イベントとなっており各ギルドがスポンサーになって毎年賑やかに行われるそうだ。

 なので祭りが近づくとこうして広場の周りに露店が立ち並ぶのだ。


 「よく兄様が露店の許可を出しましたね?」

 「あー、ゾナー様がエスティマ様を説得して許可が下りたんだ。ただ店を出すには貿易ギルドに登録する必要があるから変なのは店が出せないけどね」

 ジルはそう言ってマリアを肩に乗せあちらこちらを指さして話をしている。


 「そう言えばシェルはどうしたのですの?」

 「ああ、シェルねーちゃんなら下着工房に行ったまま帰ってきていないよ。せっかく祭りが近いから露店を見て回ろうと誘ったんだけどエルハイミねーちゃんの下着作るって言い張ってそのままだった」


 ジルは肩をすくめてため息をついている。

 
 「人間の考える事は理解できないでいやがりますね、収穫祭などとは。毎年収穫時期は訪れるというのに」

 「クロエそう言うものではないぞ。寿命の短き人間はその都度そう言った事に感謝をして短き命を謳歌するのだ」

 クロエさんがガラス細工の瓶を熱心に眺めながらそんな事を言っている。
 それをクロさんはたしなめる。

 確かに人間の命は短い。
 だから毎年毎年行うこういった催し物を大いに楽しむ。


 と、あたしは有ることを思い出す。


 「ジル、そう言えば収穫祭は感謝の舞をまだやっているのですの?」


 「うっ、あ、ああ、それ見たいのはやっているんだけどね‥‥‥」

 ジルにしては珍しく歯切れの悪い返事が返ってくる。
 何なのだろう?


 「えー、あの踊り変だよ絶対!」

 
 ジルの肩にとまっていたアリアは露店で買ったお菓子を食べながらそう言う。


 感謝の舞が変?
 あたしは気になってジルに聞いてみる。


 「ジル、感謝の舞が何故変なのですの? ファーナ様に仕える神官が踊りを舞うのではないのですの?」

 「い、いやそれが去年あたりからこの町の特徴を前面に出そうって話になってエスティマ様に話を持って行ったら即採用になっちゃって、町の男どもは大喜びだしスタイルに自信のある人は平気で参加しちゃうしで‥‥‥」


 そう言ってジルは真っ赤になった。

 
 なに?
 どう言う事よ?


 「だってさ、みんなエルハイミやティアナがつけている肌着見たいので舞台上で行ったり来たりするだけで踊らないんだよ? あんなの踊りじゃないって言ってるのに他の人はにやにやしてうれしそうなんだよねぇ」

 マリアはふくれながらそう言う。


 はぁ?
 あたしやティアナの肌着って‥‥‥
 ま、まさかそれって下着ぃっ!?



 「ジ、ジル、まさかそれって下着のファッションショーですの!?」


 「ふぁっしょんしょー?」


 ジルは赤い顔のまま首をかしげる。
 あたしはびっと人差し指を立てながら説明する。

 「要は下着の品評会を実際に女性が着用して見せると言う事ですわ! 実際に装着した様子でその下着の見栄えや出来の良さを確認するのですわ!」

 「ああ、なるほど」

 ジルは手をポンと叩き理解する。


 「そんな感じだったよ。それで人気のある下着はすぐに工房で量産しているって言ってたなぁ」

 そしてジルはこんなことを付け加えて言う。

 「そう言えばコルニャのお偉いさんがティアナねーちゃんに着せるんだって言って色んな下着のデザインを寄こしていたっけ。結局ティアナねーちゃんが連合軍の将軍やってるからそれらはみんなその『ふぁっしょんしょー』ってのに出されてたみたいだけど」


 って、アテンザ様も噛んでいたのかいっ!!
 しかもティアナに着せるとか相変わらずぶれないな姉よ!



 と、あたしたちが話しているとシェルがやって来た。

 「いたいたっ! エルハイミ出来たわよ!! あたしの自信作、すぐにでもエルハイミに着てもらいたいわっ!」

 手をぶんぶん振って目の下にクマまで作って興奮気味にやってくるシェル。
 そんなシェルを見てジルは思わず一歩引いてあたしを見て言う。


 「ま、まさかエルハイミねーちゃんもシェルねーちゃんが作った下着着てみんなの前で『ふぁっしょんしょー』する気なのかっ!? いくらエルハイミねーちゃんが変態だからってそれはやめといた方が良いぞ?」



 「誰が変態ですの! それに私は人前で下着姿になんかなりませんわよ!!」



 「エ、エルハイミの新作下着姿‥‥‥ ごくり」

 「あたしの作った下着姿のエルハイミ‥‥‥ ぽっ」

 「お母様が肌着姿になるのですか? シェルの作った肌着に?」

 「あら、それはちょっと興味あるわね?」

 「イパネマさん、もっと興味を持ってやってください! そして正妻をティアナ様から引き離してください!」

 「そうですよイパネマさん、何ならそのままエルハイミさんをお持ち帰りしても構いませんから!」

 「ああ、頑張っているセレとミアムも可愛いいっ! セレ、ミアム私が選んだ下着で三人だけで『ふぁっしょんしょー』をしないか?」

 「こらこらアラージュ、こんな人の往来するところで妄想を口にすると変質者あつかいされるわよ?」

 「下着は黒一択でいやがります! 白など許せんでいやがります!!」

  
 みんな口々に好き勝手言っている。
 そして何故かみんながあたしに視線を集める。
 
 このタイミングでシェルがあたしに包みの袋を手渡して来る。
 
 そして再度みんなの視線が集まる、何かを期待して。


 「わ、私は『ふぁっしょんしょー』何てやりませんわぁっぁあああぁっ!!」

 


 にぎやかな広場にあたしの声がこだまするのであった。
   
 
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