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第十四章

14-8ヨハネス再び

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 14-8ヨハネス再び


 「本当にお久しぶりですね、エルハイミさん、ティアナ将軍?」


 ヨハネス神父はにこにこしながらそう言って現れた。
 あたしは驚きその顔を見る。

 「まさかこんな所で懐かしい顔に出会えるとは思ってもみませんでしたよ?」

 そう言うヨハネス神父は相変わらず人のよさそうな笑顔をする。
 しかしあたしは気づいている。
 ヨハネス神父のあたしとティアナを見る目は憎悪に燃えている事を。


 「ヨハネス神父、生きていたとは思いましたがまさかこんな所で出会うとはですわ」



 「ヨハネス! 貴様のせいでエルハイミはっ!!」


 あたしが話している横でティアナはいきなりヨハネス神父に対して超ド級の魔法【爆裂核魔法】をぶっ放す!
 一瞬にしてあたしたちとヨハネス神父の間に赤い光が収束しまばゆい光が発生しヨハネス神父側にその爆裂が発せられる。



 「ひっ!? ヨハネス様っ!!」


 ジェリーンの悲鳴が一瞬聞こえたがティアナの【爆裂核魔法】で全ての音がかき消される。



 カッ!


 ごがぁあががががががががががぁぁぁっ!!!!



 こんなものまともに喰らったらドラゴンだってひとたまりもない。

 ジェリーン、もうあなたの見たくも無い顔も恥ずかしい恰好も聞きたくない高笑いも最後ね。
 さよならジェリーン、でも最後に聞きたかったのはなんで貴女はそこまでタフだったのかが気になるけど。

 あたしは流石にいきなりティアナが極大魔法をぶっ放すとは思ってもみなかった。
 が、シコちゃんが警告の声をあげる。


 『ティアナ、エルハイミまだよ!』


 そう言われあたしとティアナはすぐにでも【爆裂核魔法】を放った先を見る。

 すると光と爆炎が収まった先に見えない壁から煙とプラズマを立ち昇らせ守られているヨハネス神父とその足にしがみついているジェリーンが見えた。


 「なっ!? 私の最大最強魔法が!?」


 驚くティアナ。
 それもそのはず並の防御魔法だったらそれごと破壊して吹き飛ばしていたはずだ。
 もしかしたらあたしの【絶対防壁】でも防ぎきれないかもしれない。


 「流石に驚きましたがこの指輪の守りの力は逸品ですよ? どんな魔法でも防いでしまうのです」


 ヨハネス神父はその左手に着けられた数々の指輪をこちらに向けていた。
 そしてジェリーンの重力制御魔法でゆっくりと地面まで下りてくる。


 「なななななっ、こ、小娘どもいきなりなんて魔法をぶちかますのですの!? 危うく消し炭になる所でしたわ! 危ないったらありゃしません事ですわ! 気を付けなさいなっ!!」


 ジェリーンは流石に足をガクガク震わせながらあたしたちを指さし唾を飛ばしながら文句を言っていいる。



 「ヨハネスっ! 貴様ぁっ!!」

 しかしそんなヨハネス神父とジェリーンにティアナは剣を抜きガレント流剣技一の型牙突を放つ。
 だがこれもヨハネス神父の手前でやはり見えない壁に阻まれ届かない。


 「ティアナ将軍は相変わらず血気盛んのようですね? 報告にあった通り我々ジュメルを見ると見境が無くなるというのは本当ですね?」

 「ヨハネスっ! 貴様ぁ! 貴様のせいで私たちは私たちはっ! そして私のエルハイミがぁっ!!」


 ティアナは叫びながら剣を突き刺すが見えない壁を突き破ることは出来ずその場で力のバランスが釣り合い動けなくなってしまっている。

 「ふっ、それはお互い様ですよ。あなたたちのおかげで私も十二使徒として力不足を問われましてね。おかげで私の可愛い僕たちに苦労を掛けました。ジェリーンたちはよくやってくれましたよ」

 そこまで言ってヨハネス神父はニヤリと笑う。
 その笑いにあたしは背筋に今まで感じた事の無い寒気を感じた。



 ぞくりっ



 そして訳も分からず叫んでいた。


 「ティアナぁっ! だめですわぁっ!!」


 思ううや否やあたしは魂の奥底にあるあの力を呼び寄せる。
 そして瞳を金色にして全力でティアナの前に飛び出る。


 「【混沌の牙】よ!」


 ヨハネス神父はてから生み出した真っ黒な短剣をティアナの胸に突き刺そうとしていた。
 しかし間一髪そこにあたしが割り込みその刃を弾く。


 「なんと!? 我が刃を弾きますか! エルハイミさん貴女と言う人は何処までも邪魔を!」


 しかしあたしはその弾いた刃の当たった所から急速に力が抜けていたことに気付く。
 この力、この世界の物ではない!?


 「くふふふふふっ 流石だ、貴女この世界の者では無いですね? 私と同じですか? 私と同じく悪魔にその身を捧げてたかっ!?」


 そう言ってヨハネス神父からあり得ないほどの力が爆発的に広がる。

 その背に黒い十二枚の翼を広げ白目が黒くなり黒目は赤に。
 顔や腕は血管が赤黒く浮かび上がり牙が伸びる。

 
 『ふはははははぁっ! エルハイミさん、見てください私のこの力! ジュメルの作り上げた巨人も【魔人戦争】の魔人も凌駕する異界の悪魔の力! 悪魔王の力を!!』


 これは異界の悪魔王の力?
 この世界の者の力じゃない。
 あの魔人戦争の魔人より上の力を感じる。

 今のあたしじゃないあたしはとっさに全てを理解した。
 だめだ、今のこの娘の体じゃこれ以上力を送り込めない!

 あたしはとにかくティアナを魔法陣を使って【異空間渡り】で他の場所に転移させる。
 そして次に来るヨハネスの攻撃に身構える。


 『やはり貴女も異界の力を手に入れていたか! 分かりますよ今の貴女は貴女であって貴女じゃない貴女だ! 私と同じ異界の者と融合していますね!?』


 こいつ何処の世界のやつだ?
 生意気にあたしと同じだと思っているの?
 あたしはあなたたちの世界なんて‥‥‥

 そうあたしが思っていたらこの娘が限界に近づいた。


 まだ成長が足りないのか?

 この生意気な悪魔の王を消し去りたかったがここまでだ。
 あたしはこの娘から離れる瞬間に最後の時を使ってこの娘を守ってやる。


 『さあエルハイミさんあなたの魂を私にください! 【混沌の牙】!』 

 この悪魔王の力、魂の吸収をさせるのをあたしは防御する。
 この娘の魂はあたしのおもちゃだ! 
 壊させるわけにはいかない!

 あたしはその刃を霧散させその能力を奪う。

 しかしここで完全に時間切れだ。
 あたしは残念ながらこの世界から消え去る。



 はっ!?

 あたしはあたしじゃないあたしから解放され最後に消し去ってもらった悪魔王の力、【混沌の牙】から身を守ってもらえた。
 もしあの刃が当たっていたら今度こそ魂をそぎ落とされあたしは死んでいた。

 
 しかしまずい!
 今のあたしでは力不足でもうこれ以上あの力が使えない!

 
 【混沌の牙】はあのあたしが霧散させたから当分使えないだろうけど今のヨハネス神父は同調した程度のあたしじゃ太刀打ちできない。
 あの力のあたしじゃなきゃ対処できない!!


 『エルハイミ避けなさいっ!!』


 シコちゃんに言われあたしはとっさに魔法陣を出して【異空間渡り】してヨハネス神父の前から離れる。
 それと同時にみんなの攻撃が殺到する。


 「ドラゴン百裂掌!」

 「ドラゴンクロ―!」

 「うおぉぉぉおおおっ【爆炎拳】!!」

 「このぉっ、当たれぇっ!」

 「お姉さまっ【炎の矢】!!」

 
 しかしそれらの攻撃は全てヨハネス神父の指輪や悪魔王の力ではじかれる。


 『ははははははっ! 無駄無駄無駄無駄ぁっ!!」



 「くっ! これほどとは! クロ、クロエ下がれ! こ奴お前たち以上の力を持っている!!」

 コクは今のヨハネス神父の力を見抜く。


 「流石ヨハネス神父様ですわぁ!」

 「すてきっ!」

 「ヨハネス神父、もうどんな神でも構わない、私は貴方と共に!」

 「ずっとついて行きます、ヨハネス神父様!」

 「ヨハネス神父様! 私と子作りしてっ!!」

 「ああ、ヨハネス神父様最高ですぅ!!」


 ジェリーン含む六人の巨乳美女たちはヨハネス神父の後ろに集まりうっとりとする。

 あーうざいっ!

 しかしクロさんやクロエさんも歯が立たないなんて!

 「シコちゃん、何かいい魔法は有りませんの?」

 『エルハイミの魔力があってもあれには通用しそうにも無いわよ?』

 万事休すか!?
 あたしがそう思った時だった。


 「【特殊技巧装着】!!」


 えっ!?
 この声ってティアナっ!

 だめっ!
 それは使っちゃダメなのっ!!


 しかしあたしがそちらを見た時にはすでにティアナは真っ赤な甲冑を身に着けた騎士の姿になっていて槍を展開してヨハネス神父にとびかかっていた。


 『ほう、それが報告にあった【赤き悪魔】か! 面白い!!』

 「はぁああぁぁっ!!」


 ティアナは目にも止まらないスピードで槍をヨハネス神父に打ち込んでいく。
 しかしヨハネス神父も指輪の力を使ったり自身の爪を伸ばしティアナの攻撃を避けていく。
 
 
 『なかなかの力! しかしっ!』


 ヨハネス神父はそう言って背中の羽根を使って大きく羽ばたく。
 そして上空から無数の光弾を発生させティアナにぶつけていく。


 『さあ、これならどうですか!?』


 だがその光弾はティアナの甲冑に傷一つ付けることは出来ない。

 ティアナは両胸の装甲に手を当てるとそれを開き、中に四つの魔結晶石の輝きを見せる。
 胸の四つの魔結晶石を輝かせその魔力を放つ!

   
 「【最大旋風魔光破】マキシムトルネードぉ!!」 

 
 どごぉぉおおおおおおおおぉぉっ!!

 
 ティアナの放つまるで竜巻の様な魔力の渦がヨハネス神父を襲う。

 
 『ぬおっ!?』


 バチバチバチっ
 ばきんっ!

 どごごごごごごごっ!!

 どばっ!!


 その強力な魔力の渦はヨハネス神父の張る魔法防壁を破壊し防御する片腕を吹き飛ばした!!



 『ぐおぁぁああああぁぁぁっ! 馬鹿なっ! 悪魔王の私の腕を!!』

 
 直撃は免れたものの片腕を失ったヨハネス神父はたまらず地面に降り立つ。
 これはチャンスか!?
 
 しかしティアナも大技を出した直後のせいか動きが鈍い。
 

 「ヨハネス神父様っ!」

 駆けつけるメイド服の巨乳美人。

 『くっ、力が足りません。フェルあなたをもらいます!』

 「ああっ、ヨハネス神父様ぁ! どうぞ私を食べてください!!」

 恍惚とそのメイド服の巨乳美人は目をつむりその身をヨハネス神父に差し出す。


 一体何を?


 そうあたしが思った瞬間だった。
  
 ヨハネス神父が残った手でこのフェルとか言う巨乳美人の顔に手をかざした瞬間彼女の姿がゆがみ一気にヨハネス神父の手のひらに吸い込まれていく!?


 『ぐおおおおおおぉぉぉっ!』


 びきびきっ
 ずりゅっ

 ぼしゅっ!!


 それは一瞬だったティアナの【最大旋風魔光破】を受けて失った腕が一気に再生、いや生えたのだ!!


 『くうぅ、流石に人間一人では再生がやっとですか? 仕方ない、ここは一旦下がりましょう。ジェリーン!!』


 「はい、ヨハネス神父様!!」

 そう言ってジェリーンは懐から帰還の魔晶石を取り出す。


 『今日の所はこれで引き下がりましょう。しかし次こそはエルハイミさん、あなたの魂もらい受けます!』

 「くっ、ヨハネス! 逃がさない!!」


 魔晶石の輝きが始まった所へティアナが槍を投げつける。
 だがティアナの槍はヨハネス神父に当たることなくその空間を切り裂きながら向こうの瓦礫の壁に突き刺さって止まった。


 ギリギリのところで帰還魔法が発動してヨハネス神父とジェリーンの姿を消し去った。


 「逃がしたか‥‥‥」

 そう言ってティアナは甲冑を青い光の粒子に変え元の姿に戻る。


 「うっ」


 だが元の姿に戻ったその場で膝をつき倒れそうになる。


 「ティアナぁっ!!」


 あたしは慌ててティアナを支える。
 そしてティアナを見ると凄い汗をかいている。


 「ティアナぁっ! しっかりしてですわ!!」



 あたしの悲鳴がこだましたのだった。
 
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