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第十四章

14-5穴掘り

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 14-5穴掘り


 「ああん! すごい、エルハイミの熱くて濃いのがあたしの奥にどくどく入って来てるぅ!!」


 
 おいこらシェルっ!
 言い方っ!!


 「エ、エルハイミ、シェルに入れているのは魔力ですよね?」


 ティアナ、あたしがしているこの姿を見てそれ以外に何が有るっての!?


 「シェル、もう少し言い方は何とかならないのですの?」

 「だってぇ、大量にエルハイミに魔力入れてもらうとほんとにこんな感じで気持ちいいのよ?」

 『そうなのよね、エルハイミのは特に濃くってドロドロした感じがするのよね』

 シコちゃんまでそんな事言ってくる。


 「シェル、そんなに入れられて大丈夫なの?」

 最近シェルにくっついていて大人しくしていたマリアが心配そうにシェルを見ている。
 しかしシェルはお肌つやつやになって元気に言う。

 「もう絶好調よ! これなら朝までやれるわよ!」


 いや、だから言い方が‥‥‥


 あたしは既に諦めかけていてシェルが精霊魔法を使い始めるのを見守る。
 シェルはショーゴさんが引っぺがした床から覗いている地面に手を向け精神を集中させる。


 「大地の精霊よあたしに力を貸して。この地の奥底にある迷宮の入り口まであたしたちを導いて」


 シェルはそう言って大地の精霊に魔力を与える。
 するとむき出しの地面がぼこぼこと下がり始めらせん状の階段ぽくなってどんどんと下へ下へと下がっていく。


 「うん、うまく行きそう。あ、でも途中で魔力供給お願いね。意外と岩盤とか硬い所もあるみたいで魔力が必要だわ」

 シェルはそう言いながら大地の精霊に魔力を与えつつどんどんと穴を掘っていく。



 「毎回思うんですけど、あの無くなった土とかってどこ行っちゃうんでしょうね、お姉さま?」

 「そう言えばどこへ行ってしまうのでしょうね? 今までそんな事考えた事も無かったですわ」


 イオマに言われあたしもふと気づく。
 ほんとあれだけ大量の土砂ってどこ行っちゃうんだろう?


 『そう言えば昔そんな事を研究していた人もいたっけ。水の生成魔法も何処から水が来るのかとかね。でも結局は構成しているマナを魔力から変換して作っているのだろうとか言っていたからその土砂もマナから魔力分解でもしてるのかもね?』

 シコちゃんがそんな事を言っている。
 言われて見て何となく興味が湧いてきたあたしは同調してそのマナや魔力の流れ、精霊の働きを見てみる。



 ‥‥‥なるほど、確かにその通りのようだ。


 この世界の構成しているものは魔素、魔力、マナ、実体の順で固体化していくから道理が通っている。

 「個体をマナにして魔力に分解、そして魔素にして拡散しているようですわね?」


 「え? 魔素にまで分解しているんですか!? すごい!」


 なんかイオマはものすごく驚いていて興味津々だ。


 「あー、そうだったんだ。今までそんなこと考えてもみなかった。精霊がやってくれてることだから当たり前としか思ってなかったもんね」


 シェルはお気楽にそう言いながらどんどんと穴を掘っている。既にシェルは地面から完全に姿を消すほど深い所にいる。

 あたしたちはそんなシェルが作ったらせん状の階段を降りていく。


 * * * 


 宝物庫からどのくらい下がっただろうか? 
 既に上を見るとまるで井戸の底から上を見上げているかのようになっている。

 
 「ふう、エルハイミ魔力ちょうだい。まだまだほらなきゃみたいだから」

 「わかりましたわ、でもシェル変な事口走らなくていいですわよ?」
 
 「あれは自然と出ちゃうの! さ、早く入れて!!」


 だから言い方っ!


 あたしはため息をつきながらまたシェルに魔力供給をするのだった。


 * * *


 「ん? どうやら本来の地面に着いたみたい。 石畳だった物か何かに当たったみたい」


 シェルはそう言って土の精霊に穴掘りさせるのをやめさせる。
 既にかなりの深さまで来ているので魔法の明かりでこの場を照らし出しているけど止まった穴掘りの地面は見た感じほとんど変わらない。

                                                 
 「石畳ですか? ご先祖様の話だと迷宮の入り口などは厳重に結界でふさがれているから王宮の落下程度ではびくともしないと言ってましたね? すると既にここは迷宮の入り口なのですか?」


 ティアナはシェルに聞いてみるもシェルは両手を肩の高さまで上げて首をすくめる。

 「それは分からないわね。ただ土の精霊にしてみれば普通に穴が掘れなくなったってだけ言っていたからね。石ぐらいなら本来貫通して穴掘りが出来るんだけどね、多分魔力の含まれた封印か何かのようでそれ以上干渉して穴掘りが出来ないんじゃない?」


 なるほど、魔力干渉か。


 あたしは同調して感知魔法を使いこの周辺を見てみる。
 するともう少し右手側に何やら反応が有る。


 「シェル、もう少し右手側に横穴を掘れますですかしら?」

 「ん? 出来るよ。こっちで良いのね?」


 そ言って今度は横穴をシェルは掘っていく。
 そして大体三十メートルくらい行った所だろうか足元にはっきりと結界の反応がしてきた。


 「どうやらここが入り口の結界のようですわね? 足元から結界の反応がしますわ」

 「着きましたか? ではご先祖様に教えてもらった結界解除の呪文を」

 あたしはご先祖様に教えてもらった結界解除の呪文を唱える。
 すると足元にぼわっと魔法陣の光が浮かび上がりその中央に四角い出入り口が現れる。

 大体二人位が並んで入れる階段になっていて長い年月誰も入っていないであろうその入り口は静かにあたしたちを迎えてくれていた。



 「だいぶ下まで来ちゃいましたね。イージムの迷宮を思い出しますねお姉さま」

 「あそこまで深くは有りませんがそうですね、確かにあの迷宮を思い出しますわね」


 「巨人戦争」であたしたちが飛ばされたあの世界最大の迷宮。
 もう二度とああいうのがごめんだけど流石に他の迷宮はあそこまで深く広くはない。


 潜るだけで半年もかかる迷宮何て金輪際ごめんである。   

   
 「ディメルモ様の居城はそれだけ偉大だったと言う事ですよ、お母様。それに私がいればすぐにでも最下層に行き来出来ますよ?」

 「もしかしてコクはあそこに帰りたいのですの?」

 「いえ、私の居場所はお母様の所ですから。ただローグの民たちはあそこでの暮らしを続ける者もいます。ミナンテを手伝いながらですが」


 迷宮から出たら途端に狂暴になるんだもんなぁ、ベルトバッツさんたち。
 やっぱりローグの民は迷宮で大人しくしていてもらうのが世の為なのかしら?
 確かに優秀ではあるのだけど個人情報まであっさりと調べてくるのは流石に怖いわよ?


 「そう言えばベルトバッツさんたちは今どうしていますの?」


 あたしがそう言った途端少し離れた所にきつね火のようなものがぼわっと現れた。
 そしてその灯りに照らし出されるように巨体の禿げ頭に髭面の木彫り人形が姿を現す。


 ‥‥‥ちょっとビジュアル的に怖いわね。


 「お呼びでしょうか姉御?」

 「い、いえ、最近ベルトバッツさんの姿を見ていないなぁ~と思いましてですわ」

 「お母様、ベルトバッツたちは常に私の影に潜んでいます。必要と有らばどうぞお申し付けください」


 え?
 やっぱりずっと一緒だったの?

 
 あたしは乾いた笑いをして「それではその時にはお願いしますわ」とだけ言ったら「わかりましたでござる」と言ってベルトバッツさんはまた姿を消した。


 「さて、そろそろ行こうか主よ。ここから先は何が有るか分からん、主にティアナ将軍、ここからは俺が先に行こう」

 そう言ってショーゴさんは先に階段を降り始める。
 
 「行きましょう」

 それにティアナも続いて階段を降り始める。
 あたしも慌ててティアナについて行く。



 そしてあたしたちはいよいよこの地下迷宮に挑むのであった。 
 
 

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