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第十三章
13-29連合会談
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13-29連合会談
「そうだったの。エルハイミが異界の転生者だったなんてね‥‥‥」
あたしは今ティアナと二人っきりであたしの秘密を話している。
「ごめんなさいですわ。ティアナ、私の事嫌いになりまして?」
「嫌いになるわけ無いじゃない! あたしだってそのうち死んじゃって転生するのよ? だから転生したあたしをまた愛してよね、エルハイミ?」
「勿論ですわ! 私にはティアナ以外いないのですわ!!」
あたしはそう言ってティアナにキスする。
そしてあたしたちの影がまた一つになっていく‥‥‥
『はいはいはいはいっ!! 最近こんなのばかりだけどいい加減にしなさい!! もう朝よ! そして今日はボヘーミャに戻るのでしょう!? いい加減起きて準備なさい!!」
あたしたちはシコちゃんに怒られて渋々支度をする。
今日はジュメルの襲撃で大変だったユグリアがひと段落したと言う事でボヘーミャに戻る準備をしなければならない。
そしてそこで今後の連合の活動について会談が行われる予定だ。
こんこん
ドアをノックする音がする。
「お姉さま、もういい加減起きてきてください。他のみんなは準備終わってますよ?」
どうやらイオマが来たみたいだ。
あたしはご先祖様といろいろ話してあたしの『魂』についても色々と分かった事も有るので可能な限りあの力は使わない様にしようと思う。
それとあたしの秘密についてもみんなには話そうと思う。
ただ、前世が男性だった事だけははっきりと話さないつもりだ。
今のあたしにしてみればそれは知らない他の人の過去の記憶であってあたし自身じゃないから。
あたしはエルハイミ、それ以上でもそれ以下でもない。
だからもう自分に対して迷わない。
今のあたしが本当のあたしなのだから。
「イオマ、今行きますわ。ティアナ、良いですわね?」
「ええ、そろそろ行きましょう」
あたしはティアナと一緒に部屋を出るのだった。
* * * * *
「それでは皆さんお元気で。また何かありましたら飛んでまいりますわ」
「エルハイミさん、ユカ、そして皆さん。本当にありがとう。おかげで何とかこのユグリアも持ちこたえられました。 あ、それと彼女なんですが、是非とも連合軍に参加したいと言う事です。既にユカとも話は終わっていますがこのユグリアでも冒険者登録していてランクも高く有能なのは確認しています。きっと連合軍にも役立ってくれるでしょう」
ファイナス市長が推薦する人だ、きっと優秀な人なんだろうな。
とかあたしが思っていたら知っている顔だった。
「イパネマさん?」
「ええ、そうよ。エルハイミさん、その節はありがとうね。おかげでこの通り腕を失わずに済んだわ」
彼女はそう言ってあたしが再生した方の手で握手を求めてきた。
そしてティアナにも握手を求める。
「あなたが連合軍の将軍ね? 奇麗な人。あたしもジュメルには酷い目にあったわ、きっと役に立つから連合軍に参加させてね?」
「有能な魔術師はいくらいても困りません。ファイナス市長が推薦する人物です。連合軍はあなたを歓迎します」
そう言って二人は正式に名乗りを上げもう一度握手をしたのだった。
* * * * *
あたしたちはボヘーミャに戻って連合会談の準備を進めていた。
会談は緊急の為に参加国の大使等が参加する事となった。
勿論その状況は各国に設置されている「風のメッセンジャー」で着く時飛ばして何か意見が有ればすぐに連絡を寄こしてくれる事となっていた。
「思いのほか順調ですね。会談は一週間後、各国の理解と支援が上手く受けられれば良いのですが」
「ティアナ、きっと大丈夫ですわ。師匠もかなり根回ししてくれていますし、ご先祖様の情報が正しければジュメルの野望は確実に阻止できますわ」
あたしはティアナといろいろと打ち合わせをしていたのだが、横から出されたお茶で話を途切れさせられた。
「エルハイミさん、どうぞお茶が入りました! ティアナ様が大好きなお茶です。奥様の貴女にもぜひ飲んでもらいたいですね!!」
どんっ!
ちゃぷっ
おいこら、セレ。
もう少し静かにお茶をテーブルに置けないの?
せっかくのお茶が少しこぼれちゃったじゃない。
「それでエルハイミさん、私たちを置いてきぼりにしてティアナ様を独り占めしたのです、少しは私たちにもティアナ様をまわしてください。せめて一日でもいいからティアナ様を貸してください!」
我慢できないのかミアムも文句を言ってきた。
今回ユグリアには緊急であるのと戦場になっている事も有り戦いに不向きなこの二人はボヘーミャで待機させていた。
本来ならティナの町に残すつもりだったがなんだかんだ言ってここまでついて来た。
最後にはティアナの説得で何とかボヘーミャに残ってくれたがそれでもかなり最後までごねていた。
あの時はティアナがあたしから見えないところに二人を連れて行って説得をしたらしいけど、思い出すとイライラしてきそうなので考えないようにしている。
ティアナの事だ、きっとこの二人を黙らせるのにキス位したんだろうな‥‥‥
イラっ!
ん?
ちょっとマテ?
そう言えばこの二人ティアナの呪いが今あたしに有ること知らないんだっけ?
あたしは睨んでくるミアムを見る。
可愛い顔を少し赤くして涙目‥‥‥
確かにあたしと同じ金髪碧眼でどことなくあたしに似ている。
ティアナったら、あたしがいない時にこんな子たちに手を出していた何て!
そう思ったあたしはニヤリとしてミアムに答える。
「そうですわね、仕方ありませんからたまにはティアナを貸してあげますわ。正妻として妾の貴女たちにも慈悲を与えなければですもの」
「くっ! でもその言葉に二言は無いですね? 本当にティアナ様を貸してくださるのですね?」
「ミアム?」
びしっとあたしを指さしながら確認するミアム。
成り行きをはらはらしながら見ているセレ。
「ええ、本当ですわ。この話が終わりましたら明日の一日をティアナを貸してあげますわよ? その代わり今後はあなたたちも協力的になってもらいたいですわ。ティアナの為にも」
あたしはお茶を飲みながらそう言う。
とたんに二人が歓喜の声を上げる。
「エルハイミ、良いのですか? 私はエルハイミと‥‥‥」
「いいのですわ、その代わり今晩はたっぷりとね?」
あたしがそう言うとティアナは真っ赤な顔になって小さくうなずく。
それを見ていたセレとミアムは文句を言っているが、あたしが「気が変わってしまいますわよ?」と言うとぴたりと静かになった。
そしてあたしたちは会談の準備の話をまた始めるのだった。
* * * * *
「珍しいですね、お姉さまがティアナさんと一緒じゃないなんて?」
「今日はティアナはあの二人の面倒を見ているのですわよ。それに私はアンナさんに用事もありますしね‥‥‥」
あたしとイオマ、コクとクロさんクロエさんにショーゴさんはずらずらとアンナさんの研究室に向かっている。
今日はシェルだけはソルミナ教授に用事が有るとか言っていないけど他のみんなはあたしにくっついてきている。
ちなみにシコちゃんはティアナに預けてある。
一応後で何が有ったか聞き出す為に。
「それでお母様はどんな用事が有るのですか?」
「ええ、アンナさんにアイミのあの力を止めてもらおうと思いましてね」
あたしはティアナに内緒でアンナさんにあの力を使えない様にしてもらいたかったのだ。
ティアナの事だ、きっとまた何かあればあの力を使うに決まっている。
だから内緒で実力行使に出るのだ。
あたしたちはほどなくアンナさんの研究室に着いた。
扉をノックする。
こんこん
「アンナさん、私ですエルハイミです。いらっしゃいますかしら?」
「エルハイミちゃん? 今手が離せないの、どうぞ入って来てください」
アンナさんが部屋の中からそう言ってくれるのであたしは扉を開け中に入る。
「失礼しますわ、アンナさぁ‥‥‥」
そこまで言ってあたしはすぐにクロさんやショーゴさんを部屋から追い出す。
「す、すみませんわ! クロさんとショーゴさんはしばらく外で待っていてくださいですわ!!」
慌てて押し出したので大丈夫だと思うけど、二人は特に何ごとも無く承諾して外で待っていてくれる。
あたしは安堵の息を吐いてもう一度アンナさんを見る。
アンナさんはその大きな胸をさらけ出してルイズちゃんに授乳している最中だった。
「うわぁ、かわいいっ! 一生懸命おっぱい吸ってますね!」
「ああ、私もお母様のおっぱい吸いたいです!」
「人間は本当に不便でいやがりますね? こうしないと栄養補給できないでいやがりますか?」
イオマはルイズちゃんがおっぱい飲んでいるのを嬉しそうに見ている。
コクは何となくあたしの隣に来てあたしの胸を凝視している。
クロエさんはたいそうな事言いながらアンナさんとルイズちゃんを見る表情はずいぶんと優しくなっている。
「あら、ルイズったら寝ちゃいましたね? エルハイミちゃん、もう少し待っててね」
アンナさんはそう言ってルイズちゃんを抱きかかえ背中をポンポンと叩く。
「アンナさん、何しているんですか?」
イオマが不思議そうにアンナさんに聞く。
「げっぷをさせているんですよ、赤ちゃんはおっぱい飲んだ後げっぷさせないで寝かすと吐いたりしますからね」
そう言いながらアンナさんはルイズちゃんの背中をポンポンと優しくたたいている。
そしてルイズちゃんはしばらくして「けぷっ!」とげっぷをして気持ちよさそうに眠っている。
「さてと、これで一安心です。ルイズ、いい子に寝ているのですよ」
そう言ってアンナさんはルイズちゃんをゆりかごに入れて寝かせてあげる。
そのしぐさは完全に一人の母親だった。
うう、うらやましいなぁ。
あたしもティアナの子供欲しい!
「いいなぁ、あたしもお姉さまの子供欲しいなぁ~」
「イオマ、それはだめです! お母様のお子を産むのは私です!」
「黒龍様! おやめください! 主様、黒龍様に手を出すなら私のおしりで我慢しやがれです!」
三人が一斉にあたしに視線を向ける。
「相変わらずエルハイミちゃんはモテモテですね? ところで今日はどんな用事で?」
「アンナさん、単刀直入に申し上げますわ。アイミのあの力を使えない様にして欲しいのですわ」
あたしがそう言うとアンナさんは直ぐに暗い表情になる。
それは何時かはあたしがその事を言い出すのを予測していたように。
「エルハイミちゃん、アイミのあの力は止める事が出来ないのです。もし止めるならばアイミ自体をこの世から消し去るしかないのです‥‥‥」
あたしはアンナさんのその言葉に絶句する。
どう言う事?
アイミをこの世から消し去る??
「アイミはもともと殿下の呼び出したイフリートです。そしてそのイフリートを魔石類と竜骨、ミスリル合金等と融合して生まれたのがアイミです。そしてアイミはゴーレムの基本特性、コマンドをエルハイミちゃんに与えられ殿下に対して絶対服従。もし他の四体の魔結晶核をアイミから取り出してもアイミ自体が殿下に乗り移ってでも殿下の要望に応えるでしょう。それは限界を超え一気に殿下の体を蝕んでしまいます」
アンナさんは物静かにあたしに説明を始めた。
「ですからアイミにあの力を使わせ無い様にするにはアイミ自体をこの世界から消し去るしかないのです」
「そんなですわ‥‥‥」
アンナさんはそれ以上何も言わなかった。
もちろんあたしだって何も言えない。
アイミをこの世から消し去る事なんて出来ない!
あたしはそのまま黙り込む。
「だったら、だったらお姉さまやティアナさんがそれ以外の力でジュメルに対抗する方法を考えればいいじゃないですか!」
「イオマ?」
あたしたちの沈黙をイオマが打ち破った。
「お姉さまに作ってもらったライトプロテクターのように自動防御が出来るのですよ? だったらティアナさんのあの甲冑のような姿だって作れるんじゃないんですか?」
「イオマちゃん、そうはいってもあそこまでコンパクトにするのは難しいのですよ?」
アンナさんは困り顔でそう言う。
しかしイオマは拳をあたしより大きくなった胸の前でふんと握りしめ力説する。
「だったらいっその事ゴーレムサイズまで大きくしてそれを着込めばいいじゃないですか! そうだ、どうせならあの巨人くらい大きくしてこちらも巨人に対抗できる力を付けちゃいましょうよ!」
またなんとも無茶な事を言う‥‥‥
あたしはため息をついてイオマを見る。
「ゴーレムサイズ‥‥‥ 巨人にも対抗出来る力‥‥‥ 巨大な鎧を着こむ‥‥‥」
しかしアンナさんはぶつぶつと一人で何か言いだす。
「イオマちゃん、その話もう少し詳しく聞かせてください」
ん?
アンナさん??
「勿論です! ええと、お姉さまとあたしたちが今まで‥‥‥」
どう言う事?
なんかこの二人歯車がかみ合ったかのように話し始めている。
「これは長くなりそうでいやがりますね?」
クロエさんのその一言にあたしも頬に一筋の汗を流すしかなかったのである。
「そうだったの。エルハイミが異界の転生者だったなんてね‥‥‥」
あたしは今ティアナと二人っきりであたしの秘密を話している。
「ごめんなさいですわ。ティアナ、私の事嫌いになりまして?」
「嫌いになるわけ無いじゃない! あたしだってそのうち死んじゃって転生するのよ? だから転生したあたしをまた愛してよね、エルハイミ?」
「勿論ですわ! 私にはティアナ以外いないのですわ!!」
あたしはそう言ってティアナにキスする。
そしてあたしたちの影がまた一つになっていく‥‥‥
『はいはいはいはいっ!! 最近こんなのばかりだけどいい加減にしなさい!! もう朝よ! そして今日はボヘーミャに戻るのでしょう!? いい加減起きて準備なさい!!」
あたしたちはシコちゃんに怒られて渋々支度をする。
今日はジュメルの襲撃で大変だったユグリアがひと段落したと言う事でボヘーミャに戻る準備をしなければならない。
そしてそこで今後の連合の活動について会談が行われる予定だ。
こんこん
ドアをノックする音がする。
「お姉さま、もういい加減起きてきてください。他のみんなは準備終わってますよ?」
どうやらイオマが来たみたいだ。
あたしはご先祖様といろいろ話してあたしの『魂』についても色々と分かった事も有るので可能な限りあの力は使わない様にしようと思う。
それとあたしの秘密についてもみんなには話そうと思う。
ただ、前世が男性だった事だけははっきりと話さないつもりだ。
今のあたしにしてみればそれは知らない他の人の過去の記憶であってあたし自身じゃないから。
あたしはエルハイミ、それ以上でもそれ以下でもない。
だからもう自分に対して迷わない。
今のあたしが本当のあたしなのだから。
「イオマ、今行きますわ。ティアナ、良いですわね?」
「ええ、そろそろ行きましょう」
あたしはティアナと一緒に部屋を出るのだった。
* * * * *
「それでは皆さんお元気で。また何かありましたら飛んでまいりますわ」
「エルハイミさん、ユカ、そして皆さん。本当にありがとう。おかげで何とかこのユグリアも持ちこたえられました。 あ、それと彼女なんですが、是非とも連合軍に参加したいと言う事です。既にユカとも話は終わっていますがこのユグリアでも冒険者登録していてランクも高く有能なのは確認しています。きっと連合軍にも役立ってくれるでしょう」
ファイナス市長が推薦する人だ、きっと優秀な人なんだろうな。
とかあたしが思っていたら知っている顔だった。
「イパネマさん?」
「ええ、そうよ。エルハイミさん、その節はありがとうね。おかげでこの通り腕を失わずに済んだわ」
彼女はそう言ってあたしが再生した方の手で握手を求めてきた。
そしてティアナにも握手を求める。
「あなたが連合軍の将軍ね? 奇麗な人。あたしもジュメルには酷い目にあったわ、きっと役に立つから連合軍に参加させてね?」
「有能な魔術師はいくらいても困りません。ファイナス市長が推薦する人物です。連合軍はあなたを歓迎します」
そう言って二人は正式に名乗りを上げもう一度握手をしたのだった。
* * * * *
あたしたちはボヘーミャに戻って連合会談の準備を進めていた。
会談は緊急の為に参加国の大使等が参加する事となった。
勿論その状況は各国に設置されている「風のメッセンジャー」で着く時飛ばして何か意見が有ればすぐに連絡を寄こしてくれる事となっていた。
「思いのほか順調ですね。会談は一週間後、各国の理解と支援が上手く受けられれば良いのですが」
「ティアナ、きっと大丈夫ですわ。師匠もかなり根回ししてくれていますし、ご先祖様の情報が正しければジュメルの野望は確実に阻止できますわ」
あたしはティアナといろいろと打ち合わせをしていたのだが、横から出されたお茶で話を途切れさせられた。
「エルハイミさん、どうぞお茶が入りました! ティアナ様が大好きなお茶です。奥様の貴女にもぜひ飲んでもらいたいですね!!」
どんっ!
ちゃぷっ
おいこら、セレ。
もう少し静かにお茶をテーブルに置けないの?
せっかくのお茶が少しこぼれちゃったじゃない。
「それでエルハイミさん、私たちを置いてきぼりにしてティアナ様を独り占めしたのです、少しは私たちにもティアナ様をまわしてください。せめて一日でもいいからティアナ様を貸してください!」
我慢できないのかミアムも文句を言ってきた。
今回ユグリアには緊急であるのと戦場になっている事も有り戦いに不向きなこの二人はボヘーミャで待機させていた。
本来ならティナの町に残すつもりだったがなんだかんだ言ってここまでついて来た。
最後にはティアナの説得で何とかボヘーミャに残ってくれたがそれでもかなり最後までごねていた。
あの時はティアナがあたしから見えないところに二人を連れて行って説得をしたらしいけど、思い出すとイライラしてきそうなので考えないようにしている。
ティアナの事だ、きっとこの二人を黙らせるのにキス位したんだろうな‥‥‥
イラっ!
ん?
ちょっとマテ?
そう言えばこの二人ティアナの呪いが今あたしに有ること知らないんだっけ?
あたしは睨んでくるミアムを見る。
可愛い顔を少し赤くして涙目‥‥‥
確かにあたしと同じ金髪碧眼でどことなくあたしに似ている。
ティアナったら、あたしがいない時にこんな子たちに手を出していた何て!
そう思ったあたしはニヤリとしてミアムに答える。
「そうですわね、仕方ありませんからたまにはティアナを貸してあげますわ。正妻として妾の貴女たちにも慈悲を与えなければですもの」
「くっ! でもその言葉に二言は無いですね? 本当にティアナ様を貸してくださるのですね?」
「ミアム?」
びしっとあたしを指さしながら確認するミアム。
成り行きをはらはらしながら見ているセレ。
「ええ、本当ですわ。この話が終わりましたら明日の一日をティアナを貸してあげますわよ? その代わり今後はあなたたちも協力的になってもらいたいですわ。ティアナの為にも」
あたしはお茶を飲みながらそう言う。
とたんに二人が歓喜の声を上げる。
「エルハイミ、良いのですか? 私はエルハイミと‥‥‥」
「いいのですわ、その代わり今晩はたっぷりとね?」
あたしがそう言うとティアナは真っ赤な顔になって小さくうなずく。
それを見ていたセレとミアムは文句を言っているが、あたしが「気が変わってしまいますわよ?」と言うとぴたりと静かになった。
そしてあたしたちは会談の準備の話をまた始めるのだった。
* * * * *
「珍しいですね、お姉さまがティアナさんと一緒じゃないなんて?」
「今日はティアナはあの二人の面倒を見ているのですわよ。それに私はアンナさんに用事もありますしね‥‥‥」
あたしとイオマ、コクとクロさんクロエさんにショーゴさんはずらずらとアンナさんの研究室に向かっている。
今日はシェルだけはソルミナ教授に用事が有るとか言っていないけど他のみんなはあたしにくっついてきている。
ちなみにシコちゃんはティアナに預けてある。
一応後で何が有ったか聞き出す為に。
「それでお母様はどんな用事が有るのですか?」
「ええ、アンナさんにアイミのあの力を止めてもらおうと思いましてね」
あたしはティアナに内緒でアンナさんにあの力を使えない様にしてもらいたかったのだ。
ティアナの事だ、きっとまた何かあればあの力を使うに決まっている。
だから内緒で実力行使に出るのだ。
あたしたちはほどなくアンナさんの研究室に着いた。
扉をノックする。
こんこん
「アンナさん、私ですエルハイミです。いらっしゃいますかしら?」
「エルハイミちゃん? 今手が離せないの、どうぞ入って来てください」
アンナさんが部屋の中からそう言ってくれるのであたしは扉を開け中に入る。
「失礼しますわ、アンナさぁ‥‥‥」
そこまで言ってあたしはすぐにクロさんやショーゴさんを部屋から追い出す。
「す、すみませんわ! クロさんとショーゴさんはしばらく外で待っていてくださいですわ!!」
慌てて押し出したので大丈夫だと思うけど、二人は特に何ごとも無く承諾して外で待っていてくれる。
あたしは安堵の息を吐いてもう一度アンナさんを見る。
アンナさんはその大きな胸をさらけ出してルイズちゃんに授乳している最中だった。
「うわぁ、かわいいっ! 一生懸命おっぱい吸ってますね!」
「ああ、私もお母様のおっぱい吸いたいです!」
「人間は本当に不便でいやがりますね? こうしないと栄養補給できないでいやがりますか?」
イオマはルイズちゃんがおっぱい飲んでいるのを嬉しそうに見ている。
コクは何となくあたしの隣に来てあたしの胸を凝視している。
クロエさんはたいそうな事言いながらアンナさんとルイズちゃんを見る表情はずいぶんと優しくなっている。
「あら、ルイズったら寝ちゃいましたね? エルハイミちゃん、もう少し待っててね」
アンナさんはそう言ってルイズちゃんを抱きかかえ背中をポンポンと叩く。
「アンナさん、何しているんですか?」
イオマが不思議そうにアンナさんに聞く。
「げっぷをさせているんですよ、赤ちゃんはおっぱい飲んだ後げっぷさせないで寝かすと吐いたりしますからね」
そう言いながらアンナさんはルイズちゃんの背中をポンポンと優しくたたいている。
そしてルイズちゃんはしばらくして「けぷっ!」とげっぷをして気持ちよさそうに眠っている。
「さてと、これで一安心です。ルイズ、いい子に寝ているのですよ」
そう言ってアンナさんはルイズちゃんをゆりかごに入れて寝かせてあげる。
そのしぐさは完全に一人の母親だった。
うう、うらやましいなぁ。
あたしもティアナの子供欲しい!
「いいなぁ、あたしもお姉さまの子供欲しいなぁ~」
「イオマ、それはだめです! お母様のお子を産むのは私です!」
「黒龍様! おやめください! 主様、黒龍様に手を出すなら私のおしりで我慢しやがれです!」
三人が一斉にあたしに視線を向ける。
「相変わらずエルハイミちゃんはモテモテですね? ところで今日はどんな用事で?」
「アンナさん、単刀直入に申し上げますわ。アイミのあの力を使えない様にして欲しいのですわ」
あたしがそう言うとアンナさんは直ぐに暗い表情になる。
それは何時かはあたしがその事を言い出すのを予測していたように。
「エルハイミちゃん、アイミのあの力は止める事が出来ないのです。もし止めるならばアイミ自体をこの世から消し去るしかないのです‥‥‥」
あたしはアンナさんのその言葉に絶句する。
どう言う事?
アイミをこの世から消し去る??
「アイミはもともと殿下の呼び出したイフリートです。そしてそのイフリートを魔石類と竜骨、ミスリル合金等と融合して生まれたのがアイミです。そしてアイミはゴーレムの基本特性、コマンドをエルハイミちゃんに与えられ殿下に対して絶対服従。もし他の四体の魔結晶核をアイミから取り出してもアイミ自体が殿下に乗り移ってでも殿下の要望に応えるでしょう。それは限界を超え一気に殿下の体を蝕んでしまいます」
アンナさんは物静かにあたしに説明を始めた。
「ですからアイミにあの力を使わせ無い様にするにはアイミ自体をこの世界から消し去るしかないのです」
「そんなですわ‥‥‥」
アンナさんはそれ以上何も言わなかった。
もちろんあたしだって何も言えない。
アイミをこの世から消し去る事なんて出来ない!
あたしはそのまま黙り込む。
「だったら、だったらお姉さまやティアナさんがそれ以外の力でジュメルに対抗する方法を考えればいいじゃないですか!」
「イオマ?」
あたしたちの沈黙をイオマが打ち破った。
「お姉さまに作ってもらったライトプロテクターのように自動防御が出来るのですよ? だったらティアナさんのあの甲冑のような姿だって作れるんじゃないんですか?」
「イオマちゃん、そうはいってもあそこまでコンパクトにするのは難しいのですよ?」
アンナさんは困り顔でそう言う。
しかしイオマは拳をあたしより大きくなった胸の前でふんと握りしめ力説する。
「だったらいっその事ゴーレムサイズまで大きくしてそれを着込めばいいじゃないですか! そうだ、どうせならあの巨人くらい大きくしてこちらも巨人に対抗できる力を付けちゃいましょうよ!」
またなんとも無茶な事を言う‥‥‥
あたしはため息をついてイオマを見る。
「ゴーレムサイズ‥‥‥ 巨人にも対抗出来る力‥‥‥ 巨大な鎧を着こむ‥‥‥」
しかしアンナさんはぶつぶつと一人で何か言いだす。
「イオマちゃん、その話もう少し詳しく聞かせてください」
ん?
アンナさん??
「勿論です! ええと、お姉さまとあたしたちが今まで‥‥‥」
どう言う事?
なんかこの二人歯車がかみ合ったかのように話し始めている。
「これは長くなりそうでいやがりますね?」
クロエさんのその一言にあたしも頬に一筋の汗を流すしかなかったのである。
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