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第十二章

12-20ボーンズ神父の罠

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 12-20ボーンズ神父の罠


 「ローグの民であるベルトバッツさんですらあのメル教の教え集会にいると一体感や高揚した気分になるというのはこれら信者の身にまとうアイテムがそろうと精神浸食をして正常な判断を狂わせる効果が有るのですわ!」


 あたしの言葉にここに居る一同が驚きの声をあげる。

 「それってホリゾン帝国の様な洗脳って事?」

 シェルが思い当たる事を言うが今回のものは少し違うようだ。
 あたしはベルトバッツさんから借りたグッズをみんなに見せる。


 「ホリゾンとは少し違いますわ。鉢巻の部分はここに、はっぴの部分はここに呪詛が書き込まれ、そしてこの万年筆の様な物は魔道波の受信をするのですわ。これらのアイテムを身につけると受信した魔道波でハチマキが判断を鈍らせはっぴが心拍数などをあげ高揚させる効果が有りますわ。そして微小なこの効力は魔術師などに見つかることなく徐々に精神を蝕んで行くように出来ていて気付いたときには本人自身の意志でメル教を支えるという風になってしまっているのですわ!」


 「何故強い支配をしないのです?」
 
 あたしの説明を聞いたネミルさんは不思議そうに聞いてくる。

 「それは目立たず怪しまれず確実にメル教の信者、強いてはジュメルに都合の良い者たちを作り上げる為ですわ」

 「確かにいきなりメル教にはまりすぎるのは誰でもおかしく思うもんな。しかしエルハイミよ、なんでそんな回りくどい事ばかりやっているんだ?」

 イリナさんが不満げにそれらのグッズを見ている。
 あたしにはそのボーンズ神父と言う人物が絡んでいるからだと感じられる。

 「多分ボーンズ神父が関わっているからでしょうですわ。今までの行動を見ていると慎重にそして秘密裏に動いているのですもの。そして真の目的はもっと恐ろしい事を企んでいるのやもしれませんわ」


 あたしのその言葉に誰もがうなずく。
 今までの事をみんなも思い出していたのだろう。


 「しかし、そうだとすればどうしたら『大布教会』を阻止できるんだ? このグッズの事をばらしても既に信者連中は信じないだろうし、ジュメルの仕業だと言う確固たる証拠にまでは成らないぞ?」

 イリナさんの言う通りだ。
 これだけでは証拠がまだ不十分だ。

 と、ここでネミルさんが有る事を聞いてくる。

 「時にエルハイミさん、このグッズと言うのは必ずしもメル教にだけしか効力が無いのですか?」

 「私の見立てではそうでは無いようですわ。慎重に事を進める為先ほど言った効力だけのようですわ」


 「なるほど‥‥‥ だとすれば好い考えが有ります。ただこれにはエルハイミさんやシェルさん、それとイオマさんやクロエさんの協力が必要になりますね」


 にっこりとほほ笑んでネミルさんはあたしたち四人を見たのだった。


 ◇ ◇ ◇ 


 「みんなぁ! よく来てくれたわねぇ!! メル、すっごく感激だよぉ!!」


 うぉおおおおぉぉぉっーー!!


 「大布教会」が始まり信者たちは公園に出来上がった会場のステージを見あげていた。
 そこにはメル教祖がいつも以上に露出度の高いセクシーな司祭服で大きな胸を揺らして手を振っていた。


 あたしたちはその様子をすぐ隣の建物の陰から見ていた。


 「お、お姉さま本当にやるのですか?」

 「はぁ~、まさかあたしまでかつぎ出されるとは」

 「主様、後で覚えていやがれです!」


 イオマやシェル、クロエさんが恨みがましく言ってくるのも分かる。
 あたしだって同じ気持ちだよ。
 まさかネミルさんのあの提案をやる羽目になるとは‥‥‥

 あたしの感知魔法は既にメル教祖が振るっているあの杖からの魔道波を感知している。
 会場の信者たちや新たに入教した者たちはメル教祖の一言一動作に興奮を始めていた。

 
 「準備は良いなエルハイミ? そろそろネミル様が始めるぞ」

 建物の影に一緒にいたイリナさんはあたしにそう言ってロープを握る。
 各場所に準備したミネルバさんやプルスさん、アクアスさんを見て合図を送る。


 メル教の会場は大盛況になりつつある。

 と、いきなりネミルさんの拡大された声が響き渡った。
 

 『女性の皆さん、あなたの大事な彼を、夫を取り戻すために我らの【育乳の魔女】が手を貸します! 小さなサイズでお悩みのあなた! もう少し大きくして彼を振り向かせたいあなた! さあ、我らが【育乳教】に入ればあなたも立派な胸の持ち主です!』

 
 イリナさんがロープを引く。
 するとこの建物の壁が「ばんっ!」と音を立て外れる。
 そして胸を強調した衣服であたしとイオマが、シェルとクロエさんはかわいらしいリボンのついた衣装であたしたちの横後ろにつく。

 公園の隣の二階建ての建物はこの瞬間特別ステージへと化した!


 「さあ、みんな集まっておくれ!」

 イリナさんがそう言うと事前に集まっていた女性陣が数百人こちらのステージ下まで集まる。
 みんなそこそこ胸の大きな女性たちだ。


 『さあ、世の女性たちよ理想の胸を手に入れるために集まれ! 見よこの女性たち! すべて【育乳の魔女】により豊かな胸を手に入れた者たちだ!!』



 どよどよっ!



 絶好調だったメル教の大布教会の一部にどよめきが起こる。
 そのどよめきはすぐにも広がりを見せた!


 「よし今だ! エルハイミ始めるぞ!!」

 
 イリナさんがあたしたちに始めるように言う。


 あたし以外の三人は美しい歌声でコーラスを始める。
 そしてシェルの風の精霊を使った声の拡大魔法であたしはあらかじめ決められた台詞を言う。


 『世の女性たちよ! 諦めるのはまだ早い! あなたの理想を手に入れるために私は手を貸そう! ここに居るイオマはわが手によりここまで大きくした! 残り二人もこれより我が手で大きくしよう! さあ集まれ我が下に! 理想の胸を手に入れるために!!」


 どこからか照らされるきらびやかな光にあたしは一歩前に出て同じ年頃の女の子よりは大きい胸を強調した衣服で胸を張る。
 歌いながらあたしの横に来たイオマはあたしに変わり話し始める!


 『私は【貧乳のイオマ】と呼ばれていました。でもお姉さまのおかげで今はこの通り! 今やだれも貧乳とは呼ばない! すべて【育乳の魔女】、お姉さまのおかげよ!!』


 そして続きクロエさんも。


 『早く私の胸を大きくしやがれです! 私も早く大きな胸を手に入れたいでいやがります!!』


 更にシェルも。


 『エ、エルフだって大きくしてもらえるわ! お願いあたしにも胸を! あたしのこと好きにしていいからぁ!!』


 あれ? 
 最後のセリフは無かったはずよ?
 いつの間に自分の願望が‥‥‥

 そして集まっていた数百人の大きな胸の人たちも!


 「そうよ、入教すればあたしたちみたいに大きくなれるわ!」
 
 「誰でも簡単、一日たったの五分であなたの胸も大きく!」

 「さあ、あなたも豊満な胸で意中の人をいちころよ!」

 「尚、人によっては個人差が出ますのであらかじめご了承ください」


 口々に「育乳教」の宣伝をする。

 

 どよどよっ‥‥‥



 メル教の信者たちの興味がこちらに向き始めた!
 イリナさんはそれを見てまた合図を出す。

 するとアクアさんの所で待機していたちょっと胸の残念な女性陣がまたまた数百人一気にやって来た!


 「入教します!」

 「わ、私も!!」

 「大きくなって振った彼を取り戻すのよ!」


 わいのわいの


 よし、そろそろかな?


 あたしはまた一番前に出て風の精霊で声を拡散している所で今度は魔力を声に乗せて話し始める。


 『我が【育乳教】はサポートの男性陣も随時募集中! 一緒にこの子たちの胸を大きくする手伝いをしませんかですわ?』


 そう言ってあたしはシェルを引き寄せ服の上からマッサージをする。

 「ああぁん! もっとぉっ!! このマッサージは効きそうよぉ!」

 シェルは芝居かどうか怪しい声をあげる。



 どよどよっ!!



 その動揺は一気にメル教の信者に走った!


 「お、おい、よくよく見ればあの上にいる女の子たち、若くて可愛いな!」

 「う、歌もうまいしあの二人はなかなかの胸だよな?」

 「い、いや小さいけどこれから大きくするってのはそそるぞ!」

 「だ、男性陣も随時募集だとぉっ!?」


 口々にそう言い始めその波紋はどんどん広がていく。


 『ちょ、ちょっとぉ、みんなぁ! どうしちゃったのよぉっ!?』


 メル教祖はステージの上でおろおろし始めた。
 どんなに声をかけてもどんなにセクシーポーズをしても既に三分の一の信者はあたしたちの方に気を取られている。


 よし食いついて来た!

 
 あたしは最後のキメ台詞を魔力をのせた声で言う。


 『今なら力強い方のマッサージ補助員を男女問わず大募集ですわ! さあ、悲しい女性たちを助けるためにあなたの力を私たちにですわ!!』



 うぉおおおおぉぅぅっ!!


 とたんに上がるメル教信者たちの声。
 思考能力が低下して高揚した気分はあのペンライトもどきの受信機をもとにこちらの言葉を直接メル教の信者たちに伝えた!


 「お、俺あっちに入教し直す!!」

 「あ、てめーずりーぞ! 俺も行く!」

 「も、もしかしてあのエルフの子を‥‥‥ むふふふっ」

 「いや、俺はあの黒い子の方が良いぞ! 俺好みの大きさにっ!」


 動きが始まった。

 「はいはい、入教希望者の男性はこっちだよ! 鉢巻きやはっぴは脱いでこっちで登録だよ!」

 イリナさんたちが入教用紙の受付所を立ち上げている。
 その波は既に止められず受付所は欲望をむき出しにした男性陣でいっぱいだった!


 

 「やってくれますね、流石だ! そして何と言う事だ! ただ大きいだけではない理想のユニット! 小さいのはステータスだ! 名言ですね。私の求めていたエンターテイメントがここにあったとはぁ!!」



 そう言って一人の眼鏡のはっぴと鉢巻をした人物があたしたちの前に立ちふさがる!


 「見事です! 私の求めるモノがすべてそろっている! 時代はソロではなくグループ性のモノを欲している! 大きいだけではなく様々な需要が織りなす可能性! あなたたち、私のもとでビッグになりませんか!?」

    
 そう言い張るメガネの男からはただならぬオーラが出ていた。



 そう、十二使徒の一人ボーンズ神父が出て来たのだった!!  
 
    
 
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