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第十二章
12-13メル教城へ
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12-13メル教城へ
その知らせはあたしたちに衝撃を与えた。
「どう言う事だい、ミネルバ!? 街やメル教が燃えてるってのは!?」
イリナさんが立ちあがりながらすぐに外の様子を見に出る。
あたしたちもそれにつられて外に出るが、メル教の事務所がある方角から火の手が上がっていた。
あの様子だと周りの建物にも被害が出ているだろう。
既にその知らせを聞いたこの詰め所の衛兵たちも動き出し、消火活動に参加する。
「くそっ! なんてタイミングで火事が起こるんだい!」
イリナさんはそう言いながら魔導士の杖を石畳に強く突いた。
他の人も同じく苛立っているが、あたしたちは顔が割れているので消火活動に下手に参加は出来ない。
「主様、ベルトバッツを使い情報を集めさせます」
コクはあたしの袖を引きそう言ってくれる。
今はコクたちにお願いするしかない。
「ええ、お願いしますわ」
あたしはそう言って燃え盛る炎が天を赤く染める様子を見るのだった。
* * * * *
「黒龍様、ご報告に上がりましたでござる」
ベルトバッツさんはそう言ってまた律義に扉から現れた。
「よろしい、報告を」
コクがそう言うとベルトバッツさんは一旦頭を下げてから報告を始める。
それはあたしたちにとって非常に不利かつ驚かされる内容であった。
出火元はやはりメル教の事務所で、幸いな事に死人は出なかった。
信者の男性数人が大やけどを受けてはいたらしいがそれ以外は比較的早い動きのおかげで火は広がらず近所の建物数軒を燃やして鎮火されたそうだ。
問題はこの事があり何故かメル教のメル教祖と主要幹部が国からの保護を受ける事になって今は既に王城の一角に移転を終えていると言う事だ。
そして火事現場ではあたしたちに不利となる噂が流れていたとの事だ。
それは最近信者勧誘の妨害をしている何者かたちによりメル教は襲撃を受け火事になったという噂だった。
「なんだって? ソラリマズ陛下がメル教を保護しただって!?」
イリナさんは憤るが今回は完全にこちらが後手に回ってしまった。
まさかこういう強引な手で来るとは。
「それでボーンズ神父はどうなったか分かりますの?」
「それがどうやらメル教祖が保護された時に紛れて既に王城に潜入したもようでござる」
しまった!
完全にやられた。
ベルトバッツさんによるとダークエルフはどうやらどこかに潜伏したままのようだが用心を重ねていたボーンズ神父は一転して自らメル教のはっぴのような服を羽織り、ハチマキのようなものをしてしっかりとメル教祖の取り巻きに紛れているらしい。
「イリナさん、こうなると城内の協力者を急ぎ増やさないと取り返しのつかない事になってしまいますわ!」
「分かっている、エルハイミあんたたちも付いて来てくれ。城に一旦戻る。それと、プルスは街の方を、ミネルバは騎士団の方をアクアはあたしに付いて来ておくれ!」
イリナさんはそう言ってあたしたちを引き連れて急ぎ城へと向かった。
* * * * *
あたしたちはスィーフの王城に来ていた。
「貴女が有名なガレントの無詠唱の使い手ですか? 私は宮廷魔術師を束ねるネミル=ボクシンと言います」
その初老の女性はあたしにそう言って挨拶をしてくれる。
「初めましてですわ、エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトンと申しますわ」
あたしもそう言って宮廷式の正式な挨拶をして簡単にみんなも紹介する。
挨拶が終わった頃にイリナさんが早速状況を説明する。
そしてその状況説明を聞いたネミルさんは深いため息をついた。
「陛下のモノ好きにも困ったものですね。しかしその話が事実となると我が国の一大事。まさかあのジュメルに入り込まれていたとは」
「だから早急にメル教の連中をとらえ陛下にこの事実をお伝えすればいいでは無いですか!」
イリナさんはそう言うけど証拠も無いのにそうそう簡単にはいかない。
しかもソラリマズ陛下やその側近はメル教に肯定的だというのであればなおさらだ。
「いっその事ベルトバッツたちにそいつら捕まえさせて自白でもさせればいいんじゃない? 何だっけ何とかの拷問ってのでも使って」
シェルが無責任にそう言うが既に保護下の人間をいきなり拉致してしまっては逆効果になってしまう。
「そうですね、陛下の指示で保護下になってしまっていては尻尾でも掴かんで証拠でもない限り難しいですね。 ‥‥‥そうだ、エルハイミさん、あなたに連合の調査団と言う事で陛下に会っていただいてしばらくこの城内に滞在をしてもらえませんか? 表面上はエルハイミさんたちが滞在する事になればメル教やジュメルも大きな動きは取れないでしょう。それに我が国も連合から派遣されたエルハイミさんと言う事であれば無下には出来ないでしょう。そしてその隙に私が陛下たちをメル教から離反させます。イリナ、貴女はその間に証拠をつかむのです」
ネミルさんのその提案は現状では妥当な線だろう。
イリナさんは素直に「わかりました、早速騎士団長とも相談をしてきます」と言って部屋を出て行った。
「エルハイミさん、こんな茶番に付き合わせて申し訳ないのですがよろしいですか?」
「ええ、かまいませんわ。私もティアナ姫にはその旨既に伝えてありますわ。私が連合の調査団と言う事でソラリマズ陛下に面会いたしましょうですわ。それと調査内容は『女神の杖』についてと言う事にしてくださいですわ」
あたしがそう言うとネミルさんは「『女神の杖』ですか?」と聞き直してきた。
あたしはその女神の杖について説明をする。
そしてそれを聞き終わったネミルさんは大いに驚いていた。
「そのようなものが存在していたのですか。しかしあのジュメルの目的が『狂気の巨人』復活だとは‥‥‥ 正直伝説の話だと思っていました。山よりも大きな巨人等と言うのは信じられない話ですからね」
しかしそれは事実。
ネミルさんは「だからジュリ教は近隣の遺跡を調べまわっていたのですね」とつぶやいた。
確かにこの水上都市スィーフは古くから存在しその近辺には古代の遺跡が沢山ある事も有名な話だ。
どおりで二年以上前にはジュメルがここにジュリ教の神殿を築き活動をしていたわけだ。
もっとも、そのジュリ教の神殿は連合軍との戦いとジュリ教の裏にジュメルがいた事を暴露され最後にはリザードマンたちの怒りも買い滅ぼされたわけだけど。
「わかりました。それではさっそく陛下にお知らせしてエルハイミさんとお会いできるようにしましょう」
ネミルさんはそう言ってソラリマズ陛下に会いに行くのだった。
その知らせはあたしたちに衝撃を与えた。
「どう言う事だい、ミネルバ!? 街やメル教が燃えてるってのは!?」
イリナさんが立ちあがりながらすぐに外の様子を見に出る。
あたしたちもそれにつられて外に出るが、メル教の事務所がある方角から火の手が上がっていた。
あの様子だと周りの建物にも被害が出ているだろう。
既にその知らせを聞いたこの詰め所の衛兵たちも動き出し、消火活動に参加する。
「くそっ! なんてタイミングで火事が起こるんだい!」
イリナさんはそう言いながら魔導士の杖を石畳に強く突いた。
他の人も同じく苛立っているが、あたしたちは顔が割れているので消火活動に下手に参加は出来ない。
「主様、ベルトバッツを使い情報を集めさせます」
コクはあたしの袖を引きそう言ってくれる。
今はコクたちにお願いするしかない。
「ええ、お願いしますわ」
あたしはそう言って燃え盛る炎が天を赤く染める様子を見るのだった。
* * * * *
「黒龍様、ご報告に上がりましたでござる」
ベルトバッツさんはそう言ってまた律義に扉から現れた。
「よろしい、報告を」
コクがそう言うとベルトバッツさんは一旦頭を下げてから報告を始める。
それはあたしたちにとって非常に不利かつ驚かされる内容であった。
出火元はやはりメル教の事務所で、幸いな事に死人は出なかった。
信者の男性数人が大やけどを受けてはいたらしいがそれ以外は比較的早い動きのおかげで火は広がらず近所の建物数軒を燃やして鎮火されたそうだ。
問題はこの事があり何故かメル教のメル教祖と主要幹部が国からの保護を受ける事になって今は既に王城の一角に移転を終えていると言う事だ。
そして火事現場ではあたしたちに不利となる噂が流れていたとの事だ。
それは最近信者勧誘の妨害をしている何者かたちによりメル教は襲撃を受け火事になったという噂だった。
「なんだって? ソラリマズ陛下がメル教を保護しただって!?」
イリナさんは憤るが今回は完全にこちらが後手に回ってしまった。
まさかこういう強引な手で来るとは。
「それでボーンズ神父はどうなったか分かりますの?」
「それがどうやらメル教祖が保護された時に紛れて既に王城に潜入したもようでござる」
しまった!
完全にやられた。
ベルトバッツさんによるとダークエルフはどうやらどこかに潜伏したままのようだが用心を重ねていたボーンズ神父は一転して自らメル教のはっぴのような服を羽織り、ハチマキのようなものをしてしっかりとメル教祖の取り巻きに紛れているらしい。
「イリナさん、こうなると城内の協力者を急ぎ増やさないと取り返しのつかない事になってしまいますわ!」
「分かっている、エルハイミあんたたちも付いて来てくれ。城に一旦戻る。それと、プルスは街の方を、ミネルバは騎士団の方をアクアはあたしに付いて来ておくれ!」
イリナさんはそう言ってあたしたちを引き連れて急ぎ城へと向かった。
* * * * *
あたしたちはスィーフの王城に来ていた。
「貴女が有名なガレントの無詠唱の使い手ですか? 私は宮廷魔術師を束ねるネミル=ボクシンと言います」
その初老の女性はあたしにそう言って挨拶をしてくれる。
「初めましてですわ、エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトンと申しますわ」
あたしもそう言って宮廷式の正式な挨拶をして簡単にみんなも紹介する。
挨拶が終わった頃にイリナさんが早速状況を説明する。
そしてその状況説明を聞いたネミルさんは深いため息をついた。
「陛下のモノ好きにも困ったものですね。しかしその話が事実となると我が国の一大事。まさかあのジュメルに入り込まれていたとは」
「だから早急にメル教の連中をとらえ陛下にこの事実をお伝えすればいいでは無いですか!」
イリナさんはそう言うけど証拠も無いのにそうそう簡単にはいかない。
しかもソラリマズ陛下やその側近はメル教に肯定的だというのであればなおさらだ。
「いっその事ベルトバッツたちにそいつら捕まえさせて自白でもさせればいいんじゃない? 何だっけ何とかの拷問ってのでも使って」
シェルが無責任にそう言うが既に保護下の人間をいきなり拉致してしまっては逆効果になってしまう。
「そうですね、陛下の指示で保護下になってしまっていては尻尾でも掴かんで証拠でもない限り難しいですね。 ‥‥‥そうだ、エルハイミさん、あなたに連合の調査団と言う事で陛下に会っていただいてしばらくこの城内に滞在をしてもらえませんか? 表面上はエルハイミさんたちが滞在する事になればメル教やジュメルも大きな動きは取れないでしょう。それに我が国も連合から派遣されたエルハイミさんと言う事であれば無下には出来ないでしょう。そしてその隙に私が陛下たちをメル教から離反させます。イリナ、貴女はその間に証拠をつかむのです」
ネミルさんのその提案は現状では妥当な線だろう。
イリナさんは素直に「わかりました、早速騎士団長とも相談をしてきます」と言って部屋を出て行った。
「エルハイミさん、こんな茶番に付き合わせて申し訳ないのですがよろしいですか?」
「ええ、かまいませんわ。私もティアナ姫にはその旨既に伝えてありますわ。私が連合の調査団と言う事でソラリマズ陛下に面会いたしましょうですわ。それと調査内容は『女神の杖』についてと言う事にしてくださいですわ」
あたしがそう言うとネミルさんは「『女神の杖』ですか?」と聞き直してきた。
あたしはその女神の杖について説明をする。
そしてそれを聞き終わったネミルさんは大いに驚いていた。
「そのようなものが存在していたのですか。しかしあのジュメルの目的が『狂気の巨人』復活だとは‥‥‥ 正直伝説の話だと思っていました。山よりも大きな巨人等と言うのは信じられない話ですからね」
しかしそれは事実。
ネミルさんは「だからジュリ教は近隣の遺跡を調べまわっていたのですね」とつぶやいた。
確かにこの水上都市スィーフは古くから存在しその近辺には古代の遺跡が沢山ある事も有名な話だ。
どおりで二年以上前にはジュメルがここにジュリ教の神殿を築き活動をしていたわけだ。
もっとも、そのジュリ教の神殿は連合軍との戦いとジュリ教の裏にジュメルがいた事を暴露され最後にはリザードマンたちの怒りも買い滅ぼされたわけだけど。
「わかりました。それではさっそく陛下にお知らせしてエルハイミさんとお会いできるようにしましょう」
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