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第十二章

12-11神父ボーンズ

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 12-11神父ボーンズ


 「イリナさん、ジュメルが背後にいるって一体どういう事ですの? それにティアナが苦戦しているって‥‥‥」

 あたしは色々とイリナさんに聞きたかった。

 「まあ落ち着けエルハイミ。あんたの今までの事を聞いているとティアナ姫の詳しい噂も知らないようだしな。そこからあたしの知っていることを話してやるよ」

 そう言ってイリナさんはまずティアナの事から話し始めた。


 * * *


 ティアナはあの戦争、後に「巨人戦争」と呼ばれる戦いでどうやらアイミたちと一緒に大暴走をして、たった一人でほとんどのホリゾン軍を滅ぼしたらしい。
 その様は正しく鬼神。
 噂では体から地獄の炎を立ち昇らせ全てを燃やし尽くしたらしい。

 その後半年くらいでガレント王国の国王エドワードが崩御して急遽連合軍の将軍をしていたアコード王子が戴冠をして国王に就任。
 穴の開いた連合軍の将軍職にティアナが立候補して「巨人戦争」の功績から将軍に就任。
 北の町ティナはガレントの守りの要とされエスティマ王子が領主に就任しているらしい。
 
 そしてそのティアナだがジュメルと聞き及べば何処にでも出兵し、ジュメルと名乗る集団をことごとく殲滅していったらしい。
 それは異常なほどでたとえ女子供でも容赦しないその様はまるでホリゾンの聖騎士団のようであったとか。


 あたしはそれを聞いて驚いている。
 あの優しいティアナがホリゾンの聖騎士団と同じような事をしているなんて!


 しかしそのティアナの働きのおかげでジュメルは着実にその勢力を弱めて行ったらしい。
 おかげで今はジュリ教を名乗るのは連合軍の矛先が向けられると言う事でジュリ教自体の信者も減り、まっとうなジュリ教は連合に賛同してジュリ教どうしでジュリ教を襲うとか言う訳の分からない状態になっているらしい。
 さらにまっとうなジュリ教も名前自体を変え、今は「真祖ジュリ教」などと名乗っているらしい。

 ここまで来てジュリ教や秘密結社ジュメルの対応はうまく行っていると思われた矢先に各国で巨乳の美女が中心に何やら妙な新興宗教が立ち上がっているとか。
 その一つがこの水上都市スィーフの「メル教」だ。

 最初は教祖メルが地道な活動で信者を増やしていったらしいがある時を境に急激にその信者の数を増やしていったらしい。
 しかもその信者はみんな独身男性でどちらかと言うと内気なチェリーボーイを中心にやさしく接する教祖メルの虜になって行った若者が多いらしい。


 「なによそれ、大きけりゃいいってもんじゃないわよ!」

 「いや、シェルさん、やはりある程度大きくないと相手にもされませんよ?」

 「!? エ、エルハイミそうだったの!?」


 話の途中でシェルとイオマが変な事言ってる。
 そしてシェルが真剣な顔であたしに詰め寄る。

 「何がですの!? 大体にしてただ大きければ良いと言うものではありませんわ! やはり形やその張り具合、弾力、そして抱擁さが重要なのですわ!」
 
 あたしは思わず人差し指をびっと立てて力説する。

 「流石主様! よくわかっておられます!! そうですただ大きいだけではだめなのです! 主様の様なのが理想なのです!!」

 なぜかコクまで熱くあたしのその意見に賛同してくれる。

 「おいおい、何時からここはおっぱいの品評会になったんだよ?」

 イリナさんのその一言ではっと我に返る。
 そうだった。
 おっぱいの話では無かった。


 「それでイリナさん、何故そのメル教がジュメルと関係があるとわかったのですの?」

 「そこさ、ティアナ姫からの情報でジュリ教の神父がその各国で立ち上がった新興宗教の影にいるという情報さ」


 神父?
 まさかヨハネス神父!?


 い、いや、複数って事は十二使徒か?

 「そうするとこの『メル教』もその神父との接触が有るのですわね?」

 「ああ、あたしたちが掴んだ所ではボーンズ神父とやらが関わっているらしい」

 ボーンズ神父?
 初めて聞く名前ね。
 しかし多分それはジュメルの十二使徒。

 それがこのスィーフで勢力を伸ばしているって事は‥‥‥

 「この国を乗っ取るつもりですわね?」

 あたしがそう言うとイリナさんは静かにうなずく。

 「だからあたしたちはあのメル教祖ってのが信者を集めるのを妨害したのよ」

 「でも信者たちはあたしたちを魔女とか言って目の敵にするのよね」
 
 「まったく、これだから童貞は」

 ミネルバさんもプルスさんもアクアスさんもみんな困り顔でそんなこと言っている。
 でもアクアスさん、童貞は関係ないわよ?
 生前のあたしだってチェリーだったけどそんな巨乳美女に惑わされる事は無かったわよ、多分。

 「ま、どちらにしろその神父との接触やジュメルとの関係を暴露すれば流石にこの街で大手振るって信者の勧誘は出来なくなる。まずは信者の増大を防がなきゃだ」

 イリナさんのその言葉にあたしたちは頷くのだった。


 * * * * *


 ジュメルが裏で暗躍すると言う事であたしたちはイリナさんに協力してメル教の真実を暴露するために動いていた。

 「そう言えばこの国の上層部はなんと言っていますの?」

 「そこが問題なんだよ、実は新国王になられたソラリマズ陛下はメル教のメル教祖にぞっこんでね、あたしたちの忠告に耳も傾けないんだよ」

 おいマテ、それって駄目なんじゃない?
 まさか国王自ら魔の手に染まってしまいそうになるのってどうなのよ!?

 「陛下は最近戴冠なされたまだお若い方だからね、女性経験もないからいちころだったみたいだったのよ」

 アクアスさんはため息をつきながら「女性の事ならあたしが教えてあげたのにねぇ」なんて危険な事言っているし!!

   
 「それでそのボーンズ神父の情報は何処からですの?」

 「ああ、それはね酒場であのメル教祖を付けていたらお酒に酔った時にボーンズ神父の悪口をさんざん言って最後にはあたしにもいろいろと身の上話をね‥‥‥」

 ミネルバさんがとんでもない事をさらりと言う。
 しかも身の上話まで!?

 「その後にあたしが国の宮廷魔術師だって言ったら『魔女』だって騒がれ信者たちに追われる羽目にね」

 それでミネルバさんは追われてたのか?
 
 「まあ、その後にも信者募集の集会の邪魔もしていたから顔も割れているんで余計にしつこく狙われてたのよね~」

 あはははとか笑ってる。

 あたしはあのメル教祖って言うのを思い出す。
 そう言えばあたしの名前を聞いたときも挙動不審だったような‥‥‥

 「そうするとミネルバさんはそのボーンズ神父ってのには会ったのですの?」

 「いやぁ、それがまだ会ったことが無いのよねぇ~。ただ近々メル教祖とそのボーンズ神父ってのが会うらしいのよね」

 「そこで尾っぽを掴んじまおうッて訳さ」

 イリナさんニヤリとそう言う。
 うーん、そんなんでうまく行くのかな?



 あたしはそこはかと無く不安を感じるのであった。 
 
 
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