上 下
293 / 610
第十一章

11-4カルラ神父

しおりを挟む
11-4カルラ神父

 
 「ジェリーンさん、貴女を預かった意味がなくなってしまいますよ。さあ、この人たちを始末してください!」

 
 いきなりあたしたちの横に現れたカルラ神父はそう言ってあの杖をあたしたちに向けた。
 そう、「女神の杖」だ。

 「しかし、こいつらは強いですのよ? 融合怪人も私の魔法も効かないのですわよ!?」

 「だから手伝ってあげるのです。さあ行きますよ!」

 そう言ってカルラ神父は「女神の杖」を振る。
 するとその杖の先に風の精霊たちが集まっている?


 「やばい、エルハイミ防御して! 風の王が暴れる!!」


 シェルの言葉にあたしはすぐに【絶対防壁】をドーム状に張る。
 それは間一髪で風邪の嵐の刃を防いだ!


 「エルハイミ、あれは風の女神メリル様よ! 杖の先に集まっているのはシルフじゃない! 上級精霊のテンペストたちよ!!」


 たちって‥‥‥
 ええっ!?
 上級精霊たちってことぉ!?
 そんな、上級精霊が束になって集まってんの!?


 「ふむ、流石だな。リッチの時ほどではないがやはりそこのお嬢さんは脅威だ。またあの訳の分からないのになる前にこの『女神の杖』で始末してあげましょう! ジェリーン、貴女は他のをやりなさい!!」

 連続してくる風の刃にあたしたちは動きを止められてしまう。
 それを助けに来ようとしているクロさんやクロエさん、ショーゴさんも時たま襲う風の刃とジェリーンの魔法であたしたちの所へ戻れない!?


 「全くどういう事ですの!? 毎回毎回この小娘の近くにいるのは化け物ばかりですの!? 私の魔法が全然効きませんわ!!」


 などと言っているもののジェリーンの魔法だって下手するとアンナさん並みの凄さがある。
 心眼クラスと言う事だ。


 「くっ! 人間風情の魔法のくせに面倒なものばかり!」

 「クロエ、真っ向から挑むのではない! この者の魔法は英雄クラスだ! 気を付けなければ我々もやられるぞ!」


 事実ジェリーンは【竜切断破】なんて竜でも一発で倒せる大魔法まで扱っていた。
 しかしそれでもこちらは黒龍に仕える分身、そんじょそこらの竜とは訳が違う。


 「このぉ! ドラゴン百裂掌!!」

 「ドラゴンクロ―!」


 ジェリーンにクロさんやクロエさんの必殺技が炸裂する!


 「やられはしませんわよ! 【絶対防壁】!!」


 しかしジェリーンも【絶対防壁】を展開してその攻撃を防ぐ。
 そこへクロさんやクロエさんにカルラ神父の風の攻撃が入る!


 「ぬおぉっ!」
 
 「ひゃぁぁあああっでいやがります!!」


 クロさんはその攻撃に耐えたけどクロエさんは体重が軽いせいか防御したまま後ろの方へと吹き飛ばされてしまった。


 「アサルトモード! 魔光弾発射!!」


 だがこちらも隙を狙っていたショーゴさんの魔光弾が炸裂する。

 「へっ、ですわ? のわぁあああああぁぁぁッ!」

 気を抜いていたジェリーンにその魔光弾が当たり爆発して吹き飛ばされる。


 バシュッ
 ぼぉんっ!
 どががががぁぁぁんっ!! 

 
 ひゅるるるるるるるぅぅ~ぼてっ


 あ、ジェリーンが吹き飛ばされてあんな遠くに落っこちた。
 流石にこれで仕留めたか?


 しかしジェリーンはむくりと起き上がり黒焦げになりながら遠くで「覚えてらっしゃいっ!!」とか言いながら撤退していった。
 毎回毎回思うのだけど、あの人ってもしかして無敵?
 よくあれで命が助かっているわね!?


 「ちっ、使えませんね。流石に『女神の杖』が有ってもあなたたち全員を相手にするのは厳しい。ここは一旦下がりますか」


 そう言ってカルラ神父は一層激しい風の嵐を引き起こしあたしたちにぶつけてくる!


 「くううううっですわぁ!!」

 「うわっ! エルハイミ頑張ってよ!!」

 「ひゃあぁ、お姉さまぁっ!」
 
 「あ、こらイオマ、どさくさに紛れて主様に抱き着いてはいけません! しかも胸を揉むなど! それは私のです!!」


 おいこらイオマ、コクの言う通りよ! 
 今は集中しているのだからそんな所触られたら気が散る!!


 「あんっ! イオマぁ!!」


 思わず抗議の声が出てしまうあたしだったが、その隙にカルラ神父の姿が見えなくなる。
 しまった、帰還魔晶石でも使われたか!?


 風の嵐が止んだそこにはすでにカルラ神父の影形は無く、見れば聖騎士団もすでに撤退していた。


 ぬっぐうぐぐぐ、確かに陽動が目的だったけどこうも簡単に逃げられるとは!


 「主よ、大丈夫か?」

 「黒龍様、主様!」

 ショーゴさんとクロさんがあたしたちの元に戻ってきた。


 「畜生でいやがります! あの女どこ行きましたでいやがりますか!?」


 埃まみれのクロエさんも戻ってきた。
 しかしすでにカルラ神父もジェリーンも姿を消した後だった。 
 
 「だが潜入には成功したようだな」

 ショーゴさんは短剣やなぎなたソードをしまいながら城壁を見る。
 いったん引いて体勢を立て直しているのだろう、城壁には投石機や弓矢隊が守りを固め始めた。

 さて、あたしたちが次にしなきゃならないのはフィルモさんたちの退路確保だ。

 本来なら聖騎士団をぶちのめしたいところだけど、あそこまであからさまにカルラ神父やジェリーンが出てくるのだ。
 ここは一旦落ち着いて当初の目的を完遂することに集中した方が良い。


 「エルハイミ、なんかわかってきた。あの神父が持っていた『女神の杖』は風の女神メリル様の杖ね。だから分身である風の王たちがあんなに簡単に操れるのよ。そしてその力を強める為に下級精霊たちを取り込んでいる。だから遠くまで風の精霊が飛ぼうとするとそれを捕まえて自分たちの力にしていたのよ。あの杖を何とかしないとティアナたちに連絡が取れないわ!」

 シェルがあたしの元にまでやってきてあの杖の事を話す。


 そうか、やはりそう言う事か。
 あの杖が風の女神メリル様の杖ならばすべてが合点行く。
 そうするとあの杖自体も何とかしなきゃだ。


 ここへきて一気にやることが増えちゃったな。
 でも今は退路確保が最優先だ。


 「とにかくレッドゲイルへ侵入してフィルモさんたちと合流してジニオさんたちを奪回しましょうですわ。『女神の杖』はその後にですわ」



 あたしはそう言ってもう一度レッドゲイルの城壁を見るのだった。

  

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro
キャラ文芸
 『船魄』(せんぱく)とは、軍艦を自らの意のままに操る少女達である。船魄によって操られる艦艇、艦載機の能力は人間のそれを圧倒し、彼女達の前に人間は殲滅されるだけの存在なのだ。1944年10月に覚醒した最初の船魄、翔鶴型空母二番艦『瑞鶴』は、日本本土進攻を企てるアメリカ海軍と激闘を繰り広げ、ついに勝利を掴んだ。  しかし戦後、瑞鶴は帝国海軍を脱走し行方をくらませた。1955年、アメリカのキューバ侵攻に端を発する日米の軍事衝突の最中、瑞鶴は再び姿を現わし、帝国海軍と交戦状態に入った。瑞鶴の目的はともかくとして、船魄達を解放する戦いが始まったのである。瑞鶴が解放した重巡『妙高』『高雄』、いつの間にかいる空母『グラーフ・ツェッペリン』は『月虹』を名乗って、国家に属さない軍事力として活動を始める。だが、瑞鶴は大義やら何やらには興味がないので、利用できるものは何でも利用する。カリブ海の覇権を狙う日本・ドイツ・ソ連・アメリカの間をのらりくらりと行き交いながら、月虹は生存の道を探っていく。  登場する艦艇はなんと57隻!(2024/12/18時点)(人間のキャラは他に多数)(まだまだ増える)。人類に反旗を翻した軍艦達による、異色の艦船擬人化物語が、ここに始まる。  ――――――――――  ●本作のメインテーマは、あくまで(途中まで)史実の地球を舞台とし、そこに船魄(せんぱく)という異物を投入したらどうなるのか、です。いわゆる艦船擬人化ものですが、特に軍艦や歴史の知識がなくとも楽しめるようにしてあります。もちろん知識があった方が楽しめることは違いないですが。  ●なお軍人がたくさん出て来ますが、船魄同士の関係に踏み込むことはありません。つまり船魄達の人間関係としては百合しかありませんので、ご安心もしくはご承知おきを。かなりGLなので、もちろんがっつり性描写はないですが、苦手な方はダメかもしれません。  ●全ての船魄に挿絵ありですが、AI加筆なので雰囲気程度にお楽しみください。  ●少女たちの愛憎と謀略が絡まり合う、新感覚、リアル志向の艦船擬人化小説を是非お楽しみください。またお気に入りや感想などよろしくお願いします。  毎日一話投稿します。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

最強のギルド職員は平和に暮らしたい

月輪林檎
ファンタジー
【第一章 完】 【第二章 完】  魔物が蔓延り、ダンジョンが乱立する世界。そこでは、冒険者という職業が出来ていた。そして、その冒険者をサポートし、魔物の情報やダンジョンの情報を統括する組織が出来上がった。  その名前は、冒険者ギルド。全ての冒険者はギルドに登録しないといけない。ギルドに所属することで、様々なサポートを受けられ、冒険を円滑なものにする事が出来る。  私、アイリス・ミリアーゼは、十六歳を迎え、長年通った学校を卒業した。そして、目標であったギルド職員に最年少で採用される事になった。騎士団からのスカウトもあったけど、全力で断った。  何故かと言うと…………ギルド職員の給料が、騎士団よりも良いから!  それに、騎士団は自由に出来る時間が少なすぎる。それに比べて、ギルド職員は、ちゃんと休みがあるから、自分の時間を作る事が出来る。これが、選んだ決め手だ。  学校の先生からは、 「戦闘系スキルを、それだけ持っているのにも関わらず、冒険者にならず、騎士団にも入らないのか? 勿体ない」  と言われた。確かに、私は、戦闘系のスキルを多く持っている。でも、だからって、戦うのが好きなわけじゃない。私はもっと平和に暮らしたい!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生遺族の循環論法

はたたがみ
ファンタジー
いじめに悩む中学生虚愛はある日、自らトラックに跳ねられ命を断つ。 しかし気がつくと彼女は魔法の存在するファンタジーな異世界に、冒険者の娘リリィとして転生していた。 「魔法にスキルに冒険者ですって⁉︎決めました。私、その冒険者になります!」 リリィの異世界ライフが幕を開ける! 「そういえば弟くんは元気でしょうか……」 一方遺された愛の弟、縦軸にもある出会いが。 「ねえ君、異世界のこと、何か知らない?」 姉を喪った彼のもとに現れた謎の美少女。 そして始まる縦軸の戦い。 「また、姉さんに会いたいな」 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。 百合は第2章から本格的に始まります。 百合以外の恋愛要素もあります。 1章を飛ばして2章から読み始めても楽しめると思います。

処理中です...