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第九章

9-22黒龍

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 9-22黒龍


 あたしはその力を使って黒龍様の魂をあたしの魂に融合させていく。


 それはシェルの時とは比べ物にならないくらい大きなものだった。
 熱く力強いそれは容赦なくあたしの中に、奥に奥に入ってくる。

 
 だ、だめ、苦しいっ!


 既にあたしの中に入りきらないのではないかと思われるそれは無理やりにあたしをこじ開け突き進んでくる。
 そして奥にあるあたし自身の魂にもう少しで到達する。


 ティ、ティアナぁ、あたしまたティアナ以外とつながってしまう‥‥‥ ごめんなさい‥‥‥


 何故かティアナに謝罪の言葉が頭の片隅をよぎる。

 そして黒龍様の大きな魂はあたしを貫き一番奥にあるあたしの魂に到達する。
 それは荒々しく、熱く、大きなもの。
 シェルなんて目じゃない。
 
 一番奥に入ってきた黒龍様の魂はいよいよあたしの中ではじける!


 ああっ、き、きもちいいぃぃ‥‥‥


 その快感に、一つになれた事にあたしの意識が飛びそうになり背筋を電気が走ったような快感が伝わりビクンと反応してしまう。

 全てが混じり合う感じ、シェルとは全く違うこの感じは人ではない竜のモノ。

 しかしこの感じ、なんだろう?
 まるで女性のそのやわらかさそのもののような感じ‥‥‥
 
 包み込まれるようなその温かさの中にあたしはティアナを思い出した。


 はっ!?


 そうだ、このぬくもり、このやわらかさ、あたしはこんな所で埋もれるわけにはいかない!!
 帰るんだティアナのもとに!!


 あたしは意識を強く持ちあたしの中で混ざり合い融け行くあたしの意識と黒龍様の意識をすくい上げ分け始める。
 そしてあたしの魂を上位に、黒龍様の魂をそれに連結させつなげる。
 
 それはシェルの時と同じ感覚。
 あたしと黒龍様の魂がきれいに別れ鎖でつながる瞬間であった‥‥‥


 * * *

 
 「エルハイミ、ねえ、エルハイミっ!」

 はっ!?

 あたしは目覚めた。
 シェルの呼びかけにあたしは我に返る。
  
 「シェル、私は‥‥‥」

 「どうやら成功したみたいね。貴女と黒龍様は一旦光の玉になってそしてまた別れ、つながったのよ。見て」

 そう言ってシェルはあたしの手を取る。

 あたしはシェルに取られた手を見る。
 シェルの鎖と反対の手からもう一つの鎖が伸びている。
 その鎖の先は黒龍様の首へとつながっていた。


 『エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトン、ありがとう。あなたのおかげで私は助かりました。そして私は長きにわたり主を失っていましたけど貴女と言う新しい主を得た。おかげで呪いもすべて弾き飛ばしこうして貴女に隷属出来た』


 人と同じ位の大きさの黒龍様は嬉しそうに尻尾を振った。
 そしてその姿がゆがみ一人の裸の大人の女性へと変わってく。


 それは黒髪で真っ白なはちきれんばかりの肉体を持つ美しい女性だった。
 よくよく見ると頭から竜の角が生えていたり、お尻から尻尾が生えていたりとするけど思わず見とれてしまうほどの美女だ。


 「え、ええと、黒龍様ですの?」
 
 「はい、主様。そうです」


 その女性は美しい透き通るような声で返事してくれる。 
 そしてはにかむ様に微笑んでくれる。


 どきっ!?


 こ、これはまた生前のあたしのドストライク??
 はちきれんばかりの胸、細い腰に肉肉しい尻、スラリとしたおみ足。
 まさしく「ないすばでー」の一言。
 そんな美女がご、ご主人様だなんて!!

 思わず興奮するあたし。
 久しぶりに心の男の子がおっきしました。


 「こ、黒龍様、その主と言うのはどういう事でしょうですわ?」


 「エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトン様、あなたのおかげで私は亡者の王リッチからの呪いより解放されました。同時に暗黒の女神ディメルモ様がお亡くなりになられて以来、主を失った私に新たな光を見せてくれました。あなたの魂はそれはそれは素晴らしいものです。それはディメルモ様をも凌駕するほどに。そしてそれは私があなたに仕えるに十分な理由になります」

 黒龍様はそう言ってあたしの前に膝まづく。
 その折に大きな胸がたゆんと揺れるのをあたしは見逃さなかった!


 「ちょっと、エルハイミ!?」

 「え、ええとぉ~ですわ‥‥‥」


 シェルに突っ込まれて呆然としていたあたしは思い出す。
 それは手放しに喜んでいられる状況ではないと言う事に‥‥‥


 緊急処置だったけど太古の竜をあたしが隷属させたと言う事。
 それって女神様に仕えてた黒龍様が今度はあたしに仕えるって事!?


 「あ、あの黒龍様?」

 「主様、どうぞディメルモ様同様に『コク』とお呼びください。そして何なりとお申し付けください」

 
 ズッキューン!!

 
 何この従順さ!?
 しかもこんなないすばでーの美人になんでも言ってくれなんて言われたらあたし、も、もうっ!!



 「おいこらエロハイミ、何息荒々しくして血走った目で黒龍様見てるのよ? ティアナに言いつけるわよ??」


 はっ!


 あ、危ない、生前のあたしの趣味が大爆発して思わず黒龍様にあーんな事やこーんな事をしてしまう所だった!
 あたしは咳払い一つ、とにかく現実世界に戻る事を黒龍様に話した。


 「黒龍様、何はともあれこのままこの世界にいる訳にはいきませんわ。クロ様やクロエ様がつなげてくれているこの道を戻り現実世界に戻りましょうですわ」

 あたしがそう言うと膝まづいていた黒龍様は「わかりました」と言って立ち上がる。


 ううっ、思わずその胸に飛び込みたい!
 これってアテンザ様にも負けないわね!!
 あたしはそのたゆんと揺れるモノに目が釘付けになってしまう。


 「こんな時でもエロハイミね‥‥‥ 遊んでないで帰りましょ、全く浮気者なんだから」

 「うわっ! シェル、何を言っているのですわ! わ、私は別にそう言う意味で見ていたのでは‥‥‥」

 「主様? 私の体をご所望でしょうか? でしたらどうぞご自由にお使いくださいませ?」


 思わずそちらを見てしまうあたし。
 シェルはあたしの耳を引っ張って魂の連結の道を歩き出す。


 「主様、現世にお戻りになられるのなら私にお任せください」

 そう言って黒龍様はパチンっと指を鳴らした。
 その瞬間にあたしとシェルの意識は途切れたのだった。


 * * *

 
 「う、うう~んですわ‥‥‥」

 「お姉さま! 戻られたのですね!!」

 まだはっきりしない頭を軽く振り、あたしはイオマに助け起こされながら上半身を起こす。
 隣にいたシェルも同じようで、ショーゴさんの手を借りながら起き上がった。


 「エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトンよ、どうであった? 黒龍様の結界が消えた。黒龍様の呪いは解けたのだな?」


 見るとクロさんとクロエさんがあたしのすぐそばまで来ていた。
 そして魔法陣の向こう側にいる黒龍様を見る。


 『クロとクロエですか? ご苦労、我が主のおかげで私の呪いは解けました』


 するとあの女性の声で黒龍様が話しかけてきた。

 「おおっ! 黒龍様!!」

 「黒龍様、おめでとうございます。呪いが解けたのですね? 流石ディメルモ様のお力!」

 クロさんとクロエさんそう言うと黒龍様はその大きな頭を持ち上げこちらを見る。
 
 『いえ、ディメルモ様のお力で無く、新しい主様のおかげです。しかし、この体はもう長くはもたない、すでに所々が腐り始めています。長きにわたり亡者の王リッチの呪いのせいで魂と肉体のつながりが細くなり過ぎました。私はこれより再生の秘術を行います。主様、申し訳ございませんがしばし次の私が生まれるまでお待ちいただきたい』

 そう言ってあたしの方を見る。


 「新しい主ですと?」
 
 「再生の秘術をお使いになるのですか!?」


 クロさんもクロエさんも驚いている。


 『クロ、クロエ。我が新しき主様、エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトン様に粗相の無きようおもてなしをしなさい。それでは主様、次の私が生まれるまでしばしお別れです』

 そう言って黒龍様は一声鳴くと黒龍様の巨大な体の周りに多重の魔法陣が現れる。
 その光輝く魔方陣たちは黒龍様にまばゆい光を与えあたしたちの視界を奪っていく。


 「こ、黒龍様!!」


 あたしがそう叫んだ時に視界一杯の光があたしたちを包む。
 そしてその光は次の瞬間には止んで目の前にいた巨大な竜は姿を消していた!?

 ‥‥‥

 どういう事か理解が追い付けずあたしは黒龍様がいた場所を見る。
 すると床に光の粉のようなものを舞い散らしながらキラキラと輝いている大きな白い卵が有った‥‥‥


 「まさか、あれが黒龍様ですの?」

 
 「エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトンよ、どういう事か説明してもらえるだろうな?」

 「エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトン、私たちの黒龍様に何をしやがったのですか!?」

 「お姉さま!?」

 「主よ?」


 あれ?
 なにこれ?
 なんでみんなあたしに詰め寄ってきているの?? 
 
 
 「まあ、いつものエルハイミよ。有り得ない事をやってのけるいつも通りのエルハイミよ」


 シェルは心底疲れた感じでそう言う。
 そして余計な事を言う。

 「とうとう最古の竜にまで手を出したわけかぁ、流石エロハイミ」


 「「「「!?」」」」


 とたんにみんながあたしの殺到してくる!


 「エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトンよ! 黒龍様にいったい何をしたのだ!?」
 
 「エルハイミ=ルド・シーナ・ハミルトン! 人間の分際で黒龍様に手を出しやがったのですか!?」

 「お姉さま! あたしには全然手を出さないで竜なんかに手を出したんですかぁ!?」

 「主よ、俺では役に立たなくなったと言う事かっ!?」



 わいわいがやがや




 興奮する皆をなだめるためにあたしはものすごい苦労をする羽目になったのだった。  
 
   
  
  
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