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第八章
8-8聖騎士団増援
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8-8聖騎士団増援
「お帰り、エルハイミ! それでどうだったの!?」
ゲートを出るとティアナが抱き着いてきた。
ふわっと香るティアナの良い香りにあたしは安心感を味わう。
「ええ、はっきりしましたですわ! エスティマ様の早とちりですわ!!」
断言するあたしにティアナは嬉しそうに口づけしてくる。
ああ!
久しぶりのティアナの味!!
もう、このまま部屋に直行したいわ!!
「んっ、そうか、兄さまの早とちりか。良かった、お義父様もお義母様も同意した訳じゃないのね?」
「ええ、そうですわ。それよりエスティマ様は? 一刻も早くこの事を伝えなければ!!」
そう言うあたしにティアナはバツが悪そうに視線を外す。
「ええ~と、兄さまはねぇ~」
『あの後懲りもせずにホリゾンが襲ってきたんだけど、ティアナがグランドアイミで簡単に敵軍を退けてエスティマはまた見せ場が無くて落ち込んでいるわよ?』
シコちゃんが状況説明してくれる。
エスティマ様が落ち込んでいる??
「それにエルハイミがいきなり実家に帰ったって聞いて更に落ち込んでね。今は大人しく部屋にいるわ」
うーん、メンタルが弱い人なの?
そんな風には見えないけどなぁ。
あたしはエスティマ様の部屋に向かった。
用意された部屋に着いてドアを叩く。
「エスティマ様、いらっしゃいますかですわ? エルハイミですわ?」
すると中からどたばたとあわててこちらに来る気配が‥‥‥
「エルハイミ殿! お戻りになられたか!?」
扉が開いてエスティマ様が顔を出す。
そしてあたしの手を取り口づけをする。
「いきなり実家に戻られるとは驚きました。一体何用でお戻りになられたのですか?」
「はい、エスティマ様。お父様とお母様に直談判しに行きましたのですわ。そこではっきり聞きましたがお父様もお母様もエスティマ様と私の婚約を了承した事は無いとのことですわ!」
エスティマ様はそれを聞き悔しそうにするが、こう言ってきた。
「確かに今は婚約成立しておりません。しかしこの戦いが私による功績で勝利すれば、晴れて婚約が出来る。それまでに私は必ずあなたの心を射止めて見せます!」
うわーっ!
言い切ったよこのイケメン!!
メンタル強いじゃないの!?
「それはあり得ませんですわ。私はティアナが好き、愛しているのですわ!」
「それでもきっと君を振り向かせて見せる!!」
そう言ってあたしの両手を取りきらきらフォーカスで見つめてくるエスティマ様。
‥‥‥ごめん、何にも感じないわ。
あたしは視線を外し、用事がありますと言ってこの場を離れる。
『あら? お帰り~。そろそろ帰ってくると思ったけど何処いるのよ?』
シェルが念話してくる。
『エスティマ様にお断りの話をしてきたところですわ! それよりシェルは何処にいるのですの?』
『蚕の工房よ。蚕がだいぶ育ってきたわよ? 見に来る??』
そう言えば孵化した蚕が卵産んだって聞いたけど順調に幼虫が育っているようだ。
こんな時でもティナの町の産業はどんどん進めたい。
『ではティアナと一緒にそちらに行きますわ』
そう言ってあたしはティアナのもとに行く。
* * * * *
「それで、どうだったの?」
「どうも何もエスティマ様の早とちりでもう一度はっきりとお断りをしてきたのですわ!」
「ふーん、じゃあ、あの王子様ご愁傷様だ」
ティアナにはもう話したけどシェルにはまだ話していなかった。
シェルは器用に蚕の幼虫を新しい葉に移していた。
「よくそんな虫触れるわね? 気持ち悪くないの?」
「この子たちは毒も無いし結構人懐っこいから平気よ? 新しい餌の葉っぱが来ると匂いでわかるからこっちに寄って来るのよ」
そう言ってパタパタと新しい葉っぱであおぐとそれに気づいた幼虫たちがそちらに向かってくる。
あ、これちょっと面白いかも。
しかしティアナはそれでも距離を取っている。
意外とこういうのが苦手なのだ。
「あと数回脱皮するといよいよ繭を作るわ。そうしたらこっちの格子を近くにおいて繭づくりさせるの。後は可愛そうだけどお湯でゆでながら糸をつむぐのよ。そうすると絹糸が取れるわ。」
そう言いながらシェルは他の人たちにやり方を教えている。
ここには数名の見習いがいるけどゆくゆくは彼らが中心となって絹糸の生産をしてもらう。
まずはこれで一つ目の産業。
うまく行けば次も考えなければならない。
あたしがそんな事を考えていると伝令の兵がやってきた。
「申し上げます! ホリゾンに動きがありました!! どうやら増援が着いたようです!!」
「えっ? もう!?」
「早くても後一週間以上はかかるはずですのに?」
「とにかくティアナ、エルハイミ、ゾナーの所へ行こう!!」
シェルに言われてあたしたちはゾナーのもとへ向かうのであった。
* * * * *
「どうやら聖騎士団の本体ではなく一部の増援が付いたようだ。もしかしたらキメラ部隊かもしれない。今までとは違うぞ!?」
ゾナーはそう言って望遠鏡を覗き込む。
理屈は分からないがたまたまメガネのレンズどうしを重ねると遠くが見えるというのにこちらの世界の人間も気付いたようでここ数年の間にだいぶ広まったようだ。
ゾナーから渡されて望遠鏡をティアナは見て驚く。
「へえ、魔法の道具でもないのに結構遠くが良く見えるのね? それよりあれって何?」
ティアナが見ているのは人馬が一体になったケンタウロスのようなキメラ部隊。
ざっと見で二百騎はいる。
「ホリゾンが開発をしていたキメラ部隊だ。ルド王国で開発を進めていたが、俺が知っているよりずいぶんと変わったモノを作ってきたな?」
「それで、そのキメラの戦闘能力はどうなんだ?」
少し遅れてやってきたエスティマ様はゾナーに一番聞きたいところを聞く。
「はっ、私が知っているフレッシュゴーレムであれば一体で一個小隊に匹敵します。力は強く痛みを感じず命令に忠実なキメラ部隊です。死も恐れず完全破壊されるまで動き続ける厄介な相手です」
「ゴーレムとは違うのか?」
「はい、機動力、戦闘力共に数段上であります。最も、マシンドールには到底かないませぬが」
それを聞いたエスティマ様は「ふむ」とだけ言って敵陣を見る。
「では攻め込んで来たら予定通り遠方攻撃を加え城壁にとりつかせなければいい訳だな?」
「はい、まずはそれが良いかと思います」
いくらキメラでも飛べない限りこの城壁は超えられない。
ケンタウロス型がどれだけのモノか分からないけど、そうそうこのティナの町を攻め落とすことは出来ないだろう。
ぶぅぉぉぉおおおおおぉぉぉんんっっ!
そんな事を考えていたらホリゾンの角笛が鳴った。
戦の開始の合図だ!!
「始まるぞ! 弓兵、弓構え!! ショーゴ殿、シェル殿頼みます!」
ゾナーの声にみんなすぐに動き出す。
あたしもシコちゃんを構え指示あるまで防御魔法の準備をする。
ティアナはアイミたちを呼んでいる。
サポートはあたしに任せてくれると言う事か!
見ると凄い速いスピードでケンタウロス型のキメラたちが突っ込んでくる!!
弓兵の矢が次々とキメラに降り注ぐが、全身に鎧のようなものをつけているキメラたちには普通の矢が効かない!!
「そこっ!」
シェルの矢が一体のケンタウロス型キメラに刺さる!
そしてその矢は一瞬光ったと思ったら爆発をしてケンタウロスの上半身を弾き飛ばす!!
それはよろよろとしばらく走っていたがそのうちばたりと倒れて動かなくなる。
「はっ!」
ばしゅっ!
ひゅるるるるるる~
どがぁーんんっ!!
ショーゴさんのアサルトモードから放たれた両肩の魔光弾がケンタウロス部隊の一部を吹っ飛ばす!
何体かは粉々になっているけど片足がなくなったり上半身の人の部分の腕がなくなったキメラたちはまた恐れることなくこちらに向かって走り出す。
だいぶ近づいてきたそれらをショーゴさんは両手の連発魔光弾で、シェルは次々と矢で倒していくが流石に数が多い!
とうとう城壁のすぐそばまで来てそのケンタウロス型は鍵爪のついたロープを投げてくる!?
まさかロープを使って登ってくる気!?
いくらキメラでも人馬一体はかなりの重量があるはず、登れるの!?
あたしがそんな事を思っていたらなんと馬の背が開いて猿のような小型キメラがたくさん出てきた!!!?
そのサルたちは器用にロープを伝って登ってくる!
慌てて弓兵は矢を放つがやはり体の要所要所についている鎧の様なもので防がれてしまう。
数名の兵がロープを切ろうとするが、どうやら鉄線まで混ざったロープのようで簡単には切れない!
二十メートル近くあるそこをサルたちは難なく登ってくる。
「投石しろ! キメラ相手にまっとうに剣を交えるな!! 主、エルハイミ殿!」
ゾナーのその声にあたしたちはすぐに反応する。
ティアナはマシンドールたちに各々の属性魔法を使って登り来る猿たちを撃ち落としたり凍らせたりしている。
あたしも雷撃魔法で迎撃するのだけど小さいくせに数が多い!
「エルハイミ! 向こう!!」
ティアナが叫ぶ!
あたしが猿に気を取られていたら森の向こうからあの巨大な弓矢が出てきた!
また作ったのか!?
「数が多すぎる! このぉっ!!」
シェルも三本同時に矢を放つ曲芸まがいの事をしているけど徐々に猿たちはここまで上り詰め始めていた!
「主よ! 『ストライクモード』!!」
ざしゅっ!
ショーゴさんがあたしの後ろで何かを切った!
見ると真っ二つになったあの猿が転がっている。
「ぐぁっ!」
どうやらあの猿たちがここまで登ってきたようだ、別の場所から兵士の悲鳴が上がる!
「これ以上奴らを入れるんじゃない! マシンドール部隊を前面に!!」
エスティマ様がマシンドール部隊を前に出して猿たちを蹴散らす!
「エルハイミ! 撃ってくる!!」
あたしはティアナの声にそちらを見るとちょうど大木の矢が放たれたところだった!!!
「くっ! 【絶対防壁】っ!!」
あたしはとっさに矢が当たるであろう城壁の前に【絶対防壁】の魔法を展開する!
あたしのその魔法にものすごい威力で飛んできた大木の矢は城壁に当たる前にあっさりと弾き飛ばされて地面に転がった!
危なかった、あれは流石にヤバイ。
と、気を抜いた次の瞬間であった!
どがぁーんんっ!!
ごごーんんっ!!
何かが城壁にぶつかって揺れを感じた!!
「何が起こった!?」
叱責するゾナーに伝令が来る。
「門に大槌です! それと別方向からあの大木の矢も!!」
門を見るといつの間にか槌を持ったケンタウロス型キメラが門を破壊しようとしている!?
さらに先程とは別の迂回したような方向から撃ちだされた大木の矢が城壁に刺さっている!!!?
「主よ! グランドアイミで門を!! エルハイミ殿は城壁破壊兵器を! エスティマ様! 猿どもを頼みます! あと少しです!!」
「アイミ、【最終融合承認】! グランドアイミ! 門のケンタウロスを蹴散らすのよ!!」
ぴこぴこ!!
飛び出したアイミたちはどこからか例の掛け声が上がったと思うと空中で一瞬Ⅴの字型にひかり、各マシンドールたちが変形を始める!
そしてアイミにフレイムとウォーターが両肩から腕へ!
ウインドーとアースが腰から両足へ!!
胸部に四つの魔結晶石が集まりそれを全体に緑色のクリスタルがおおう!!
最後にアイミの頭に王冠のような飾りがつき、もみあげも金属のじゃらじゃらしたものが伸び、背中から八つの後光のようなリフレクターっぽいものが生える!!
「完成! グランドアイミ!!」
どこからか掛け声が上がりグランドアイミが空中で決めポーズをとる!
「いけぇっ!!」
アイミは緑色の光を噴射しながら門の所まで飛んでいく!
それを迎え撃つケンタウロス型キメラたち!
しかしアイミの攻防一体となった攻撃にどんどん蹴散らされていく!
ケンタウロス型は背中から例の猿たちを出すがグランドアイミの【紅蓮業火】、体に炎の柱をまとわせた体当たりに次々に燃やされていく!
ほどなくキメラ部隊は壊滅、グランドアイミはその向こうに控えていた聖騎士団と対峙する!
あたしはあたしで威力を絞った【流星召喚】を狙いを定め迂回してきた大型クロスボウにぶつける!
見事にそれをつぶした隕石は規模も小さくクレーターを作る事は無かった。
「次っ! 行きますわよ!! 【流星召喚】メテオストライク!!」
あたしは今度は最初に正面の大型クロスボウに狙いを定めてもう一度威力を絞ったメテオストライクをぶつけようとした!
しかしその隕石はぶつかる寸前で防御魔法によって防がれる!?
向こうも後方援護の魔術師がいるのか!?
凝視するそこに黒い姿の女性型鎧がぽつぽつと現れた!!
同調して感知魔法で見ると、間違いない、ブラックマシンドールたちだ!!
とうとうブラックマシンドールたちが出てきたのであった。
「お帰り、エルハイミ! それでどうだったの!?」
ゲートを出るとティアナが抱き着いてきた。
ふわっと香るティアナの良い香りにあたしは安心感を味わう。
「ええ、はっきりしましたですわ! エスティマ様の早とちりですわ!!」
断言するあたしにティアナは嬉しそうに口づけしてくる。
ああ!
久しぶりのティアナの味!!
もう、このまま部屋に直行したいわ!!
「んっ、そうか、兄さまの早とちりか。良かった、お義父様もお義母様も同意した訳じゃないのね?」
「ええ、そうですわ。それよりエスティマ様は? 一刻も早くこの事を伝えなければ!!」
そう言うあたしにティアナはバツが悪そうに視線を外す。
「ええ~と、兄さまはねぇ~」
『あの後懲りもせずにホリゾンが襲ってきたんだけど、ティアナがグランドアイミで簡単に敵軍を退けてエスティマはまた見せ場が無くて落ち込んでいるわよ?』
シコちゃんが状況説明してくれる。
エスティマ様が落ち込んでいる??
「それにエルハイミがいきなり実家に帰ったって聞いて更に落ち込んでね。今は大人しく部屋にいるわ」
うーん、メンタルが弱い人なの?
そんな風には見えないけどなぁ。
あたしはエスティマ様の部屋に向かった。
用意された部屋に着いてドアを叩く。
「エスティマ様、いらっしゃいますかですわ? エルハイミですわ?」
すると中からどたばたとあわててこちらに来る気配が‥‥‥
「エルハイミ殿! お戻りになられたか!?」
扉が開いてエスティマ様が顔を出す。
そしてあたしの手を取り口づけをする。
「いきなり実家に戻られるとは驚きました。一体何用でお戻りになられたのですか?」
「はい、エスティマ様。お父様とお母様に直談判しに行きましたのですわ。そこではっきり聞きましたがお父様もお母様もエスティマ様と私の婚約を了承した事は無いとのことですわ!」
エスティマ様はそれを聞き悔しそうにするが、こう言ってきた。
「確かに今は婚約成立しておりません。しかしこの戦いが私による功績で勝利すれば、晴れて婚約が出来る。それまでに私は必ずあなたの心を射止めて見せます!」
うわーっ!
言い切ったよこのイケメン!!
メンタル強いじゃないの!?
「それはあり得ませんですわ。私はティアナが好き、愛しているのですわ!」
「それでもきっと君を振り向かせて見せる!!」
そう言ってあたしの両手を取りきらきらフォーカスで見つめてくるエスティマ様。
‥‥‥ごめん、何にも感じないわ。
あたしは視線を外し、用事がありますと言ってこの場を離れる。
『あら? お帰り~。そろそろ帰ってくると思ったけど何処いるのよ?』
シェルが念話してくる。
『エスティマ様にお断りの話をしてきたところですわ! それよりシェルは何処にいるのですの?』
『蚕の工房よ。蚕がだいぶ育ってきたわよ? 見に来る??』
そう言えば孵化した蚕が卵産んだって聞いたけど順調に幼虫が育っているようだ。
こんな時でもティナの町の産業はどんどん進めたい。
『ではティアナと一緒にそちらに行きますわ』
そう言ってあたしはティアナのもとに行く。
* * * * *
「それで、どうだったの?」
「どうも何もエスティマ様の早とちりでもう一度はっきりとお断りをしてきたのですわ!」
「ふーん、じゃあ、あの王子様ご愁傷様だ」
ティアナにはもう話したけどシェルにはまだ話していなかった。
シェルは器用に蚕の幼虫を新しい葉に移していた。
「よくそんな虫触れるわね? 気持ち悪くないの?」
「この子たちは毒も無いし結構人懐っこいから平気よ? 新しい餌の葉っぱが来ると匂いでわかるからこっちに寄って来るのよ」
そう言ってパタパタと新しい葉っぱであおぐとそれに気づいた幼虫たちがそちらに向かってくる。
あ、これちょっと面白いかも。
しかしティアナはそれでも距離を取っている。
意外とこういうのが苦手なのだ。
「あと数回脱皮するといよいよ繭を作るわ。そうしたらこっちの格子を近くにおいて繭づくりさせるの。後は可愛そうだけどお湯でゆでながら糸をつむぐのよ。そうすると絹糸が取れるわ。」
そう言いながらシェルは他の人たちにやり方を教えている。
ここには数名の見習いがいるけどゆくゆくは彼らが中心となって絹糸の生産をしてもらう。
まずはこれで一つ目の産業。
うまく行けば次も考えなければならない。
あたしがそんな事を考えていると伝令の兵がやってきた。
「申し上げます! ホリゾンに動きがありました!! どうやら増援が着いたようです!!」
「えっ? もう!?」
「早くても後一週間以上はかかるはずですのに?」
「とにかくティアナ、エルハイミ、ゾナーの所へ行こう!!」
シェルに言われてあたしたちはゾナーのもとへ向かうのであった。
* * * * *
「どうやら聖騎士団の本体ではなく一部の増援が付いたようだ。もしかしたらキメラ部隊かもしれない。今までとは違うぞ!?」
ゾナーはそう言って望遠鏡を覗き込む。
理屈は分からないがたまたまメガネのレンズどうしを重ねると遠くが見えるというのにこちらの世界の人間も気付いたようでここ数年の間にだいぶ広まったようだ。
ゾナーから渡されて望遠鏡をティアナは見て驚く。
「へえ、魔法の道具でもないのに結構遠くが良く見えるのね? それよりあれって何?」
ティアナが見ているのは人馬が一体になったケンタウロスのようなキメラ部隊。
ざっと見で二百騎はいる。
「ホリゾンが開発をしていたキメラ部隊だ。ルド王国で開発を進めていたが、俺が知っているよりずいぶんと変わったモノを作ってきたな?」
「それで、そのキメラの戦闘能力はどうなんだ?」
少し遅れてやってきたエスティマ様はゾナーに一番聞きたいところを聞く。
「はっ、私が知っているフレッシュゴーレムであれば一体で一個小隊に匹敵します。力は強く痛みを感じず命令に忠実なキメラ部隊です。死も恐れず完全破壊されるまで動き続ける厄介な相手です」
「ゴーレムとは違うのか?」
「はい、機動力、戦闘力共に数段上であります。最も、マシンドールには到底かないませぬが」
それを聞いたエスティマ様は「ふむ」とだけ言って敵陣を見る。
「では攻め込んで来たら予定通り遠方攻撃を加え城壁にとりつかせなければいい訳だな?」
「はい、まずはそれが良いかと思います」
いくらキメラでも飛べない限りこの城壁は超えられない。
ケンタウロス型がどれだけのモノか分からないけど、そうそうこのティナの町を攻め落とすことは出来ないだろう。
ぶぅぉぉぉおおおおおぉぉぉんんっっ!
そんな事を考えていたらホリゾンの角笛が鳴った。
戦の開始の合図だ!!
「始まるぞ! 弓兵、弓構え!! ショーゴ殿、シェル殿頼みます!」
ゾナーの声にみんなすぐに動き出す。
あたしもシコちゃんを構え指示あるまで防御魔法の準備をする。
ティアナはアイミたちを呼んでいる。
サポートはあたしに任せてくれると言う事か!
見ると凄い速いスピードでケンタウロス型のキメラたちが突っ込んでくる!!
弓兵の矢が次々とキメラに降り注ぐが、全身に鎧のようなものをつけているキメラたちには普通の矢が効かない!!
「そこっ!」
シェルの矢が一体のケンタウロス型キメラに刺さる!
そしてその矢は一瞬光ったと思ったら爆発をしてケンタウロスの上半身を弾き飛ばす!!
それはよろよろとしばらく走っていたがそのうちばたりと倒れて動かなくなる。
「はっ!」
ばしゅっ!
ひゅるるるるるる~
どがぁーんんっ!!
ショーゴさんのアサルトモードから放たれた両肩の魔光弾がケンタウロス部隊の一部を吹っ飛ばす!
何体かは粉々になっているけど片足がなくなったり上半身の人の部分の腕がなくなったキメラたちはまた恐れることなくこちらに向かって走り出す。
だいぶ近づいてきたそれらをショーゴさんは両手の連発魔光弾で、シェルは次々と矢で倒していくが流石に数が多い!
とうとう城壁のすぐそばまで来てそのケンタウロス型は鍵爪のついたロープを投げてくる!?
まさかロープを使って登ってくる気!?
いくらキメラでも人馬一体はかなりの重量があるはず、登れるの!?
あたしがそんな事を思っていたらなんと馬の背が開いて猿のような小型キメラがたくさん出てきた!!!?
そのサルたちは器用にロープを伝って登ってくる!
慌てて弓兵は矢を放つがやはり体の要所要所についている鎧の様なもので防がれてしまう。
数名の兵がロープを切ろうとするが、どうやら鉄線まで混ざったロープのようで簡単には切れない!
二十メートル近くあるそこをサルたちは難なく登ってくる。
「投石しろ! キメラ相手にまっとうに剣を交えるな!! 主、エルハイミ殿!」
ゾナーのその声にあたしたちはすぐに反応する。
ティアナはマシンドールたちに各々の属性魔法を使って登り来る猿たちを撃ち落としたり凍らせたりしている。
あたしも雷撃魔法で迎撃するのだけど小さいくせに数が多い!
「エルハイミ! 向こう!!」
ティアナが叫ぶ!
あたしが猿に気を取られていたら森の向こうからあの巨大な弓矢が出てきた!
また作ったのか!?
「数が多すぎる! このぉっ!!」
シェルも三本同時に矢を放つ曲芸まがいの事をしているけど徐々に猿たちはここまで上り詰め始めていた!
「主よ! 『ストライクモード』!!」
ざしゅっ!
ショーゴさんがあたしの後ろで何かを切った!
見ると真っ二つになったあの猿が転がっている。
「ぐぁっ!」
どうやらあの猿たちがここまで登ってきたようだ、別の場所から兵士の悲鳴が上がる!
「これ以上奴らを入れるんじゃない! マシンドール部隊を前面に!!」
エスティマ様がマシンドール部隊を前に出して猿たちを蹴散らす!
「エルハイミ! 撃ってくる!!」
あたしはティアナの声にそちらを見るとちょうど大木の矢が放たれたところだった!!!
「くっ! 【絶対防壁】っ!!」
あたしはとっさに矢が当たるであろう城壁の前に【絶対防壁】の魔法を展開する!
あたしのその魔法にものすごい威力で飛んできた大木の矢は城壁に当たる前にあっさりと弾き飛ばされて地面に転がった!
危なかった、あれは流石にヤバイ。
と、気を抜いた次の瞬間であった!
どがぁーんんっ!!
ごごーんんっ!!
何かが城壁にぶつかって揺れを感じた!!
「何が起こった!?」
叱責するゾナーに伝令が来る。
「門に大槌です! それと別方向からあの大木の矢も!!」
門を見るといつの間にか槌を持ったケンタウロス型キメラが門を破壊しようとしている!?
さらに先程とは別の迂回したような方向から撃ちだされた大木の矢が城壁に刺さっている!!!?
「主よ! グランドアイミで門を!! エルハイミ殿は城壁破壊兵器を! エスティマ様! 猿どもを頼みます! あと少しです!!」
「アイミ、【最終融合承認】! グランドアイミ! 門のケンタウロスを蹴散らすのよ!!」
ぴこぴこ!!
飛び出したアイミたちはどこからか例の掛け声が上がったと思うと空中で一瞬Ⅴの字型にひかり、各マシンドールたちが変形を始める!
そしてアイミにフレイムとウォーターが両肩から腕へ!
ウインドーとアースが腰から両足へ!!
胸部に四つの魔結晶石が集まりそれを全体に緑色のクリスタルがおおう!!
最後にアイミの頭に王冠のような飾りがつき、もみあげも金属のじゃらじゃらしたものが伸び、背中から八つの後光のようなリフレクターっぽいものが生える!!
「完成! グランドアイミ!!」
どこからか掛け声が上がりグランドアイミが空中で決めポーズをとる!
「いけぇっ!!」
アイミは緑色の光を噴射しながら門の所まで飛んでいく!
それを迎え撃つケンタウロス型キメラたち!
しかしアイミの攻防一体となった攻撃にどんどん蹴散らされていく!
ケンタウロス型は背中から例の猿たちを出すがグランドアイミの【紅蓮業火】、体に炎の柱をまとわせた体当たりに次々に燃やされていく!
ほどなくキメラ部隊は壊滅、グランドアイミはその向こうに控えていた聖騎士団と対峙する!
あたしはあたしで威力を絞った【流星召喚】を狙いを定め迂回してきた大型クロスボウにぶつける!
見事にそれをつぶした隕石は規模も小さくクレーターを作る事は無かった。
「次っ! 行きますわよ!! 【流星召喚】メテオストライク!!」
あたしは今度は最初に正面の大型クロスボウに狙いを定めてもう一度威力を絞ったメテオストライクをぶつけようとした!
しかしその隕石はぶつかる寸前で防御魔法によって防がれる!?
向こうも後方援護の魔術師がいるのか!?
凝視するそこに黒い姿の女性型鎧がぽつぽつと現れた!!
同調して感知魔法で見ると、間違いない、ブラックマシンドールたちだ!!
とうとうブラックマシンドールたちが出てきたのであった。
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魔物が蔓延り、ダンジョンが乱立する世界。そこでは、冒険者という職業が出来ていた。そして、その冒険者をサポートし、魔物の情報やダンジョンの情報を統括する組織が出来上がった。
その名前は、冒険者ギルド。全ての冒険者はギルドに登録しないといけない。ギルドに所属することで、様々なサポートを受けられ、冒険を円滑なものにする事が出来る。
私、アイリス・ミリアーゼは、十六歳を迎え、長年通った学校を卒業した。そして、目標であったギルド職員に最年少で採用される事になった。騎士団からのスカウトもあったけど、全力で断った。
何故かと言うと…………ギルド職員の給料が、騎士団よりも良いから!
それに、騎士団は自由に出来る時間が少なすぎる。それに比べて、ギルド職員は、ちゃんと休みがあるから、自分の時間を作る事が出来る。これが、選んだ決め手だ。
学校の先生からは、
「戦闘系スキルを、それだけ持っているのにも関わらず、冒険者にならず、騎士団にも入らないのか? 勿体ない」
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