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第六章

6-23ボヘーミャ会談

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6-23ボヘーミャ会談


 最北の砦とガレント王城をつなぐ転移ゲートを作ったシコちゃんは眠りについた。
 どのくらい寝るかは分からないけど今はご苦労様。


 あたしたちは国王陛下に今までの経緯を説明して後の事はドミンゴさんに任せてボヘーミャへ飛んだ。
 そしてまずは師匠に相談をするのだが‥‥‥


 「概略は理解しました。しかしその話だと裏付けまでは取れていないという事ですね?」

 お茶をすすりながら言う師匠。
 
 「はい、確かに裏付けまでは取れていません。しかしその可能性が高くもしそうだとすると各国に存在するジュリ教はかなりの確率で敵対者と成り替わります」

 師匠はしばし何かを考えているようだ。
 そして考えをまとめてからあたしたちに言う。

 「ガレントだけの考えでいるとすればさしあたりホリゾンの第三皇子が契約でティアナの傘下に入り緊張はすれども大儀無くしてガレント側への侵攻は難しい。しかしながら皇帝を含む上層部がジュメルに乗っ取られているので何時大儀無くして侵攻が始まるか身構えるしかないと。そして可能性としてジュメルはジュリ教と関係が有り、現在各国で散発的に発生しているジュメルによる襲撃事件はホリゾンと同じく国中枢への侵略の一環になりかねないという事ですね?」

 師匠の言葉にあたしたちは首を縦に振る。
 今の所表立って対立するのはガレントとホリゾンの二国になる。
 しかし、もし事を構えた時にジュメルによる侵略が進んだ国が後ろからガレントを襲う事となれば流石にガレントでもただでは済まない。
 
 そこで師匠に今までの経緯を報告して今後の対策をどうしたらいいか相談をしたいのだ。
 英雄ユカ・コバヤシと言う存在は各国にもそれなりに影響を持っているから。

 「では見方を変えジュメル側としては何をしたいのでしょうか?」


 その質問にティアナは即答する。


 「それは大国であるガレントを侵略して自分の傘下に入れたいのではないですか?」

 「ガレントを侵略した後は?」

 それを聞いたティアナははたと気付き押し黙ってしまう。


 「師匠、それはつまりガレントの侵略は真の目的では無いという事ですか?」
 
 アンナさんのその疑問に師匠は首を縦に振る。

 「あなたたちはガレントの人間。国を守るために動いていますが二国間の問題だけならばそれだけでいいでしょう。しかしジュメルの本当の目的が二国間だけで済むような問題でない場合は事はそれだけでは済まないという事です」

 師匠はお茶をすする。
 そして静かに湯のみをテーブルに置く。

 「私はあの魔人戦争で各国のエゴと言うものを嫌と言うほど味わってきました。しかしそれの根底には自国の繁栄を目論む愛国心が存在していました。しかしジュメルと言う組織、集団は『国』と言う概念を持たない。少なからずとも魔人戦争の当時から人の世へ破壊と混乱をもたらすことが目的のように感じます」

 英雄ユカ・コバヤシは国と言う概念にとらわれる事は無い。
 彼女はこの世界自体の平穏と泰安を望んでいる。
 学園都市ボヘーミャの学園長をしているのもともすれば各国間の大戦や混乱を回避するための英雄やそれに連なるものの育成と教育が目的のようにも思える。

 その師匠からの見方は混乱の元凶である秘密結社ジュメルの真の目的が各国の侵略では無く他にあると。

 「では師匠、ジュメルの目的とは何なのです?」

 みんなの疑問をアンナさんが代弁する。

 「あなたたちもジュメルの幹部と言う女性から聞き及んでいるでしょう、この世界を破壊する者と」

 そう言えばあのジェリーンとか言う女幹部はそんなことを言っていた。
 あの時は勢いでそう言っているのかと思っていたけどもしそれが本当に目的ならその野望は人類自体への宣戦布告。
 
 「ジュリ教の教えは知っていますか?」

 師匠のその質問にアンナさんが答える。

 「確か『すべては戦いであり生き抜くために戦うべき』だと」

 「その通りです。常に何かに挑みおのれを律し生き抜くために戦えという考えは厳しい過去の時代には必要だと思います。しかし国家が形成されある程度の安全が確保された現代ではその教義自体も意味を薄めてしまう。ジュリ教すべてがジュメルに加担しているとは断定できないでしょうが、確かに確率は高いでしょう。そしてそこを媒介に各国で力を溜め今回のように各国で一斉に表舞台に出始めるという事はその時が来たと言う事でしょう。全く厄介な連中です」

 そう言って師匠はお茶を飲む。

 「私からも各方面に話をしておきましょう。ジュリ教自体を刺激することなく注意を払ってもらうように」


 そう言って師匠は立ち上がる。

 「エルハイミ、ユグリアに私を連れて行ってください。ファイナス市長に会います」

 師匠の言葉に驚くあたしだったがいきなり師匠が動くほどだ、かなりの大ごとになるのだろう。



 あたしは師匠についてゲートへと向かうのだった。

   
 
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