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第五章

5-34準備

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5-34準備

 残りがとうとう一年となってしまった。


 約束の時まで残り一年。
 ティアナとホリゾン帝国が第三皇子ゾナーとの勝負の決着をつける時まであとわずか一年の時間しかない。


 「ティアナ、それでは測りますわよ」

 「う、うんエルハイミ、来て」

 あたしは手に持つティーカップをティアナに向ける。
 そしてそのティーカップを一糸まとわぬティアナの胸に恐る恐る近づける。

 ティアナはぎゅっと目つむる。

 
 かぽっ!


 ティーカップは容易にそのかわいらしい胸を隠す。


 「はぁあぁぁぁぁぁ~ぁ」


 ティアナが肩を落とし、大きなため息をつく。
 あたしは一応確認の為ティーカップを少し動かしてみる。

 ‥‥‥ゆるい。
 いや、少しじゃなくかなりゆるい。


 「ティアナ‥‥‥」

 「わかってる! みなまで言わないで!!」

 あたしたちは当時頭に血の登ったティアナが売り言葉に買い言葉で受けてしまった勝負の為頭を悩ませている。


 『あんたたち何やってるのよ? ガーベルのやつも変態だったけどもしかしてあいつの子孫ってみんな変態!?』

 「「違う(ですわ)!!!!」」

 シコちゃんの突込みにきれいにハモってあたしとティアナが否定する。

 「これにはあたしたちの運命がかかっているのよ!!」

 『どんな運命よ!? 胸にティーカップなんかくっつけて、まさかビキニアーマーにでもするつもり!?』

 あたしはティアナがビキニアーマーをつけているところを想像する。
 ‥‥‥ビキニの上がすぐにずれ落ちそうだ。

 「これには深い理由が有るのですわ。かくがくしかじかで~」

 『要は向こうの方が一枚上手で下手したらあんたら二人とも手籠めにされた上に敵戦力に追加され、自国に刃を向ける羽目になりかねないと‥‥‥』


 あ”あ”あ”ぁぁぁぁっ!!


 あたしとティアナが同時に頭を抱える。
 分かってはいる、事態の深刻さを。
 あの時は一気に暴走して【束縛】ギアスまで使ってしまった。

 こ、これが若さゆえの過ちと言うやつか!?


 『道理で毎晩毎晩濃厚な関係をもっていたわけだ。でも、あんな生易しいのじゃそうそう大きくならないわよ!』

 「えっ? シコちゃん何かいい方法知ってるの!?」

 ティアナがシコちゃんの言葉に食いつく。

 『まあ、やってみれば効くんじゃないかな? そもそもティアナだって最近マッサージだけじゃ物足りないんでしょ?』

 「ななななな、なんで知ってるのよ!!」
 
 顔を真っ赤にして頭から湯気出しているよ、ティアナ。


 でも物足りないって何?


 毎晩あれだけ揉んで・・・マッサージしているのに足らないってこと?
 
 「それってどういうことですの? もしかして私のマッサージのし方が甘いとでもいうのですの?」

 『いやいや、マッサージは十分上手なんじゃない? 問題はティアナがマッサージではなく女の喜びを欲しているってことよ!』


 え?
 それって‥‥‥ まさかっ!?


 『あのね、ただ揉んでいても血行を良くして多少の効果しかないの。もっと女としての喜びを刺激しないと大きく成長しないのよ。実際に貧乳で有名なエルフだって好きな人に刺激しまくられると女の本能が反応して胸も腰つきもよくなるって実証が有るのよ。まあその実証のおかげであたしもガーベルもひどい目に合わされたんだけどね』

 女の本能って、もしかして女性ホルモンの事かな?
 勿論こっちの世界では身体バランスのホルモンなんて知られていないけど、確かに生前雑学の本で見たことがあるような‥‥‥


 ごくりっ。
 真っ赤な顔のティアナがなんか唾を飲み込んでいる。 

 「そ、それで具体的には何をすればいいのよ?」

 『そうね、とりあえずあたしが見てきた感だと~』


 ぼっ!
 ぼぼっ!!


 あたしとティアナが一斉に頭から湯気を出す!


 「そ、そんな事までするのっ!?」

 『いいらしいわよぉ~。それであのエルフの子なんかガーベルに散々されちゃって、半年もしないで巨乳になっちゃったのよねぇ~。おかげで後が大変だったのなんの!あたしなんかそれを止めなかったって事でさんざん彼女に怒られて封印されかけたんだもん!』

 「エ、エルハイミにされちゃうの!? あ、あたし!?」

 「彼女に封印ですの?」

 ティアナは既に目が渦巻で顔を真っ赤にして頭から湯気出しながらふらふらしている。
 
 あたしはあたしで勿論そのエルフのこの話も気になるけどそれ以上にその『彼女』と言う言葉が気になっている。


 『どうする? 試してみる??』
 
 シコちゃんのその一言でティアナがこっちを見る。

 既に瞳はウルウルして顔は真っ赤。
 にじりにじりとあたしに近づいてくる。


 ちょ、ちょっとティアナぁ??


 「エ、エルハイミ、これは決してその、いやらしい目的じゃなくあたしたちの運命の為なのよ‥‥‥ だ、だからお願い、して」

 あたしはいつの間にか壁際まで来ていてティアナに壁ドンされている。

 そしてあたしの目の前にはティアナの胸がある。
 ふわっと香るティアナの香りはあまりにも香しく、甘い香りがする。


 だんだんあたしの鼓動が早くなってくる。


 「あ、あの、ティアナ?」

 真っ赤になりながらあたしは上目づかいでティアナとティアナの胸を見比べる。


 「お願い、エルハイミ‥‥‥」



 ばんっ!!



 「やっと終わりましたぁ~。どうですか『至高の杖』の研究の方は?」

 にこやかにソルミナ教授が入ってきてあたしたちを見て固まる。
 
 「・・・」

 「・・・」

 「・・・」

 『ありゃ?』


 「にゅ、入学式でいくらこの開発棟に人がいないからって何やってんですかあなたたち!!!?」

 顔を真っ赤にしながらソルミナ教授は両手をぶんぶん振り回す!

 「どうしたのですか? ソルミナ教授ううっってぇ!!!?」

 アンナさんもこの女性専用控室に入ってくる。
 そして固まっているあたしたちを見る。


 「ふ、不潔ですぅぅぅぅっっ!!!!」


 そしてまたまた真っ赤になりながら扉を飛び出し走り去る!

 
 「エ、えーと」

 「と、とりあえず服着てから誤解を解きに行きましょうですわ‥‥‥」


 * * * * * * * * * 

   
 「んんっ、は、話はその、理解は出来ました。『至高の杖』が言うのならば間違えないでしょう。そ、それと、以降はこう言った事は誤解無いように自室でお願いします。毎回毎回心臓が飛び出るのではないかと言う誤解をさせられるのは大変なので」

 アンナさんを捕まえて一部濁した事情説明をして何とか納得はしてもらえたようだ。
 ソルミナ教授を見ると未だにプルプル震えながら何かつぶやいている。

 「ま、まさかそのエルフの子って八大長老の一人?? 確かにあの人だけ大きかったような気がするし、ガーベルに『時の指輪』を渡したのはあの長老って話だし‥‥‥ じゃ、じゃあやっぱりそうなの!!!?」

 『なんかこの子らも大変そうね?』

 「誰のせいですの!」

 あたしは大きくため息をつく。


 
 「それで、準備の方ですが師匠がもう少し時間がかかり移動日含めて一週間しか時間が取れないそうです」


 魔結晶石と至高の杖は手に入った。
 なので今度は上級精霊の確保だが、それには師匠の協力が必要だ。


 師匠にはいろいろと報告済みだが少し迷ったうえで優先的に八大長老に会いに行く事となった。

 しかし、黒の集団が秘密結社ジュメルでそいつらが各国に被害をもたらせ始めているという話をした時の師匠の殺気ときたら近くにいるあたしたちでさえ切り伏せられそうで怖かった。
 それなのに師匠は先に八大長老に会いに行く事を優先した。
 流石に師匠、冷静な判断だと思う。


 しかし、一週間か。
 精霊都市ユグリアからエルフの村の八大長老に協力を仰ぎ、上級精霊を魔結晶石に融合して持ち帰るかぁ。

 結構忙しいわね。


 「シコちゃん、魔結晶石と上級精霊の融合ちゃんとお願いしますわよ?」

 『まっかせなさーいっ! 泥船に乗ったつもりで安心しなさい!』

 いや、泥船じゃだめでしょうに!!
 ほんとに大丈夫かしら?
 


 あたしは心底いろいろと不安になるのだった。 

  
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