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第四章

4-31ティアナの胸

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4-31ティアナの胸


 最悪の事態は何とか免れた。


 しかし新たな危機が迫っていた、主にあたしとティアナに!!


 今は王城に戻り、事態の報告を行っている。

 「と、言う訳でありまして、ホリゾンは自国内領域に拠点となる砦を築くこととなりました。そしてその御身を差し出されたティアナ殿下のおかげでこの二年間はまず侵攻が無きことは確実となりました」

 宮廷魔術師のドミンゴさんの報告にまずはここ、宮廷会議で安堵の息が各所から洩れる。
 しかし、息の中にはため息も混じる。

 「殿下の献身は愛国の現れ。まさに尊いのですが、万が一殿下がホリゾンに嫁ぐこととなればこれまた一大事」

 「しかもその勝敗の条件と言うのが‥‥‥」

 大臣たちも何と言っていいのやら。


 わかる、わかるわよ、その気持ち!!


 でも今回のあの場での全権はティアナに任されていたわけだし、国王陛下も最悪は本気でホリゾンと事を構えるつもりだったわけだし、それを考えるとまずまずの成果と言っていいのだけど‥‥‥

 「皆様、ご心配召されるな。私はこの二年できっと母上のようになります。シルフィー叔母様やアテンザ姉さまを見れば私の勝利はゆるぎなきもの! 女としてさらに邁進いたしますわ!!」

 鼻息荒いティアナ。

 確かに叔母であるシルフィー様や姉であるアテンザ様はご立派なものをお持ちだ。
 しかしお世辞にも今のティアナはその足元にも及ばない。
 勿論、あたしも人様の事言えたものではないが、最近ティアナとあたしの格差は日に日になくなってきているような気がする。


 ‥‥‥本当に大丈夫なんでしょうね、ティアナ!!!?


 ティアナがあんな奴の所に嫁ぐのも勿論、あたしまで愛人として引き取られるなんてまっぴらごめんだわ!!

 そんなことを悩んでいると一人の大臣がポツリと言う。

 「しかし、万が一があった場合その損失は計り知れなくなってしまいますな。無詠唱の使い手が二人も敵陣営に行ってしまう可能性があるとは‥‥‥」


 「「あっ!」」 


 きれいにあたしとティアナの声がハモってしまった。
 大臣の発言があるまでその重要な事をすっかり忘れていたあたしたち。

 や、やばい、これって本気でどうにかしないと手籠めにされた挙句自国に刃を向けさせられる羽目になってしまう!!

 何か対策を取らなきゃ。
 と、こういった問題って誰に相談すればいいのよ?
 
 あたしは思案するも、良い方法が見つからない。

 となると、困ったときの師匠頼みかな‥‥‥
 いや、アンナさんに頼るとか?


 「陛下、何はともあれ私は一度学園都市ボヘーミャに戻ろうと思います」

 ティアナがみんなが悩んでいる中、陛下に発言する。

 「今はマシンドールの魔晶石核の切り替えが最優先と思います。二年後どのような結果になってもマシンドールが使えないのでは意味がありません。まずは国の守りの要となるマシンドールの更新を急ぐのが先決かと」

 学園では開発棟で双備型魔晶石核の量産に入っている頃だろう。
 確かにまずは備えが重要。
 ティアナの話も一理ある。

 「うむ、ティアナよ学園に行くことを許可しよう。そなたの言う通りまずは守りを固めねば話にならん」

 「ありがとうございます、陛下。それでは明日にでも学園に戻ることといたします」

 そう言ってティアナは退席をしようとすると、国王陛下は言いにくそうにティアナに声をかける。

 「んんっ、それと、ティアナよ、健康の為に毎日牛乳を飲むといいらしい。ボヘーミャでも牛乳を飲み健康には気を付けるのだぞ」


 陛下、何の健康ですかっ!?


 いや、孫娘を訳の分からんどこぞの馬の骨になんて嫁がせたくないのはわかります。
 しかし牛乳って迷信じゃなかったの!?


 「そう言えば適度な、こう、手と手を合わせて力を入れる運動もいいと言われてますぞ!」

 「いやいや、わしが聞いた話では腕をこうして組んで上半身をだな~」

 何やらいきなりティアナの為の健康にかかわる話が宮廷会議で盛り上がりを見せる。
 あたしは呆気に取られていたが、なんで大臣たちそんなに詳しいのよ!?
 
 ‥‥‥参考にはなるけど。

 このまま聞いていると更にこの話題で盛り上がりを増していきそうなので、あたしとティアナはとっととこの場を後にした。


 * * * * *


 「時にティアナ、本当に大丈夫なんですの?」

 周りに人気が無い馬車の中であたしはティアナに質問する。

 「大丈夫って、何が?」

 「胸の事ですわ。最近はわかりませんが、その、ティアナのサイズは成長しているのですの?」

 それを聞いたティアナは胸を張り、言い切る。

 「大丈夫よ、ちゃんと成長するわ、これから!」

 いやいやいや、なにそれっ!?
 これからって何!?

 「最近私も膨らんできましたが、その、見た感じティアナとあまり変わらないような気がしますわ‥‥‥」

 「うそっ!? そんなはずは! ちょっとエルハイミ触らせて!」

 そう言ってティアナはいきなりあたしの胸をもむ。

 「のひゃぁっ!?」

 いきなりの事で驚いて変な声が出てしまう。
 しかしティアナは容赦なくあたしの胸をもむ。

 ふにふにふにふに‥‥‥

 「ちょ、ティ、ティアナ! くすぐったいですわっ!!」

 ふにふにふに‥‥‥

 「そ、そんなっ! わ、私とあまり変わらないですって!?」

 ふにふにふにふに‥‥‥

 驚きながらまだあたしの胸をもんでいる。

 「ティ、ティアナ、駄目ですわ、そんなに揉まないで‥‥‥」

 くすぐったいのになんか、へんな感じが‥‥‥

 
 がちゃ。


 「「あっ」」

 「ティアナ殿下、エルハイミさん、お疲れ様です。おまちして‥‥‥ きゃぁっ! ご、ごめんなさいっ! わ、私何も見ていませんっっっ!!」


 ばたんっ!!


 どうやら神殿に着いたらしいけど、開けられた馬車の扉は再びファルによって閉められてしまった。


 「こ、これは違いますのぉぉおおっっ!!!!」





 あたしの絶叫だけがこだました。
   

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