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第四章
4-4アイミ強奪
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4-4アイミ強奪
オセロと将棋で約半日の遅れが出てしまい、今はそれを挽回するがためにかなりのペースで移動している。
あの後、オセロと将棋はこの旅の間は馬車の中はまだしも護衛の騎士団は夜間しかやってはいけないこととなった。
でないと始まってしまったが最後、永遠とやり続けてしまうからである。
それと俺には別の負荷がかかった。
将棋盤の追加作成依頼だ。
オセロはすぐすぐできなくても将棋なら木材があれば作成できる。
泊まる宿場村でよさそうな木材を購入しては馬車の移動中に将棋を作る羽目となった。
おかげで今は三つ目の作成である。
「うう、やっと終わりましたわ。これで最初のを入れれば四つ、一応はやりたい人が全員でやっても間に合う数ですわ」
【創作魔法】は意外と集中力が必要だ。
錬金術に近く、素材さえあればかなりの精度で作りたいものができる。
もっとも、魔法陣を書かない分【創作魔法】の方が制御が難しいのだが。
そのうち錬金術も習おうかと思う。
同じものを作ったりするのは錬金術の方が合理的だしね。
さて、そんなこんなでいつもより揺れが大きい馬車の中でやっとお役目ごめんだ。
たまには俺も将棋やオセロやろうかとティアナたちを見ると‥‥‥
「うっきゃーっ! また負けた!! アイミ、もう一回!」
オセロで相変わらず勝負しているティアナがアイミに負けたところであった。
記憶が正しければまだ一度もアイミに勝ってないんじゃないか?
マリアはそんなティアナの周りを飛び回って何か言ってる。
「ティアナ~、もうあきらめなよ~、ずぅ~っと負けっぱなしだよ~?」
「うるさい、今度こそは勝つわよ!!」
ああ、当分だめだなこりゃぁ。
仕方なく窓の外を見る。
相変わらず穀倉地帯だが今は作っている作物が違うのかいろいろな色がある。
今まであまり気にはしていなかったが、まじまじと見るとこの世界の植物は生前のものとよく似ている。
いや、ほぼ同じと言ってもいいだろう。
今見える緑色の植物はたぶんトウモロコシだろう。
幹のところどころにそれっぽい実と髭が見て取れる。
焼きトウモロコシにボヘーミャで仕入れたしょうゆを垂らして食ったらうまそうだな。
今度の宿場村で試してみようかな?
見ると田園風景はそろそろ茜色になり始めた。
今日の移動はここまでかな?
と、馬車が止まる。
「殿下、申し上げます。少々無理をしたため馬が持ちませぬ。申し訳ございませんが本日はこの辺で野営となります」
護衛隊長のバナードさんがこちらに来て報告をする。
「仕方ないわね、わかりました。それでは野営の準備を」
ティアナの許可を受けてバナードさんは指示を出す。
と、ちょこちょこっとこちらに来て俺に小声で聞いてくる。
「お、おほん、エルハイミ殿、どうでありますかな?」
んあ?
何がだ?
頭にクエスチョンマークを浮かべていると、周りをきょろきょろと見渡してから再度小声で聞いてくる。
「将棋ですよ、将棋。どうですかな新しいのは出来たでしょうかな?」
俺は思わず吹き出してしまいそうなのを何とかこらえ、営業スマイルで答える。
「ええ、皆さん同時でやっても大丈夫な分は作りましたわ。でも、ちゃんと全部終わってからでないとだめですわよ。それまでお預けですわよ」
指を立ててママンのしぐさをまねる。
「もちろんでありますとも!」
そう言ってバナードさんは自分の作業をするために慌てて戻っていった。
みんな本当にこういった娯楽に飢えているなぁ。
実家に戻ったら爺様にも教えてやるか。
そんなことをぼんやりと思いながら野営の準備を眺める。
みんなは早く将棋がやりたいのかいつもより手際よく準備をしている。
自然と笑みが漏れる。
平和だなぁ~。
今は只々ニマニマしながらそんなのんきな風景を楽しむのであった。
* * * * *
食事が終わり、お待ちかねの将棋を引っ張り出す。
おおーっとみんなから歓声が上がる。
さすがに最初のモノより碁盤はいい板が手に入らなかったので、駒を打った時の音が若干悪いがゲームをするのには十分だ。
ロクドナルさんを含め騎士連中はワイのワイのと将棋を始める。
俺は久々にティアナとオセロを打ってみる。
って、マジかよ!?
「ふふふふっ、エルハイミなめてかかってきちゃだめよ! ここにいる私は昨日の私じゃないんだから!」
なんということだ、俺はあっさりティアナに負けてしまった。
くっ、悔しくなんかないもんっ!!
落胆していると今度はアンナさんがこちらに来てティアナに挑戦を仕掛けてきた。
「では、殿下、次は私がお相手いたします」
「いいわ、かかってらっしゃいっ!」
俺はアンナさんと変わってサージ君が入れてくれたお茶を飲む。
と、サージ君が俺に耳打ちする。
「何者がこちらに向かっているようです。敵意をむき出しにしながら」
それを聞いた俺はすぐさまティアナを呼ぶ。
「ティアナ! 気をつけてくださいまし! 賊やもしれませんわ!!」
その声に流石にここにいるみんなは即座に反応する。
すぐさま騎士団は抜刀し、ティアナを守る陣形を取る。
俺もその輪の中に入れられ、その側面をアンナさんとロクドナルさん、そして死角をサージ君が固める。
すぐさまその異変は現れた。
全身黒ずくめの男たち。
しかしその中に一人だけ女性が混じっている、派手な格好をした女性が。
全身を包むその服装は黒革製の露出度が異常に高いボンテージもの。
妖艶な紫がかった青い髪が猛禽類を思わせる瞳によく似合っている。
真っ赤な唇は笑みの形に、手に持つ鞭はなまめかしくその女性に舐められていた。
「へえぇぇ、テストに来てみたら、まさかこんなところでガレントのお姫様たちに会うとはね。ちょうどいい、あんたが持っているマシンドール、いただくよ! お前たち、やれっ!」
そう言って黒ずくめの男たちをけしかける。
すぐさま騎士団が反応して応戦するが、黒ずくめの男たちの動きが変だ。
「何者だ!? 貴様ら!!」
バナードさんの叱責に答えず黒ずくめの男たちは切りこんでくる。
それをいなし避けるが、受けた短刀の腕がいきなり逆間接に動き騎士団に切りつける。
「なっ!?」
驚く騎士団。
そうか、この違和感、こいつら人間じゃない!?
そう、数年前に魔導士杯決勝戦で戦ったゴーレムに似た感じだ!
「思い出した! エルハイミさん、あの時ビエムを黙らせたホリゾンの関係者です!」
サージ君が記憶を掘り起こす。
「おや? あたしを知っている奴がいるのかい? それじゃあますますこのままにしておけないね!」
そう言った途端、俺たちが載っていた馬車が弾け、中から頭をつかまれたアイミと異形の姿の怪人が出てきた。
「アイミっ!」
ティアナの叫び声に反応するアイミだが、がっちりと頭を押さえられていて動けない。
「ティアナ、エルハイミ!」
マリアが飛んでくる。
「いきなりあの怪獣が馬車に飛び込んできてアイミを捕まえた! あいつ嫌い!!」
とりあえずマリアは無事のようだが、アイミが捕まったままだ。
怪人は更に体から触手を生やしアイミを絡めていく。
「ティアナ、同調してアイミを動かしてくださいですわ! 私が魔力を送り込みますわ!」
「わかった! アイミ!!」
ティアナが叫びながらアイミと同調を始める。
俺もすぐさまティアナの背に手を付け、魔力を送り始める。
アイミの目が赤く光ってティアナと同調する。
途端にアイミの体から炎が立ち上がり、頭を捕まえている腕に蹴りを入れ、絡みついた触手を焼き払い束縛を振り払う。
「行くわよ! 三十六式が一つ、ダガーっ!」
アイミは素早く怪人の懐に入り正拳突きから流れる動きで肘打ちを相手の顔に撃ち込む!
相手の顔にはめられた仮面を割って怪人を吹き飛ばす!
「どう!? 同調さえすれば負けないんだから!!」
「ちッ、同調されちゃ分が悪い! まあいい、そこそこデーターは取れた。お前たち引くよ!!」
そう言って足元に閃光弾を放って目くらましをかける。
「くっ! まぶしい!」
光を見てしまった面々は手でその光を遮るが、その瞬間に黒ずくめの男たちと怪人は引いて行った。
しかし、引き際に俺たちは見てしまった。
怪人の割れたお面の下にビエムの顔が有った事を。
オセロと将棋で約半日の遅れが出てしまい、今はそれを挽回するがためにかなりのペースで移動している。
あの後、オセロと将棋はこの旅の間は馬車の中はまだしも護衛の騎士団は夜間しかやってはいけないこととなった。
でないと始まってしまったが最後、永遠とやり続けてしまうからである。
それと俺には別の負荷がかかった。
将棋盤の追加作成依頼だ。
オセロはすぐすぐできなくても将棋なら木材があれば作成できる。
泊まる宿場村でよさそうな木材を購入しては馬車の移動中に将棋を作る羽目となった。
おかげで今は三つ目の作成である。
「うう、やっと終わりましたわ。これで最初のを入れれば四つ、一応はやりたい人が全員でやっても間に合う数ですわ」
【創作魔法】は意外と集中力が必要だ。
錬金術に近く、素材さえあればかなりの精度で作りたいものができる。
もっとも、魔法陣を書かない分【創作魔法】の方が制御が難しいのだが。
そのうち錬金術も習おうかと思う。
同じものを作ったりするのは錬金術の方が合理的だしね。
さて、そんなこんなでいつもより揺れが大きい馬車の中でやっとお役目ごめんだ。
たまには俺も将棋やオセロやろうかとティアナたちを見ると‥‥‥
「うっきゃーっ! また負けた!! アイミ、もう一回!」
オセロで相変わらず勝負しているティアナがアイミに負けたところであった。
記憶が正しければまだ一度もアイミに勝ってないんじゃないか?
マリアはそんなティアナの周りを飛び回って何か言ってる。
「ティアナ~、もうあきらめなよ~、ずぅ~っと負けっぱなしだよ~?」
「うるさい、今度こそは勝つわよ!!」
ああ、当分だめだなこりゃぁ。
仕方なく窓の外を見る。
相変わらず穀倉地帯だが今は作っている作物が違うのかいろいろな色がある。
今まであまり気にはしていなかったが、まじまじと見るとこの世界の植物は生前のものとよく似ている。
いや、ほぼ同じと言ってもいいだろう。
今見える緑色の植物はたぶんトウモロコシだろう。
幹のところどころにそれっぽい実と髭が見て取れる。
焼きトウモロコシにボヘーミャで仕入れたしょうゆを垂らして食ったらうまそうだな。
今度の宿場村で試してみようかな?
見ると田園風景はそろそろ茜色になり始めた。
今日の移動はここまでかな?
と、馬車が止まる。
「殿下、申し上げます。少々無理をしたため馬が持ちませぬ。申し訳ございませんが本日はこの辺で野営となります」
護衛隊長のバナードさんがこちらに来て報告をする。
「仕方ないわね、わかりました。それでは野営の準備を」
ティアナの許可を受けてバナードさんは指示を出す。
と、ちょこちょこっとこちらに来て俺に小声で聞いてくる。
「お、おほん、エルハイミ殿、どうでありますかな?」
んあ?
何がだ?
頭にクエスチョンマークを浮かべていると、周りをきょろきょろと見渡してから再度小声で聞いてくる。
「将棋ですよ、将棋。どうですかな新しいのは出来たでしょうかな?」
俺は思わず吹き出してしまいそうなのを何とかこらえ、営業スマイルで答える。
「ええ、皆さん同時でやっても大丈夫な分は作りましたわ。でも、ちゃんと全部終わってからでないとだめですわよ。それまでお預けですわよ」
指を立ててママンのしぐさをまねる。
「もちろんでありますとも!」
そう言ってバナードさんは自分の作業をするために慌てて戻っていった。
みんな本当にこういった娯楽に飢えているなぁ。
実家に戻ったら爺様にも教えてやるか。
そんなことをぼんやりと思いながら野営の準備を眺める。
みんなは早く将棋がやりたいのかいつもより手際よく準備をしている。
自然と笑みが漏れる。
平和だなぁ~。
今は只々ニマニマしながらそんなのんきな風景を楽しむのであった。
* * * * *
食事が終わり、お待ちかねの将棋を引っ張り出す。
おおーっとみんなから歓声が上がる。
さすがに最初のモノより碁盤はいい板が手に入らなかったので、駒を打った時の音が若干悪いがゲームをするのには十分だ。
ロクドナルさんを含め騎士連中はワイのワイのと将棋を始める。
俺は久々にティアナとオセロを打ってみる。
って、マジかよ!?
「ふふふふっ、エルハイミなめてかかってきちゃだめよ! ここにいる私は昨日の私じゃないんだから!」
なんということだ、俺はあっさりティアナに負けてしまった。
くっ、悔しくなんかないもんっ!!
落胆していると今度はアンナさんがこちらに来てティアナに挑戦を仕掛けてきた。
「では、殿下、次は私がお相手いたします」
「いいわ、かかってらっしゃいっ!」
俺はアンナさんと変わってサージ君が入れてくれたお茶を飲む。
と、サージ君が俺に耳打ちする。
「何者がこちらに向かっているようです。敵意をむき出しにしながら」
それを聞いた俺はすぐさまティアナを呼ぶ。
「ティアナ! 気をつけてくださいまし! 賊やもしれませんわ!!」
その声に流石にここにいるみんなは即座に反応する。
すぐさま騎士団は抜刀し、ティアナを守る陣形を取る。
俺もその輪の中に入れられ、その側面をアンナさんとロクドナルさん、そして死角をサージ君が固める。
すぐさまその異変は現れた。
全身黒ずくめの男たち。
しかしその中に一人だけ女性が混じっている、派手な格好をした女性が。
全身を包むその服装は黒革製の露出度が異常に高いボンテージもの。
妖艶な紫がかった青い髪が猛禽類を思わせる瞳によく似合っている。
真っ赤な唇は笑みの形に、手に持つ鞭はなまめかしくその女性に舐められていた。
「へえぇぇ、テストに来てみたら、まさかこんなところでガレントのお姫様たちに会うとはね。ちょうどいい、あんたが持っているマシンドール、いただくよ! お前たち、やれっ!」
そう言って黒ずくめの男たちをけしかける。
すぐさま騎士団が反応して応戦するが、黒ずくめの男たちの動きが変だ。
「何者だ!? 貴様ら!!」
バナードさんの叱責に答えず黒ずくめの男たちは切りこんでくる。
それをいなし避けるが、受けた短刀の腕がいきなり逆間接に動き騎士団に切りつける。
「なっ!?」
驚く騎士団。
そうか、この違和感、こいつら人間じゃない!?
そう、数年前に魔導士杯決勝戦で戦ったゴーレムに似た感じだ!
「思い出した! エルハイミさん、あの時ビエムを黙らせたホリゾンの関係者です!」
サージ君が記憶を掘り起こす。
「おや? あたしを知っている奴がいるのかい? それじゃあますますこのままにしておけないね!」
そう言った途端、俺たちが載っていた馬車が弾け、中から頭をつかまれたアイミと異形の姿の怪人が出てきた。
「アイミっ!」
ティアナの叫び声に反応するアイミだが、がっちりと頭を押さえられていて動けない。
「ティアナ、エルハイミ!」
マリアが飛んでくる。
「いきなりあの怪獣が馬車に飛び込んできてアイミを捕まえた! あいつ嫌い!!」
とりあえずマリアは無事のようだが、アイミが捕まったままだ。
怪人は更に体から触手を生やしアイミを絡めていく。
「ティアナ、同調してアイミを動かしてくださいですわ! 私が魔力を送り込みますわ!」
「わかった! アイミ!!」
ティアナが叫びながらアイミと同調を始める。
俺もすぐさまティアナの背に手を付け、魔力を送り始める。
アイミの目が赤く光ってティアナと同調する。
途端にアイミの体から炎が立ち上がり、頭を捕まえている腕に蹴りを入れ、絡みついた触手を焼き払い束縛を振り払う。
「行くわよ! 三十六式が一つ、ダガーっ!」
アイミは素早く怪人の懐に入り正拳突きから流れる動きで肘打ちを相手の顔に撃ち込む!
相手の顔にはめられた仮面を割って怪人を吹き飛ばす!
「どう!? 同調さえすれば負けないんだから!!」
「ちッ、同調されちゃ分が悪い! まあいい、そこそこデーターは取れた。お前たち引くよ!!」
そう言って足元に閃光弾を放って目くらましをかける。
「くっ! まぶしい!」
光を見てしまった面々は手でその光を遮るが、その瞬間に黒ずくめの男たちと怪人は引いて行った。
しかし、引き際に俺たちは見てしまった。
怪人の割れたお面の下にビエムの顔が有った事を。
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